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陣内が先週読んだ本 2018年1月第五週 『アメリカ福音派の歴史』青木保憲 他6冊

2018.07.24 Tuesday

+++vol.050 2018年2月6日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2018年 1月第五週 1月28日〜2月3日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●歩き続ければ、大丈夫

読了した日:2018年1月28日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:佐藤芳之
出版年:2014年
出版社:ダイヤモンド社

リンク:
http://amzn.asia/hzrnVXp


▼140文字ブリーフィング:

サブタイトルは、
「アフリカで25万人の生活を変えた日本人起業家からの手紙」です。
1939年生まれの著者は、30代でアフリカにわたり、
ケニアでナッツビジネスを創業して成功に導いた、
「社会起業家」の「はしり」みたいな人です。
彼はスタートアップしていないと気が済まない人のようで、
ケニアのビジネスは現地に譲り、
現在はルワンダで微生物ビジネスを立ち上げています。
「とにかく行動してみなきゃ上手く行くかどうかも分からない。」
「たくさん失敗して、その中のいくつかがたまたま上手く行く。
 やってもないのに失敗したときのことを考えるのは愚の骨頂。」
成功した創業者はだいたい同じ事を言います。
本田宗一郎も言っています。
「失敗した奴は偉い。
何もしない、というのが本当の失敗だ。」
彼は映画「フィールド・オブ・ドリームズ」の、
「作れば、彼らはやってくる」という「啓示」を引用していますが、
この原型は「ノアの箱舟」だと読みながら気づいたのは、
私にとって「アハ体験」でした。

→P77 
《新規プロジェクトを始める時、私は良く社員にこう言います。
「If you build it, they will come.(つくれば、人はやってくる。)」
 新しい農園に木を植える時も、新しい工場を建てるときも、
私はみんなにこう声をかけるようにしています。
1989年公開の映画「フィールド・オブ・ドリームス」
によって広く知られるようになった言葉で、
この言葉を耳にした主人公は周囲に馬鹿にされても構わず、
トウモロコシ畑を切り開き野球場を作り始めます。
要は、つべこべ言わずに、さっさとつくってしまいなさいということ。》

現在の世界は「複雑系の世界」であり、
古典力学よりも量子力学に近いです。
なので、「成功へのアルゴリズム」や、
「成功するための方程式」を定式化することは不能です。
ひとつだけ「秘策」があるとしたら、
「とにかくいろいろやってみる」ことです。
その人が成功するとは限りませんが、
成功している人は例外なく、
「とにかくいろいろやってみて」います。
したり顔で他者の挑戦や失敗を批評する人や、
失敗のリスクばかり恐れる事なかれ主義の人が成功することは、
永遠にありません。
(900文字)



●そのノブはひとりの扉

読了した日:2018年1月28日
読んだ方法:図書館で借りる。

著者:劇団ひとり
出版年:2012年
出版社:文藝春秋

リンク:
http://amzn.asia/8JYAkLr

▼140文字ブリーフィング:

私と同じ年生まれの芸人、劇団ひとりの自伝です。
帯に「こんに泣けない自伝があったとは」とあります。
めちゃ面白かったです。
劇団ひとりの文才に舌を巻きます。
自分を相対化し自虐できる高度な知性に感服しました。
「文章で人をうならせる」よりも
「文章で人を泣かせる」ほうが難しく、
「文章で人を笑わせる」のはもっと難しいです。
つまり「笑い」が文章技術の最高峰なのです。
「本を読んでいて笑う」ことって多くはないですが、
彼はそれをやってのける数少ない天才です。
(220文字)



●時間の比較社会学

読了した日:2018年1月31日 速読
読んだ方法:図書館で借りる

著者:真木悠介
出版年:1997年(初版1981年)
出版社:岩波書店

リンク:
http://amzn.asia/8YhBqT9

▼140文字ブリーフィング:

メルマガ読者に教えてもらって手に取りました。
結果的に、内容が私にはかなり難解で、
「まだ早かったかな」と思いました。
いちおう中身には目を通しましたが理解度は4割に満ちません。
もう少し理解力がついたら再トライしてみたいと思います。

私が理解した範囲で無責任にも概説しますと、
ヘブルは直線的で質的な時間、ギリシャは円環的で量的な時間、
近現代は直線的で量的な時間、原始やアフリカの土着民、
古代日本の時間は非直線的(反復的)で質的な時間、
という「時間のマトリックス」の発想は面白かったです。
また、現代の「直線的で量的な時間」が、
共同体の解体(ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへ)をもたらし、
貨幣と同じように「時間の阻害」を引き起こしているという指摘も新鮮でした。
(326文字)



●ザ・フィフティーズ 1

読了した日:2018年1月31日 最後の3章は飛ばし読み
読んだ方法:図書館で借りる

著者:デイヴィッド・ハルバースタム
出版年:2015年(英語初版)
出版社:ちくま文庫

リンク:
http://amzn.asia/aW7wGac

▼140文字ブリーフィング:

アメリカのジャーナリストデイヴィッド・ハルバースタムによる、
50年代のアメリカを素描する試みです。
なんとこの本日本語訳では500ページ×3巻の大著で、
一章ごとにひとりの人物(や現象)が取り上げられています。
1巻をなんとか読みましたが、ものすごいボリュームなので、
2巻、3巻はちょっとほとぼりが冷めてから手を出す、
もしくは永遠に手を出さないかもしれません笑。

でも内容はとても面白い。
なぜか。
「50年代のアメリカ」こそが、
現代世界のデファクトスタンダードを作ったからです。
現代の世界の基礎は50年代のアメリカで作られたのです。
確かにそうです。
水爆、マッカーシズム(共産党狩り)、
一戸建ての大量生産とマイホームの夢、
マクドナルドのハンバーガー、
「ホリデイ・イン」というフランチャイズモーテル
(とフランチャイズという概念)、
ラジオの時代からテレビの時代へのメディアの変遷、
テレビと政治の結婚、などなど、
現在の「効率化され脱人間化された社会の光と闇」は、
すべて1950年代、アメリカ生まれです。

問題はそれから70年が経過した現在、
その大きな枠組み(パラダイム)が耐用年数を迎え、
崩落した笹子トンネルのごとく、
ミシミシと鈍い音を立てているところです。
未来は混沌としてかすんでいます。
そんなときは過去を見るとヒントがある。
そういう意味で、50年代アメリカを学ぶことは、
現在の世界で非常に意義深いことだと思います。
(597文字)



●アメリカ福音派の歴史

読了した日:2018年1月31日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:青木保憲
出版年:2012年
出版社:明石書店

リンク:
http://amzn.asia/9lp0fcJ

▼140文字ブリーフィング:

この本は、昨年秋の「よにでしセミナー@伊勢志摩」の、
参加者の書いているブログで知り、
「面白そうだ」と思い手に取りました。

結果、めちゃくちゃ面白かったです。
ここに概説は不能なので、
いつか「本のカフェラテ」で紹介したいと思っています。
私は福音派と呼ばれる教会で洗礼を受けて、
キリスト教徒になりましたので、
「それが絶対的に正しいものだ」と、
あるところまでは疑いもなく信じてきました。
しかし、「なぜ福音派が福音派になったのか」を知ると、
必ずしもそれ「だけ」が唯一の見方ではない、
ということにうっすら気づいてくるわけです。

「だから、余計な知識は入れない方が良い」
というのは、言っちゃ悪いけどバカの所行です。
そうじゃなくて疑うところまで疑った先に、
「本当に価値のあるもの」が浮かび上がってくるのです。
「疑うことを経ずして本当の信仰には至らない」
というのは信仰の真理です。
聖書に「疑うこと」は奨励されています。
咀嚼することなく鵜呑みにして信じる態度のほうこそ、
聖書は何度も警告しているのです。

では、「疑った先にある信仰」とはどんなものか?
著者はそれを後書きで、
「スターウォーズ」に喩えて上手に表現しています。

著者も私と信仰的背景が似ていて、
幼い頃から福音主義の宣教師が開拓した教会に通っていた著者は、
スター・ウォーズを初めて見たときと同じで、
「世の中には善と悪しかない。そして自分は善の側にいる」
と疑ったことなどなかった、といいます。
しかし、後のスター・ウォーズシリーズが告げるのは、
ダース・ベイダーとならざるを得なかった
アナキン・スカイウォーカーの生身の人間としての葛藤であり、
善と悪は簡単に切り分けられないという事実です。

著者が同志社大学で学んだのはまさに、
スター・ウォーズシリーズだったといいます。
福音派は善、という単純な世界観から、
「福音派がそう主張するようになった経緯」を学ぶとき、
そこにアナキン・スカイウォーカーの姿がある、と。
矛盾と間違いに満ちている福音派の歴史を紹介したことで、
もはや「自分たちは善」と思えなくなるかもしれないが、
福音派の人にも本書を読んでもらいたい、と著者は言います。
だからといって「敬虔でありたい」と願う、
その真摯な姿勢が色あせることはないと。
逆に「福音派は悪」と決めつけている人にも本書を読んで欲しい、と。
薄っぺらな原理主義批判を持っていた人も考え直す、
きっかけになるだろう、と。
私は著者のスタンスに好感を持ちます。
500ページに及ぶ大著ですがずっと面白かったです。
定本となる良書に出会いました。
(1,060文字)

▼参考リンク:ブログ「ちょうをゆめみるいもむし」
https://memorandomeyo.wordpress.com/



●木を見る西洋人 森を見る東洋人

読了した日:2018年1月31日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:リチャード・E・ニズベット
出版年:2004年
出版社:ダイヤモンド社

リンク:
http://amzn.asia/cJx57Lj

▼140文字ブリーフィング:

この本も飛び抜けて面白かったです。
私は「東洋と西洋の出会い」ということを、
人生の隠れたテーマのひとつにしています。
私が河合隼雄やユングや鈴木大拙に惹かれるのも、
彼らが東洋と西洋の思想のぶつかる「潮目」にいると思うからです。

この本のタイトルが示しているのは、
東洋人は包括的に物事を捉え(森を見)、
西洋人は分析的に物事を捉える(木を見る)、
という東西の世界観、考え方の「クセ」の違いです。

そのほかにも東洋ではこう考え、西洋ではこう考える、
という実例が実証的な実験結果とともにたくさん紹介されるのですが、
私がもっとも面白かったのは第六章の議論で、
それは、「東洋人は世界を動詞で、西洋人は世界を名詞で捉える」
という話です。

こんな実験があります。
アジア人の子どもとアメリカ人の子どもに、
二枚のカードを見せます。
ニワトリの描かれたカードと、草が描かれたカードの二枚です。
三枚目に牛の絵が描かれたカードを見せて、
「これはどちらの仲間?」
と聞くと、アジア人の子どもの多くは、
牛と草をセットにし、
アメリカ人の子どもの多くは、
牛とニワトリをセットにします。

なぜか?

西洋人の子どもの多くは分類学上の理由から、
ふたつとも動物だから、ニワトリと牛をセットにし、
東洋人の子どもの多くは
「牛は草を食べるから」牛は草の仲間だと言っているのです。
西洋人は世界を名詞の集合として、
東洋人は世界を動詞(関係性)の集合として捉えている、
ということを示す非常に面白い実験です。

著者は「プロローグ」の結語で、
今後の文化はフランシス・フクヤマが、
『歴史の終わり』という本に書いたように、
世界が全部アメリカになるのでもなく、
サミュエル・ハンティントンが書いた『文明の衝突』のように、
西洋化は挫折し、多元主義の世界が訪れることもない、と予測します。
そうではなく東洋と西洋は互いに「出会い」、侵襲し合い、
相互に影響し合い、溶け合っていく未来を彼は描きたい、と。

曰く、シチューの具は具のままだが全部変化する。
そしてそのシチューにはそれぞれの具の
一番おいしいところが含まれている、というように。
私も著者の意見に同意します。
(883文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:『木を見る西洋人 森を見る東洋人』

コメント:
本当は「アメリカ福音派の歴史」も同じくらいリコメンドしたいですが、
こちらはかなりの大著で、手を出す人は限定的になると思いますので、
より広い読者が面白いと思えるだろう、
『木を見る西洋人、森を見る東洋人』をオススメします。
私たちはグローバル化する昨今、
人生において「西洋的なものの考え方」と出会わずに生きるのは、
もはや不可能です。
必ず西洋的な世界観と私たちは出会います。
そのときに、「彼らの靴を履いて」世の中を見ることができ、
さらに「自分の世界観は東洋的なのでこうなのです」、
というようにメタの視点でそれを説明できる知性というのは、
世界に影響を与えようとしたら、「必須」になってくるでしょう。
実は「テクニックとしての英語のスキル」なんかより、
こちらのほうが異文化コミュニケーションを考える上で、
はるかに大事なんじゃないかと私は思っています。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■5 編集後記
1年間のご愛読ありがとうございました。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

まだまだ東京は寒い日が続きます。
今週は私は毎日のようにミーティングがあり、
土日は(多分)東京よりも寒い、新潟に出張です。
「読むラジサロン」も5名のメンバーで開始しました。
参加者の地域も職業も性別もライフステージも様々で、
多様性に富んだ良いメンバーが集まったなぁと思っています。
まだ始まったばかりですが、
これからどんなやりとりや学びあいがなされるか、
主催者の私が一番、楽しみにしています。
メルマガ読者の皆様にも追ってご報告しますので
お楽しみに。

というわけで、今号で1年間続いた私のメルマガの、
「シーズン1」も最終回です。
ご愛読いただいた皆様には感謝を申し上げます。
多くの皆様に楽しんでいただき、
今は感謝に満たされています。

次に「シーズン2」を開始するのがいつになるか分かりませんが、
そのまえに「号外」の配信もありますのでお楽しみに。
その日まで、皆様もお元気でお過ごし下さい。
ご愛読、ありがとうございました!


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陣内が先週読んだ本 2018年1月第四週 『死ぬほど読書』丹羽宇一郎 他4冊

2018.07.17 Tuesday

+++vol.049 2018年1月30日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2018年 1月第四週 1月21日〜27日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●良心をもたない人たち 25人に1人という恐怖

読了した日:2018年1月23日
読んだ方法:

著者:マーサ・スタウト
出版年:2006年
出版社:草思社

リンク:
http://amzn.asia/dLZ9CM1

▼140文字ブリーフィング:

心理カウンセラーである著者は、
PTSDに苦しむ人々のケアをしてきました。
その当事者たちのあまりにも多くの人が、
「サイコパスの被害者」だといことに驚きを持った著者は、
彼らから身を守る方法を考えるほうが大切、
と考えるようになり、本書を記しました。

アジアではもうすこし割合が低いそうですが、
欧米では良心を持たないサイコパスと言われる人が、
「25人にひとり」の割合で存在します。
これは著者によると「衝撃的な多さ」で、
他の疾病や障害や個性よりも、かなり多く、
私たちが人生で「良心を持たない怪物」に遭遇する確率は、
かなり高いといって差し支えない。
そして彼らは魅力的にみせるのが非常に上手なので、
外側からは分からないのがさらに危険だ、という。

多くの優秀で善良な人が、「良心を持たない怪物」によって、
食い物にされ、人生をめちゃくちゃにされてきた、
というわけです。
著者はその被害者たちの無残さを見て確信します。
「サイコパスは森で出会う熊のようなもので、
 見かけたら直ちに逃げる以外の方法はない。
 大事なのは早く見分けることだ」と。

著者によればサイコパスは短期的には成功することがあります。
じっさい歴史上の「英雄」とされている人の中にも、
偉大な事業を興した人の中にも、
おそらくはサイコパスだっただろうと思われる人がたくさんいる。
しかし、心理学の研究が告げているのは、
サイコパスが長期的に幸せになることは不可能だということです。
なぜなら「幸せ」とは愛することでしか得られないものであり、
サイコパスには「愛する能力」が欠如しているからです。
(651文字)



●カムイ伝 第一部 (2)

読了した日:2018年1月23日
読んだ方法:図書館で借りる。

著者:白土三平
出版年:1967年
出版社:小学館

リンク:
http://amzn.asia/a3rXCiU


▼140文字ブリーフィング:

先週から読み始めたマンガです。
第二巻でなんとカムイは死にます。
「死ぬんかい!」と思ったら、
死んだのはそっくりの弟であり、
彼の兄の物語がそこから始まります。
「後書き」が面白く、作者の白土三平の父は、
「プロレタリア画家」でした。
つまりプロレタリア文学者であった小林多喜二らと一緒で、
当時の大政翼賛的な監視社会のなかで、
思想犯として弾圧された人です。
作者自身もは「アカの子」として屈辱的な幼少期を過ごしました。
カムイ伝のルーツはそこにある、と後書きの筆者は言います。
そう見ると、「カムイ伝」は江戸時代の被差別部落の話ではなく、
完全に、「現代社会のメタファー」なのだと言うことが分かります。
「一億層中流社会」が過去のものとなり、
OECD加盟国の中でも貧富の格差が最も大きい国のひとつとなった、
「新しい階級社会(とそれを覆い隠したい政府)」に暮らす私たちこそ、
この物語を読むべきだと思わされます。
(393文字)



●死ぬほど読書

読了した日:2018年1月23日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:丹羽宇一郎
出版年:2017年
出版社:幻冬舎新書

リンク:
http://amzn.asia/2Xd1Bfn

▼140文字ブリーフィング:

今週の「私の読書論」で詳しく論じたので割愛します。
「教養を育てるのは仕事と読書」とか、
「読書は無知の量を増やす」とか、
「空気を読むのか、本を読むのか」とか、
名言がちりばめられていました。
また、ネット社会を生きる現代人の、
「正解主義」がもたらす思考の浅薄化への警鐘も、
非常に共感を覚えました。
(145文字)



●キリスト教思想史入門 歴史神学概説 第一章〜第二章

読了した日:2018年1月24日
読んだ方法:新宿オアシスブックセンターで購入

著者:アリスター・E・マクグラス
出版年:2008年
出版社:キリスト教新聞社

リンク:
http://amzn.asia/cuJsSgj

▼140文字ブリーフィング:

この本は2年ほど前に、
新宿にあるキリスト教書店で買いました。
最初の10ページぐらい読んで放置していたのですが、
「こういうのはやはり、意識的に読まなきゃ駄目だ」
と思って、先月ぐらいから、
「キッチンタイマー法」を使って読んでいます。
キッチンタイマー法とは、私が発明した読書法で、
タブレットのタイマーアプリを使い、
30分をカウントダウンします。
そのタイマーが鳴るまで、
「歯ごたえがあるハードな本」を集中して読む、
という、ただそれだけです笑。
読んでいて止まらないような趣味の本は、
タイマーなんて使う必要がないのですが、
今の自分の知力では、けっこう集中して読んでも、
理解が8割ぐらい行けば良い、みたいな本に関しては、
こういった「時間設定」がないと集中して読めません。
筋トレをするときに回数とか時間を決めるのとまったく同じです。
毎日30分ずつ読んで、一月でやっと半分まで読めました。
著者のアリスター・マクグラスは他の著書で、
「過去の神学的議論を踏まえていない人は、
 現在の神学論争に加わる資格を持たない」
と書いています。

当たり前の話です。
これは自然科学でもそうです。
過去の研究成果を知らない人は、
新しい論文を書く資格を持ちません。
、、、で過去の神学論争を知ると、
本当に面白いことが分かります。
というのは、だいたい現在の論争というのも、
「過去の議論の焼き直し」というか、
過去の議論がかたちを変えて再燃している、
というものが非常に多いからです。

今一番ホットな教会での議論があったとします。
それは実は、2世紀の神学者たちがした議論を、
別の言葉で言い換えているに過ぎないことがあるわけです。
「だから答えが分かるってこと?」
というのはバカ、、、あ、間違えた。
現代の「正解主義」の弊害です。
こういった事は、考える弁証法的プロセスにこそ意味があり、
その中からこそ社会を変える思想や実践が出てくるのです。
「神学をどこかで学んだことがある」ということと、
「神学する生き方」を生きるというのは違うんだ、
と尊敬する牧師先生から教えてもらったことがあります。
私はプロパーな教育機関で神学を学んだことがありません。
だからこそ、真剣に「神学する生き方」を追求していきたいと、
思っています。

