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永久保存版・陣内が観た映画ベスト10(後半)2018年版

2019.05.01 Wednesday

+++vol.071 2018年12月25日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 2018年版・陣内が今年観た映画ベスト10(後編)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
Amazonプライムに入会してから、
月に平均すると10本ぐらいの映画を観るようになりました。
電車やバスや新幹線で、本を読む代わりに、
タブレットで映画を観るようになって、
飛躍的に映画を観る本数が増えました。
映画は小説と同じで「他人の靴を履いて人生を歩く」、
という「疑似体験」を与えてくれます。
本と同じくランキングはあまり好きじゃないので、

年に一度だけの特別企画です。
「今年読んだ本」と同じく、
前編で10位〜6位、後編で5位〜1位を紹介します。
皆様の映画選びのお役に立てれば幸いです。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

●第5位 三度目の殺人

鑑賞した日:2018年5月19日
鑑賞した方法:Amazonでレンタルストリーミング 500円

監督:是枝裕和
主演:福山雅治、役所広司、広瀬すず他
公開年・国:2017年(日本)
リンク:
http://amzn.asia/eCkwlne

二度目の観賞 2018年10月11日
Amazonプライム特典にて

▼▼▼コメント:

これは最近解説したばかりなのですが、
やはり凄い映画だと思いました。
二回見ましたけど、
二回目で確信したのは、
この映画は「キリストの赦し」の映画です。

小鳥の墓の十字架、
殺人現場の人型の十字架、
雪で遊ぶシーンの十字架状に寝そべる姿、
ラストシーンの「十字路」。

「十字架」がこの映画を読み解く鍵です。
この「十字架」には、
「その人が負うべき十字架」という意味と、
「赦し」という意味が込められています。

役所広司は広瀬すずを救おうとし、
その罪を自らの身に背負います。
彼は「救済者」であり、
司法制度全体がポンテオ・ピラトや、
ユダヤの大祭司のメタファーになっています。

死刑判決を受け、
なかば満足そうに裁判所を出て行く役所広司と、
彼が「その命を捨ててかばった」広瀬すずが、
一瞬目があうシーンがあります。
あれは、ペテロとイエスを意識しているはずです。

是枝監督はキリスト教の素養があり、
それを現代の物語として語り直す資質をもった、
日本の映画監督としては希有な存在です。

はやく「万引き家族」が観たいなぁ。



●第4位 カメラを止めるな!

鑑賞した日:2018年8月18日
鑑賞した方法:TOHOシネマズ新宿で劇場鑑賞

監督:上田慎一郎
主演:濱津隆之、真魚 他
公開年・国:2018年(日本)
リンク:
http://kametome.net/index.html


▼▼▼コメント:

今年映画館で観た2本の映画のうちの1本。
もう一本は最近解説した、
『パウロ 愛と赦しの物語』です。

Amazonビデオで有料配信されてから、
500円払ってもう一度観ました。
妻にも見せたかったので。

「多分今の状態で観ても面白くないかもよ」と、
思いっきりハードルを下げた状態で、
観て貰いましたが、
妻はそれでも「面白い」と言ってました。

とにかく、あんなに映画館が、
ドカンドカン受けている映画は初めてでした。

それだけで、凄いことです。
いろいろ文句言う人もいますが、
東京の映画館を「なんばグランド花月」並みに、
笑い声で満たすことに成功した映画監督が、
かつていたでしょうか?
そしてこれからいるでしょうか?

それだけで偉大な達成です。

手放しに誉めて良い。

実はこの映画、
ルックスとは違って案外深いです。
一人の男が矜持を取り戻す、
男の人生の物語であり、
家族の回復の物語です。

詳しくは言えませんが、
「メタ・メタ・メタ構造」ともいえるエンドロールのカットは、
監督の自分自身へのエールにもなっています。

子どもがいる人、
特に娘がいる人は、
最後、泣いちゃう可能性大ですね。






●第3位 哭声 コクソン

鑑賞した日:2018年8月1日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:ナ・ホンジン
主演:クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村隼他
公開年・国:2017年(韓国)
リンク:
http://amzn.asia/0oOmcZv

▼▼▼コメント:

この映画もメルマガにて解説済みですので、
それをもう一度繰り返すことはしません。
過去記事をご参照下されば幸いです。

、、、この映画、好き嫌いがハッキリ分かれるでしょうね。
大好き:5%
大嫌い:95%
ぐらいで笑。

、、、分かれてねぇじゃねーかよ、っていうね笑。

それぐらい「クセが凄い(copylight千鳥ノブ)」映画なのです。

私は「大好き派」でして、
2回も観てしまいました。

韓国のある田舎の村で、
人が「悪魔に憑かれ」たようになり、
その人が猟奇的な殺人をして、
本人も自殺する、
という事件が多発します。

主人公はその事件を追う刑事です。

この映画は、ジャンル分け不能です。
ホラーはホラーなんですよ。
もうめちゃくちゃ怖いですから笑。
不気味さ、禍々しさがとにかく凄いです。

でも、サスペンスの要素ももちろん。
事件を「解いていく」わけですから。
謎が謎を呼び、、、という要素がある。

さらにはどことなくおかしみがある。
コメディ要素も混ざっている。
そして「霊媒」です。
『エクソシスト』という古典的除霊映画がありますが、
あれの発展形ですね。

そして最後に、この映画は、
「宗教映画」です。
もっと言えばキリスト教の映画です。
そしてもっと言えば、神学の映画、
さらに言えば神学の中でも「神義論」に関する映画です。

「正しい神がなぜこの世に悪が存在することを許すのか?」
という問いに関する、ナ・ホンジン監督なりの、
答え(というよりも葛藤の道のり)がこの映画に通底しています。

この映画は聖書の引用で始まります。

「なぜうろたえているのか。
どうして心に疑いを起すのか。わたしの手や足を見なさい。
まさしくわたしだ。触ってよく見なさい。
亡霊には肉も骨もないが、
あなたがたに見えるとおり、わたしにはそれがある。」

キリスト教徒には分かるのですが、
これはキリストの言葉、
それも十字架にかかり、
3日目に復活した後のキリストが、
弟子のトマスに言う言葉です。

ナ・ホンジン監督は牧師になろうとして、
神学校に行ったことがあります。
そこから「映画監督」に進路を変更した。
そして「映画」というフィールドで、
「神学の続き」をしている。

まったく同じような経歴を持つ映画監督に、
「沈黙」を撮ったマーティン・スコセッシがいます。
彼もカトリックの神父になろうとしたが、
映画監督となり、自分は映画という現場で神学している、
と自分で言っています。

「キリスト教映画」とは、
「キリスト」とか「信仰」とか「教会」という言葉が、
出てくる映画のことではありません。

そうではなく、何を題材としたとしても、
「その切り口が神学的であるような」映画のことです。

先週の読んだ本ベスト10に登場した、
『イマジン』で語られていたことです。



●第2位 イコライザー

鑑賞した日:2018年12月8日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:デンゼル・ワシントン、クロエ・グレース・モレッツ、
主演:アントワ・フークワ
公開年・国:2014年(アメリカ)
リンク:
http://amzn.asia/d/hDfpHz6

▼▼▼コメント:

これは、1位〜5位のなかで、
唯一、当メルマガで観解説の映画です。
観たのが最近ですから。

これは、やられました。

私は「ドンパチ映画」って、
あんまり好きじゃないんですよね。
「暴力」が好きじゃないわけじゃない。
だって「アウトレイジ」大好きですから笑。

そうではなく、
「爆発→銃撃→カーチェイス→銃撃→殴り合い→決着」
みたいな判で押したような展開を見せられると、
「それ、もう2万回観たわ。
 もうお腹いっぱいだわ」と思っちゃう。

「もう2万回観た」ことを、
なんでもう一回、
莫大な予算をかけてやろうと思えるのだろう。

、、、作り手はどんだけバカなんだろう(失礼)?