関係ないですがこの本、
買ったときは9,000円でした。
義理の母からいただく「書籍献金」を貯めてあったのを、
「えいや!」っとはたいて買ったのは2年前。
現在絶版となっているこの本は30,000円します。
あのとき買っておいて良かったぁ。
この種の本ではよくあることです。
良い神学書は買えるときに買っておけ!
というのは我が家の家訓にしたいと思います。
(1,092文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:『死ぬほど読書』

コメント:

「私の読書論」でも紹介しましたが、
読書する意味を再確認してくれる良書でした。
ページ数も文字数も少なめですので、
普段読書し慣れていない人でも、
1週間もあれば必ず読了できる「軽さ」も魅力です。
オススメします。



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陣内が先週読んだ本 2018年1月第三週 『より少ない生き方』ジョシュア・ベッカー 他8冊

2018.07.11 Wednesday

+++vol.048 2018年1月23日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2018年1月第三週 1月14日〜20日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●アーティストのためのハンドブック

読了した日:2018年1月14日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ディヴィッド・ベイルズ、テッド・オーランド
出版年:2011年
出版社:フィルムアート社

リンク:
http://amzn.asia/a8FXD8V

▼140文字ブリーフィング:

この本は、アメリカでロングセラーになった、
「古典的なハンドブック」だそうです。
アーティストというのは右脳優位の人が多いので、
ロジカル(論理的)な話が展開されるわけではないのですが、
その分心にひっかかりを覚えるフレーズが散見され、
そっと背中を押されたような気持ちになります。

訳者後書きには、この本が出来た背景が説明されています。
この本の著者の二人は副業をしながら写真家として活動し、
アーティストのコミュニティのなかで、
お互いの不安や製作状況を分かち合い、
そして「明日も食えるか」という話をしながら、
アーティストであり続けるとは何かというテーマについて
共同執筆したそうです。
その生身を削ったような言葉だからこそ、
多くの人に届いたのでしょう。

この本はミュージシャンや画家という意味のアーティストのみならず、
すべての「自分で自分の仕事を創り出す創造的な人々」へのエールです。
私も「自分の仕事を自分で創り出す」業種ですから、
「あー、分かる分かる」と感じる部分は多かったです。

いくつか引用します。

→P208 
《最終的に、すべては次のことに帰結します。
あなたには選択肢が与えられています。
より正確には、それは複雑に絡まり合った選択肢です。
自分の仕事に全力を打ち込んだとしても幸せになれないか、
あるいは全力を打ち込まないために
幸せになれないことが約束されているか、その二つなのです。
つまり不確実性をとるか、確実性をとるかの選択肢です。
興味深いことに、不確実性を選択することは、心地よいことなのです。》

、、、アーティストとして生きるというのは、
「不確実性」に留まることです。
不確実性に耐えられない人は、
「アーティストであり続ける」ことは出来ません。

その中で大切なのは、
「不確実性」の中に身を置きつつ、
バランスを取るようにして、
「自分のルーティーン」を見つけ出すことです。
私も10年をかけて、これを自分なりに作ってきました。
やっと、人様に紹介できるようなルーティーンが、
自分の中で固まってきたわけです。

組織で働く人は、
「外部」に構造があります。
それに対してアーティストなどの、
クリエイティブな仕事をするフリーランサーは、
「外部」に構造がありません。
だから自分の内部に構造を作らなければならない。
外側の殻が形を保つ甲殻類と、
内側の骨格が形を保つほ乳類の違いですね。

繰り返しますが市役所職員という
「甲殻類の中身」だった私が、
その殻を出てからこの「骨」を作るまでに、
10年間かかりました。

フリーランスというのは、
まったく「お気軽」ではありません。
「お気軽」でもいいけど、
そういう人は淘汰されるだけですから。
これがサラリーマンと違うところです。
私はトップユーチューバーのヒカキンを、
心から尊敬しています。

組織の中にいる人にはあまり理解できないのですが、
彼がイチローにも劣らぬ克己の人だというのは、
フリーランサーならだれでも分かります。

→P115〜116 
《最初の一筆を真新しいキャンバスに描き始めるための工夫があるのであれば、
それはどんなものであっても実践する価値があります。
 時間はかかりますが、作品制作をする人だけが、
制作にじっくり向き合うことによって、
このような小さな習慣や儀式が
どれほど大切なことかを知る機会に恵まれます。
観客は作品を制作する際の詳しい過程などに関心がないかもしれません。
それは多くの場合、教師にとっても同じです。
なぜなら、その詳細が見えないからです。
あるいは知ることが出来たとしても、
仕上がった制作物を吟味することからかけ離れているからです。
作家のヘミングウェイは、タイプライターをカウンターの高さにおいて、
立ったままの状態ですべての原稿を書いていたそうです。
もちろんこの奇妙な習慣は、彼の作品の中に見つけることは出来ません。
しかしこの習慣が否定されてしまっていたら、
たぶんヘミングウェイの物語は
この世に一編も存在していなかったでしょう。》
(1,600文字)



●宗教的経験の諸相 上

読了した日:2018年1月14日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ウィリアム・ジェームズ
出版年:1969年
出版社:岩波書店

リンク:
http://amzn.asia/cCMXUr2

▼140文字ブリーフィング:

心理学者のウィリアム・ジェームズのこの著作は、
「古典」のひとつに数えられます。
私はいろんな本で引用されていたこの本を、
いつか読みたいなぁと思い続けて約3年、
やっと手に取りました。
決め手は神谷美恵子が引用していた、
彼の「二度生まれの人」という概念について、
もっと知りたいと思ったからです。
引用します。

→P251〜252 
《その(前回の講義の)終わりのところで、
私達は二つの人生観の対照を完全に看取するに至った。
一つは私達が「健全な心」の人生観と呼ぶものであって、
それは幸福になるためにただ一回の誕生だけで足りる人間に特有なものであり、
もう一つは「病める魂」の人生観であって、
幸福になるためには二回の生誕を必要とする人間に特有なものである。
その結果として、私達の経験の世界について
二つの違った考え方が生じてくる。
一度生まれの人の宗教では、世界は一種の直線的なもの、
あるいは一階建てのものであって、その勘定は一つの単位で行われ、
その部分部分はきっかりそれらが
自然に持っているように見えるだけの価値を持っており、
単に代数的にプラスとマイナスとを合計するだけで
価値の総和が出てくると言ったようなものである。
幸福と宗教的平安とは、
その差引勘定のプラスの側で生活するところにある。

これに反して、二度生まれのものの宗教にあっては、
世界は二階建ての神秘である。
平安は、ただプラスのものを加え、
マイナスのものを生活から消去するだけでは達せられない。
自然的な善は、ただ量的に不十分で移ろいやすいと言うばかりではなく、
その存在自体の中に、ある虚偽が潜んでいるのである。
自然的な善はすべて、たとい死の前に現れる
いろいろな敵によって抹殺されることがなくても、
結局は死によって抹殺されてしまうのであるから、
最後の差し引きで残高ができることなどないし、
私達の永久的な崇拝を受けるべきものでは決してあり得ない。
むしろ、それは私達を私達の真の善から遠ざけるもので、
そのような自然的な善を放棄し、それに絶望することこそ、
私達が真理の方向へ向かって踏み出すべき第一歩なのである。

要するに、
自然的な生命と霊的な生命との二つの生命があるのであって、
私達はその一つに預かりうるためには、
まず他方を失わなければならない。》

、、、ここでジェームズが、
「二度生まれ」とか、
「世界が二階建てであるような人」というのは、
宗教的な、あるいは哲学的なセンスを持ち合わせた人間のことです。
タイプA(一度生まれ)の人間にとって世界はシンプルです。
幸せとは「良い出来事」−「悪い出来事」という世界です。
タイプB(二度生まれ)の人間にはもっと複雑で、
悪い出来事が必ずしも不幸ではないし、
良い出来事が必ずしも幸福ではない、と考える。
物事の向こう側にあるもう一層深い「真相」を、
彼らはいつも捉えようとする。

タイプBの人は得てして、
「一度この世に生まれた後、
 二度目の誕生をする」というような、
実存的な生まれ変わり体験をする、
とジェームズは指摘しています。

歴史の中でその代表例として、
「天路歴程」の著者のジャン・バニヤン、
それからひどいうつ病を患ったトルストイを挙げています。

→P284〜285 
《バニヤンは福音の使者になった。
そして彼が神経病的な素質の持ち主であったにもかかわらず、
また、彼が国境を信じないという理由から
12年間も獄中で過ごさねばならなかったにもかかわらず、
彼はきわめて活動的な生涯を送った。
彼は平和ならしむる人であり、善を行う人であった。
そして彼の書いた不朽の寓意物語は
イギリス人の心に宗教的忍耐の精神をしみじみ浸透させたのであった。

しかし、バニヤンもトルストイも、
私達が「健全な心」と呼んだようなものにはなれなかった。
彼らは苦い酒杯をあまりにもしたたか飲んでしまったので、
その味を忘れ去ることが出来なかった。
そして彼らの贖いは二階建ての宇宙へ入っていくことであった。
二人はそれぞれその悲しみの鋭い刃をなまらせるような善を実現した。
けれどもその悲しみは、それを克服した信仰の心の中に
一つの小さな要素として保存されていた。

私達にとって重要なことは、事実において、
彼らが、彼らをしてそういう極度の悲しみを
克服させることの出来たようななにものかが
彼らの意識の内部にわき出ているのを見つけることが出来たし、
また見つけた、ということである。

トルストイがそれを
「人々がそれによって生きるところのもの」と言っているのは正しい。
なぜなら、それはまさしくそのとおりだからである。
それは一つの刺激であり、興奮であり、信仰であり、
以前には人生を耐えがたいものと思わしめたような悪が
眼前に充満していることが認められるにもかかわらず、
生きようとする積極的な意欲を再び注入する力なのである。

トルストイが悪を認める態度は、その範囲内では、
変わることなく残っていたように思われる。
彼の晩年の著作は、彼が公定の全価値体系と
あくまでも和解しなかったことを示している。
つまり、上流社会の生活の下劣さ、統治者の破廉恥な行為、
教会の偽善、役人の空威張り、大成功につきものの卑劣で残酷な行動、
そのほか、この世間の華やかな犯罪と偽りの制度、
これらのものと彼は和解しなかった。
すべてこのようなことを許容することは、
彼の体験によれば、自らを永遠に死の手に委ねることであった。》

、、、二度生まれの人はしばしば、
歴史に残るような著作を記したり、
歴史を変えるような偉業をなしたりします。
アブラハム・リンカーン大統領は、
生涯にわたり重いうつ病を患った、
「二度生まれ」の典型のような人ですが、
彼の葛藤は人類を一歩前に進めました。
本人たちは本当にたいへんですが、
世界の発展は「二度生まれ」の人々に、
多くを負っています。
(2,344文字)



●人間の本性を考える 心は「空白の石版」か (下)

読了した日:2018年1月14日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:スティーブン・ピンカー
出版年:2004年
出版社:NHKブックス

リンク:
http://amzn.asia/fiZlc4q

▼140文字ブリーフィング:

上・中・下巻からなる大作です。
全部で1,000ページぐらいありました。

「生まれか育ちか(nature or nurture)論争」において、
「ブランクスレート仮説」とよばれる、
「育ちがすべてだ。遺伝子の影響は小さい。」
という人気のある仮説への著者の反論です。

私は著者の遺伝子決定論的な立場と、
ブランクステート説の「心は空白の石版」説、
どちらに立つかと言われれば、
真ん中ぐらいかなと自分では思います。
心は空白の石版、は言い過ぎだし、
すべては遺伝子によって決定されているとも思いません。
(*著者がそういっているわけではありません。
 著者は環境要因もあると言っていますが、
 それでも私は著者が言う以上に「環境も重要」だと思います。)

いずれにせよ、
ブランクスレート説に立つ人の「逆説的な盲点」を、
著者はたくさん指摘していて、それは納得しました。
前提が違うと教育の方向は逆になります。
「暴力は学ばれるもの」ならば、
暴力をテレビで見せなければ自動的に平和な子どもになる、
という教育方針になります。
しかし、(特に男の子は)「生まれつき暴力的だ」
という前提に立つならば、
「暴力はいけませんよ」と教えなければ、
自動的に暴力的な子どもになる、ということになります。
私は自分の経験からも、後者を支持します。
小学生低学年のときなどは、
理由もなく無性に弟を殴りたくなるときがあります。
そのとき「いや、殴られたら痛いもんな」
と思うのは、親が苦労してそれを教えてくれたからです。

子どもに将来刑務所に入ってもらいたくなければ、
「仮面ライダー」を禁止するだけでは十分ではなく、
「暴力を振るうことで自分と他人にどんな悪いことが起きるか」
を教育する必要があるのです。

聖書は別の言葉でこれを表現しています。
そう。「人間は生まれながらに罪人だ」と。
東洋ではこれを「性悪説」と言います。

→P71 
《それに子どもは、戦争ごっこのおもちゃや
文化のステレオタイプの影響を受け始めるずっと前から暴力的である。
もっとも暴力的なのは、青春時代ではなくよちよち歩きの頃なのだ。
近年の大規模な研究によれば、
2歳を過ぎたばかりの子どものうち、
叩いたり噛みついたり蹴ったりする子どもは、
男児で半分近くもおり、女児もそれをわずかに下回るだけである。
つまりこの著者が指摘しているとおり、
「赤ん坊が殺しあいをしないのは、
私たちがナイフや銃を使う機会を与えないからだ。
私たちは過去30年間、
子どもはいかにして攻撃することを学ぶのかという問いに
答えを出そうとしてきた。
しかし、その設問は間違っていた。
正しいのは、子どもはいかにして攻撃しないことを学ぶのかという設問だ。」
という状況なのである。》

さらに著者は、多くの教育学者から、
石を投げつけられるようなこんな発言をします。
「子育ては子どもに影響しない」。

マジか?

先ほども言ったように、
私は彼を全面的に支持するわけではありません。
教育は大切だと思います。
しかし、「育って欲しいと思ったように子どもは育たない」
という意見には同意します。

これは私が「生物系」だからこう考えるのだと思います。
この「ああすればこうなる」という子育て論は、
多分に「エンジニアリング(工学)」の考え方に近いです。
しかし人間は機械や装置ではなく、生物なのです。
生物と装置の一番の違いは、
「複雑系かどうか」です。
複雑系は「インプットに対するアウトプットが読めない」
というところに、一番の特徴があります。
「ああしたのにこうならない」
のが複雑系であり、そして何度も言いますが、
子どもは複雑系なのです。

「子どもを優秀にするアルゴリズムなどない」
と著者は言います。
私もまったく同じ意見です。
じゃあ、子育てには意味がないのか?

あるに決まってるじゃないですか。
二度と戻ってこない子どもとの時間を、
神に感謝しながら過ごす。
これ以上の「意味」があるでしょうか?
著者もそこを指摘しています。

→P225 
《ハリスは、親が子どもの人格を形成できるという信念が
どれほど歴史の浅い偏狭な考え方であるかを指摘して、
1950年代にインドの僻地の村に住んでいたある女性のことばを引用している。
子どもにどんな人間になってもらいたいと思っているかと聞かれた彼女は、
肩をすくめて「それはこの子の運命で、
私が望むことではありません」と答えたのである。

だれもがこのように運命や、あるいは遺伝子や仲間といった
親のコントロールの及ばないそのほかの力を受け入れているわけではない。
「これが本当ではないことを神に祈っています」と、
ある母親は『シカゴトリビューン』紙に語った。
「子どもに注ぎ込んでいるこの愛情がすべて無意味だなんて、
恐ろしくてとても考えられません。」
人間の本性に関するそのほかの発見についてと同様に、
本当ではありませんようにと人々は神に願う。
しかし真理は私達の願いなどは気にかけない。
そうした願いを解放的な方法で再び取り上げることを余儀なくさせる。

たしかに、子どもを幸福な成功する人間に育てるための
アルゴリズムがないというのは、残念なことである。
しかし私達は本当に、子どもの特性を先に決めてしまいたいと願い、
それぞれの子どもが世界にもたらす予測できない天分や奇抜さに
喜びを感じないのだろうか?
人々は人間のクローンや、遺伝子操作によって
親が子どもをデザインできるようになるかもしれないという
怪しげな見通しにぞっとするような驚きを感じる。
しかしそれは、親の育て方によって
子どもをデザインできるという夢想といったいどれだけ違うのだろうか?

たぶん現実的な親のほうが、
あれこれと気に病む親にならなくて済むだろう。
そういう親は、たえず子どもに刺激を与え、社会化し、
性格を改善しようと試みないで、
子どもと過ごす時間を楽しむことが出来る。
子どもの脳細胞に良いという理由からではなく、
楽しんで本を読み聞かせることが出来る。》

、、「子どもの脳細胞に良いと言う理由からではなく、
楽しんで本を読み聞かせすることが出来る。」
良い言葉です。

「この子の将来のためにぃぃぃいぃ!!」
という「力んだ親」が世の中にたくさんいますが、
自分が子どもだったら思いますもん。
「重いっす!」

私は、将来秀才になって欲しいからではなく、
今楽しいから一緒にジャングルジムで遊ぶ親でありたいです。
(2,568文字)



●アメリカのデモクラシー 第一巻(下)

2018年1月14日読了
読んだ方法:図書館で借りる

著者:トクヴィル
出版年:1835年
出版社:岩波文庫

リンク:
http://amzn.asia/cY4FQRE

▼140文字ブリーフィング:

もうこれは、「古典中の古典」ですね。
あり得ないぐらい、めちゃくちゃ引用されています。
「またトクヴィルかよ!」と思った時期があります。

なぜ本書がこれほど引用されるかというと、
これが非常に珍しく詳細な「一次資料」だからです。
1800年代、まだアメリカの人口が1,200万人だったとき、
フランス人のトクヴィルはアメリカを旅して、
その「見聞録」を記しました。

そしてこの「新大陸(アメリカ)」は、
旧大陸(ヨーロッパ)と、何が違うのかと言うことを、
彼は克明に書き記したのです。
当時のアメリカは今のような「超大国」ではありません。
世界のスーパーパワーは大英帝国であって、
アメリカやロシアではありませんでした。
しかしトクヴィルは、100年後、
世界はアメリカとロシアが二分するだろう、と「予言」します。
それは見事に的中します。

日本人論の名著ならルース・ベネディクトの「菊と刀」であるように、
アメリカ論の古典はフランス人トクヴィルの「アメリカのデモクラシー」です。
そして、トクヴィルの観察眼には本当に舌を巻きます。
彼が、100年後の東西冷戦を「予言」した箇所を抜粋します。

→P418〜419 
《今日、地球上に、異なる点から出発しながら
同じゴールを目指して進んでいるように見える二大国民がある。
それはロシア人とイギリス系アメリカ人である。
どちらも人の知らぬ間に大きくなった。
人々の目が他に注がれているうちに、
突如として第一級の国家の列に加わり、
世界はほぼ同じ時期に両者の誕生と大きさを認識した。

他のあらゆる国民は既に自然の引いた限界にほぼ達しており、
あとは守るだけであるが、両者は成長の途上にある。
他のあらゆる国民は引き留められ、
多大の努力を払わなければ前に進めないが、
両者だけは軽やかにして速やかな足取りで行くべき道を歩き、
その道がどこで終わるのか、いまだに目に見えない。

アメリカ人は自然が置いた障害と闘い、ロシア人は人間と戦う。
一方は荒野と野蛮に挑み、他方はあらゆる武器を備えた文明と争う。
それゆえ、アメリカ人の征服は農夫の鋤でなされ、
ロシア人のそれは兵士の剣で行われる。

目的の達成のために、前者は私人の利害に訴え、
個人が力を揮(ふる)い、理性を働かせるのに任せ、命令はしない。
後者は、いわば社会の全権を一人の男に集中させる。
一方の主な行動手段は自由であり、他方のそれは隷従である。
両者の出発点は異なり、たどる道筋も分かれる。
にもかかわらず、どちらも神の隠された計画に召されて、
いつの日か世界の半分の運命を手中に収めることになるように思われる。》
(1,063文字)