とか思ってると、
内容が頭に入ってこなくなり、
潮が引くように映画から関心がなくなっていきます(当社比)。

もちろん、あの「おきまりのシークエンス」が、
「最高にアガる」という人が一定数おり、
そしてそちらのほうがむしろ多数派だからこそ、
火薬、銃撃、カーチェイス、殴り合い映画は、
量産されてきたし、これからも量産されるのでしょうけど。

、、、でこの映画、
「火薬、銃撃、殴り合い映画」です(爆死)。
(カーチェイスは確かなかったと思います。
 あったけど私がカーチェイスがあまりに嫌いなので、
 記憶から消去してるだけかもしれないけど笑)

つまり、普段の私なら、
まったく食指が動かないようなジャンルの映画です。

それなのに、例外的に良かった。
突出して良かった。

この手の映画にここまで感動した最後の思い出は、
小学生のときにみた「ダイ・ハード」の第一作目以来です。

じつに30年ぶりに、
このジャンルの映画で、
凄いのを観ちゃった。

『ダイ・ハード(一作目)』がなぜあの手の映画の中で、
突出している(と私が思う)かというと、
やはりマクレーン刑事(ブルース・ウィリス)の魅力なんですよね。
妻と上手く行かず、
「最低なクリスマス」を過ごす男に、
最低な災難が降りかかる。
それを彼がアクションと知恵を用いて、
切り抜けていき、
大規模なテロ事件を解決するわけですが、
マクレーン刑事の「人となり」が魅力的であり、
それがアクションとちゃんと結びついているので、
「必然」があるわけです。
「外にいる名も知らぬ黒人警備員」との、
「無線のやりとり」もウィットに富んでいますし。

また、人質のひとりとなった妻が、
「正体不明のヒーロー(=マクレーン)」を、
「彼(夫)に違いないわ。
 人間をここまで激怒させられる人間なんて、
 彼以外いないもの。」
と呟くシーンなんて、最高です。

、、、で、『イコライザ』ですが、
私は『ダイ・ハード』の21世紀的アップデートとして観賞しました。
そして、『ダイ・ハード』を超えた、と。

この映画、冒頭で、
以下のマーク・トウェインの言葉が引用されます。

「人生で一番大切な日は生まれた日と、
 生まれた理由が分かった日」


、、、もう面白そうでしょ笑。

結果から言いますと、
主人公のロバート(デンゼル・ワシントン)は、
「ダイ・ハード」のマクレーン刑事を超えました(当社比)。

彼の人となりが魅力的なのです。
まず彼は不眠症であり強迫神経症です。
そして妻に先立たれた傷から立ち直っていない。
また、彼は大変な読書家で、
「読むべき100冊」という名著の、
92冊目の『老人と海』(ヘミングウェイ)を読んでいたりします。
また、彼の会話には、
『ドン・キホーテ』など、
知っている人には分かる、
「知的な引用」が多い。

「なにぃぃぃ!
 ヤツのIQは180だとぉぉぉ!!!」
というバカっぽい台詞で、
「主人公は切れ者だ」
ということを分からせるのではなく、
会話の中の「それとない引用」で、
台詞ではなく
「主人公は相当に頭が切れ、
 そして教養のある人らしい」
と観客に分からせる、というのはスマートな方法です。

アクションにも一工夫あります。
彼の過去はCIAの特殊工作員であり、
過去の任務の重大さゆえに、
「国家からもう死んだことにされた」人間です。
今はその過去を隠し、
ホームセンターで働きながら、
ひっそりと暮らしている。

その彼が、あるロシア人の少女を、
売春の元締めをしているロシアマフィア組織から救おうとして、、、
という、まぁ「コッテコテ」の設定なわけですよ。

これを面白くするのは結構難しい。

ところがこの映画に私は、
ぐいぐいと引きつけられ続け、
最後には「良い映画を観たぁぁ!!」
「ありがとう!!」
「最高だぁぁ!!」
と思わせられてしまったのです。

まんまとやられました。

まずアクションシーンが「面白い」。
ロバートの戦いの手法に、
「その場にあるものを使う」というDIY精神があり、
このギミックはどこか、「脱出ゲーム」のようです。
転がっているスパナや、
むき出しになっているコードや、
机の上にある紙とペン、
つまり視界に入っているモノを利用して、
この部屋を脱出して下さい、
というアレです。

あと、この映画、
音楽の使い方がとてもクールです。
アガるところではちゃんとアガるように、
選曲とボリュームがかなり考えられている。
まるでミュージックPVを観ているかのように、
ともすると単調になりがちな、
アクションシーンを楽しめます。

さらにこの映画は、
「勧善懲悪映画」です。
「半沢直樹的」と言いますか。

「完全なフィクション」だと全員分かっているけど、
正義が勝ち、悪が挫かれるところを観て、
人々が溜飲を下げ、カタルシスを味わうことが出来る、
という意味では、
「イコライザー=半沢直樹」と言って良いでしょう。
テーマも国も、何もかもまったく違いますが笑。

ただ、現代における勧善懲悪って、
めちゃくちゃ作りづらいはずなのです。

『ダイ・ハード』が作られた80年代ならば、
それは簡単でした。
まだ「東西冷戦期」でしたから、
アメリカ映画なら、「悪=ソ連(共産圏)」。
以上、終わり、です。

ダイ・ハードのテロ集団にも、
確か東欧だかソ連が絡んでいましたし、
『ロッキー2(3?)』の強敵もソ連出身でした。

悪VS正義

の二項対立が非常にやりやすかった時代なのです。

しかし、それはモダン=近代までの話し。
ポストモダン(近代が終わった時代)と言われる現代において、
「悪と正義の境界」は融解を始めます。

つまり何が正義で何が悪か分からない。
昨日まで正義の側にいたと思っていた人や組織に、
とてつもない巨悪が潜んでいても、
もう誰も驚かない。

昨日まで悪魔のように嫌われていた人や組織が、
実は組織的な情報操作によってそうされていたに過ぎず、
加害者だと思っていた人が被害者だった、
と聞かされても、もう誰も驚かない。

今や「白と黒」はなく、
「永遠にグラデーションの続くグレー(灰色)」だけがある。

そういう時代に私たちは生きています。

しかし監督のアントワーン・フークワは、
「『悪と正義』が相対化され脱構築された、
 ポストモダンの現代にも、
 それでも絶対的な悪、というものはやはりあるし、
 それでも絶対的な正義、というものもあるはずだ」
ということを言おうとしているのです。

これを現代に描ききるのは非常に難しいにもかかわらず。

これをやるときに、
「時代認識を80年代に巻き戻して」
それをやる、というのは不正解です。
それは単なる「アナクロニズム(時代錯誤)」ですから。

そうではなく、「限りなく続くグレーのグラデーション」
の中に、「きらめく白と黒」をつかまえて描ききらねばならない。

至難の業です。

これを実現するために、
設定に相当な仕掛けが施されています。

たとえば主人公(ロバート=デンゼル・ワシントン)が黒人であること。
民族多様性の時代に、もし主人公が白人なら、
この映画の持つ意味合いは「80年代的な正義」に後退してしまいます。

次に「悪」がロシアマフィアだが、
被害者もまたロシア人の少女であること。
「悪」を措定するのにロシアを使うのは、
『ダイ・ハード』の時代と変わっていないように見えますが、
主人公が命を賭けて救うのもまた、
ロシアから移住してきた不良少女のロシア人だ、
という設定にすることにより、
「アメリカ=正義、ロシア=悪」
という構図になるのを注意深く避けています。

さらに、ロバートは元CIAの特殊工作員という、
アメリカの「体制側」にいた人間なのですが、
ロバートがホームセンターで、
メンター的に何かとお世話をしている労働者は、
ヒスパニック系であり、
彼のお母さんが営むレストランから、
白人警察官が暴力を背景に不正にお金をむしり取り、
それをロバートが救う、
というシーンがあります。

このように、この映画では、
「悪と正義」は立場や出自や人種によって固定されておらず、
「相対化」さていれるのが分かります。
それでいてなおかつ、
「それでもやはり悪と正義はある」
というメッセージを伝えることに成功しているのです。

もう、「5億点(byライムスター宇多丸)」ですね。

さらにこの映画、「メンター、メンティー映画」としても優れている。
今の社会に失われた「人生のロールモデル(師匠)」を、
ロバートは職場やダイナーで、人々に示します。
『グラン・トリノ』や『空手キッド』など、
メンター・メンティー映画には良作が多いですが、
この映画はその意味においても秀逸です。



●第1位 スリービルボード

鑑賞した日:2018年11月1日
鑑賞した方法:アマゾンでストリーミング購入(400円)

監督:マーティン・マクドナー
主演:フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル
公開年・国:
リンク:
http://amzn.asia/d/0rMrj6D

▼▼▼コメント:

こちらも最近解説したばかりの映画です。
これもまた先ほどの『コクソン』と同じ意味において、
「キリスト教映画」なのです。

こちらのテーマは、
「赦し」です。
スリービルボード(3枚の看板)は、
「丘に立つ三本の十字架」の、
メタファーですから。

「赦し」のない世界に、
どうやって人は赦しをもたらすことができるか?
そういう問いに答える映画です。

詳しい解説は過去記事をご参照いただくとして、
この映画最大の魅力は、
「人は変わる」ということでしょうね。

誰一人として、
「キャラ」に固定されていない。

最初こういう人だと思っていたが、
実はこういう一面があった、
とか、
「この人はこうだ」と思っていたら、
「え、こんなこともするの?」
という一面があったりする。

それは単に人の多面性を現しているだけでなく、
「物語」が人を変えていく様子が分かるのです。
これこそが「現代の希望」だと私は思います。

養老孟司がこれまでの集大成として、
2011年に三冊の本を出しました。
私はKindleで全部買って読みました。
「養老孟司の大言論」シリーズ。
その三作目のタイトルがたしか、
「希望とは自分が変わること」
だったと思います。

希望は自分の外部にあるもの、
というのが世間の「認知された常識」です。
金持ちになる、
良い仕事につく、
世界一周旅行をする、
資産を築く、
などなど。

しかし、それは物事の一面に過ぎない。
希望とは必ずしもそうではない。
希望とは、「自分が変わる」ということなのだ、
というのを養老さんが言っていて、
「本当にそうだなぁ」と当時思ったし、
今も毎日実感しています。

希望がもし外部にあるのなら、
それは状況に依存します。
しかし希望が内部にあり、
それが「自分が変わること」そのものならば、
希望は状況に依存しません。

聖書に「いつまでも残るのは、
信仰、希望、愛」とありますが、
この希望は、内部にある希望のことです。


永久保存版・陣内が観た映画ベスト10(前半)2018年版

2019.04.24 Wednesday

+++vol.070 2018年12月18日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 2018年版・陣内が今年観た映画ベスト10(前編)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
Amazonプライムに入会してから、
月に平均すると10本ぐらいの映画を観るようになりました。
電車やバスや新幹線で、本を読む代わりに、
タブレットで映画を観るようになって、
飛躍的に映画を観る本数が増えました。
映画は小説と同じで「他人の靴を履いて人生を歩く」、
という「疑似体験」を与えてくれます。
本と同じくランキングはあまり好きじゃないので、
年に一度だけの特別企画です。
「今年読んだ本」と同じく、
前編で10位〜6位、後編で5位〜1位を紹介します。
皆様の映画選びのお役に立てれば幸いです。
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●第10位 ハクソー・リッジ

鑑賞した日:2018年1月24日
鑑賞した方法:TSUTAYA DISCUSでレンタルして鑑賞

監督:メル・ギブソン
主演:アンドリュー・ガーフィールド他
公開年・国:2017年(アメリカ)

リンク:
http://amzn.asia/9sVQtcr

▼▼▼コメント:

すばらしい映画でした。
少し泣きましたね。
メル・ギブソンは人間としては問題が多いですが、
映画監督としては天才だと思います。

「ハクソー・リッジ」というのは、
「弓のこ状に細く隆起した地形」というのが直訳で、
これは太平洋戦争の沖縄戦で、
「前田高地」という実際に戦場となった場所に、
米軍がつけた「作戦コードネーム」です。

、、、で、
この前田高地は米軍の沖縄攻略の中でも、
熾烈を究める場所でした。
なので、「ハクソー・リッジに加わる」
というのはほとんど「生きては帰って来られない」
ということを意味していたわけです。

米軍部隊はまず、舟から下り、砂浜に上陸します。
そそり立つのは15メートルもある高い崖です。
兵士たちはテレビ番組の「サスケ」の挑戦者のように、
ロープを伝ってこの崖を登るのですが、
崖の上の平地には日本軍が塹壕を掘り、
隠れて待ち構えています。

数十人単位で米兵は崖を登りますが、
死体と負傷兵が、崖から定期的に落ちてくる。
「野戦病院」は地獄です。
手や足を失った兵隊たちが、
「モルヒネ、モルヒネをくれ!」と叫んでいる。

この映画の主人公は、
そんな「ハクソー・リッジ」において、
衛生兵として活躍した、
実在したひとりの兵士です。
彼はアメリカの歴史に名を残しました。

なぜか?

彼は「絶対平和主義」をとる、
セブンスデー・アドベンティスト派の信徒でした。
ゆえに宗教的な理由による「良心的兵役拒否者」として、
武器を取る戦士としてではなく、
負傷した兵士を救う衛生兵として戦地に赴きました。

そしてかの地において、彼は良心的兵役拒否者として、
史上初めて勲章をもらった衛生兵となったのです。

憲法の定める人権により、
銃を握るわけにはいかない、という彼の主張は通るのですが、
法律と現実は違います。

現実には彼はえげつないぐらい虐められるのです。
仲間だけでなく上官も彼を臆病者とののしり、
わざとキツイ訓練をさせたり、
彼のものを壊したり、寝ている彼をリンチしたりします。
「銃を取れないお前は臆病者で卑怯者で、
 宗教かぶれの裏切り者だ!!」と。

しかし、戦地で彼の評判は逆転するのです。
最も臆病者とバカにされいじめられた男は、
人よりも100倍も勇敢でした。
攻撃する人間よりも、
攻撃しない人間の方が「強い」というのが、
この映画で「言葉による説明はいっさいなしに」伝わります。

彼は崖を登っては負傷した仲間を自分の身体に結びつけ、
ロープで崖を下り、野戦病院に運びます。
ロープを下りるときに手の皮は火傷でずるむけになり、
武器を持たない彼は毎回死の吐息を感じます。

彼は最終的に、75人のアメリカ兵と、
何人かの瀕死の日本兵(!)の命を救いました。
もうろうとする意識のなか、崖を登りながら彼は祈ります。
「神よ、もう少しだけ私に力を与えて下さい。
 あとひとり、あとひとりの命を救わせて下さい。」

この映画の「ずるいポイント」は、
映画のエンドロールで「本人登場パターン」だからです。
おじいちゃんになったデズモンド・ドス(本人)が、
当時のことを語ります。
そんなの泣いちゃうでしょ。



●第9位 ブルーバレンタイン

鑑賞した日:2018年11月1日
鑑賞した方法:アマゾンでストリーミング購入(300円)

監督:デレク・シアンフランス
主演:ライアン・ゴズリング、ミシェル・ウィリアムズ
公開年・国:2010年(アメリカ)
リンク:
http://amzn.asia/d/1KYGueC

▼▼▼コメント:

ずっと見たいなーと思っていた映画でした。
観る人の心をえぐる、「マゾヒズム映画」ですが、
激辛ラーメンを食べたり、
タイ古式マッサージに行ったりする感覚で、
「痛いもの」が好きな人は、
この映画、好きだと思います。

あるカップルの「栄枯盛衰」
(この使い方が正しいのか分かりませんが)を、
残酷なまでにリアルに見せる、
というこの手法は、
「ビフォア・サンセットシリーズ」にも似ています。

最初はイチャイチャするわけです。
二人とも天にも昇る気持ちなわけですよ。
それがだんだんと冷えていき、
すれ違い、その溝が決定的になっていく、、、
というのを「カットバック」で見せるこの手法は、
「悪趣味なまでに残酷」です。

イチャイチャ期→残酷な現在→イチャイチャ期→残酷な現在
という感じで構成されるので、
「この間に何があったんだ!?」と観客は思うわけですが、
ストーリーが進んでいくにつれ、
その「謎」がだんだん明らかになっていく。

別に失恋したわけではないのに、
「あたかも自分が失恋したかのような」ダメージを、
心に受けることが出来ます笑。
誰がこの宣伝文句で見るんだよ!っていうね笑。

でもねぇ。
良い映画なんだこれが。
もう「最低」です。
つまり、「映画としては最高」です。
観た後に語らずにいられない、
というのもこの映画(良い映画)の特徴ですね。



●第8位 マンチェスター・バイ・ザ・シー

鑑賞した日:2018年3月13日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:ケネス・ロナーガン
主演:ケイシー・アフレック、ミシェル・ウィリアムズ他
公開年・国:2016年(アメリカ)

リンク:
http://amzn.asia/75phpMV

▼▼▼コメント:

これも「マゾヒズム映画」です。
こちらも、「修復不能になった夫婦」が話しの軸です。
しかも「ブルーバレンタイン」と同じ、
ミシェル・ウィリアムズがキャスティングされています。

この人、実は、『ダークナイト』でジョーカーを演じ、
その演技に呑み込まれて命を落としたヒース・レジャーの奥さんです。
旦那さんにあんな形で死なれた人が、
『ブルーバレンタイン』や、
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』などの、
「痛い喪失を味わう役」を演じられるというのは、
もう精神的にどうなってるんだ?と思わずにいられません。

この映画のケイシー・アフレック(ベン・アフレックの弟)は、
大きな事件のあとに心が壊れ失われ、それが戻ってこず、
「心が壊れたままの男」を熱演しています。
作品が進んでいくと、「なぜ心が壊れたのか」が、
明かされていくのですが、
「まぁ、そりゃそうなるわな」と誰もが思う。
「そりゃ、そうなるよ。」
あまりにもキツイ。

彼は、心を失ったまま、
「十字架を負って」生きていきます。
それでも日常は残酷に続いていきます。
「そして、マンチェスターの海だけが今日も美しい。」
仏教哲学のように厳しい人生観がここにはあります。
去年見た「かぐや姫の物語」を思い出しました。

「最低」です。
つまり、映画として最高です。
(二回目)



●第7位 ゲット・アウト

鑑賞した日:2018年9月18日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典(群馬に向かうバスの中で)

監督:ジョーダン・ピール
主演:ダニエル・カルーヤ
公開年・国:2017年(アメリカ)
リンク:
http://amzn.asia/d/0BM0caC

▼▼▼コメント:

こちらは度肝を抜かれましたね。
この映画の「気持ち悪さ」は忘れられません。
ジャンルとして「コメディホラー」という分野の映画で、
恐ろしさのなかに、「そこはかとなりおかしさ」があります。
「恐怖」と「コメディ」を混ぜるという、
なんか「熱々ブラウニーに冷たいアイスクリーム」みたいな、
そんな組み合わせなわけですが、
これが意外に相性が良い。

ストーリーはというと、
ネタバレしたくないのであまり詳しく言いたくないのですが、
「現代のKKK」みたいな話しです。
つまり有色人種蔑視の白人の「密教」みたいなものがあり、
そこに「袋の鼠」のごとく、
黒人の主人公が引き入れられてしまい、
とんでもない恐怖を味わう、という話しです。

体裁はホラーなのですが、
これは現代のアメリカ社会への、
痛烈な「風刺」になっているのですよね。
つまりこの映画を観るときに、
「虚構という設定によって、
 自らの現実を直視せざるを得なくなる」
という。

今の日本だったらどうなんだろう?