●アインシュタイン その生涯と宇宙 上

読了した日:2018年1月17日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ウォルター・アイザックソン
出版年:2011年
出版社:ランダムハウスジャパン

リンク:
http://amzn.asia/7S95mh2

▼140文字ブリーフィング:

去年読んだ伝記、「スティーブ・ジョブズ」が面白すぎて、
その著者、ウォルター・アイザックソンの書いた、
そのほかの伝記も読んでみたくなりました。

私はアインシュタインにミーハー的関心を寄せる「ファン」です。
小学生のころから「漫画で分かる相対性理論」とか、
児童用のアインシュタインの伝記を読むなど、
アインシュタインに並々ならぬ関心を寄せていました。
今、私がパジャマにしているスウェットのプリントは、
アインシュタインです。

、、、で、ウォルター・アイザックソンが、
アインシュタインの伝記を書いているというのを知り、
「これは読まねば」と思って手に取りました。

「天才」の定義は様々ですが、
私の「天才」の定義は「論理を飛び越えること」です。
天才は直観的に何が正しいかを捉えるので、
一見、論理に飛躍があるように見えます。

私はちなみに、天才ではありません。
(言うまでもありませんが笑)
私は抽象思考は得意で、
論理を緻密に組み立てていくことは得意ですが、
飛躍することは苦手ですから。
ある人の論理が飛躍している場合、
99%は「ただのバカ」なのですが、
1%は「天才」です。
前者と後者の見分け方は簡単です。
前者はそもそも論理が分かっていないから、
無自覚に飛躍し論理が破綻しているだけですが、
後者は「破綻しない論理」を自在に操った上で、
なおかつ「意識的に飛躍」できています。

アインシュタインは、
自分が意識的に飛躍している、
ということそれ自体にも意識的な、
「天才のなかの天才」でした。
それを彼は「帰納より演繹が大事」と、
自分で表現しています。

→P187〜188 
《実際1905年の三編の画期的な論文において、
演繹的アプローチを取る意図を始めに述べている。
彼は説明の付かない実験結果ではなく、
さまざまな理論がもたらす矛盾を指摘する所から論文を書き始めている。
それから実験データの役割を過小評価しつつ基本原理を持ち出している。
ブラウン運動の理論も、黒体放射の理論も、光速に関しても同じ事である。

『物理学における帰納と演繹』という1919年の本の中で
彼は後者のアプローチ、つまり演繹法の方を好むことを述べている。
「経験科学の創造について最も簡単な描像は
一連の帰納的手法である。ここの事実が結ばれ、
まとめられ、それらをつなぐ法則が明らかになる。
・・・しかしこのような方法で得られる大きな科学的知識の進歩は少ない。
・・・自然の理解における真に偉大な進歩は
帰納的手法とほとんど正反対の所にある。
事実の複雑な集大成から直感的に本質をつかみ出すことで
科学者は仮説的な法則を導き出す。
これらの法則から科学者は結論を引き出す。」》

、、、アインシュタインの相対性理論は、
実は「神学的なブレークスルー」でもありました。
もっと大胆な言葉を使えばそれは「神殺し」だった。

なぜか。

ニュートンの古典力学における、
「絶対空間・絶対時間」は、
神によって担保されている、とニュートンは言ったが、
アインシュタインはそれを「相対化」してしまったからです。
時間や空間さえも「ゆがむ」としたら、
もはや「神が書きたもうた」物理法則のなかに、
「絶対的な座標軸」は存在しないことになってしまう。
「聖なる天蓋」を突き崩し、転覆させ、
古典的な世界観に依って立っていた宗教観を、
がらがらと音を立てて崩れさせた原因は、
ひとつはダーウィンの「種の起源」、
そしてアインシュタインの「相対性理論」だったのです。

→P197 
《絶対時間の概念――「実際に」存在して、
測定とは同時に時を刻むという意味での時間――は、
ニュートンが216年前に著書『プリンキピア』で仮定して以来、
物理学の支えであった。
同じ事は絶対空間と距離に関しても言える。
「絶対的な真の数学的な時間は、他の何者にもよらず、
それ自体それ自身の性質として、一様に流れる。」
とニュートンが『プリンキピア』の第一巻で書いていることは有名だ。
「絶対空間は、他の何者にもよらず、
それ自身の性質として常に同一であり動かない。」

しかしこれらの概念が直接に観測できないことに、
ニュートンでさえ不満であった。
「絶対時間は理解の対象ではない」と彼は認めている。
このジレンマから逃れるのに彼は神の存在に頼った。
「神は永遠にどこにでも存在して、
時間の経過と空間を定める。」》

、、、神の支配する時間と空間が、絶対ではない?
では、「神の居場所」はどこにもないのか?

ないはずがないじゃないですか。
神学はそんなにヤワなものではありません。

自分たちの古い世界観に引きこもり、
世間から隔絶され、明白な科学的知見を「否定」し、
物理学や生物学や社会学「批判」をくりかえす宗教者は、
「ヤワ」だなぁと私は個人的に思いますが。
(1,887文字)



●やさしいライオン

読了した日:2018年1月17日
読んだ方法:Amazonで書籍購入(中古)

著者:やなせたかし
出版年:1975年
出版社:フレーベル館

リンク:
http://amzn.asia/4AtIjsl

やなせたかしが初めて描いた絵本です。
犬に育てられたライオンの話。
悲しいけれど、心に残る話でした。
Amazonで古本を買いましたが、
裏表紙に「××さんへ、お世話になりました。
心をこめて云々、、、●●より」というメッセージが。

、、、売るなよ泣。
(120文字)



●知性の顛覆 日本人がバカになってしまう構造 

読了した日:2018年1月17日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:橋本治
出版年:2017年
出版社:朝日新聞出版

リンク:
http://amzn.asia/cvBDkPg

タイトルに期待して読みましたが、
正直、内容が散漫で、あまり面白くはありませんでした。
「不機嫌」と、「反知性主義」が結びついている、
という部分だけは、なるほど、と思いました。

→P206
《トランプ新大統領が主要メディアを「敵」と言ったり、
ワシントンの既成政治を「だめだ」と言っているのは、
その相手が、「複数の問題の整合性」を考えようとしているからで、
単純な多くの人と同じように「よく分からない複雑な問題」を
突きつけられた大統領が腹を立てて、
「そういうものはみんなナシ!」と言ってしまったのに等しい。
がしかし、「複雑な問題」は、やはり考えなければ答えがでないものだ。

もう一度「反知性主義」に戻ってしまえば、
「世の中には面倒なことを考えさせられると、
それだけで腹が立ってしまう人たちは多い」―――そのことが、
「反知性主義の高まり」なのだ。
私にはそうとしか思えない。
理性をはねつけてしまった不機嫌は強い。》
(398文字)



●より少ない生き方 ものを手放して豊かになる

読了した日:2018年1月17日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ジョシュア・ベッカー
出版年:2016年
出版社:かんぎ出版

リンク:
http://amzn.asia/0XCfo6v

▼140文字ブリーフィング:

1年ぶりぐらいに「ミニマリズム本」を読みました。
あまり期待はしていませんでしたが、
これが思いの外面白かったのです。

それは、この著者が「牧師」だからです。
ミニマリズムって、「禅」とか「ニューエイジ」とか、
「スピリチュアル」となぜか相性が良いので、
キリスト教徒である私からすると、
「ここまでは共感できるけど、
 ここから先はついて行けない」
というラインがあるのですよね。

しかし、この著者は牧師なので、
「ミニマリズム」を「聖書的」に理解している。
「最後まで納得のいくミニマリズム論」として、
一押しの本です。

たとえば著者は、福音書に出てくる有名な、
「金持ちの青年」をミニマリズム的に解釈します。
引用します。

→P46〜48 
《前の章でも述べたように、私のミニマリズム哲学は、
イエスの教えから大きな影響を受けている。
とはいえ、ミニマリズムに興味を持つようになったおかげで、
前から知っていたイエスの教えを、
新しい角度から眺められるようになったのも事実だ。

このイエスと役人の物語は、その典型的な例だろう。
昔の私は、イエスと役人の物語を読むたびにこう考えた。
「自分の持ち物とお金をすべて上げてしまったら、
惨めな人生になるに決まっている。
イエスは本当にそういう意味で言ったのだろうか?」

持っているものの数で幸せを図るような世界で暮らしていると、
イエスの言葉はまるでピンとこない。
機嫌の良い日だったら、こんな風に考えて自分を納得させていたものだ。
「たぶん現世で物質欲を手放せば、
天国に行ったときに報われるのだろう。
きっとイエスは、そういう取引のことを言っていたのだ」

ところがこの理屈では、他のイエスの言葉とかみ合わなくなる。
たとえばイエスは、別のところで、
「私が来たのは、あなたが本物の人生を手に入れるためだ。
それは、あなたが夢に見たよりも豊かで素晴らしい人生だ。」
ということも言っている。

イエスの教えはいつだってそうだった。
天国に行ってからだけでなく、
この地球上での日常生活を最大限に生きる方法を説いている。

ミニマリスト生活を実際に始めて、
これまで紹介したような利点をすべて経験すると、
イエスがお金持ちの若い役人に投げかけた言葉が、
新しい意味を持つようになった。

イエスが本当に言いたかったのは、
「持ち物をすべて売り、そのお金を貧しい人に与えれば、
自分も不要な荷物から解放されるだろう」ということだったのだ。

ものに執着していると、
本当に豊かな人生からはむしろ遠ざかる。
ものを減らしなさい。
物質欲の重荷から解放されれば、
目指しているものには何でもなれるだろう。
これが、イエスの答えの本当の意味だ。

イエスの答えは、若い役人の信仰心を試しているのではない。
信仰が真実であることを証明するために、
究極の犠牲を払うことを求めているのでもない。
むしろ、より豊かな人生への招待状だったのだ。
あの若い役人は、自分の所有物のせいで、
真の意味では生きていなかったのだ。
このイエスの教えは、どんな宗教を信じる人にも共感できるだろう。》

、、、また、著者は牧師として、
ミニマリズム本に時々出てくる、
「人間関係も整理しましょう」という教えに、
疑義を呈しています。
引用します。

→P286〜289 
《ミニマリストの中には、
「自分の人生に利益をもたらさない人とはさよならしよう」
というアドバイスをする人がたくさんいる。
つまり、クローゼットや引き出しのガラクタだけでなく、
人間関係のガラクタも処分しようというのだ。
彼らの言いたいことは理解できるが、同意できるわけではない。
 (中略)
自分に利益のある関係だけを大切にするのなら、
それは愛ではない。利己主義だ。
 (中略)
ジョンの人生は平坦ではなかった。
親からは育児放棄され、ドラッグとアルコールの問題を抱え、
ホームレスになったこともある。自分の失敗のことも平気で話す。
彼が苦労をしたのは、もちろん育った環境も原因になっているが、
自業自得の面もあることは否定できない。
実際に会うときは、彼はいつもひげを剃らず、だらしない格好で現れる。
しかし、表情は明るく、今度こそ立ち直って神の道を進むと誓い、
参加している後世のための集まりについて話してくれる。
私はいつも、彼を応援している人がいることを伝え、
自分でもできる限り力になると約束する。
そして最後に、私はたいてい「来週もまた会えるかな」と言うのだが、
次に彼が連絡してくるのは数ヶ月後だ。

正直にいえば、ジョンとの関係で私が得るものは特にない。

ジョンから何らかのアドバイスがもらえるわけでもないし、
私が助けてもらえるような仕事をしていたり、
特技があったりするわけでもない。
有名人や偉い人の知り合いがいて、私に紹介してくれるわけでもない。
私のことは人として大切に思ってくれているのかもしれないが、
たとえそうだとしても、その気持ちを表現する方法は
少々変わっていると言わざるを得ないだろう。

それでも、彼がいつも与えているものが一つある。

それは、誰かを愛するチャンスだ。
それも、見返りを期待する愛ではなく、無条件の純粋な愛だ。
忍耐力、慈悲の心、責任、犠牲が必要な愛だ。
つまり、本物の愛ということだ。
ジョンとの関係は、私が本物の愛を示すチャンスだ。
彼がどこに行こうと、どんなに長い間音信不通でも、
いつでも待っていると伝えることが出来る。》

、、、メールをしても返信せず、
電話をしても出ず、人生がめちゃくちゃになったときだけ、
SOSの連絡をして「逢いたい」と言ってくる、
著者の友人の「ジョン」は、
他のミニマリストなら「処分ボックス行き」と言うでしょう。
しかし彼は言います。
「ジョンは、私に無条件で人を愛するチャンスをくれている」。

シビれますね。

さらに、彼は、ミニマリズムの最大の益は、
「より多くを与えられるようになること」と言います。
これは「こんまり先生」を含む、
多くのミニマリストがだれも、一言も言っていないことです。
彼らは「減らすことが自己目的化」していますが、
本書の著者は、「与えること」が目的です。
私はこちらのミニマリズムを支持します。
引用します。

→P302〜303 
《たしかに矛盾して聞こえるかもしれない。
それでも、本物の幸せと満足感を手に入れる一番の近道は、
自分の利益を追求することではなく、人のためになることだ。

ここで、人のために生きる道を選んだらどうなるのか考えてみよう。
まず、自由が増える。ストレスが減り、不安が減り、不満が減る。
満足感が大きくなり、生きている実感が持てる。
人のために生きていると、人と比べる必要がなくなる。
人の上に立ちたいという気持ちがなくなるので、肩の荷が下りる。
自分のしていることがよく分かっていて、
それが大切なことだということも知っている。
人生に満足し、目的意識を持って生きることが出来る。
 (中略)
あなたには大きな夢を持ってもらいたい。
そしてその夢から、大きな満足感を手に入れてもらいたい。
人のためになることがあなたの夢なら、それは実現するだろう。
インドの詩人のラビンドラナート・タゴールは、こんな言葉を残している。
「私は眠り、人生は喜びだという夢を見た。
私は目を覚まし、そして人生は他者に仕えることだと悟った。
私は実行し、そして目撃する。人に仕えることは喜びだった。」》
(2,957文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:より少ない生き方

コメント:
ほとんど期待せずに読んだ分、
カウンターで右フックを食らった感じです笑。
ミニマリズムやシンプルライフの本は
今まで結構たくさん読んで来ましたし、
それらに啓発され教えられてきました。
私もシンプルに生きたいと思っていますので、
真似できると思うことは真似してもきました。

しかし、そこに「何かが足りない」と感じてきた、
「何か」が何だったのかに、
この本は気づかせてくれました。

それは「与えること」「他者のために生きること」でした。
ミニマリズムという哲学に、
キリストの光を当ててくれた著者に、
感謝の意を表します。




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陣内が先週読んだ本 2018年1月第一週 『LIFE SHIFT』リンダ・グラットン 他4冊

2018.06.27 Wednesday

+++vol.046 2018年1月9日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2018年1月第一週 12月31日〜1月6日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●内側から見た富士通 「成果主義」の崩壊

読了した日:2017年12月31日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:城繁幸
出版年:2004年
出版社:光文社ペーパーバックス

リンク:
http://amzn.asia/cFEb1UL

▼140文字ブリーフィング:

00年代に、富士通は「成果主義」を鳴り物入りで導入ました。
その結果、なんと富士通はどんどん業績を落とし、
納期の半年遅れなどを起こしニュースに取り上げられたのです。
成果主義の導入後、内部は崩壊しました。
著者はその時代に富士通に入社し、
あまりの不条理に退職してフリーランスになった人ですから、
この本は「内部からの告発」のような様相を呈します。
面白かったです。

著者の分析によると、成果主義自体に罪があったわけではなく、
組織体質には手を付けず成果主義を導入した結果、
成果主義が実力主義を後押しするのではなく、
逆に「コネと根回しのムラ社会のルール」を強化し、
「責任をとらない」という悪い部分だけが残った、
という逆説的で皮肉な現象が起きたことが悲劇だったと言います。

引用します。

→P221 
〈年功的組織下で濫造された従業員数の3割を占める管理職に、
公平で有能な評価者を期待しても、理論通りには動かないのだ。
まして、彼らは従来の超・年功的価値観の下で何十年も育成された、
新しい価値観への順応度だけで観れば新人より遙かに劣る「抵抗勢力」だ。
まったく異質な「成果主義」という理念を理解することなど、
とうてい無理なのだ。
そして、この点がクリアできないなら、
どんなに頭をひねっても、何回制度をいじくり回しても、
「成果主義」は機能しない。
そういう意味では、
富士通は貴重なモデルケースを提供してくれたと言えるかもしれない。
組織の大枠を崩すことなく、評価システムを変えた所で、
結局何一つ変わらなかったからだ。
むしろ悪化したあげくに、社業まで大きく傾いてしまった。
社員の不満、嫉妬、怨念、若手社員の離職率急上昇、
そして業績低迷。これらの現象は、
いずれも「中途半端な成果主義」という一本の線でつながっている。〉

もうひとつ面白かったのは、
日本企業が00年代に「成果主義」を大挙して導入した、
「本当の理由」です。
それは実は、「働く人のやりがい」とか、
「イノベーションを起こす」とかではないと著者は指摘します。

企業が成果主義を導入した本当の理由は「コストカット」です。
年功序列制度を維持するコストを担保できなくなったので、
「成果主義の導入」という名のコストカットが行われたわけです。

説明します。
高度経済成長の「人口ボーナス時代」が終わり、
労働人口と内需が縮小していく「人口オーナス時代」に入った結果、
日本で年功序列制度を維持するのは「無理ゲー」になったのです。

なぜか。

年功序列制度というのはつまるところ、
「ピラミッド型組織の維持」だからです。
下が大きくて上が少ない、ということですね。
組織の階級を上昇するにつれて「席の数」は減って行きます。
この「三角形の形」を維持するには、
裾野が際限なく広がらなければなりません。
「ネズミ講」の理論です。

それはつまり、企業が右肩上がりに成長するということを意味します。
そして昭和の一時期それは本当にうまくいきました。
実はこのネズミ講式の構造は年金制度にも言えます。
人口オーナス時代に入り、
それが破綻した時に企業の人事部や財務部などの、
官僚ホワイトカラー部門(コスト部門)が成果主義に飛びついたのはつまり、
今後逆三角形になっていくときに膨らむコストをカ
ットしたかったからです。
こんな動機で改革をすること自体が「欺瞞でありゆがみ」なのであり、
成果主義自体が悪だったからではない、と著者は指摘しています。
私も同意します。
引用します。

→P146 
〈「年功序列制度」の組織は、
前述のように際限なく組織が拡大することと、
ビジネスモデルが不変である
(少なくとも非常に緩やかな変化しかあり得ない)
という前提がなければ維持できない。
維持できれば毎年安定して若い人材も確保できる。
そうなると、人事制度の主眼は
「いかに個々の人材の能力を伸ばしていくか」ではなく、
「いかに個々の人材の規格を維持するか」
という点に力点を置いた方がずっと合理的だ。
こう考えると、「ムラ社会」の掟にも、
それなりの存在理由はあるのだ。
たとえてみると、「成果主義」は脚本もステージも設定も
まだ決まっていない自由演劇のようなもので、
「年功序列制度」は先人から代々受け継がれてきた「しきたり」にそって、
決まった衣装と舞台で毎回同じように演じる歌舞伎のようなものだろう。
前者には、自由に才能やスキルを生かせる反面、
客の反応は実際公演をやってみるまで全く予測できないというリスクがある。
その一方、歌舞伎役者にはオリジナリティや新鮮な感動は期待できないだろうが、
公演中の客の反応はもちろん、1度の興業の売り上げまで予測可能だ。〉
(1,826文字)



●人間の本性を考える 心は「空白の石版」か (中)

読了した日:2017年12月31日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:スティーブン・ピンカー
出版年:2004年
出版社:NHKブックス

リンク:
http://amzn.asia/747Tijo

▼140文字ブリーフィング:

上・中・下にまたがるこの大著は、
「ブランクスレート仮説」と呼ばれる、
「人間の心は空白の石版であり、教育や学習によって、
 どんなものにでもなり得る」という仮説への反論です。
その反論にはある程度の「遺伝子決定論」が含まれます。
つまり、(教育には効果があるものの)、
遺伝的にどうにもならない脳の優劣だったり、
人を傷つける傾向だったり、そういうものがあるのだ、
という行動遺伝学と呼ばれる分野の知見です。

困った(と著者は思っている)ことに
この分野はめちゃくちゃ評判が悪いのです。
右派(保守派)からも、左派(進歩派)からも。
引用します。

→P247 
〈心が生物学的に解明されることに対して人々が抱く重大な恐れの一つは、
解明が道徳のニヒリズムにつながるのではないかというものである。
もし人間が高尚な目的のために神によって創造されたのでなければ、
と右派の批判者は言い、
もし利己的な遺伝子の所産であるなら、
と左派の批判者は言う。
私たちが自分のことばかり気にかける
道徳性のないエゴイストになってしまうのを、
何が防止してくれるのだろうか。
、、、そして両派とも、人間性についての
生物学的な理論を受け入れた結果がナチズムであると指摘する。〉

行動遺伝学が左派からも右派からも評判が悪いその理由は、
「道徳性がなくなる」という人々の恐れだ、と著者は言います。
そして、それは完全な誤解だ、と。
「行動や心や能力が遺伝的に決定されること」と、
「道徳的に生きることの意味が失われてしまうこと」の間に、
なんの相関もないんだ、と。
この誤解は、
「至近要因と究極要因の混同による誤解」と呼ばれるそうです。
本書をここまで読んで一番のヒットは、
私にとってはこれでした。
引用します。

→P105〜106 
〈科学的知識によって人間の価値が
損なわれるのではないかという不安について考えると、
私は映画『アニー・ホール』の冒頭で、
主人公のアルビー・シンガーが子どもの頃に、
かかりつけの医師のところに連れてこられたシーンを思い出す。

母親:気分が落ち込んでいるんです。急に何もできなくなってしまって。
医師:どうして落ち込んでいるの、アルビー。
母親:フリッカー先生にお話ししなさい。
(息子の代わりに答える)何か読んだらしいんです。
医師:何か読んだ?
アルビー:(うつむいて)宇宙は膨張している。
医師:宇宙は膨張している?
アルビー:宇宙はすべてでしょ。それが膨張しているなら、
いつかばらばらになって、何もかも終わりになってしまうんだ。
母親:それがあなたになんの関係があるの?
(医師に向かって)宿題もしなくなってしまって。
アルビー:宿題なんかに、何の意味があるのさ。

このシーンがおかしいのは、
アルビーが分析の二つの水準――宇宙をはかる数十億年という尺度と、
数十年、数年、数日という人生の尺度とを混同しているからだ。
アルビーの母親の言うとおり、
「宇宙があなたに何の関係があるの?
あなたはブルックリンにいるのよ。
ブルックリンは膨張していません!」なのだ。
私たちの動機がすべて利己的であるという答えに出会って落ち込む人は、
アルビ―と同じくらい混乱している。
究極要因(何かが自然淘汰で進化した理由)と
至近要因(それが、いまここでどのように働いているか)とを
混同しているのだ。
二つの説明はよく似ているように見える場合があるので、
混同されるのも無理はない。〉

、、、私たちの周りには他にもたくさんの、
「究極要因と至近要因の混同」による混乱や誤解が、
存在するのではないか、と私は感じました。
いつか世の終わりが来るからといって、
明日の宿題をやらなくて良いわけではありません。
人間はいつか必ず死ぬからといって、
暴飲暴食をして良い理由にはならないのです。
(1,442文字)



●歩くような速さで

読了した日:2018年1月1日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:是枝裕和
出版年:2013年
出版社:ポプラ社

リンク:
http://amzn.asia/2eVy9kJ

▼140文字ブリーフィング:

私の好きな映画監督、是枝裕和さんによるエッセイ集です。
散文的ですが、とても面白かったです。
いろいろ面白かったところがあったのですが、
その中から一つだけ厳選して引用して紹介します。

→P25 
〈作品は自己表現ではなくコミュニケーションだと昨日書きましたが、
もう少しその話題。
テレビの仕事を始めたときに一番言われたのは、
「わかりやすく」ということでした。
「誰にでも分かるように」と。
「視聴者は馬鹿なので」と平気で言う放送局員もいました。

もちろん人に伝える職業ですから、
どうしたらその話を真剣に聞いてくれるか?
語る言葉は選びますし、話す順序も考えます。
しかし、誰にでも分かる作品などあり得ない。
それは言葉や映像、
もっと言うとコミュニケーションを過信しているのだと思います。
難しくてわかりにくいことを
5分で説明してくれるのがテレビだと思われている方も多いと思いますが、
実は簡単だと思われている事象の背後に隠れている
複雑さを描いてこそテレビだという価値観も一方で存在するわけです。
だって世界は複雑なんですから。

その複雑さを無かったことにして
「わかりやすさ」だけを求め客に媚びた結果
(すべてとは言いませんが)映画もテレビも幼稚化したのだと思います。
そして現実から逃避した。
「早くこの味が分かるようになれよ」と
大人がこどもを高みへと導くような態度は、
作り手としては傲慢であるといつしか言われるようになりました。
しかし、ではどちらの態度がよりコミュニケーションというものと
真面目に向き合おうとしているでしょうか?

「誰か一人の人間を思い浮かべながら作れ」。
これもデビュー当時、先輩に言われた一言です。
視聴者などと言う曖昧な対象へ向かって作ったって結局誰にも届かない。
母親でも恋人でも良いから「ひとりの人に語りかけるように作れ」と。
つまり、作品を表現ではなく対話として捉えろ、
とその人は言いたかったのでしょう。
確かにそのことを意識すると、作品は自らのドアや窓を開き、
風通しが良いものに変質します。
僕が自己表現という言葉に感じる
「自己完結感」をこの風が払拭してくれるのです。

映画『奇跡』は、今3歳の娘が10歳になった時に見せたいと思って作りました。
世界は豊かで、日常はそのままで美しく、
生命はそれ自体「奇跡」なのだと、
そう語りかけるように作ったつもりです。〉

、、、「世界は複雑なのだから。」
痺れますね。
こういう表現者がいる日本は、
「まだ大丈夫だ」と思います。
彼は日本の宝ですね。
あらゆるものを「分かり易く説明してくれ」と要求する視聴者は、
言い換えると「俺は難しいことは考えたくない」と言っているのであり、
その人々は「複雑な世界を複雑なまま理解する」
という努力を放棄しています。
厳しく言えば「知的に怠慢」なのです。
そういった一人一人の「ちょっとずつの怠慢」が、
テレビをつまらなくし、
世の中に「分かり易いお手軽なもの」を充満させ、
そして世界をちょっとずつ行きづらくしている、
と私は感じていますから、
この是枝監督の言葉には大いに共感しました。
(1,229文字)



●LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略

読了した日:2018年1月1日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット
出版年:2016年
出版社:東洋経済新報社

リンク:
http://amzn.asia/cq7YpSm

▼140文字ブリーフィング:

こちらは小泉進次郎が引用したりして、
去年話題になったベストセラーです。
この著作は前著「WORK SHIFT」を下敷きにして書かれていますが、
そちらのほうが包括的で内容も重厚でした。

「WORK SHIFT」のレビューはかつてメルマガでがっつり書き、
アーカイブブログのほうにもアップロードしていますから、
是非そちらをご参照ください。

▼参考リンク:メルマガ記事「WORK SHIFT」
http://blog.karashi.net/?eid=154

両方読んでみて、
今回の本が前著より売れた理由は私には分かります。
それは後半にケーススタディを持ってきて話を単純化したところにあります。
戦後の団塊世代のジャック、
団塊ジュニア世代で1971年生まれのジミー、
1998年生まれのジェーンという、
3人の人生をシミュレーションするという構成になっていて、
その対比が話を分かり易くしています。

著者の言いたいことの要約はこうです。

過去200年の人類の寿命の推移から割り出すと、
現在生まれる赤ん坊は、
かなりの確率で100年近く生きることになる。
そして、彼らが60歳になったとき、
世の中に「定年退職」という概念自体がなくなる。
(それは人類の長寿化と国家の年金運営が、
 早晩破綻するという二つの理由による)
そのような時代の働き方は、
産業革命後に人類が経験した
「働き方の革命」に匹敵する大変革となる。
具体的には過去の革命は、農業主体から工業主体への変革であり、
その時代に「8時間労働・週休2日制・年功序列・年金制度」
といった現在私たちが知る労働慣行が形成された。
しかし我々がこれから経験する「働き方革命」は、
「農業から工業へのシフト」とは違うインパクトをもたらすであろう。
工業時代(現在)は「3ステージの人生」がスタンダードだ。
つまり「教育のステージ(〜20歳前後)
→労働のステージ(20前後〜65歳前後)
→引退のステージ(65歳〜)」
という3ステージである。
しかし今後このような「3ステージ」は完全に解体されるだろう。

、、、で、この「ポスト3ステージ」の働き方を、
著者は「ポートフォリオ・ワーカー」と呼びます。
直訳すれば「分散投資型の労働者」という意味であり、
じっさいには、人生がマルチステージになるということです。
教育→職業A→職業B→
教育に戻る→職業C→サバティカル(長期の休養)
→職業D→、、、、
みたいな働き方です。
「3ステージ」との大きな違いは、
1.人生に引退という概念がなくなることと、
2.そして職業A〜D(もしくはそれ以上)のうち、
かなりの部分を「雇われて」働くのでなく、
「フリーエイジェント」として働くことになること、
3.「教育」は人生の最初に一度だけでは間に合わず、
職業人生の途中に随時技術や情報をアップデートするために、
自己教育が欠かせなくなること
などが挙げられています。

グラットン氏が指摘している、
「100年ライフ」における大切な無形資産(お金以外の資産)には、
「変身資産」という、
これまでには必要とされなかったタイプの「資産」が含まれる、
という点が、私にとっては最も新鮮でした。
引用します。

→P127 
〈こうした(先天的な)要素を除いても、
無形の資産には非常に多くのものが含まれる。
長寿化との関係を基準に、これらを三つのカテゴリーに分類してみた。

1.一つ目は、生産性資産。
人が仕事で生産性を高めて成功し、
所得を増やすのに役立つ要素のことだ。
スキルと知識が主たる構成要素であることは言うまでもないが、
ほかにもさまざまな要素が含まれる。

2.二つ目は活力資産。
大ざっぱに言うと、肉体的・精神的な健康と幸福のことだ。
健康、友人関係、パートナーやその他の家族との良好な関係などが該当する。
長期追跡調査によれば、活力資産を潤沢に蓄えていることは、
良い人生の重要な要素の一つだ。

3.最後は変身資産。
100年ライフを生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験し、
多くの変身を遂げることになる。
そのために必要な資産が変身資産だ。
自分についてよく知っていること、
多様性に富んだ人的ネットワークを持っていること、
新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていることなどが含まれる。
このタイプの資産は、
旧来の3ステージの人生ではあまり必要とされなかったが、
マルチステージの人生では非常に重要になる。〉

、、、で、この変身資産には、
「自分に関する知識」が含まれるというのです。
つまり、「己を知っている人」ほど、「変身」がしやすい。
一つの職業的アイデンティティだけで、
100年ライフ時代のキャリアを全うできる人は少数派になります。
人間はほぼ例外なく「転職」「転身」を経験する世の中が到来した時、
「アイデンティティを確立できているかどうか」が
勝負を決めるというのです。

日本に引きつけて語るなら、昭和の日本は、
「私は●●株式会社の●●部で部長をしていた者です」
というアイデンティティが、退職後も通用した。
しかし、100年ライフ時代には、
そういった名刺=アイデンティティは通用しません。
「なんですかそれ?」になります。

なぜか?

現代の「企業」は人の職業人生より短いからです。
ということはあなたは、「私は山田太郎です」という、
固有名詞を名乗らなければならない。
その「山田太郎」は、
去年までは勤め人として中間管理職に就き、
今は大学院に通いながら、
新しい会社を起こす準備をしているかもしれない。
そのときに大切なのは、
「役割」ではない自分を語れることです。

引用します。

→P161〜163 
〈生涯に多くの役割を経験するほど、
一つの役割によってはアイデンティティが決まらなくなる。
アイデンティティは、引き受けるものや親から受け継ぐものと言うより、
丹念に作り上げるものになったのだ。
そのプロセスでは、自分についての知識が大きな意味を持つ。
自分のことをよく理解し、よく学ぶためには、
他の人たちに意見を求め、寄せられた意見について内省することが有効だ。
内省の重要性はきわめて大きい。

自分と世界についての認識に新しい情報を加えるだけなら、誰でもできる。
変身資産を積極的に築こうとする人が他の人と違うのは、
単に情報を加えるだけでなく、自己認識と世界の見方を変更することだ。
その結果として、自分についての理解が広く深くなり、
いくつもの欲求と不確実性に対処する能力が高まる。

心理学者のロバート・キーガンによれば、
人が大きく変わるのは、一歩下がって内省し、
その結果について判断を下す時だ。
行動の仕方やものの感じ方だけでなく、
ものの知り方を変えるとき――そう、何を知っているかだけでなく、
どのように知っているかを変える時――変化は起きる。
アイデンティティを主体的に作り上げる側面が大きくなると、
私たちは、心理学者のヘーゼル・マーカスと
ポーラ・ヌリウスが言うところの「ありうる自己像」への理解を深め、
その結果、アイデンティティが未来に広がるようになる。

、、、自分についての知識は、
変化を遂げるための道筋を示すことに加えて、
人が変化を経験しながらもアイデンティティと
自分らしさを保てるようにする役割を持つ。
自分についてよく理解している人は、
人生に意味と一貫性を持たせる道を選びやすい。
そのため、過度に落ち着きのない人生を送らずにすむ。
往々にして、寿命が延びると、
外的要因により慌ただしい日々を強いられたり、
職や居住地を頻繁に変えることでせわしない生活に陥ったりする。
その点、自分についての知識を持っている人は、
人生の新しいステージで成功する確率が高く、
変化によりアイデンティティが脅かされているとあまり感じない。〉

→P163 
〈アイデンティティの変化は、本人にとって難しい経験だ。
なにかが変わる時は、なにが変わらないのかが重要な意味を持つ。
人類学者のシャーロット・リンデは、
大勢の人たちとのライフ・ストーリー
(みずからの人生や生活について語る物語)に耳を傾けた。
すると、とくに際立っていたのは、
一貫性を持った人生の物語を描くことに
人々が多大なエネルギーを費やすという点だった。

人生の物語が一貫性を持つためには、
継続性(自分の変わらない要素とはなんなのか?)と因果関係
(自分に起きたどの出来事が原因で変化が起きたのか)
の両方の要素が欠かせない。
リンデによれば、自分についての深い知識は、
その継続性と因果関係の要素を形作る上できわめて重要だという。〉

、、、以上の分析から著者は、
現代の若者が「自分探し」などをするのは、
「世代論」に還元できない、と強調します。
つまり、若者の自分探しなどの「自己意識の高さ」は、
世代の特徴ではなく、寿命の長さこそが
真の理由だと彼女は分析しています。
鋭い分析です。

→P361 
〈ジェーン(1998年生まれ)の人生には、
自己意識を一つの旅として捉える姿勢がよく表れている。
「私はどういう人間か?」という問いに対するジェーンの答えは、
長い人生の間に変わっていく。
基本的には、人生のどの時点でも未来のあり得る自己像を多数持っているのだ。
この世代の行動が年長世代と大きく異なる理由は、この点にある。
世代による行動様式の違いを生んでいる要因は、誕生年の違いではない。
それは「ミレニアル世代だから」「Y世代だから」といった
怪しげな世代論で説明すべきものではないのだ。

その真の要因は、寿命が延びていることだと、著者達は考えている。
この世代は、無責任だとか、権利意識が強すぎるなどと批判されることが多い。
しかし、そうした行動は明らかに、
人生という長旅を始めるにあたって
自己意識に投資しようとする姿勢と見なせる。
ジェーンたちは、人生の様々なステージと
移行期間の構成を決める上で、
自己意識が非常に大きな意味を持つとよく理解しているのだ。〉
(3,894文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
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「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
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▼今週の一冊:LIFE SHIFT

コメント:
ご紹介したとおりですが、
「LIFE SHIFT」は前著「WORK SHIFT」とあわせて、
購入して読むに値する本です。
欧州では既に定年退職の年齢を68歳に引き上げ、
長期的には撤廃する動きが始まっており、
日本も近未来において必ず同じ事が起きます。

私は「自分が定年退職する未来」を、
人生のシナリオの中にもはや持っていません。
おそらく私達の世代以下は全員そうだと思いますが、
年金を「もらえる」などとは、最初から思っていない。

、、、そのような社会で、自分が社会のお荷物になるのでも、
既得権益にしがみつくのでも、
老害となって若者の邪魔をするのでもなく、
社会を益する存在として能力を還元し続けられるように、
今から体力においても知力においても経験においても、
信仰においても準備しておくべきだ、という危機感を、
私はこの二冊を読んでから自然に抱くようになりました。



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陣内が先週読んだ本 2017年12月第四週 『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』切通理作

2018.06.20 Wednesday

+++vol.045 2018年1月2日配信号+++


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年12月第四週 12月24日〜30日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●41歳からの哲学

読了した日:2017年12月25日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:池田晶子
出版年:2004年
出版社:新潮社

リンク:
http://amzn.asia/35rPR8m

▼140文字ブリーフィング:

池田晶子さんの「14歳からの哲学」は以前読んだことがあったのですが、
ある方から私が教会で話していた内容から連想した、、、
とご指摘いただき、池田さんの本を久しぶりに手に取りました。
この本はエッセイ集で内容は「軽い」ですが、
私の好きな養老孟司の「女性版」みたいな感じで、
その超然とした態度や、たっぷりの皮肉と少量の猛毒と、
しかし不思議と愛がある、、、という語り口は養老先生そっくりです。
(183文字)



●怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち

読了した日:2017年12月17日 速読
読んだ方法:図書館で借りる

著者:切通理作
出版年:2015年
出版社:洋泉社

リンク:
http://amzn.asia/34aBmqG

▼140文字ブリーフィング:

「円谷プロ」のウルトラマンのシナリオライター、
金城哲夫、佐々木守、上原正三、市川森一の人物像を探り、
彼らがウルトラマンや怪獣たちにいったい何を象徴させたのか、
ということを分析する本です。
00年代の若手文芸批評家の間で「古典」のように読まれ参照されている本です。
本書を読むと分かりますが実はこの4名はみな、
「社会のなかのマイノリティや被差別側のアイデンティティ」を抱えた人です。
たとえば金城は沖縄出身ですし上原は長崎出身のクリスチャンです。

、、、で、その「マイノリティ=被差別側」から「正義」を観た時、
その正義は微妙に「屈折」しているわけです。
「俺が正義でお前が悪」という、たとえばアメリカのブッシュ(子)のような、
平板な世界観は彼らからは生まれません。

ウルトラマンという正義を彼らは描いたわけですが、
そこにはブッシュ的な正義の押しつけはなく、
むしろ怪獣とウルトラマンのどちらに正義があるのか、
途中で分からない筋立てが多く含まれている。
「帰ってきたウルトラマン」の、「怪獣使いと少年」という、
いまでは伝説になった上原正三のストーリーはその代表です。

メイツ星という星から地球に墜落した宇宙人である老人の、
金田さんは、河原で宇宙船を探します。
金田さんは地球人の少年とともに掘削をしていますが、
日本人の子ども達は彼らに石を投げて差別し迫害します。
金田さんが死ぬとその怨念が「怪獣」となりますが、
ウルトラマンはなんと、その怪獣を退治しません。
「これは金田さんの悲しみの結晶だから、、、」と。