たとえば在日朝鮮人の主人公が、
「純血日本人至高主義の排外主義者」の秘密結社の
アジトに迷い込んで、そこでめちゃくちゃ恐ろしい目にあう、
というような感じでしょうか。

まぁ、コンプライアンス的にまず出来ないでしょうけど。
右からも左からも集中放火を浴びそうなので。
アメリカの凄いところは、
確かに差別はあるし、
一部では日本よりもひどかったりするのですが、
それを「自己批判」する言説空間の自由さもまた担保されている、
というところでしょうね。
かの国の底力はそういうところにある気がします。
この映画が作られ、多くの人に見られる、
ということがつまりアメリカのすごさだということです。



●第6位 ファイト・クラブ

鑑賞した日:2018年9月18日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典(群馬に向かうバスで)

監督:デイビッド・フィンチャー
主演:ブラッド・ピット、エドワード・ノートン
公開年・国:1999年(アメリカ)

リンク:
http://amzn.asia/d/4QVq9tA

▼▼▼コメント:

この映画を見るのは二回目のはずなのですが、
一回目のとき(15年前ぐらい?)の記憶が、
微塵も残っていなくて驚きました。

俺の記憶力はどうなってるんだ?と。

なので、事実上初めて見たわけですが笑、
めちゃくちゃ面白かったです。

とにかくブラピ(タイラー)がかっこよすぎるんですよね。
「既存の価値観をぶちこわす」という意味で、
村上龍の小説や、「時計仕掛けのオレンジ」などにも連なる名作です。
社畜のホワイトカラー、ガソリンスタンドの店員、
レストランのウェイターなどの「労働者」が、
「暴力と破壊の秘密結社をつくる」というのが筋書きです。

これには「既視感」がある。

そうです。

五大湖周辺のラストベルトに住む、
「知識人蔑視のブルーカラー」の得票によって、
泡沫候補と目されていたドナルド・トランプ氏が大統領になった、
現代のアメリカです。
現代アメリカは「ファンタジーが現実になった世界」でして、
彼らは「タイラー」を、
本当に召喚してしまったのだ、という気がします。

もうこの際警告するのも面倒なので、
ぬるっとネタバレしちゃいますが笑、
タイラーは、主人公の「僕(エドワード・ノートン)」の、
「オルターエゴ」です。

つまり、真面目な主人公が抱えている、
「抑圧された破壊衝動」を具現化した、
彼の第二の人格なわけです。

現代のアメリカでいうと、
民主党的なポリティカルコレクトネスが「僕」で、
共和党的(いや、トランプ的といった方が良いでしょう)な、
「建前の奥にある抑圧された差別感情」
 つまり、
「黒人(オバマ)の次は女(ヒラリー)かよ!
 絶対嫌だ。
 彼(トランプ)は少なくとも白人で、男だからね。」
 という『生理的な理由』で、
 トランプに投票したサイレントマジョリティの本音」
の具現化が、「タイラー」なわけです。

つまり「僕=タイラー」は、
「アメリカ自身」でもあるわけです。
1999年といえばもう20年も前なのですが、
その時点でデヴィッド・フィンチャー(と原作者)は、
「アメリカが抱える国家的精神分裂状態」を、
予言していたのです。

すげー作品だと思いました。

2017年・陣内が見た映画ランキング【特別編】

2018.06.27 Wednesday

+++vol.046 2018年1月9日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■2 2017年版・陣内が今年観た映画ランキング(特別編)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
先週は、「2017年に読んだ本ベスト10」
からこぼれた書籍を5冊紹介しました。
今週は「2017年に観た映画ベスト10」からこぼれた、
魅力ある映画5本をご紹介します。
先週も書きましたが、
映画や書籍を「ランキング」するのは、
普段しません。点数も付けません。
なぜなら映画や書籍の魅力のベクトルは多種多様で、
ある裁定基準でランクを付けてしまうと、
そこからこぼれる魅力的なものが、
失われてしまうからです。
今回はそのような「ベスト10には入ってないけど、
こんな魅力ある映画もあるよ」というものをご紹介します。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

第10位:『潜水服は蝶の夢を見る』
第9位:『スポットライト 世紀のスクープ』
第8位:『ヒメアノール』
第7位:『あなた、その川を渡らないで』
第6位:『クレヨンしんちゃん モーレツ!大人帝国の逆襲』
第5位:『ドント・ブリーズ』
第4位:『アクト・オブ・キリング』
第3位:『レッドタートル』
第2位:『かぐや姫の物語』
第1位:『アウトレイジ』


▲▼▼やっと見た賞:『スワロウテイル』▼▼▼

監督:岩井俊二
主演:Chara、三上博史他
公開年・国:1996年(日本)
リンク:
http://amzn.asia/5G8Thut

▼解説:

この映画は私が大学に入った年に公開されていまして、
当時めちゃくちゃ流行っていました。
大学の私の友達の多くが見に行っていて、
主題曲のイェン・タウン・バンドの「あいのうた」の、
CDを買っている友人もいました。
なぜか私はこの映画を見逃しており、
(たぶん単純にカネがなかったのだと思いますが)
ずーっと「見たいなぁ」と思っていました。
「じゃあ、見ろよ笑」ということで、
20年越しにこの作品を鑑賞しました。

結果、もちろんちょっと古いな、
と思う箇所も散見されますが、
雰囲気があるしとても良い映画でした。
岩井俊二作品は「花とアリス」や「ラブレター」、
「リリィ・シュシュのすべて」を見てきましたが、
それらの作品に通底する「痛さ」とか「儚さ」みたいなものが、
表現されているのに加えて、
この作品は近未来SFという設定が面白い。

漫画の「AKIRA」とかの世界観にも近く、
「どこでもないアジアの街」としての、
「円都(イェン・タウン)」という設定がクール。
そこに暮らす社会の弱者達の歌う「あいのうた」は、
心に染み渡ります。
「あいのうた」もそうですが、
岩井俊二作品に関わりの深い、
ミスチルのプロデューサーでもある小林武史の音楽が、
やはりきれいです。

スピッツの「空も飛べるはず」のなかに、
「ゴミのきらめく世界がぼくたちを拒んでも」
という歌詞があります。

この映画の「イェン・タウン」は、
とても汚く不衛生で、
そしてとても綺麗です。
まさに「ゴミのきらめく世界」。
味わい深い作品でした。



▲▼▼長回しに驚いた賞:『大空港2013』▼▼▼

監督:三谷幸喜
主演:竹内結子
公開年・国:2013年(日本)
リンク:
http://amzn.asia/dJ5js3V

▼解説:

この映画はよく覚えています。
三谷幸喜監督作品と言うことで、
期待して見たのですが、あまり面白くないなぁ、
と最初は思いました。
「うーん、三谷幸喜も錆びたなぁ」と。

、、、その後、
Amazonのレビューを見て、
この映画が「ノーカット(カットなし)」で撮られたことを知り、
評価が一気に高くなりました。
「三谷幸喜、すごすぎる!」と。

じっさい私は、もう一回見返しましたから笑。

マジで「どうやって撮ったんだろう?」と思う。
100分あるこの映画、いわゆる「カット数」は、
10〜20ぐらいはあります。
つまりAという地点(航空会社のカウンター前)で5分の会話が撮られる。
そのあとカメラ(ゼロ人称の神の視点)は移動し、
エスカレーターを上り、Bという地点で止まる。
そこでドタバタが繰り広げられる。
さらにカメラはエレベーターに入り、
一階のCという地点では別の事件が巻き起こっており、、、
ということがずーっと、100分間繰り広げられるのです。

つまりカメラの「視野」から外れた瞬間、
最初の5分間にかかわった役者やセットや照明はそこで「解体」され、
次のシーンの用意をします。
、、、で次にA→B→E→Aという風に、
カメラが20分後にこの地点に帰ってきたシーンの用意がされている。
つまり裏方と本番が同時進行しているわけですが、
その間、「裏方」はぜったいに映り込んじゃ駄目だし、
「裏方の音」をマイクが拾ってはいけない。

100分間のほとんどの時間映っている主役の竹内結子は、
本当にすごいです。

この撮り方だと当然「撮り直し」ができませんから、
台詞を「噛んだ」場合、最初からやり直しになります。
じっさい100分間、だれも一度も噛まない、
というのは不可能ですから、
この映画では私が発見できる限り、
2回ぐらい竹内結子以外の役者が「甘噛み」しています。

それぐらいなら流されますが、
がっつり噛んだり台詞や立ち振る舞いを間違えた場合、
やはり「撮り直し」となるわけです。
自分がこの映画に関わったと想像したとき、
100分ある映画の95分の時点で何かひとつ台詞があったとしたら、
どれほど緊張するか考えてみてください。

もうね、これはね、おしっこチビリます。

95分の時点で台詞をとちるというのは、
「ドミノのギネス記録に挑む」みたいなテレビ番組が時々ありますが、
あれの完成直前に全部倒してしまうようなものです。
真っ青になります。

これをやり遂げた竹内結子はじめ、
役者さんや裏方さんたちに私は拍手を送りたい!

ストーリーも内容も、
ほとんど覚えていないけど(爆死)!



▲▼▼宗教と科学の弁証法で賞:『コンタクト』▼▼▼

監督:ロバート・ギメセス
主演:ジョディ・フォスター他
公開年・国:1997年(米国)
リンク:
http://amzn.asia/aw8t5ha

解説:

これも20年越しに再鑑賞した、
懐かしい映画です。
大学時代、家庭教師のバイトをしていたお家で、
「夜ご飯食べていく?」と私はよく誘っていただきました。
そこのお家のお父さんは夜にレンタルした映画を観るのが趣味で、
「ついでに映画も観てく?」と誘われ、
そのお宅でこの「コンタクト」を観ました。

当時は「科学とは何か?宗教とは何か?」
というテーマの、
ちょっと面白いSF作品ぐらいの印象しかありませんでしたが、
今回Amazonプライム特典に入っていたので再鑑賞して、
過去に観た何倍も楽しめました。

たぶんそれは私がこの20年で新たに得た知識の分だけ、
面白くなっているのだと思います。
映画を楽しむのも「教養」がモノを言うことがあります。

誰かが「この映画つまんない」というとき、
だまされてはいけません。
その場合二つの可能性がありますから。
一つ目は「本当につまんないとき」。
二つ目は、その人に、
「映画を読み解くリテラシー」が欠けているときです。

哲学や宗教や科学や歴史や政治や、、、
そういった教養を踏まえた時、
初めてフルスペックで楽しめる映画、
というものが世の中にはあります。

「コンタクト」を20年前に観た私は、
もしそのとき友人に「コンタクト、どうだった?」と訊かれたら、
「まぁまぁ普通かな」と答えていたと思います。
その大学生時代の私は先ほどの「二つ目」にあたります。
「リテラシーが不足しているため、
 その魅力を100%理解できず、
 それゆえ間違った評価を友人に与えてしまっている」
わけです。

今の私は20年前と比べますと、
多少なりとも知識は増えていますから、
「コンタクト、どうだった?」の質問への答えは変わります。
「めちゃくちゃ面白かった。
 いろんな解釈が可能だし、
 テーマは深かった。」
という回答になります。

この映画で最も面白かったのは、
己の信仰に引きこもる宗教保守派の原理主義者よりも、
未知のものへの畏怖とあこがれを抱き続ける科学者のほうが、
「敬虔」に見える、という逆説です。
「地球外生命体」という虚構を借りることで、
「人類にはまだ知らないことがある」という、
「超越性への畏怖や希求」を表現した、
「無神論に基づく宗教的な映画」という、
アクロバティックなことをこの映画は成し遂げています。



▲▼▼意欲的ドキュメンタリー賞:『365日のシンプルライフ』▼▼▼

監督:ペトリ・ルーッカイネン
主演:ペトリ・ルーッカイネン
公開年・国:フィンランド(2013年)
リンク:
http://amzn.asia/87ENN3N

▼解説:

この映画を観た時のことは、
鮮明に記憶しています。

結婚した2012年以来約5年住んだ練馬区の公団住宅から、
現在の西東京市の部屋に、私たち夫婦は引っ越しました。
もともと私も妻もモノをため込むほうではないので、
我が家はモノが多い方ではありません。
しかし、やはり5年間も生活しますと、
「オリ」のようにモノは増加し、
気づかぬうちに「増殖」し、
エントロピーを増大させているものです。

これは、だれでもそうですよね。

で、引っ越しを機に、モノを減らそうぜ、
ということを妻と私は話し合い、
「ミニマリスト」が書いた本や漫画を読んで啓発され、
本当に必要なモノ以外は引っ越し先に持っていかないようにしよう、
と心に決めて引っ越し作業を進めました。

この映画はたしかそんな、
「ミニマリスト本」や「シンプルライフ本」を、
Amazonで物色していたとき、
おせっかいな「Amazonコンシェルジュ」が私のアカウントに、
「お兄さん、こんなのもありまっせ。」的に、
勧めてきたのがこの映画でした。
私は基本的にAmazonのリコメンドには、
100回に1回ぐらいしか反応しませんが、
このオススメはちょっとグッときたのです。
「なになに、ちょっと面白そうじゃん」と。

早速私はTSUTAYAでDVDをレンタルし、
引っ越したばかりのまだ家具もあまり置かれていないリビングで、
妻と2人でこの映画を観ました。

結果的に、とても面白かったです。
何よりこの映画、撮っている本人(兼主役)は、
フィンランドの人です。
フィンランド映画なんて、
ムーミンのほかに見たことありません。
(ムーミンがフィンランド映画なのかどうかも知りませんし)

、、、聞き慣れない「フィンランド語のモノローグ」
からこの映画は始まります。
監督権主演の20代の青年の「ドキュメンタリー」です。
彼は失恋を機に、「俺は無駄なモノに囲まれすぎている」と思います。
そして、自分に本当に必要なモノだけで生きていきたい、
と思った彼は、あるアイディアを思いつきます。

それは、自分が持っている持ち物を、
洋服や鍋やパソコンや携帯も含めて、
いったん全部貸倉庫に入れる、というものです。
そして、
1.1日に1個だけ倉庫から持って来る
2.1年間、続ける
3.1年間、何も買わない
というルールで生活を始めるのです。
それを彼は自分で記録しそれを映画化したのです。
1日目は、空っぽの部屋から倉庫まで、
全裸で雪のヘルシンキを駆け抜けます。

ね?
面白そうでしょ?

1日目に彼が取りに行ったのはなんだと思いますか?

このクイズは皆さんの価値観を試しますね。
答えは「MacBook」ではありません。
「iPhone」でもない。

コートです。

とにかく寒かったんですね笑。
全裸でMacBookをいじっている姿も、
ちょっと観てみたかったですが笑。

コートはすごいぞ、
というのがこの映画を観ると分かります。
全裸人間にとって、
コートは道でおまわりさんに捕まらないための大切なアイテムですし、
夜には毛布になり、昼には座布団になります。

では二日目はなんだと思います?

答えは、まだMacBookではありません。

ブランケットです。
まだ寒かったんですね笑。

三日目は?
まだiPhoneではありません。

靴です。
足が痛かったのでしょう。

四日目が秀逸です。

iPhonやMacBookがさすがにこのあたりで登場すると思うでしょう?
その期待は見事に裏切られます。

正解は、、、


、、、


「帽子」

帽子!!!!!!!!

お前、正気か!?

とこのシーンでは思いましたね笑。
コイツもしかしてバカなのか?と。

、、、というトリッキーな選択もありつつ、
一週間、一ヶ月、三ヶ月、、、
と、彼の生活はだんだん豊かになって行きます。

この映画の最後に彼は、
自分の身体を張った1年間の実験を振り返って、
こんな教訓を残しています。

最初の100点は生活(生きる)ためのものだった。
次の100点は生活を楽しむためのものだった。
そして200点以降は、
「持てば持つほどエネルギーを消費していく」ことを実感した。
べつに持つことが悪いことじゃない。
でも、持つと言うことは、ただ持っているだけで、
それを所有し、使い、管理し、維持するのにエネルギーが要る。
その点をわきまえて、
モノを新しく持つということに責任を持って生きていきたい、
と彼は言うのです。

異常に説得力があります。

この映画の唯一にしての最大の不満を最後に述べます。
エンドロールで、彼が選んだ365点が全部フィンランド語で紹介されます。
その部分って、めちゃくちゃ大事だと私は思うのです。

ところが、ところがです。

それが字幕で日本語訳されたのは、
なんと10位まで。
11位以降は、フィンランド語読めないですから、
手がかりなし。
藪の中です。

英語なら把握できましたが、
フィンランド語ですから字幕頼りです。
なんで10位までで「やめちゃった」のか。
そこが一番知りたかったことだし、
この作品の「肝」なのに!
日本の翻訳チームの「分かってなさ」には呆れました。
仕事できない奴らが翻訳したんだなぁ、、、と。



▲▼▼脚本が秀逸賞:『第9地区』▼▼▼

監督: ニール・ブロンカンプ
主演: シャールト・コプリー他
公開年・国: 2010年(アメリカ)
リンク:
http://amzn.asia/aG92Blo

▼解説:

この映画はかなり印象に焼き付いています。
良くも悪くも忘れることができない映画でした。
ちなみにこの映画、「ロード・オブ・ザ・リング」の、
ピーター・ジャクソンが製作に関わっています。

どういう映画か説明するのが難しいのですが、
まずはこの映画「偽ドキュメンタリー形式」になっています。
映画という虚構のなかで、
ドキュメンタリーというもう一つの虚構を見せる、
「劇中劇」の形を取ります。

それにはちゃんと理由があります。
ドキュメンタリーに登場する「語り手」たちは、
「まさか彼があんなことになるとはねぇ、、」
「彼はあんなことをするべきじゃなかったんだわ、、、」
「思い出すだけでおぞましい!」
などと、「彼」について語ります。

その「彼」とはテレビ番組のリポーターで、
前半彼は喜々として仕事をしています。
舞台は南アフリカ、彼の仕事は、
「宇宙人を差別する番組を作ること」です。

なぜ南アフリカに宇宙人がいるかといいますと、
20年前に「難破」した宇宙船が南アフリカ上空に留まり、
数万人の(見た目が異常に気色悪い)宇宙人が、
行き場所を失います。