「河原」という場所や、「金田」という名前に暗示されていますが、
メイツ星人が象徴するのは、
関東大震災のときに虐殺された朝鮮人や、
沖縄から本州に移住した移民、
そして江戸時代から続く「被差別部落」の人々です。
要するに「社会のアウトサイダー」であり「マイノリティ」です。
こういった人々の視点から物事を見た時、
私たちが正義だと思っていたものが本当に正義なのか、
私たちが描いてきた世界像が本当に盤石だったのか、
その地盤が揺るがされます。

その「揺るがされる」体験こそ、
本当の正義への旅の始まりだと私は考えます。
王としてではなく社会の弱者として生まれ、
当時のユダヤのマイノリティや被差別民たちを「自分の友」と呼び、
自分の側に正義があると疑いを持たない支配者や王達を唾棄したイエスは、
「私はこの世界に平和をもたらすためではない、
 火を投げ込みに来たのだ」とおっしゃいました。
それは「本当の正義への旅」が、価値観の揺さぶりから始まることを、
イエスがよくわきまえておられたからです。

ウルトラマンは「正義は単純ではない」と子どもに訴えることで、
イエスと同じく「火を投げ込む」存在だったのです。

「怪獣使いと少年」の脚本家でキリスト者だった上原正三氏は、
ガンでなくなる少し前に、キリスト教の業界紙のインタビューで、
「自分の脚本は使徒としての宣教だった」と告白しています。
引用します。

→P380〜381 
〈「ドラマは戦いにしても表側から表現するわけですけど、
インナーの、心の問題を投げかけるのが大事。
善と悪が対立するけれども、人間そのものが禅なのかという疑問が、
市川さんのキリスト教的な問いでもあったと思うんです。
キリスト教では、
神が創世記で自身に似せた良いものとして作られたはずの人間が、
蛇に勧められた知恵の木の実を食べたことによって、
嘘をつくことを覚え、神と同じくらいな存在だと思い上がることで、
神に背いたと考えます。
人間の心の中に悪を目覚めさせることを狙う敵と、
正義のウルトラマンという対立構図を描いていたのではないでしょうか」
(真船禎監督談)

、、、(2011年、キリスト新聞社「Ministry」のインタビューにて)
それまでは、健全なテレビ番組の世界に
自分は悪意を仕掛けていたのだ・・・という部分を
強調して話すことの多い市川森一だが、
この日には教会という場であったためか、
自分はなんのために書いてきたのか、
ギョーカイ的な韜晦(とうかい)のフィルターなしに、
素直に語っている印象を受けた。
「クリスチャンの自分は一貫して福音をもたらすために書いてきた。」
と市川は言った。
僕は内心「初めてそういう言葉を聞けた」と思ったのを覚えている。

「僕が東京の大学へ入るために田舎を出る時に、
諫早(いさはや)の駅で
林田秀彦先生(諫早教会牧師・当時)が見送ってくれたんです。
そのときに、握手しながら
『君はこれからディアスポラになるんだよ』と言われて旅立ちました。
『ディアスポラ』ってなんだろうと考えて、
あとで辞書を引いたら、『散らされていく者』という意味でした。
そういう牧師の言葉の呪縛というのは、
結構ずっと引きずるんです。
それはやっぱり、作家になってからも、
『自分はディアスポラのつとめを果たしているか』
と自問自答するんだよね。
だから、使徒としての役割を果たしていける番組に、
知らず知らずのうちに寄り添っていったという面はあるかもしれません。」
(市川森一談)

そして、こうも語った。
「長いライター生活の中で、
教会に通うという習慣は維持できませんでしたが、
この年になって時間もできて、
やっぱりもう一度教会に戻らなければいけないかなと思い始めています。
ここから旅立っていったというのは紛れもない事実ですから。」
(市川森一談)〉
(2,163文字)



●こころの旅

読了した日:2017年12月27日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:神谷美恵子
出版年:2005年
出版社:みすず書房

リンク:
http://amzn.asia/j63fsXS

▼140文字ブリーフィング:

「何でも良いから何か一冊、オススメの本って何かありますか?」
という無茶な質問(笑)を受けることが、年に2回ぐらいあります。
そのときには私は結構な確率で、
ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」か、
もしそれは既読だったら、
神谷美恵子の「生きがいについて」を読むと良いよ、と勧めます。
「生きがいについて」は、もはやクラシック(古典)です。
福祉や医療の世界で働く指導者は全員読んでいると言って過言ではない。
私がこの本を読んだのはわりと最近で、3年ほど前のことです。
「べてるの家」の向谷地生良氏が著作のなかで、
自分のバイブルのように読んだ本として紹介していたのがきっかけです。
、、、で、この「こころの旅」も「生きがいについて」と同じ、
「神谷美恵子コレクション」のひとつです。
この本のテーマは「人生の四季」です。
人が生まれ、成長し、働き、病気になり、老い、そして死ぬ、
ということはどういうことかを、
ピアジェの発達理論やエリク・エリクソン、フロイトの理論を補助線にして、
丁寧にひもといていきます。

神谷美恵子氏はキャリアの半分以上を、
ハンセン氏病の療養施設で働いていましたので、
彼女の「苦しみ」というものに対する理解は、
通常の著者のそれよりも、もう一層か二層、深い気がします。
私も2年間の療養で「地獄の深淵」をのぞき込みましたから、
彼女の洞察の深さに舌を巻き、大いに共感します。
この本では特に「苦難の中の連帯」というものを彼女は指摘してて、
私も病気の地獄の中で、
「共に苦しむ仲間達」の声を確かに聞きましたから、
経験から深く同意することができます。
引用します。

→P169〜171 
〈ひとたび烈しい苦痛を経験した人は、
以後、すっかり変わってしまうことが多い。
苦痛そのものの感覚はときの経過と共に案外忘れ去られてしまうが、
これに伴ったこころの苦悩は完全に流れ去ることはない。
傷の瘢痕のようなものがこころに残り、
知らず知らずのうちに病前とは考え方や判断の仕方が変わり、
物事や人々や自分自身に対する態度まで変わってしまうことが少なくない。
つまり苦痛の経験は、それまでの「形而上学的軽薄さ」から
われわれをひきずり出してしまうらしい。

それは前にも述べたとおり、
苦痛の中で人間の心身の分裂が起こり、
そこで別の現実を発見するからではなかろうか。
つまり、人間存在の根底には、こういう世界があったのか、という発見である。
結核やらいの療養所に長年住む人たちが、
互いに「療友」とよび合うのは決して偶然ではない。
ひとりで病んでいても、この「苦痛の連帯感」は生まれる。
その例として、前にあげた詩集からもう一つの詩を
ここにかかげさせていただこう。
これを書きのこした女性は28歳でガンで逝いた(ゆいた)人である。

 暗闇の中で一人枕をぬらす夜は
 息をひそめて
 私をよぶ無数の声に耳をすまそう
 地の果てから 空の彼方から
 遠い過去から ほのかな未来から
 夜の闇にこだまする無言のさけび
 あれはみんなお前の仲間達
 暗やみを一人さまよう者達の声
 声も出さずに涙する者達の声〉
(1,240文字)



●結局、トランプのアメリカとは何なのか

読了した日:2017年12月27日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:高濱賛
出版年:2017年
出版社:海竜社

リンク:
http://amzn.asia/6LrqWln

▼140文字ブリーフィング:

私にはアメリカに住んでいる友人・知人・家族がいますが、
彼らは口をそろえて「トランプ大統領という異常事態」を語ります。
曰く「なぜこの状態で国家が回っているのか不思議だ」と。
よく国家が麻痺せずに運営できているな、と。

私もまたトランプ政権後1年間いろいろ考えてきまして、
最近、「天啓」のようにトランプ政権を日本に置き換える、
良い比喩を見つけました。

政治経験ゼロの不動産屋で、
「誇大妄想気味の素人」トランプが大統領になり、
フェイクニュースを作っていたブライバート・ニュースの、
スティーブ・バノンが補佐官(すでに解任された)になった、
というのは、日本に置き換えて考えるなら、
ナチスを擁護するなどあり得ない言動が目立つ、
「超国家主義者で排外主義者の大金持ち」、
高須クリニックの高須委員長が総理大臣になり、
「朝鮮人は殺せ」と書いた看板を掲げて新大久保を練り歩く、
ヘイトスピーチで知られる、
「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の、
桜井誠が官房長官になるようなものです。

まぁ、端的にいって「地獄」ですね。

私は本気でカナダに移住することを考えます。
じっさいトランプが当選した時、
連邦政府の「カナダへの移住」のサーバーがダウンしたそうですから、
「私はアメリカ人であることを恥じる」と考えるアメリカ人が、
少なからずいた、ということでしょう。

いまアメリカは「そういう状態」なのです。
日本では今年J-アラートがなりましたが、
アメリカでは一年中T(トランプ)アラートが鳴りっぱなしだったのです。
(笑)と書きそうになりましたが、笑えません。

この本の著者はアメリカに長く住む日本人ジャーナリストですが、
「長いことアメリカの政治を観てきたが、
こんなことは起きたことがない」と彼も書いています。
この本は「では、それはどんな風に具体的に異例なのか」
という解説です。

じっさい、「トランプは1年間はもったが、
あと何年持つかは解らない。」という議論は、
アメリカ国内で今も続いています。
いつ何らかの形で失脚しても、誰も驚かないでしょう。
具体的に「失脚」のシナリオは4つあります。
「暗殺・病気・弾劾・解任」です。
引用します。

→P167〜174 
シナリオ1 暗殺説
「アメリカでは大統領4人が暗殺されていますし、
いつ、どこで起きるか分かりませんね。
殺人未遂は16人とも言われていますし。」

シナリオ2 病気説 
トランプ大統領はきわめて偏食家らしいんです。
大好物はマクドナルドのハンバーガーとケンタッキーフライドチキンとか。
大金持ちのくせに粗食のようで、
こんなものばかり食べていたのでは長生きしないだろうと言われています。
おまけに17年10月初旬には、
ハーバード大学の精神科教授ら27人の医師達が、
トランプ師の精神障害についてまとめた「診断報告」を
「The dangerous Case of Donald Trump」という本として発表しました。
その「診断」によると、トランプ氏の状態は、
「自己陶酔・人格障害・非社会化型行為障害・悪性ナルシズム」だというのです。
これは、直接診断した結果ではありませんが、
可能な限りのデータを集めて精神科医としての
知識と経験に基づいて「診断」したものだとのことです。

シナリオ3 弾劾説 
一言で弾劾だ、弾劾だ、といっても、
制度的にはそう簡単なものじゃないんです。
、、、共和党議員の中に模範トランプの議員はいますが、
よほどのことがない限り、
自分の党が全国党大会で指名した大統領の弾劾には賛成できません。
それではよほどのことってなんでしょう。
ウォーターゲート並みの犯罪行為が立証された時です。
これまでのケースを見ても、弾劾に値する犯罪行為は「司法妨害」です。
つまり捜査当局が犯罪行為を追求している際に
大統領令を行使して邪魔をすれば、これは即弾劾の対象となってきます。

シナリオ4 解任説 
これは、ペンス副大統領がトランプ大統領の政策運営そのほかを観ていて
「こりゃ、どうしようもないわ」と判断した時です。
ペンス副大統領がティラーソン国務、マティス国防各長官ら主要閣僚と相談し、
全閣僚に諮り、閣僚の過半数が
「トランプ氏は大統領としての権限と義務を遂行できない」
というペンス副大統領の判断に賛同すれば、
大統領に辞任を突きつけることができるというものです。
つまり大統領に引導を渡すわけです。
これは、憲法修正代25条4項に明記されています。〉

この1年間、様々な人の「トランプ評」を読んできましたが、
最も納得したのは村上春樹のトランプ評です。
トランプを「非難」しても何もならない。
「この現実を受け止め、
 これはいったいなんなのか」
ということを真摯に知ることが大事だ、と。
村上氏は、トランプとヒラリーの違いを、
人々の心のどれほど深くにまで語りかけたかの違いだ、
と分析しています。
曰く「ヒラリーは地下一階(理性)に語りかけた。
一方トランプは地下二階(情念)に語ることに成功した。」
理性と情念じゃ勝負にならない。
その結果、トランプが勝った、と。

この本には「ポストトランプ」についても紹介されています。
キーワードは「ミレニアム世代」と呼ばれる、
1977年以降に生まれた若者達で、
アメリカではこの世代はほどなく有権者の50%を超えます。
この世代は「右か左か」といったポジショニングにあまり興味がなく、
是々非々で、現実にアメリカをよくしてくれるのなら、
共和党であろうが民主党であろうがかまわない、
と考える世代です。
この世代に支持されている二人の候補が、
次の台風の目になるだろう、と著者は言います。

まず共和党のベン・サーサ議員。
彼はネブラスカ州出身のプロテスタントで教育に熱心なインテリです。
もう一人は民主党のエリザベス・ウォーレン議員。
オクラホマ州出身の女性で、彼女の父親は掃除夫です。
彼女は中産階級を代弁し、富裕層への徴税優遇を批判しています。

この二人に共通するのは、
トランプとヒラリーの両人が、
「本人が主張しているのに、実際は自らに欠けている」ものを、
持っているところです。
ウォーレン議員はヒラリー・クリントンにはなかった、
「自らが特権階級ではない」という庶民性を備えていますし、
サーサ議員はトランプがもっていない、
「プロテスタントの倫理や規範(ついでに知性)」を持っています。

日本にいるとアメリカの状況を皮膚感覚で知ること難しいですが、
この本はとても勉強になりました。
(2,513文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:なし

コメント:
相変わらず判定が厳しいです。
今週読んだ4冊はどれも違う意味で面白かったですが、
「買った方が良いよ」というほどなのはありません。
ただし、先ほど触れた神谷美恵子の「生きがいについて」は、
買って本棚に入れておく価値のある本です。
オススメです。



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陣内が先週読んだ本 2017年12月第三週 『人間の本性を考える 上』スティーブ・ピンカー 他3冊

2018.06.13 Wednesday

+++vol.044 2017年12月26日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年12月第三週 12月17日〜25日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●ニュースの“なぜ?”は歴史に学べ 2

読了した日:2017年12月18日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:茂木誠
出版年:2017年
出版社:SB新書

リンク: http://amzn.asia/8fVjwpM

▼140文字ブリーフィング:

こちらは夏頃に「1」を読んで非常に面白かったので、
続編を手に取りました。
池上彰の「知らないと恥をかく世界の大問題」シリーズも好きですが、
こちらもとても面白いです。
茂木誠さんの切り口は「歴史」で、
今日本や世界で問題になっている「時事ネタ」というのを、
時代を100年、200年、1000年さかのぼると、
実はこういう根っこがあって、、、という風に解説してくれることです。
そうすることで今の世界に対する理解が立体的に深まります。

たとえばトルコは親日国家として知られていますが、
同時に親ドイツ国家としても知られています。
ドイツでは多くのトルコ人移民が働いていますから、
ドイツの貿易黒字を作り出しているのはトルコ人労働者の力も大きいわけです。
「トルコの親日」というと、
四国で起きた船の難破事件などがよく引き合いにだされますが、
事はそんな単純ではありません。
これにも歴史的な経緯が関係しています。
引用します。

→P110 
〈(戦後経済発展を遂げたフランスに
チュニジア・モロッコ・アルジェリア系のイスラム教徒が
移民労働者としてやってきたのに対し)
ドイツには、トルコ人が大挙して出稼ぎにやってきました。
なぜ、トルコ人かというと、
トルコ人は心情的にドイツに好感を持っているからです。
歴史的にいうと、トルコ人には
イギリスやフランスに「いじめられた」記憶があります。
トルコ人のオスマン帝国は、第一次大戦の敗戦によって、
支配下においていたアラブ地域の領土を
イギリス、フランス、ロシアの3国に分割され、奪われてしまいます。
この取り決めを「サイクス・ピコ協定」といいますが、
その後、オスマン帝国は滅亡、
トルコは大幅な領土縮小を余儀なくされました。
したがって、トルコ人にとって、
「二度の大戦を通じて宿敵のイギリスはフランス、
そしてロシアと戦ったドイツ人は偉い」というわけです。
ちなみに、トルコ人が日本に好感を持っているのも根は同じで、
日露戦争や第二次世界大戦で
ロシアやイギリスと一戦交えた歴史が根底にあるのです。〉

、、、「敵の敵は味方」の理論ですね。
今世界中で起きていることの多くには、
「歴史的な理由」があり、それを知っているかどうかで、
世界で今起きている事象はいったいなんなのか、
という理解の深さが変わります。

ウェーブ(波)とカレント(潮流)は違います。
この二つを理解しないとサーファーは命の危険にさらされます。
世界の時事問題をウェーブとカレントに喩えると、
ウェーブは「今大統領が●●になった」というような位相の話、
カレントは「過去1000年ぐらいの歴史を見た時の理由」です。

トルコやイランは現在「東欧〜中東〜中央アジア地区」の、
国際情勢における「台風の目」ですがそれには理由があります。
歴史を見るとトルコやイランというのはあの地域の他の国と違うのです。
それは「かつて帝国だったことがある」国だということです。
オスマントルコと、ペルシャですね。
こういった「帝国のDNAがある国」とそうでない国は、
肝心なときにふるまいが違ってきます。
ちなみに日本も、すっかり忘れている人が多いですが、
「帝国のDNAがある国」に分類されます。
(1,224文字)



●人間の本性を考える 心は「空白の石版」か(上)

読了した日:2017年12月19日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:スティーブン・ピンカー
出版年:2004年
出版社:NHKブックス

リンク: http://amzn.asia/jfFKtYe

▼140文字ブリーフィング:

「ブランクスレート理論」という有名な学説があります。
「人の心は空白(blank)の石版(slate)だ」という「人間観」です。
この理論は人気があり20世紀に流行しましたし今も強い影響力をもっています。
つまり、真っ白なキャンパスのような「人間の脳(や心)」があり、
それは「育て方」によっていかようにでも変わるという考え方です。

この「真逆」の極には「遺伝子決定論」があります。
つまり、「人間の能力や資質というものは生まれつき決まっている。
いくら努力をしたり教育をほどこしても、
遺伝的に決定されたことをを人間は超えられない」
というわけです。

こちらの説は人気がありません。
欧米では特にナチスの苦い経験がありますから、
そういった言説は「優生学につながる」と受け取られ、
ものすごーく警戒されるからです。

しかし神経生理学や脳科学の最新の知見は、
人間の心は「生まれつきすべてが決定している」
というのは言い過ぎだとしても、「空白の石版」とは言いがたい、
という事実を明らかにしています。
引用します。

→P96 
〈その後の発見で、脳の大まかな解剖学的構造
(サイズ、形状、脳葉や核のつながり、大脳皮質の基本的な設計)のほとんどが、
胎児期の正常な発育の中で遺伝子によって形成されることが分かった。
さまざまな人のさまざまな脳領域の灰白質の量も、
言語や推論に関与する領域も含めて同様である。
この生得的な形状や配線は、実際に思考や感情や行動に影響を及ぼす。
後の章で見るように、特定の脳領域に損傷のある赤ちゃんは、
しばしば特定の心的能力を永久的に欠如したまま成長する。
標準設計に生まれつき異変のある人は、心の動き方にも異変がある。
一卵性および二卵性双生児の脳を調べた最近の研究によれば、
前頭葉の灰白質の量は遺伝的影響を受け、
また知能との間に有意な相関関係がある。
アインシュタインの脳を調べたある研究によれば、
彼の脳は空間的推論と数についての直観に関する
下頭頂小葉という部位が非常に大きく、変わった形状をしていた。
ゲイ男性は視床下部の前方部にある第三間質核が小さい傾向があるが、
この核は性差に関係することが分かっている。
殺人犯や凶暴性のある反社会的な人たちは、
意思決定や衝動の抑制をつかさどる前頭前皮質が小さく不活発な傾向がある。
このような脳の肉眼的な特徴が
感覚からの入力情報で形成されることは、ほぼあり得ない。
これは知能や科学の才能や性的指向や衝動的暴力の個人差が
学習だけによるのではないことを示唆している。〉