国内でいろんな議論が交わされた結果、
南アフリカは国際的な世論に後押しされる形で、
「難民」として気色悪い宇宙人達を受け入れるのです。
20年間で宇宙人達は「大増殖」し、
ヨハネスブルグ近郊の宇宙人たちの居住区「第9地区」の人口は、
なんと200万人を超えます。
その第9地区は今や巨大なスラムになっていて、
薬物、売春などの様々な犯罪および地下ビジネス、
さらには伝染病の巣窟になっています。

地球人は彼らをなんとかして「排除」したいのですが、
「人権団体」の反発があるため過激なことはできません。
最初に語られていた「彼」は、
宇宙人をバカにし差別するスタンスのテレビ番組のレポーターとして、
「第9地区」に立ち入ります。

その先は、どうかご自身の目で確かめてください。

この映画のすごいのは、
「宇宙人」という虚構を借りることで、
さらには後半に「ある仕掛け」を用いることで、
現実世界の「移民・難民」の問題、
そして「差別意識」の問題について、
まんまと考えさせられ、
鑑賞したほとんどの人は、
「無自覚ゆえに罪が重い自らの加害性」について、
まんまと突きつけられることです。
優れた脚本だと思います。


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永久保存版・2017年に陣内が観た映画ベスト10(5位〜1位)

2018.06.13 Wednesday

+++vol.044 2017年12月26日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 2017年版・陣内が今年観た映画ベスト10(後編)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
Amazonプライムに入会してから、
月に平均すると10本ぐらいの映画を観るようになりました。
電車やバスや新幹線で、本を読む代わりに、
タブレットで映画を観るようになって、
飛躍的に映画を観る本数が増えたためです。
映画は小説と同じで「他人の靴を履いて人生を歩く」、
という「疑似体験」を与えてくれます。
本と同じくランキングはあまり好きじゃないので、
年に一度だけの特別企画です。
「今年読んだ本」と同じく、
前編で10位〜6位、後編で5位〜1位を紹介します。
皆様の映画選びのお役に立てれば幸いです。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


▲▼▼第5位:『ドント・ブリーズ』▼▼▼

監督:フェデ・アルバレス
主演:ジェーン・レヴィ
公開年・国:2016年(アメリカ)

リンク: http://amzn.asia/9gUzPGH

▼解説:

この映画は、設定の時点で勝利しています。
3人の若者が「とある家」に泥棒に入ります。
その家には退役軍人のおじいさんが住んでいて、
彼は子どもを交通事故で失っており、
その賠償金の数千万円を手にしていて、
さらに彼は盲目だ、
という情報を若者たちはハッキングで手にしていたからです。
「あの家はチョロい。
 さっさとカネを盗んで海外にでもしけようぜ。
 カリブ海とかで豪勇できるぜ、
 ヒャッホーイ!」
というテンションで。

しかし実際に夜中にこの家に泥棒に入ると、
若者たちはおじいちゃんに逆に追い詰められていきます。
おじいちゃんは「見えて」いるからです。
盲目の人に夜も昼も関係ない。
おじいちゃんは松本人志のように筋肉を鍛え上げ、
家全体は彼の脳内に寸分違わず記憶されており、
張り巡らされたピアノ線のように、
彼の「センサー」がいたるところに仕掛けられています。
そしておじいちゃんは若者盗賊団など比較にならない、
「ホンモノ」です。人を殺すことなどなんとも思っていない。

おまけに盲目の人は聴覚が代償的に発達しますから、
おじいちゃんは、めちゃくちゃ耳が良い。
「一挙に追われる側になった若者たち」は、
暗い家のなか「息をすること」すらできません。
おじいちゃんに「呼吸音」を聞かれたらオノで叩き殺されますから。
「探す側が探される側に」「襲う側が襲われる側に」
「見る側が見られる側に」という「主格の逆転」は、
映画における愉悦のひとつです。

この仕掛けを考えついた「ワンアイディア」で、
この映画はもう面白いことが運命付けられているのです。

時間も90分と丁度よく、
本当に見ているほうも、息を殺してしまいます。
90分が終わると、鑑賞者は大きく深呼吸します。
見ている間に自然と息を止めてしまいますから。

ゾンビやゴーストという「チート設定」を持ち出さずとも、
「視覚障害」というたったひとつの仕掛けによって、
息を殺す恐怖を味わえるということを示した
歴史に残る名作だと思います。



▲▼▼第4位:『アクト・オブ・キリング』▼▼▼

監督:ジョシュア・オッペンハイマー
主演:ドキュメンタリー映画
公開年・国:2012年(英国・デンマーク・ノルウェー)

リンク:http://amzn.asia/7zMLQSa

▼解説:

こちらもごく最近解説しましたので、
そちらを読んでください、と言いたいのですが、
初めての人のために一応説明します。

とにかくこの映画は衝撃的でした。
一生忘れられない映画になりました。
この世に「地獄への入り口」というものがあるのだ、
というのがラスト5分に分かります。

背景を説明しますと、
1962年、インドネシアでスカルノ政権時代に、
軍事クーデターが起きます。
「9月30日事件」と呼ばれています。
それによって政権を取った軍事政権は、
国内で大虐殺を行いました。
日本のテレビで活躍するデヴィ・スカルノ夫人は、
このとき夜中にパジャマのまま窓から逃げた、
という思い出をラジオで語っていました。

スハルト軍事政権の虐殺の理由は、
「スカルノ派や政敵の排除」が本当の目的ですが、
彼らは「共産主義者の排除」という「大義名分」を掲げました。
この大虐殺による死者は100万人とも200万人とも言われ、
ホロコーストやルワンダやカンボジアに並び、
20世紀最大の虐殺事件に数えられています。

なぜ日本を含む西側諸国でこの事実が、
真正面から伝えられて来なかったかというと、
軍事政権を支援してスカルノを追い出した当人が、
日本やアメリカだからです。
日本はこの虐殺に「間接的に関与」しています。

話を戻しますと、
軍事政権が行った組織的な虐殺は、
政権が直接的に手を下したのではなく、
メディアと地元のごろつきを利用しました。
まず地元のごろつきをスハルト政権の「青年支部」という形で雇います。
そして地元ローカル紙に、「スカルノ支持の自治体は共産主義者だ」
という記事を書かせます。
この記事を根拠に、「青年支部」は村をまるごと焼き払いました。
幼女たちはレイプされ、男たちは針金で首を絞められ、
最後に村ごと火を付けられて殲滅です。

この殲滅に関わった当時の「青年支部」の団員たちは、
今も政府の庇護のもと「自分たちは建国の英雄だ」という認識のもとに、
特権的に裕福な生活を享受しています。

オッペンハイマー監督は彼らに、
「1962年にあなたたちがした行為を、
 映画に撮ってみないか?」ともちかけます。
彼らは自分たちは英雄だと思っていますから、
自分たちの武勇伝を喜々として映画に撮り始めます。
100人以上を殺した今はおじさんになっている「青年団員」たちは、
ちょうど日本の団塊世代が全共闘のときのことを武勇伝として語るように、
当時の様子を語り始め、再現しはじめます。

「首にこうやって針金を巻き付けて、
 それでこっちに木の棒をくくりつけ、
 あっちの端を柱に巻き付けるるんだ。
 思いっきり引っ張ってやると、だいたい数分で死んだかなぁ。
 何十人もいるときは大変だったよ。
 手がしびれちゃってさぁ。ハッハッハ」
みたいな感じで。

ところが映画撮影の後半になると、
ある一人のおじさん(Aさんとします)の様子が、
あきらかに変わってくるのです。
なんの屈託もなかったAさんは途中から、
「あれ、でも死んだあの男にも家族がいたんだよな。
 、、、あのとき痛かっただろうな、、、。」
といって涙ぐみ始める。

だんだんAさんは、悪夢にうなされるようになります。
そして最後5分、、、というクライマックスが訪れます。
「自分たちは英雄だ」という虚構を強く信じることで、
何百人もの命を奪った罪悪感を何十年も打ち消し、
無意識下に追いやってきたのが、
映画撮影によってよみがえってきたのです。

もしAさんが「罪責感」を引き受ければ、
残りの人生は「地獄」です。
自分は何百人という罪なき人の命を奪った、
という十字架を生涯背負うということですから。
しかし引き受けなければ、
それもすでに「地獄の住人」であることに、
Aさんは気づいてしまったのです。
行くも地獄、戻るも地獄、、、、
「鬼として地獄を生きるか、
 人として地獄を味わうか」の二者択一を
Aさんは突きつけられます。
Aさんは「人間に戻った」のかどうか。
それはどうかご自分の目で確かめてください。
とにかく、度肝を抜かれるすごい映画でした。



▲▼▼第3位:『レッドタートル』▼▼▼

監督:マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
主演:なし(サイレント映画のため)
公開年・国:2016年(フランス、日本)

リンク: http://amzn.asia/eQYu0Id

▼解説:

こちらはジブリ作品初の外国人監督による異色作です。
「漂流し、とある島に流れ着いた男の一生」を描く「寓話」です。
この映画のすごいのは、台詞がいっさいないことです。
映画の新しい可能性を見た気がしました。

映画で一番「しらける」のは、
説明的に過ぎるシーンを見せられたときです。
状況や隠喩で説明できるところを、
わざわざ「台詞」で説明されると一気にしらけるのです。
「この状況は絶体絶命だぁぁ」という主人公に台詞で言わせちゃう、
というようなクソ映画ですね。