、、、この本は数多くの書籍に引用されている「底本」のひとつですが、
これを読みたいと思ったのは橘玲さんの、
『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』で紹介されていたからです。
橘さんは「努力は必ず報われる」とか、「成功は頑張れば手に入る」
といった勝間和代的(ナポレオン・ヒル的と呼んでも良い)、
「成功哲学」の前提が間違っているのではないか、という疑義から始まります。
「努力は必ずしも報われないし、
成功は頑張っても手に入るとは限らない。」
その冷酷な事実をまず受け入れた上で、
「成功哲学」を構築することが必要だ、と彼は書いていて、
「確かにそうだよな」と私は思いました。
、、、で、その「前提」の根拠が本書なわけです。
(中)(下)はいま読んでいるところです。
また紹介しますのでお楽しみに。
(1,364文字)



●プライベートバンカー カネ守りと新富裕層

読了した日:2017年12月21日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:清武英利
出版年:2016年
出版社:講談社

リンク:http://amzn.asia/5WWwr9t

▼140文字ブリーフィング:

シンガポールの法改正により、
ゼロ年代以降、日本の超富裕層が、
オフショア(租税回避地)としてシンガポールを利用しています。
相続税を払いたくないために彼らは5年間、
年の半分(183日)をシンガポールで過ごすが、
そこでの毎日はたまらなく退屈な地獄だ。
という半ノンフィクションルポ的小説です。
主人公は野村證券の商社マンから、
シンガポールで超富裕層の資産を運用するために
顧客を獲得する仕事をするバンカーで、
実在の人物をもとに構成されています。

「資産を運用するだけで毎年何千万もの不労所得があるので、
 働くモチベーションはない。
 唯一の関心は、国に税金を払わずに資産を子どもに遺すこと」
という「新富裕層たち」の絶望的に不幸な人生が描かれます。

→P9 
〈てらてらと脂で光る焼き台が店の真ん中にあり、
そこから流れる焼き鳥と醤油ダレの煙が、
コの字型のカウンターに取り付いた十数人の客をぼんやりと包んでいる。
 薄く垂れ込めた煙の中から声が聞こえてきた。
「あかん、もう退屈で死にそうや。日本に帰りたいわ」
 男は五十がらみ、「カウス」というあだ名がついている。
 吉本興業大阪の漫才コンビ、
 中田カウス・ボタンのボケ担当にそっくりなのである。
 だが、本人はあだ名で呼ばれていることを知らない。
隣に座る中村咲子たちがそう名付けて、
いつの間にか彼女の勤め先で広がっていることも、もちろん知らなかった。
男は柔ら中名茶髪の彼女を口説くのでもなく、
四角の顔を天井に向け、脂の染みのあたりを見つめていた。
 「やることがないのや。暇なんが一番怖いのう」
 「何を言ってるんですか!贅沢ですよ」
 咲子から軽くたしなめられたカウス氏はうつむいて、
しばらくするとまた愚痴り始めた。
 「わしな、毎日、手帳にバツ印をつけて数えているんや。
あと何年と何日ってな。一日が過ぎると大きくバツ書き入れるんやが、
五年は長いなあ。大阪に戻りたいな。」
 彼は関西でパチンコ屋や不動産業を手広く営んできたが、
それらの多くを売ってシンガポールに移住してきた。
 永住権も取得済みだ。
 資産額は三十億円をくだらないという。
そのうち約十億円を当地にあるムーディーズ格付けAa1の名門行
「Bank of Singapore(シンガポール銀行)」で運用し、
残りを不動産投資に充てている。
シンガポールが不動産バブルと言うこともあって、
ぶらぶら日々を送るだけで毎年数千万円は増えていく計算だ。〉

→P127 
〈元会長やM氏は、「イグジット(exit)組」と当地で呼ばれている。
本来、イグジットとは「出口」を意味する。
金融業界では、ベンチャービジネスの創業者や
ファンドなどの投資家が株式を売却し、
利益を手にすることを指すのだが、
シンガポールでは「ゴールイン」、
あるいは「あがり」の人々という意味で受け取られている。
 日本で会社を売ったり、株やFX取引などで一稼ぎしたり、
あるいは仕事をやり終えたりして”収穫”を済ませ、
海を渡ってきた人々のことである。
 上がりの人々の大半は、シンガポールの中心である
オーチャードロードから車で十分以内のところのに住んでいる。
 オーチャードロードの西の端にあるのが、
高級住宅街のタングリン地区だ。
ここにも、資産三十億円の元パチンコ業者が暮らしている。
冒頭に紹介したカウス氏である。
M氏とカウス氏の共通点はBOSの顧客であり、
時間つぶしに苦労をしていることだ。〉

、、、アーリーリタイアして南の島でゴルフ三昧、、、
というのは、想像している間は天国ですが、
じっさいにやってみると地獄だというのが、
「本人たちの実感」だというのがよく分かります。
彼らは例外なく絶望的なまでに孤独です。
詳しい説明は省きますが、
「莫大な金融資産」と「親しい友人」はトレードオフだからです。
アメリカの宝くじは配当金数十億円という規模ですが、
当選者の5年後を調査すると例外なく当選前より不幸になっている理由も、
ここにあります。

人は労働を離れては幸福を得られませんし、
親しい友人は幸せを得るうえで金融資産より大切です。
これは別に「価値観や道徳の押しつけ」ではなく、
人間という生き物の本性(脳の性質)に基づく科学的事実です。

聖書の箴言に、
「貧しさも富も私に与えず、
ただ、私に定められた分の食物で私を養ってください。
私が食べ飽きて、あなたを否み、
『主とはだれだ』と言わないために。
また、私が貧しくて、盗みをし、
私の神の御名を汚すことのないために。」
という言葉がありますが、
知恵に富んだ教えです。
「中庸」は人が不幸にならないための知恵なのです。
(1,848文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:該当なし

コメント:
3冊ともそれなりに面白かったですが、
「これは買って読む価値があるよ!」というレベルのものはありません。
この「リコメンド本」のコーナー、判定がシビアになってきました笑。
、、、ということはここに紹介する本というのは、
けっこう「本当に良い本」が多いので、
どうぞ皆様の書籍選びにお役立てください。



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陣内が先週読んだ本 2017年12月第二週 『身体知性』佐藤友亮 他4冊

2018.06.06 Wednesday

+++vol.043 2017年12月19日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年12月第二週 12月10日〜16日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●貧乏はお金持ち

読了した日:2017年12月12日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:橘玲
出版年:2009年
出版社:講談社

リンク:http://amzn.asia/8q78eah

▼140文字ブリーフィング:

最近橘玲さんの本を3冊ほど立て続けに読みました。
ずっと面白かったのですが、この本だけはクソでした。
前半は面白かったです。
エンロンの不正の話しなども面白かったし、
アメリカに「マイクロ法人」を立ち上げる
フリーエイジェントが3000万人いるし、
これからの日本でもそういう人は増えていくだろう、という話も、
私自身がある種のフリーエイジェントに近いですから
参考になる点も多かったです。

しかし、後半はクソでした。

ほとんどが「節税」の話しで読んでいて不快になりました。
マイクロ法人を立ち上げ家計と会社の会計を連結させることで
国家に税金を払わないどころか補助金までもらえる、
というようなクソみたいな話しです。
サザエさんをモチーフに、
マスオさんが「株式会社フグタ」を作ると、
磯野家はいろんなものを経費で落とせるので収入が増えて、
さらには国から補助金をむしり取れる、
などのシミュレーションも不快でした。

もし日本の全員がそれをしたら国家は破綻し、
道は穴ぼこだらけになり、治安は悪化し、
いつか「警察からの保護と上下水道は金持ちの贅沢品」になるでしょう。
「自由は大切」だし、国家や組織にぶらさがるのではなく、
自分で自分の人生を設計していくのだ、というところには共感します。
そして私も将来、いずれかの時点でマイクロ法人を作るかもしれませんが、
彼と私とでは思想的な根本が違うのが確認できました。
この本に全く書かれていない大事なことは
「じゃあ、何をしてお金を稼ぐのか」という部分です。
社会に貢献する、という視点は皆無です。
彼は、土地を転がしたりFXや株で儲ける利ざやとしての金融資本と、
「社会に役立つ労働によって稼いだお金」が本質的に異なる、
というマルクスやアダム・スミスの基本である、
「労働価値説(価値の源泉は労働にある)」を押さえていないので、
議論が空転しています。
私のオールタイム・ワースト本、
「金持ち父さん貧乏父さん」と同じニオイを感じました。
(628文字)



●変態する世界

読了した日:2017年12月13日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ウルリッヒ・ベック
出版年:2017年
出版社:岩波書店

リンク: http://amzn.asia/4xr8UJt

▼140文字ブリーフィング:

ウルリッヒ・ベック氏は、
現在世界に生きている「知の巨人」のひとりです。
私は2011年3月11日の震災発生以降、
2年ほど福島に定期的に通っていました。
そのときに友人を通してベック氏の書いた、
「危険社会」という本を知り読みました。
「危険社会」をベック氏が書いたのは、
ソ連邦が管理していたチェルノブイリ原発の事故が、
ドイツの人々の健康を脅かし政策決定に影響を与える、
という現実に直面したとき、
「もはや私たちの暮らす世界は『国民国家』という単位では、
 とらえきれなくなっているのではないか」
という疑問を抱いたことが契機でした。

「危険社会」は福島原発事故後に世界が直面したことを、
まったくなぞっているような「予言的な本」であり、
ベック氏も私の記憶が確かなら震災後日本に来て提言をしています。
この本はそれからさらに5年間、ベック氏が何を考えたか、
という足跡です。
ポイントは、「国民国家という枠組み」どころか、
私たちが「世界を捉えてきたその方法がことごとく無効になってきている」
というのが現代世界の現状であり、その理由は、
今、世界が「変態(メタモルフォーゼ)」しているからだ、
というのがベック氏の指摘です。
幼虫がサナギになり、そして蝶になる、
という「変態」です。
引用します。

→P9 
〈世界の蝶番が外れてしまっている。
多くの人々が考えるように、このことは、
この言葉(unhinged)の持つ二つの意味で正しい。
つまり、世界は“継ぎ目が外れ”ており、”狂ってしまった”のだ。
私たちはあてどなくさまよい、混乱し、
「これには賛成、あれには反対」と議論している。
しかしながら、あらゆる対立を超えて、
また国や地域を問わず、大方の人が合意できる意見が一つある。
それは、「私はもはやこの世界を理解できない」というものだ。
本書の目的は、「なぜ私たちは、もはや世界を理解できないのか」を理解し、
説明を試みることだ。
そのために「変化・変動(change)」と
「変態(metamorphosis)」を区別することにする。
より正確には、「社会における変化」と「世界の変態」の区別だ。〉

、、、ベックは本書で世界の変化、
つまり(原発事故などの)リスクのグローバル化や代理母、
国際的な「格差の拡大による新たな階級の形成」、
ネットネイティブ世代の出現と旧世代のティラノサウルス化、
気候変動などにより、
「方法論的ナショナリズム」から「方法論的グローバリズム」へと、
人びとはシフトしていくだろう、という未来予測をしています。
具体的にはそれは国家の民主主義から、
都市のグローバルな結びつきによる民主主義へ、といったような方向です。

この本のまえがきで、
ベック氏が2015年に心臓発作で他界したことを私は知りました。
この本は彼の妻らが死後に彼の原稿をまとめた遺稿です。
よく知られた名作・カフカの「変身」の英語タイトルは、
「メタモルフォーゼ」であり、2015年はちょうど、
「変身」出版から100周年記念でした。
ベックの構想は、100年越しのカフカへのオマージュとして、
本書を書くことだったかもしれない、
と訳者はあとがきで推論しています。
(1,286文字)



●身体知性

読了した日:2017年12月13日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:佐藤友亮
出版年:2017年
出版社:朝日選書

リンク:http://amzn.asia/iHuP5gV

▼140文字ブリーフィング:

めちゃくちゃ面白かったです。
医者であり合気道の先生でもある著者が、
医学という領域で「西洋の分析的知性」と、
「東洋の統合的知性」の融合を試みています。
西洋医学の本質は「科学的態度」であり、
それが医学をここまで発展させ死亡率を劇的に下げ、
人の幸せに貢献してきたのは疑いようがない。
しかし、西洋医学がもつその分析的性質は、
「患者の身体をダイナミックで有機的な現象」と観る東洋的な視点から遠ざけ、
「患者の身体をパーツの寄せ集めと検査数値の集合」と観る、
近代医学が抱える数多くの矛盾の原因となっている、と指摘しています。
アントニオ・ダマシオら「神経生理学者」による最新の科学的知見は、
身体の機能というのは各臓器個々の働きではなく、
臓器間の有機的なつながりによってもたらされる、
という「東洋的な」概念を裏付けています。
つまり、脳の記憶やら分析やらという機能は、
肝臓や胃腸などの臓器と連動している、というわけです。
「肝臓移植した患者の性格が変わる」というのは、
現場の外科医の間では以前から噂されていたのですが、
ダマシオらの研究はそれを裏付ける証拠を与えています。
これは「ソマティックマーカー仮説」と呼ばれる
有力な学説として知られています。
一カ所だけ引用します。

→P48〜49 
〈肉眼解剖学が、「科学」から「知識」へと変化したことは、
西洋医学の身体観の変化を端的に現しています。
解剖学を知識として理解すると言うことは、
身体各部位を固定化した概念にはめ込むと言うことです。
これは、人間の身体を、部品、パーツの集まり、
ととらえることにつながっています。
身体を部品として扱うことは、
多くの人を対象として均質に品質が整えられた医療を提供する上では有用です。
しかしこれは、医学・医療が科学(サイエンス)の範疇を逸脱し、
工学(エンジニアリング)の世界に踏み込んでいることを意味します。
半ば揶揄的に、そしてインパクトを強くするために用いられてきた、
「人間ドック」という言葉は、今や当たり前に使われるようになっています。
身体を部品の集まりと見なすことは、
すでに医師だけが行っていることではなく、
広く一般社会に浸透していると言っても良いでしょう。
西洋医学が、科学的態度よりも知識を重視するようになったことの善し悪しを、
一概に結論づけることは難しいです。
ただ、西洋医学の特徴である分析の追求は、
医学における情報量を莫大に増やし、
情報と知識の蓄積に、より大きな価値が置かれる傾向をもたらしました。
本来、分析とは、医師が科学的態度を取るために利用するものでした。
しかし現代の西洋医学では、
分析の追求によって膨大になった情報や知識が、
医師の科学的態度を呑み込みつつあります。〉
(1,116文字)



●ポストモダン科学と宇宙論

読了した日:2017年12月13日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:S.トゥールミン
出版年:1991年
出版社:地人選書

リンク:http://amzn.asia/8LVhkmX

▼140文字ブリーフィング:

学術的な内容で、わりと「難解な」部類に入る本ですが、
内容は非常に興味深く面白かったです。
現代は「科学が神話(宗教)を駆逐した」と言われるが、
それは本当か?という話です。
現代の合理主義は「私たちは神話に支配されていない」と誇らしげに歌うが、
実は彼らがよって立つ「科学」こそが神話に他ならない、
という「ミステリー小説で犯人が著者だった」という、
よくある大オチに近いのではないか、
と著者は分析します。
そして「進化論」「重力」「不可能性定理」「素粒子論」
などの科学用語が「神話的に」つかわれるとき、
つまりそれらの言葉が例えば社会学、経済学などの分野で使用されるとき、
それらは「神話」として機能している、と。

「あとがき」で著者が語っているのは、
近代科学的宇宙論が無効になった現在、
再び「全体を語る」ことの必要性です。
これは「非分析的な知性」によって物事を統合する、
という「身体知生」の話にも通じます。
これは西洋医学が近代科学の落とし子であることを考えれば
当然といえば当然なのですが。
そう考えると「ポストモダン医学」は東洋と西洋の融合、
分析と物語の統合、といったものになるかもしれないなぁ、
と思いながら二冊の本を読みました。
(502文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:「身体知性」

コメント:
この本は面白かったです。
自信をもっておすすめできます。
特に医療や介護や福祉に従事している方は、
多くのインスピレーションを得られるに違いありません。
最後の章はなんと、私も見学に訪れたことがあり、
このメルマガで何度も語ってきた「べてるの家」の話です。
「身体知性」とベテルの家、何の関係があるの?
と思われるかもしれませんが、関係あるのです。
引用します。

→P176〜177 
〈「ところが次第に不眠がちとなり、
身体がこわばったかと思うと、
突然大声を上げて掴みかかってくるようになった。
壁をたたき、ガラスを割った。
(中略)入院させる度に、
私たちは自らの対応に落ち度があるのではないかと自責の念にとらわれていた。
私たちは無力だった。
そんなくりかえしの毎日を過ごしながら、
相変わらず言葉を失い、体は固まり、口は渇き、
やせていく彼のまえにへたり込むように座っていた私は、
自分自身の鬱々とした感情を吹き払うように、
『潔どん!歌でも歌おうか!』と声をかけていた。
すると、彼は自分の中に何かを探そうとでもするかのように、
ゆっくりと目を閉じ、もがくように口を動かした。
『いつくしみふかき ともなるイエスは 
 われらのよわきを しりてあわれむ・・・』
彼が歌った!
それは信じられない光景だった。
ことばを失った彼が、愛唱の賛美歌を口ずさんだのだ。」
(『「べてるの家」から吹く風』)
向谷地氏は、この歌を聴いて「涙が止まらなかった」と書いています。
そしてこのときに
「彼らの悩みを共に悩み、共に挫折し、共に戸惑い、
無力の中でただ祈るしかない悩み多い教会の現状の前にひれ伏したとき、
そこには『悩む教会』という新しい可能性と希望が与えられた」としています。
、、、私には、そのように人の心を揺さぶることが出来るのが身体の力であり、
賛美歌の力なのだと思われます。
賛美歌とは「祈り」の身体的行為であり、
祈るという振る舞いの中に、
自分とは異なるもの(神や他者)とつながる力が宿っているのでしょう。
何を祈るかという内容(意味)ではなく、
祈るという身体的行為そのものに力があります。
、、、私は、早坂氏が賛美歌を歌ったときに
この「べてるの家」が生まれたのだと思います。
身体は、「個」を超えて行為を表現するときに不思議な力を発揮するようです。
これはもはや、身体知性という言葉では
包括しきれない身体の持っている力なのでしょう。〉



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陣内が先週読んだ本 2017年12月第一週 『失敗の科学』マシュー・サイド 他2冊

2018.05.30 Wednesday

+++vol.042 2017年12月12日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年12月第一週 12月3日〜9日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●失敗の科学

読了した日:2017年12月8日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:マシュー・サイド
出版年:2016年
出版社:ディスカバー・トゥエンティワン

リンク:http://amzn.asia/3d9wVuY

▼140文字ブリーフィング:

義理の兄に教えてもらいました。
非常に、非常に、面白かったです。
著者の問題設定は、
「航空機事故は一貫して減り続けているのに、
 医療ミス、警察の誤認逮捕、裁判所の冤罪はなぜ減らないのか」
という疑問に端を発します。

報告されていないものも含めると医療事故というのは、
ものすごい件数が起きており、その死者数はアメリカ一国だけで、
毎月3回、9.11のテロが起きているのと同じぐらいになるそうです。
一方、航空機事故というのはこの数十年、一貫して下がり続けており、
飛行機は自動車よりはるかに安全な乗り物だということはもはや常識です。
具体的には飛行機事故の確率は100万フライトに0.37回。
生涯100万フライトした人、つまり80歳まで生きた人だと、
生まれてから死ぬまで一日休まず30回飛行機に乗り続けると、
3分の1の確立で事故にあいます。
つまるところ、殆ど宝くじに当たるような確率でしか、
私たちは事故にあいません。
一方、一生の間に自動車事故で私たちが死ぬ確率は、
車に乗らなくてもだいたい「200〜100分の1」ぐらいです。
(事故死の半分は歩行者ですから)
これはかなり高い。