「絶体絶命の状況」というのは、
状況で説明して欲しいから映画を観ているのであって、
台詞で説明してもらいたくないのです。
いや、そんなに馬鹿じゃないですよ、客は、と思うわけです。
そもそも「これは絶体絶命だぁぁ」とは、
本当に絶体絶命の人は言わないですから笑。
「絶対絶命だぁぁ」って言ってるそいつはたぶん、
だいぶ余裕ありますから笑。
本当の絶体絶命は、
「ドント・ブリーズ」の主人公たちのように、
息をするのを忘れるのです。

、、、話を戻しますと、
この映画には台詞がなく、
従って「説明的なところ」が一切ありません。
しかし、鳥の声、虫の鳴き声、風のそよぐ音、波の音、
主人公の呼吸音、雨の音、、、
そういったものによって「情緒と状況」を説明します。
人間が話さなくても「自然は音に満ちている」のです。
「星の瞬く音」すらも聞こえそうなこの静かな映画を観ていると、
「生きるとは何か。
 自然と人間の関係とは。
 人はなぜ他者を求めるのか。」
そういったことについて、たくさん考えます。
「自分と自分の有意義な対話」がはかどるのです。

机に座って腕を組んで何かを考えるより、
海岸線の気持ちの良い道をドライブしながら考えた方が、
多くの場合、内的対話は有意義になります。
この映画はそんな「気持ち良い自然の中のドライブ」のような効果があります。
「本当は1週間南の島でゆっくりしたいけど、
 そんな暇もなければお金もない!」
という人が日本には1億人ぐらいいるかと思いますが、
もしあなたがそんな一人なら、とりあえず平日の夜に、
TSUTAYAでレッドタートルを借りて、
スマホの電源を切り、部屋を暗くして、
トイレを済ませ、お気に入りのドリンクを準備して、
風呂を済ませ寝る準備万端にして、そして鑑賞しましょう。
「南の島の一週間」の断片を手にすることができるはずです。



▲▼▼第2位:『かぐや姫の物語』▼▼▼

監督:高畑勲(スタジオジブリ)
主演:朝倉あき、地井武男他
公開年・国:2013年(日本)
リンク:http://amzn.asia/8nfuvnM

▼解説:

こちらもジブリです。
年間第2位と第3位がジブリ作品となりました。
やはりジブリの底力はすごいですね。
両方とも宮崎駿一族は関わっていないというのがまた良いじゃないですか。
ジブリって、こういう多様性をもった方向に進んでいけば、
本当に「東洋のPixer」になれるんじゃないかな。

高畑勲は「おもひでぽろぽろ」とか「平成狸合戦ぽんぽこ」
「火垂るの墓」を指揮してきました。
ジブリきっての職人肌で、熱狂的なファンを抱えています。
彼が「竹取物語という日本人なら誰でも知っている物語を、
現代的に再解釈したい」という野心的な試みをしたのが本作。
面白くないわけがない。

この映画を観ると「仏教とはどういう宗教か」がよく理解できます。
人間の「生の輝き」は「業」と表裏一体です。
仏教の救済は「業」を捨てさることですから、
それはつまり「生の輝き」をも捨てることを意味します。
「涅槃」とはだから、
私たちが考える「バラ色の天国」ではなく、
むしろ「灰色の無」です。
「救われたい」と思う心すらない世界。
かぐや姫は月に帰りますが、それは、「死」の隠喩であり、
「死」の向こう側には「業」もないかわりに、
「生の輝き」もありません。
(日本で発展した仏教でなく釈迦の本来の本当の)仏教というのは、
「救済の拒絶」なのだということがよく分かります。
だからこの作品には「救い」はありません。

高畑勲監督は、
「作品に救いがないからせめて主題歌で救われて欲しい」
と後に語っているそうですが笑、
確かにエンディングロールで流れる主題歌は、「泣かせ」ます。
「確かにそうだよ。
 俺たちは業にまみれてるよ。
 生きるとは業の積み重ねだよ。
 涅槃は『死』であり『無』だよ。
 でも、でもやっぱり『生を肯定』したいじゃん!」
という鑑賞者の心の叫びにそっと寄り添うのです。
激辛ラーメンを食べた後のアイスクリームのように、、。
歌詞をここに転載するのはJASRACの著作権にバッティングするので、
リンクを掲載します(それはいいのか? まぁいいや)。

▼参考動画:「いのちの記憶」
リンク:https://youtu.be/dYTyQiX6S8U

▼参考リンク:「いのちの記憶」歌詞
https://www.uta-net.com/song/150015/



▲▼▼第1位:『アウトレイジ』▼▼▼

監督:北野武
主演:三浦友和、北村総一朗、加瀬亮、ビートたけし、椎名桔平他
公開年・国:2010年
リンク:http://amzn.asia/dg82X6h

▼解説:

年間1位はなんと、「アウトレイジ」。
意外なようでいて、これはもう決めていました。
アウトレイジは文句なしに面白かった!
北野武監督の、映画作家としての卓越性が遺憾なく発揮されています。
「なんだと、この野郎、馬鹿野郎!!」
「テメェなめてんのかこの野郎!」
という巻き舌と巻き舌の応酬は中毒性があります。

私のなかの北野監督作品ランキングは、
いままで長いこと、
1位:「キッズリターン」
2位:「あの夏、いちばん静かな海」
3位:「ソナチネ」
4位:「HANA-BI」
という感じでしたが、
一気に「アウトレイジ」が一位になりましたね。

友人に聞いたところによると、
北野監督は、古典的名作、深作監督の「仁義なき戦い」を、
「広島弁ではなく東京弁で」やるということを意識したそうです。
「ワレなめとんのかコラァ!!」
「なんじゃワレぶち殺すぞグォラァ!」
という広島弁の応酬には中毒性がありますが、
これをたけしは東京弁でやってみたかった。
じっさいこれが「ハマる」わけです。
ラップを聴いていると耳が心地よいですが、
それと同じような効果があります笑。
どんどんテンションが上がっていく。

あと、もうひとつ同じ友人に聞いたのは、
今や「暴力団排除条例」によって、
「アウトレイジ」に描かれているような暴力は存在せず、
これは完全なるフィクションだそうです。
今の時代に起こりえない。
だからこそ、面白いわけです。
そこにカタルシスが生まれる。
「劇場」のなかではそれは許されるのですから。

私は「社会にガス抜きは必要論者」です。
社会の中の特殊な空間でこういった「暴力」が楽しめる社会のほうが、
本当の悪質な暴力は減ると考えている。
アメリカで禁酒法が施行されている期間、
密造酒は増え、アル中患者はかえって増えた理由と同じですし、
日本の賭博禁止条例が逆に、
「グレーゾーンのパチンコの横行と莫大な利権と徴税機会の損失」
というゆがみをもたらしているのと同じです。
賭博は合法化し、その分きっちり税金を取るべきだと私は考えます。

人間の「業」を抑圧し統制し禁止し否定すると、
ゆがんだ形でその「業」は暴発します。
「禁止すれば社会はクリーンになるはずだ」
という「のっぺりとした性善説」では、
逆に地下での犯罪行為や政治家の利権を増やすだけです。

立川談志の名言に「落語は業の肯定だ」
というのがありますが、
私は日本社会が「業」を否定して、
精神的に滅菌された無菌社会になればなるほど、
抑圧された暴力は思わぬところで暴発し「大事故」につながる、
と直感的に思っています。
あまり同意してもらえることは多くないですが笑。



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永久保存版・2017年に陣内が観た映画ベスト10(10位〜6位)

2018.06.06 Wednesday

+++vol.043 2017年12月19日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 2017年版・陣内が今年観た映画ベスト10(前編)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
Amazonプライムに入会してから、
月に平均すると10本ぐらいの映画を観るようになりました。
電車やバスや新幹線で、本を読む代わりに、
タブレットで映画を観るようになって、
飛躍的に映画を観る本数が増えました。
映画は小説と同じで「他人の靴を履いて人生を歩く」、
という「疑似体験」を与えてくれます。
本と同じくランキングはあまり好きじゃないので、
年に一度だけの特別企画です。
「今年読んだ本」と同じく、
前編で10位〜6位、後編で5位〜1位を紹介します。
皆様の映画選びのお役に立てれば幸いです。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

▲▼▼10位 潜水服は蝶の夢を見る▼▼▼

監督:ジュリアン・シュナーベル
主演:マチュー・アマルリック
公開年・国:2007年(フランス)
リンク: http://amzn.asia/3ubZgqT

実話に基づく物語です。
パリの有名雑誌「ELLE」編集賞、
ジャン・ドミニク・ボビーは42歳で脳溢血になり、
「閉じ込め症候群(ロックド・イン・シンドローム)」に陥ります。
動かせるのは左目だけで、他のすべての随意筋が動かない。
つまり「自分の身体の中に閉じ込められた」状態です。
彼は言語療法士の助力で「まばたき」で文章を構成できるようになり、
著作を出版しました。
この映画のエンドロールで
「出版後10日後に彼は亡くなった」と明かされます。