人は感情の生き物なので、
「コントロールできないが低いリスク」を、
「コントロールできるが高いリスク」より高く見積もる、
という認知バイアスを持っています。
この認知バイアスが多くの不合理な行動を取らせるのですが、
この話はまた別の話なので今日は置いておきます。

、、、で、本書ですが、
著者は、
「なぜ航空業界はこんなに安全性が高まっているのに、
 医療はそうではないのだろう?」
ということの原因を探り始めました。

すると面白いことが分かってきた。

航空業界は「失敗を解析し、次の事故防止につなげる」
という確固たる意志と構造的な仕組みと、
そして失敗を報告することが報償され、
失敗を隠すことが懲罰される(そもそも不可能)という、
長年の経験知を積み上げてきてきたのです。
すべてのフライトで「ブラックボックス」と言われる、
操縦室のすべての音声と操作が録音、記録されているデータは、
飛行機が墜落しても壊れないようになっており、
そのブラックボックスは「宝の箱」と考えられています。

一方医療、裁判官、警察官の場合、
失敗を報告するインセンティブ(誘引)よりも、
失敗を隠蔽するインセンティブが高くなっていることが多い。
そこに共通するのは「権威の無謬性」と、
「検証を拒む態度」だと著者は言います。
医者や裁判官や警察官は、「自分が間違っていた」と、
言いづらい組織文化、精神構造を持っており、
その組織体質は「失敗から学ばない」ように構造化されている、
というのです。

医療ならば具体的には、
患者が死後の病理解剖に献体することを意思表示していても、
それが実際に行われるケースは究めて低い、というところに現れます。
つまり、解剖しちゃったら、「全部分かっちゃい」ますから。
どの部分が誤診で、どの部分が正しかったのか、
「答え合わせ」できてしまう。
それは困るわけです。
「医師は常に正しい」という神話が崩れてしまいますから。

航空機ならばどうでしょう?
何か大きな事故や「ヒヤリ・ハット」事象があったとき、
「病理解剖」は必至です。
ただちに「ブラックボックス」がまな板の上に乗せられ、
何が悪かったのか、何を改善すれば再発しないのか、、、
といった議論が行われます。
その議論には「対策という宝」が詰まっています。

「自分たちは無謬で失敗は悪である」と考えるか、
「人間は間違う。失敗は宝の山である」と考えるか、
個人や組織や業界には、この二種類があり、
長期的にみてその質を高め続けられるのは明らかに後者だ、
というのが著者の主張です。

詳述はしませんが、
二つの印象的な箇所を引用します。
ひとつは質の向上のためには、
「質より量!」だというのを証明する実験。
もうひとつは、
「日本全体が先ほどの意味で『前者(失敗を悪と考える)』だ」
という話です。

→P169〜170 
〈『アーティストのためのハンドブック
――制作につきまとう不安との付き合い方』の著者
デイヴィッド・ベイルズとテッド・オーランドは、
同書でこんな実験を紹介している。

ある陶芸クラスの初日、生徒が2組に分けられ、
一方は作品を「量」で評価し、もう一方は「質」で評価すると告げられた。
量のグループは最終日に全作品を提出し、
各自、総重量が50ポンドなら「A」、40ポンドなら「B」と評価される。
質のグループは質のみによる評価なので、
自分で最高だと思う作品を一つ提出すれば良い。

結果、面白い事実が明らかになった。
全作品中最も「質」の高い作品を出したのは、
「量」を求められたグループだったのだ。

ベイルズとオーランドはこう指摘する。
「量のグループは、実際に作品を次から次へと作って試行錯誤を重ね、
粘土の扱いも巧くなっていった。
しかし質のグループは、
最初から完璧な作品を作ろうとするあまり
頭で考えることに時間をかけすぎてしまった。
結局後に残ったのは、壮大な理論と粘土の塊だった」

似たようなことは政治分野でもみられる。
たとえば「制服の着用は規律を高める要因になるか」
と言う議論(空論になることも多い)があったとしよう。
こういう場合、政治家はすぐに心理学者に意見を聞き、
高い役職の人間を集め協議を開く。
これこそまさに無駄に綿密なトップダウン式のやり方に他ならない。
時間を浪費する代わりに、得られるものは「粘土の塊」だ。
本来彼らがなすべきなのは検証作業であり、
何をどうすれば本当に規律が高まるのか、
何が役に立たないのかをひとつひとつ実際に試すことだ。
もちろん失敗の数は増えるだろう。しかし、だかこそ多くを学べる。〉


→P302〜303 
〈失敗に対する姿勢の違いについて、
ここでは起業精神という観点から考えてみたい。
アメリカの起業家は、最初のベンチャーが失敗しても
そこであきらめることは滅多にない。
「自動車王」のヘンリー・フォードはその典型だ。
彼が最初に起業したデトロイト自動車会社は失敗に終わった。
次のヘンリー・フォード・カンパニーもそうだ。
そして3番目に創業したフォード・モーター・カンパニーで世界を変えた。
彼はこんな言葉を残している。
「失敗は、より賢くやり直すためのチャンスに過ぎない」

一方、日本ではまったく文化が異なる。
複雑な社会的・経済的背景の影響によって、
失敗は不名誉なものとみなされる傾向が強い。
失敗は、基本的に自分だけでなく家族にとっても恥なのだ。
ビジネスが失敗して非難されるのは珍しいことではなく、
非常に厳しく責任を追及されることも多い。

起業精神に関する統計を見てみよう。
世界銀行のデータによれば、日本の年間起業率はOECD諸国のなかで最下位だ。
2013年においては、アメリカの3分の1に留まった。
また「OECD科学技術・産業スコアボード2008」によれば、
ベンチャー投資額についても日本が最下位だ。
アメリカの投資額は、対GDP比で見ると日本の20倍以上になった。
同様のデータはまだある。
国際的起業家調査(グローバル・アントレプレナーシップ・モニター)では、
日本の18〜64歳の人口のうち、
起業活動を積極的に行っているのはたった1.9%という結果が出ている。
カウフマン財団(起業家育英などにかかわるアメリカの非営利団体)の調査によれば、
現在アメリカでは8人に1人(11.9%)が企業活動に従事しているという。
これは先進国の中ではほぼトップだ。

起業意識の違いが、経済全体に実質的な影響を及ぼすことは言うまでもない。
ウォートン・スクールの学生が書いた論説では次のように書かれていた。
「日本では『機会志向 Opportunity-driven』の起業精神が相対的に不足しており、
それが過去20年間の経済停滞の一因となっている」。
一方、アメリカでは、起業家精神が
経済繁栄をもたらした要因の一つと考えられているようだ。
「実証研究によって、機会志向の起業精神こそが、
現在の市場経済における成長の源だということが明らかになっている」
 
しかし起業精神の違いは、
本当に失敗の受け止め方の違いによるものなのだろうか?
その答えを出そうと、GEMは2009年、
イノベーション志向の先進諸国20カ国で、
起業に関する大々的な意識調査を行った。
結果は明白だった。
起業失敗に対する恐怖心が最も高かったのは、
日本人だったのである。アメリカ人は最低クラスだった。〉

、、、どうです?
インパクトがありますね。
失敗するのが嫌だからチャレンジしない、
という日本の文化が変わらなければ、
「失われた20年」は、「失われた30年」になり、
最後には「失われた国」になる日も遠くありません。
日本社会は「失敗を奨励する」方に舵を切らなければばならないと、
私はあらゆる意味で思うのですが、
子どもの将来の夢の第一位が「正社員(公務員)」であり、
メディアは失敗した人を嬉々として袋叩きにしていますから、
しばらくは望み薄かもしれません泣。

最後に本書に引用されていた、哲学者カール・ポパ―の名言を紹介します。 
「真の無知とは、知識の欠如ではない。学習の拒絶である。」
(3,637文字)



●ラストシーン

読了した日:2017年12月8日
読んだ方法:蒲郡のツタヤで書籍購入

著者:北野武
出版年:2017年
出版社:(株)ロッキング・オン

リンク:http://amzn.asia/ce0Bju4

▼140文字ブリーフィング:

70歳の北野武のインタビュー。
彼の書いたもの(語りおろし)を読むといつも、
とんでもなく頭の良い人だ、と私は感服します。
思考の切れ味というか、そういうのがハンパじゃない。
しかも彼の頭の良さの質は、文系ではなく理系のそれです。
漫才でもテレビ番組でも映画撮影でも、
彼は感性とかいうフワフワしたものに頼っておらず、
全部「素因数分解」の考え方で分解し構築している。
そして、そのギリギリのところを詰めると、
最後は「感性(情緒)」に行き着くことも知っている。
まさに日本が生んだ数学の天才、岡潔の思想です。
私の脳はかなり理系寄りなので、
余計彼の思考に心酔するのかもしれません。
(276文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:「失敗の科学」

コメント:
先週は実は風邪を引いてしまい2冊しか本を読めなかったのですが、
久しぶりに自信を持ってお勧めできる本を紹介できます。
勢い余って3,500文字以上紹介した、
「失敗の科学」。
すばらしい本でした。
今Kindleで、タレブの「反脆弱性」を読んでいますが、
まったく同じテーマです。
「失敗の科学」のほうが短くて読みやすいと思います。
買って読むに値する本です。超お勧めです。



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陣内が先週読んだ本 2017年11月第五週 『安全保障は感情で動く』潮匡人 他4冊

2018.05.24 Thursday

+++vol.041 2017年12月5日配信号+++


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年11月第五週 11月26日〜12月2日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●最貧困女子

読了した日:2017年11月27日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:鈴木大介
出版年:2014年
出版社:幻冬舎新書

リンク:http://amzn.asia/2OyHENj

▼140文字ブリーフィング:

私と同世代の著者、鈴木大介さんはこの本を執筆後、
脳梗塞になりその闘病を記した
「脳が壊れた」という本を書きました。
私は自分自身も「脳の器質異常」のひとつである、
バーンアウトと鬱病を経験したので、
彼の闘病記は大きな共感をもって読みました。
フリーランスのジャーナリストとして貧困の現場を自分の足で取材し、
後ろ盾なく「筆一本」で食べていくというプレッシャーの大きさは、
想像に難くないですし、その取材対象の「貧困の現実」はあまりにも過酷で、
それも脳梗塞の遠因になったのではないか、
と同書で分析しています。
、、、で、取材するだけで彼に病因を与えた、
日本の「最も虐げられた弱者」のひとつである、
「再貧困女子」の現状を訴えるのが本書です。
その現状はあまりにも壮絶で過酷すぎて、
読み進めるのがつらいほどでした。
書き進めた鈴木さんはもっとつらかったでしょう。
(何度も言うようにそれは彼の健康を蝕むほどでした)
、、、しかし、「声なき者の声」となって、
社会的弱者に「ヴォイス」を与える代弁者としての彼の姿勢を、
私は尊敬しますし、大いに共感します。
彼の魂の叫びとも言える「あとがき」から引用します。

→P209〜210 
〈助けて下さいと言える人と言えない人、
助けたくなるような見た目の人とそうでない人、
抱えている痛みは同じでも、後者の傷みは放置される。
これが、最大の残酷だと僕は思う。
観念的なことを書いてしまったが、
現代の日本ではこうした最悪の残酷が拡がりつつある。
格差社会、若者の所得の低さ、特に貧困が単身世帯の女性や、
ひとり親(特にシングルマザー)に集中しているという報道は、
昨今否応なく耳に入ってくる。
だがそんな中、その貧困や抱えた痛みが「不可視化」され、
それどころか差別や批判の対象とすらなってしまう女性や
未成年の少女らがいること、
それがセックスワーク(売春・性風俗)周辺に
集中していることを本書では描いた。

本音を言えばルポラーターとしての僕の心情は、もう限界だ。
売春する相手への嫌悪感を消すために薬物中毒になった少女がいた。
「身体が売れなくなったら死ぬときだ」と真顔で言う16歳の少女は、
初めての売春は小学5年生の時だと言った。
その身体中に、虐待の傷痕があった。
街娼する母親の元に生まれたが、
いまは売春で得た金で母と弟たちを養っていると
誇らしげに語る中学3年生がいた。
知的障害を抱える母親の元から家出し、
同じく知的障害を持つ姉と二人で
路上生活と売春を1年続けたという少女がいた。
義父からの性的虐待を看過してきた母親に殺意を抱き続ける少女がいた。
風俗店5店舗に連続で面接落ちし、
その週のうちに売春相手が見つからなければ
「肝臓を売れるところを教えて欲しい」と言う20歳がいた。
取材期間中、幼娘を残して自殺してしまった売春シングルマザーもいた。
彼女は売春相手とホテルに向かう際、
愛娘が児童養護施設で作ってくれた折鶴を御守りのように財布に入れていた。

何も与えられず、何にも恵まれず、
孤独と苦しさだけを抱えた彼女らは、
社会からゴミくずを見るような視線を投げかけられる。
もう、こんな残酷には耐えられない。
繰り返す。抱えた痛みは同じなのに、
なぜ彼女らを救おうとするものがこれほどまでに少ないのか。
彼女らを放置することとは、
例えば病院の待合室で同じ病気で苦しむ人々がいるとして、
一方を診察室に入れ、一方を放置する状態と何ら変わりない。
果たしてこれが正しい社会とはとても思えないし、
それを見過ごすことは絶対的に悪ではないのか。〉

、、、私は公務員時代に教会の仲間と共に、
愛知県で「聞き屋ボランティア」という、
人の話を無料で聴くボランティア活動をしていました。
月曜日と金曜日の夜8時から10時まで、
仕事が終わった後に豊橋駅に看板を掲げて座ります。
「あなたのお話無料で聴きます」と書かれた看板です。
OLさんや酔っ払ったサラリーマンや年配のホームレスの話も沢山聞きましたが、
私たちが最も多くの時間を割いたのが鈴木さんがこの本で紹介しているような、
「貧困の再生産」のなかで生まれ育った少女たちでした。
私はデリバリーヘルスの「従業員」寮(ヤクザが取り仕切っている)から、
十代の少女が夜逃げするのを自分の軽自動車で手伝ったこともありますし、
リストカットの傷痕で両腕がいっぱいの少女の「母親」は、
彼女が「家」に帰るとリストカットをしていました。
それを観たくないから彼女は毎晩駅にたむろし、
そして泊めてくれる友人の家を渡り歩いていました。
多くの少女たちは身体にあざがあり、
家に帰ると母親の恋人に暴力を振るわれ、
常にドラッグの危険と隣り合わせでした。

鈴木さんの取材対象のルポを読みながら、
私は過去に出会った何人かの少女たちの顔を思い出していました。
鈴木さんがこの本で書いているのは、
こうした人々に寄り添うことの大切さというよりも、
(それももちろん必要ですが)
もっと構造的な問題に社会が注目することの必要性です。

鈴木さん曰く(私の経験からも同意するのですが)、
セックスワークに搾取される「最貧困女子」たちは、
何らかの障害「知的障害、発達障害、精神障害」を抱えていることも多く、
さらに彼女らは「家族の縁・地域の縁・制度の縁」からも切れています。
日本には公的なセーフティネットが確かに充実していますが、
そういった制度と彼女らは、「絶望的なほどに相性が悪い」のです。
結果として彼女らの最後のセーフティネットが、
性風俗産業になってしまっている、という現状がある。
鈴木さんの提言は、公的な制度がもっと柔軟に対応することと、
民間の援助者が彼女らの「自由」を奪わない形で
「安心して寝られる場所」としてのシェルターを提供すること、
といったことです。私も同意します。
(2,310文字)

▼参考リンク:「脳が壊れた」鈴木大介
http://amzn.asia/5SNQGrB



●残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

読了した日:2017年11月28日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:橘玲
出版年:2010年
出版社:幻冬舎

リンク:http://amzn.asia/f6F8WUG

▼140文字ブリーフィング:

橘玲(たちばな・あきら)さんは、
夏頃に「(日本人)」という本で初めて知りました。
勝間和代に代表される、
(アンドリュー・カーネギー、ナポレオン・ヒルなどから連なる)、
「成功哲学」は、「やればできる」という前提に立っています。
筆者はしかし、「やってもできない」というのが、
現在の科学が私たちに告げる残酷な現実だ、と指摘します。
つまり、
「人間の能力は生まれたときにかなり決まってしまっている」
という身も蓋もない現実であり、
スティーブン・ピンカーらの著作で論証されています。
しかし、現在の民主主義政治と自由主義経済の
「世界の仕組み」を維持するためには、
この「不都合な真実」はあまりにも「政治的に正しくない」ために、
誰もそれを口にしません。
(口にしたら一発退場のタブーです)
しかし、だかといって「やればできる神話」を前提に人生を構築しても、
結果的に殆どの人は幸福になれないよ、と橘さんは指摘しています。
私たちに今必要なのはタブーに踏み込み、
「やっても出来ない(能力は生まれつきほぼ決定している)」
という前提に立つ「新たな成功哲学」を構築すべきだ、
というのがこの本の骨子です。
面白かったです。
(490文字)



●安全保障は感情で動く

読了した日:2017年11月28日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:潮匡人
出版年:2017年
出版社:文春新書

リンク:http://amzn.asia/dVi30sp

▼140文字ブリーフィング:

「トゥキュディデスの罠」という言葉があります。
こえれは歴史家のトゥキュディデスが、
「スパルタが新興国アテネを恐れたことが戦争の原因になったのだ」
という分析をしたことから生じた命題で、
「新興国の急激な勃興が、
究めて高い確率で現覇権国との戦争に帰結する。」
という「歴史の法則」であり、
第二次世界大戦(欧州)ならば、
ドイツという新興国を覇権国のイギリスが恐れたこと、
第二次世界大戦(太平洋)ならば、
日本という新興国を大国アメリカが恐れたことが、
戦争の原因と言えます。
このトゥキュディデスの罠のポイントは、
戦争の引き金を引く「恐れ」が論理や分析ではなく、
「感情」だということを著者は指摘しています。

現在の国際情勢が「一触即発」なのは、
北朝鮮のトップだけでなくアメリカのトップまでが、
きわめて感情的に行動する「偶発的行動」が多い、
「先の読めない指導者」だからです。
2台の車が交差点で交わる際、
片方が無免許の暴走族でも、片方が優良ドライバーなら、
事故の危険性はまだ低いですが、
片方が無免許の暴走族で、
もう片方が認知症が始まっている老人の場合、
きわめて高い可能性で「事故」が起きます。
北朝鮮情勢での「事故」が起きた場合、
第二次朝鮮戦争が始まり、朝鮮半島ではもちろん、
横田基地が米軍の拠点となる日本本土でも多数の死者が出ますし、
アジア経済全体が壊滅的なダメージを受けるので、
日本は無傷でいられないどころか、戦後最大の国難となり、
最悪の場合、破局のシナリオも考えられる、
と元外交官の佐藤優さんは警告しています。

日本の首相は「異次元の圧力」かのように、、
「圧力一辺倒」を続けていますが、
この場合何よりも避けるべきは戦争なので、
トランプに同調するばかりというのは危険だと私は考えます。
(ちなみに先月私は拉致被害者の家族・横田早紀江さんですら、
 安倍首相に「圧力一辺倒は止めて」と発言している、
 というネット記事を読みました。)
▼参考記事:ついに横田早紀江さんも、「圧力一辺倒」に異論
https://www.excite.co.jp/News/politics_g/20171123/Gendai_428124.html

著者の本に話を戻しますと、
著者はキリスト教徒でもあり、
「戦争は感情で起こる」ということを理解することが、
今の局面にもっとも大切だと主張しています。
私もこれに同意します。
米ソが核兵器を本当に使う一歩手前までいった「キューバ危機」のときに、
J・F・ケネディの側近だったマクナマラ氏が回顧録を出版していて、
著者は彼のことばを紹介しています。
曰く「キューバ危機の最大の教訓は、
『相手の靴を履いて考える』ということの大切さだ。
ケネディ大統領は最も長い時間をかけて、 
『フルシチョフならどう考えるか』を考え抜いた。
そしてフルシチョフの自尊心を傷つけないように、
面目をつぶさないように、恥をかかせたりしないように、
細心の注意を払い最大の努力をした。」と。
トランプにケネディのような知性は期待できませんから、
どうかせめて、安倍さんには冷静であってほしい、
と願わずにいられません。
(1,245文字)