ぼやける視界などを使って涙を表現したり、
夢と現実が混沌とする意識、瞬きによるコミュニケーションなど
「障害当事者の主観」をバーチャルリアリティ的に、
体験できるようなつくりになっていて、これは他にない作品だと思います。
「妊婦を疑似体験するためのお腹の重り」や、
「高齢者を疑似体験するための全身の重りとぼやける眼鏡」という、
福祉業界で働く人々への「教材」がありますが、
この映画を一本観ることは、
「ALSや筋ジストロフィー症を疑似体験する」という、
バーチャルリアリティ体験という意味で
非常に優れた教材としても有用です。
介助者の視点も含まれますから、
これを観た後に様々な立場からロールプレイ的なディスカッションをすれば、
「障害を抱えると言うことがどういうことか」
「障害を抱えた人を支えるとはどういうことか」という理解が深まります。
そのような映像資料としても本作品は優れています。

また、フランス人ならではの、
悲観のなかにも人生を肯定し楽しもうとする魂がそこにはあり、
勇気を与える作品になっています。

「潜水服」というのはボビー氏が「自らの体の中に閉じ込められる」状態を、
比喩的に表現したものであり、
「蝶」とは自由に羽ばたける自分の姿を現します。
また「蝶」はギリシャ語で「プシケ」といいます。
「プシケ」というのは「心・魂」という意味です。
潜水服の中に閉じ込められたボビー氏の魂(蝶)は、
まばたきで「本を書く」ことによって羽ばたき、
それは映画化され世界中の人々の心を飛び続けています。
おすすめの映画です。



▲▼▼9位 スポットライト 世紀のスクープ▼▼▼

監督:トーマス・マッカーシー
主演:マーク・ラファロ他
公開年・国:2015年(アメリカ)
リンク: http://amzn.asia/4ZePpLE

こちらも実話に基づく作品です。
ボストン・グローブ紙が同市のカトリックの司祭による幼児性的虐待と、
その構造的隠蔽体質を暴いたスクープ報道の物語です。
5人からなるスポットライト部署のチームワークが熱く、
そのチームワークとテンポの良さは踊る大捜査線を彷彿とさせました。
ご存じ2013年の「コクラーベ」で選ばれた現在ローマ法王に選ばれた、
フランシスコは歴史上初めて南米系の背景を持つ人物です。
カトリック教会の「性と金銭の腐敗」は、
「報道のタブー」に守られていましたが、
ボストン・グローブ社という、弱小ローカル紙のスクープが、
その趨勢を変え、司教による幼児の性的虐待の被害が、
全世界に知れ渡ることになりました。
フランシスコ氏が選ばれた年に私は、
そのフィーバーに沸くブラジルに行きましたが、
南米系の彼が選ばれた理由は、
「カトリックについた腐敗のイメージを払拭したい」
という動機が働いたと教えられました。
もしかしたらこの報道が、
ローマ教会のカトリックの歴史的転回の、
遠因になっているのではないかと推察されます。
、、、いろいろ書きましたが、
とにかく、映画として抜群に面白いです。
おすすめです。



▲▼▼8位 ヒメアノール▼▼▼

監督:吉田恵輔(原作:古谷実)
主演:森田剛、濱田岳他
公開年・国:2016年(日本)
リンク: http://amzn.asia/3ubZgqT

こちらは異色の作品です。
「行け!稲中卓球部」の作者・古谷実の原作による、
サイコスリラーです。「グロ・残酷描写が苦手」な人は、
是非、鑑賞しないことをお勧めします。
この映画はなんと言っても森田剛の演技ですね。
これに尽きると言っても良い。
森田剛のシリアルキラーの演技には最高に説得力がありました。。
中盤のシークエンスの暴力、暴力、そして暴力、、、
のシーンは悪趣味にさえ見えますが、
それは森田剛が演じる殺人鬼の「ある生い立ち」と関係していることを、
濱田岳演じる小学生時代からの友人がだんだん、
「思い出して」いくのです。
それを彼が「忘れていた」ところにこそ殺人鬼の、
「底知れぬ孤独とさみしさ」があり、
人の魂の深淵をのぞき込むような背筋が凍るような寒さと、
そしてそのなかにある「それでも消えないあったかい記憶」のコントラストが、
「新感覚の涙」を誘います。
小学生の頃一緒にファミコンをした、
「なんかよく分からないやつ」って誰にでもいると思うのです。
「あいつって、いったい何だったんだろうな?」と。
中学生になりそいつはいじめられ、やがて疎遠になり、
そして自分には「つきあうべきグループ」があるので、
2年、3年になると会話した記憶すらない。
「あいつ、いたっけ?」
でも「あいつ」のほうはあなたと小学生のとき、
お母さんの麦茶を一緒に飲んだことを鮮明に記憶しており、
「●●君、あのとき一緒に遊んだよね。」と覚えていたりするが、
なぜか数年間の「疎遠期間」ゆえに居心地が悪い。
、、、そんな「彼」から、大人になったある日、連絡が来る。
そして「彼」は「サイコな殺人者」になっている、、、
という、「どこにもないけれど、どこにでもある話」として、
この作品の語り口は絶妙です。
ただのバイオレンス映画ではありません。
ラストシーンは号泣する人も多いかも。



▲▼▼7位 あなた、その川を渡らないで▼▼▼

監督:チン・モヨン
主演:チョ・ビョンマン他
公開年・国:2016年(韓国)
リンク: http://amzn.asia/7atgrYx

これはですね。
実話、というより、ドキュメンタリーです。
「映画」というジャンルでくくって良いのかすら分からない。
主人公(本人)は、結婚76年目の夫婦。
89歳の妻と98歳の夫が、韓国の農村部で生活する、
その四季を、カメラがひたすらに追いかけます。
この作品におけるカメラは「その存在を消す」ことに徹しており、
あたかも自分が透明人間になって誰かの生活を1年間のぞき見しているような、
そんな感じのタッチです。
そこには何のメッセージもありません。
朝が来て、昼が来て、夕が来て、そして日が落ちます。
春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来て、また春が来ます。
その間老夫婦はくだらない冗談を言い合い、
ときどき気まずい空気がながれ、
ちょっと言い合いをしてみたり、
親戚について話したりします。
何かを食べたり、花を摘んだり、
空を観てくしゃみをしたりします。
、、、そのすべてが、「ある出来事」を境に、
「人生賛歌」「純愛の物語」に変わります。
「ある出来事」とはそう、「98歳の夫の死」です。

ミスチルがかつて、
「愛はきっと奪うでも与えるでもなくて
 気がつけばそこにあるもの」と歌いましたが、
「幸せ」というのは追いかけたり奪ったり与えたりするものでなく、
「事後的にそこにあったと気づく」という形でしか味わえないのかもしれない。
だからこそ、今を一生懸命に生きよう、という、
「生の肯定」につながる作品です。
おすすめです。



▲▼▼6位 クレヨンしんちゃん モーレツ!オトナ帝国の逆襲▼▼▼

監督:原恵一
主演:矢島晶子(しんちゃん)他
公開年・国:2001年(日本)
リンク:http://amzn.asia/cHxrIq4

この映画は、「しんちゃん映画を超えている」という評判を、
私がよく参照する映画評論家が何人か語っていて興味を持ちました。
じっさいこの映画はすごいです。
「子どもだましでは子どもは騙せない」という好例です。
この映画は「完全に大人に向けて作ったものを、
子どもが観ても楽しめるようにカスタマイズする」
という方法で作られているのは間違いありません。
私が何より驚いたのは、この映画の公開が、
「ALWAYS3丁目の夕日」よりも前だということです。
「昭和を懐かしむという懐古趣味(ノスタルジー)によって、 
大人たちが骨抜きにされ、子どもたちが置き去りにされる」
というプロットは、完全に「ALWAYS3丁目批判」になっています。
昭和の護送船団方式とか、終身雇用制とか、
(昭和的な)地域社会のつながりとか、
当時残っていた体罰や暴力とか体育会系とか年功序列とか、
そういった「昭和という過去」を美化し、
あのころの栄光を取り戻す、という文法で語る、
「偽物の希望」にだまされるな!
というのがこの映画の熱いメッセージです。
「ニッポンを取り戻す!!」と言って第二次安倍内閣は発足しましたが、
「取り戻す」というのは「過去にこそあるべき姿があったのだ」
という前提に基づきますから、この映画は遠回しに、
「安倍自民党的なるもの」への批判にもなっています。

そうではない。
「希望や理想」は過去にあるんじゃない。

「私たちが目指すべき理想は過去にあるのではない。
 未来とは怖くても自分たちで作っていくものなんだ。
 希望というのは振り返って探すものではなく、
 何もない未来に、不安を抱きながらも、
 それでも自らの手で描いていくものなんだ!」
という確固たる意思が必要です。
「東京オリンピック2020」を、
私が一瞬たりとも支持していない理由はそこにあります。
あそこに漂うのは「1964の古き良き栄光の昭和よ、もう一度!」という、
土木利権と懐古趣味と脂ぎった加齢臭と森喜朗の個人的野心にまみれた、
「オトナ帝国の臭い」がただよっていますから。
東京都民としては「良い迷惑だ」としか思いません。
あんまり声に出して言わないだけで、
都庁職員の大半も私と同じ意見である自信があります。
(反論は受け付けます)

、、、来週はベスト5の発表です。
お楽しみに!



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