●反省させると犯罪者になります

読了した日:2017年11月30日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:岡本茂樹
出版年:2013年
出版社:新潮新書

リンク:http://amzn.asia/6tUp3dF

▼140文字ブリーフィング:

著者は刑務所での累犯受刑者の更生支援の経験から、
「反省文」は逆に抑圧を強め孤立を生み出し再犯の可能性を高める、
と主張しています。
むしろ大切なのは被害者の立場に立つまえに加害者としての
「被害者や両親への怒り、憎しみ、不満」を吐き出させることだという。
そうすると自然に彼らは被害者の気持ちにも気がつき本当の反省に至るのだと。
同じことが「いじめ教育」にも当てはまり、
「いじめをすることがどれほど被害者を傷つけるか」を教え込む、
というアプローチが現在推奨されているのですが著者によれば、
それは逆効果を生む、と。
なぜか。
いじめをする生徒はたいてい、自分が傷ついているからです。
家で虐待を受けていたり、プレッシャーで追い詰められていたりする。
まずはそれを吐き出す場を設けなければ、
「形だけの反省文」と同じで、より「よい子バイアス」を与え、
もうひとつの抑圧を追加しているだけなのだ、と。
引用します。

→P163 
〈さらに言えば、親から虐待されていたり
厳しいしつけを受けていたりする子どもたちにとって、
「いじめられた子どもの気持ち」を考えさせることは
とてもしんどいことにはならないでしょうか。
そうした子どもたちは心の中にいつも鬱積した否定的感情が渦巻いています。
彼らは、自分の心の中にある否定的感情のはけ口を求めています。
それは、具体的にはいじめという形に発展する場合もあるでしょう。
そうした子どもたちにとって、
いじめられた子どもの気持ちを考えさせることは、
さらに抑圧を強めることになり、
結果として大きな爆発をもたらすことになるのではないかと危惧します。
彼らにとって本当に必要なことは、
いじめられた被害者のことを考えることよりも、
自分自身が親から受けた「被害」を語る(吐き出す)ことなのです。〉
(738文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:該当なし

コメント:
最近ずっと、「該当なし」ですね笑。
あまり冊数も読めていないし、
軽いものばかり読んでいたので。
11月もけっこう忙しかったので。
敢えて言えば、「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」は、
けっこう面白かったです。
橘玲さんの著書の悪いところは、
引用されている本が興味深すぎて、
読みたい本が雪だるま式に増えて行くことです笑。
まぁ、良いところでもあるんですけど。



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陣内が先週読んだ本 2017年11月第四週 『一億相ツッコミ時代』槙田雄司 他3冊

2018.05.17 Thursday

+++vol.040 2017年11月28日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年11月第四週 11月19日〜25日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●すべてのJ-POPはパクリである 【現代ポップス論考】 

読了した日:2017年11月23日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:マキタスポーツ
出版年:2014年
出版社:扶桑社

リンク:http://amzn.asia/4Dp8w0x

▼140文字ブリーフィング:

マキタスポーツさんはオフィス北野所属の中堅芸人で、
最近は俳優として様々な映画やドラマに出演しています。
彼を私が知るようになったのは、
「東京ポッド許可局」というラジオ番組で、
彼の語る内容が面白いなぁと思って著書を手に取りました。

マキタスポーツという芸名は彼の実家のスポーツ用品店の名前です。
また、彼はミュージシャンでもあり、彼の音楽ネタは秀逸です。
そんな彼が「J-POPは工業製品である」という仮説のもとに、
それをロジカルに「素因数分解」し、
さらには自分で「公式に則って」自分で曲を作ってしまったのが、
「十年後のプロポーズ」という曲です。
私もこの書籍でその存在を知ったわけですが、
これがなかなか良くできている。

参考動画:「十年後のプロポーズ」
https://youtu.be/0Li5q8hrxkY

彼はJ-POPのヒット曲を分析すると、
「カノンコード」、「歌詞」、「構造」という三つの要素に分解される、
と言っています。

カノンコードというコード進行は「大逆循環」といって、
キーを「C」とすると、ベースラインが「ド」から始まって、
シ→ラ→ソ→ファ→ミ→レ→と順に下がりながら、
「ソ」を経過して上がって、また最初の「ド」に戻って、
これを繰り返すというものです。(P28)
「歌詞」はといえば、J-POPに多用される以下のようなフレーズがあります。
「桜舞い散る」「夢に向かって」「瞳の奥に」
「深く息を吸い込んで」「君と同じ空の下」「あの日の君の言葉」など。
そして「構造(楽曲構成)」は、
Aメロ、Bメロ、サビ、ブリッジ、というあれです。

十年後のプロポーズの場合、
確信犯的なカノンコードを使い、
J-POPフレーズをこれでもかとぶち込みまくり、
曲構成もこれまた、
サビ出し→間奏→Aメロ→A'メロ→Bメロ
→サビ→間奏→大サビ→アウトロ
という確信犯的に盛り上げる手法を盛り込んで、
工業製品としてのJ-POPを完成させています。

ここで終わりません。
マキタスポーツさんは4つめの要素として、
「その人でなければ歌えないオリジナリティ」を挙げており、、
それは「身体性」と言っています。
ここが非常に「味噌」だし、彼の慧眼です。

ちょっと関係ないですが、
彼はビジュアル系バンドも「素因数分解」し、
自分も「コミックビジュアルバンド」を作って、
コアなビジュアルファンからひんしゅくを、
お笑いファンからは賛同を買っています笑。
彼の「ビジュアル語変換」が面白いので(関係ないけど)引用します。

→P133 
〈「ビジュアル語変換」という遊びなのですが、
まずは、日常の何でもない言葉を「ドレスアップ」してみましょう。
・バイト→定められた瞬間(とき)
・ポケットティッシュ→街角からふいに差し伸べられる神の御加護
・お中元→灼熱のギブ&テイク
どうでしょう?くだらない日常が、
ずいぶんと耽美的で頽廃的な空気をまとってきた感じがしないでしょうか。
、、、もしもビジュアル系っぽい歌詞を書こうとして迷ったら、
「昼ご飯を食べたら美味しかった」でも
「お母さんに怒られた」でも何でも良いので、
日常的などうでも良いことをビジュアル語変換していけば、
容易にそれっぽいものが作れるはずです。

、、、蛇足ながら「ドレスダウン」もしてみましょう。
・悩ましい鼻腔の叫び→花粉症
・とどまることを知らない無限の欲望→ハッピーターン
・極彩色に彩られた日曜日のミサ→笑点
このように、とかくビジュアル系の世界は色々と倒錯しています。〉

子羊たち(どくしゃ)を、
禁断の言葉たちの羅列(メルマガ)の迷宮(ラビリンス)へと、
導く運命(さだめ)から、
そろそろ解き放たれたいと思います。
あ、つまりですね、要するに、「以上です」。
(1,437文字)



●一億総ツッコミ時代

読了した日:2017年11月23日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:槙田雄司
出版年:2010年
出版社:星海社新書

リンク:http://amzn.asia/g8P1DB4

▼140文字ブリーフィング:

槙田雄司というのは、
先ほどのマキタスポーツさんの本名(ペンネーム)です。
芸人の時と文化活動のときで名前を使い分けるのは、
映画監督北野武と、芸人ビートたけしの「社長」からの、
オフィス北野の伝統なのでしょう。

、、、で、この本の議論はシンプルであり、
私はこれに何も付け加えることはありませんので、
引用のみをします。

→P29 
〈自分では何もしていなくても、他者のことは評価したい。
そうすることで自分の価値を手軽に上げようとするわけです。
日常がバラエティ番組化し、
笑いがツールとして気軽に使われるようになった日本。
多くの人がマスコミ的な視点を持つようになった日本。
そんな「ツッコミ人間」が多く出現するようになったこの国の気圧配置を
私は「ツッコミ高ボケ低」と呼んでいます。〉

→P34
〈自分はツッコまれないように、
つまりボケをやらないように気をつけながら、
ツッコミを入れるわけです。
ツッコミだけを入れていれば、安全な場所から他人を攻撃できます。
そのことで自分の価値を高めようと考えている。
リスクを最小限にしながらリターンを最大限にしたいと考えたネット民は
そのような方法をとってきたのです。〉

→P41 
〈何かとすぐにツッコミを入れようとする態度は、もう有効ではありません。
私は、折角お笑い的な能力を身に付けるなら、
他人を笑うためのツッコミの技術ではなく、
「自らまわりに笑いをもたらすような存在」
になったほうがいいのではないかと思います。
もしくは、他人を笑わず、自分で面白いものを見つける能力を育て方が良い。
ツッコミ的な減点法ではなく、
面白いところに着目する加点法の視点を身に付けるべきだと思っています。〉

、、、現代社会を象徴する言葉は、
「成功したいよりも、失敗したくない」です。
人々はますます「ローリスク・ハイリターン」を求めるようになっている。
リスクは犯さず、リターンは欲しい。
それとSNSの登場によって、
人々が自分は何もせずに斜め上から他者に評価を加える、
「ツッコミ高ボケ低」の気圧配置になってしまっていて、
それが社会を息苦しくしている、と槙田さんは言っているわけです。

なので、他罰的なツッコミではなく、
自ら笑いを生み出す存在になろう、
というのが彼の提案です。
体を動かさずリスクを冒さず、自らを高みに置き、
他者の「ボケ」に対して「ツッコ」む。
つまり評価を加える。
そういう人が増えている日本だから、
「人を笑いたい人」が過多で、
「人に笑われてもいいから何かに夢中になる人」が希少なのです。
言い換えれば「ツッコミ過多・ボケ希少」な社会なのです。

狩野英孝や出川哲朗がこれだけ人気があるというのは、
「そのポジション」に人がいないからです。
みんなローションまみれになってザリガニに鼻を挟まれて、
「痛いよ痛いよ、ガチで痛いよ」と言いたくない笑。
それを斜め上から笑っていたいわけです。

▼参考画像:ザリガニと出川哲朗
http://nackan77.up.n.seesaa.net/nackan77/image/0006.jpg?d=a1

私はローションまみれでザリガニに鼻を挟まれる趣味も、
おでんを顔に押しつけられる趣味もありませんが、
10年前に公務員を辞めて(信仰によって)非営利団体を立ち上げた私は、
比喩的には社会の中でローションまみれになって、
ザリガニに鼻を挟まれる側です。
「斜め上からツッコまれる」側であり、
ケツの穴まで「自己開示」して、
「安全な場所にいる人からいろいろと評価される」側にいます。
私は比喩的には出川哲朗なのです。

、、、そう考えますと、世の中の「芸人」は、
ボケだろうがツッコミだろうがリアクションだろうが、
全員、「社会的にはローションまみれ」なのです。
「30になって売れない芸人とか痛いな、いいかげん就職しろよwww」
といった、安全圏からの悪意のツイートが世の中には溢れていますから。
「ボケている俺たちを笑うのは良いが、
 それを斜め上からSNSでニヤけて馬鹿にするお前たちは、
 本当に自分の人生を生きていると言えるのか!?」
という芸人たちの魂の叫びを小説にしたのが又吉直樹の「火花」です。
私が芸人を好きなのは、「ローション仲間」だからです。
(1,513文字)



●九十歳まで働く!

読了した日:2017年11月24日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:郡山史郎
出版年2017年
出版社:WAC BUNKO

リンク:http://amzn.asia/dJ69RVg

▼140文字ブリーフィング:

御年82歳の著者、郡山史郎さんは、
ソニーの重役などを経た後、
退職後も現役ビジネスマンを続けています。
「天下りの子会社の社長」は老害だからやりたくない、と拒み、
彼は「70歳の新入社員」なども経験した結果、
ひとつの結論に達します。

それは年齢が上になってしまうと、
どうしても若手に気を遣わせちゃうから、
定年退職後のビジネスマンの理想的な労働形態は「自営業者」だ、と。
じっさい彼は小さな人材紹介会社を起こし、
自分と同じような高齢の就業希望者と、
社会の雇用ニーズをマッチングすることでお金を稼ぎ、
そして国家に税金を納めています。

最後の最後まで働いて、
税金をもらう側じゃなく払う側でいたい。
人の尊厳は働くことのなかにある。
それが自分の生き方だ、
という彼の美学には共感します。

著者の世代は「生きている間に平均寿命が2倍になる」
という空前絶後の現象を生きた世代であり、
したがって自分が生きている間に働き方が、
まったく別のものに変わってしまった(変わりつつある)世代です。
その変化はあまりにドラスティックなので、
私たち働き盛り世代にすら、その未来は霧の中というか、
自分たちの未来を手探りでもがいているのが現状です。

彼のような国家や大企業にぶらさがろうとせず、
「自分の未来は自分で切り開く」という気概をもった、
「カッコいいおじいちゃん」がいることは、
私たち後輩世代への大きな遺産だと思います。

一部引用します。

→P43 
〈私たちの世代は、二つの特色がある。
一つは平均寿命が生きているうちに二倍になってしまったことだ。
1935年生まれの日本男子の平均寿命は、
当時の日本の統計によると43歳だった。
今は80歳を越していてさらに伸びつつある。
「ゼノンの逆説」(俊足のアキレスは先行するカメに追いつけない?)のように、
生きるにつれて寿命が延びると、
永遠に生きていくような錯覚に陥る。
もう一つは、成人期に日本経済が徹底した右上がり、
成長を継続したことである。
好不況はあっても、仕事にあぶれると言うことはあり得なかった。
常にすべての分野で人不足で、
普通の人ならいくらでも正社員として就職する上での選択肢があった。
それが、現今の情勢といかに違うかは、
少なくとも今五十歳前後以下の人に説明の要はあるまい。〉

→P159〜160 
〈いくら自由があり、好きなことができる時間があっても、
人は幸せにはならない。
アンドレ・ジッドが、「人の幸福は、したいことが出来ることの中にはない。
しなければならないことを受け入れることの中にある」と書いている。
「リベルテ」(自由)ではなく「デボワール」(義務)の中にある。
ある人がインドの貧民窟で孤児の世話をしているマザー・テレサに、
「そんな大変なことを、よく自分からなさいますね」と言ったら、
マザー・テレサは、「とんでもない、ボランテアーをしているのではない、
キリスト様に言われてやってるだけです」と答えたという。
義務を、自分の意志で受け入れる。その中に幸せがある。
高齢になるということは、神が命令しているのだ、と思えば、わかりやすい。
私は平凡な仏教徒で、およそ信心などはないが、
家族、友人、後輩に、亡くなった人が多いので、
なぜ自分だけが生きているのだろうと考える。
偶然以外に理由はないだろうが、その偶然を支配しているのは、
人ではない。高齢になると、神と付き合ってしまう。
自分は何をしなければならないか、を考えて、
出来ることがあったら、神が命じたことにして、
一生懸命にやる。それで幸せになる。生活の知恵としか言いようがない。〉

「人の幸福は義務を受け入れることのなかにある」
というアンドレ・ジットの言葉は深いです。
早期退職したゴルフ三昧の人は見た目とは裏腹に、
ほとんどが「絶望的に不幸だ」というのはあまり知られていませんが、
年齢にかかわらず「労働」を離れては
人間は幸福に生きていけないように作られていると、
私も信仰者として著者と考えを同じくします。
(1,611文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:なし

コメント:

今週もあまり多くの本は読めませんでした。
マキタスポーツさんのラジオ番組、
「東京ポッド許可局」は非常におすすめです。
私のこのメルマガも、あの番組の半分ぐらいでも、
面白いものが作れれば、、、という目標として書いています。
聴ける環境にある人は、是非。



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陣内が先週読んだ本 2017年11月第三週 『世俗都市の宗教』ロバート・ベラー 他5冊

2018.05.10 Thursday

+++vol.039 2017年11月21日配信号+++


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年11月第三週 11月12日〜19日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●孤独 自己への回帰

読了した日:2017年11月13日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:アンソニー・ストー
出版年:1994年
出版社:創元社

リンク:http://amzn.asia/bcHGS5f

▼140文字ブリーフィング:

先日読んで大きな影響を受けた、
「リンカーン うつ病を糧に偉大さを鍛え上げた大統領」
に引用されていて興味を持ち手に取りました。
著者の要点はひとつで、
「孤独」と「創造性」には、
何らかの関連性があるのではないかという仮説です。
つまり、卓越した創造性を発揮した著述家や発明家や科学者というのは、
「孤独を志向する」もしくは「孤独に耐えうる」という、
共通の資質が見いだされるのではないか、ということです。
「まえがき」から引用します。

→P2 
〈何年か前に、友人のある哲学者が、
古代ギリシアの時代から西洋の偉大な哲学者の大多数は
個人的に親密な人間関係や家族関係を持とうとしなかった、と指摘した。
このことは私に、孤独と、抽象的な思考において何かを創造することの間に、
ある種の関連があるのではないかと疑問を抱かせたのである。
、、、創造的な思考は恐らく、
誰からも干渉されない孤独な長い期間と
情緒的な要求が何もない状態を必要とするのである。〉

著者は作家のみならず、
哲学者や科学者にも、孤独とある種の創造性に相関がある、
と分析しています。

→P257 
〈カント、ヴィトゲンシュタイン、ニュートンはすべて、
ほかの点ではどれだけ異なっていたとしても、
他の人間との親密な関わり合いを欠いているが、
独創的で抽象的な思考の巨大な能力を享有している。〉

私は数学に関する本を読むのが好きですが、
多くの数学者も人付き合いを避ける傾向があります。
(もちろん例外もあります)
「ある種の社交性とある種の独創性は、
トレードオフである」という仮説には、
私も賛同の票を投じます。
(659文字)

▼参考リンク:リンカーン うつ病を糧に偉大さを鍛え上げた大統領
http://amzn.asia/7UIaoKm



●キリストのうちにある生活

読了した日:2017年11月14日
読んだ方法:お茶の水のクリスチャンブックストアで購入

著者:ジェームズ・フーストン(著)高橋秀典(監修)
出版年:2017年
出版社:いのちのことば社

リンク:http://amzn.asia/iTXb9nr

▼140文字ブリーフィング:

ジェームズ・フーストン師の本は、
日本語で読めるものは(多くはないけれど)すべて読んでいます。
それほどに去年の夏休みに読んだ「喜びの旅路」は衝撃でしたし、
私の人生に大きな影響をもたらしました。
この本は夏にお茶の水のキリスト教書店に立ち寄った際に、
たまたま見つけて則購入しました。

、、、そうしたら、10月末のFVI総会にて、
この本の翻訳を監修したのが、
役員の高橋秀典先生だったことを知り、
家に帰ってすぐに本棚から取り出し読み始めたというわけです。
フーストン師のユニークな点のひとつは、
彼が西洋人でありながら、「東洋と西洋の出会い」を意識し、
「西洋人としてキリスト教を解釈する自分」というものを、
相対化して見つめる視点です。
自らが根ざす文化を自己相対化する、
というのは思っている以上に難しいですから、
すごーく頭のいい人なんだなぁ、といつも思います。

たとえば、
→P11 
〈日本の男性牧師たちも「リーダーシップ」という
米国的なカルトに陥るべきではありません。
これは日本文化にとって異質なものです。〉

これは私も以前から感じていました。
二言目には「リーダーが、、、」とか、
「次世代のリーダーを育成し、、、」
というキリスト教の関係者がいますが、
私はこの数年、こういった言説を右耳から左耳に聞き流しています。
目の前に「リーダー教の信者」がいるときは、
「そうですねー(死んだ目)」と言いながら、
99パーセント脳内は寝ています(不真面目)。
だって、全員がリーダーになったら、
誰がフォロワーになるんでしょう?
単純に、計算が合わないじゃないですか。
(私はリーダーが大切じゃないとか不要だとか、
 そういうことを言ってるんじゃないことは付言しておきます)

私は東洋人で、なおかつ西洋にかぶれることを、
人一倍警戒するタイプの人間なのでわかりますが、
自らが西洋人でありその思想の真ん中にいながら、
なおかつこういった批判的な視点を持てる西洋人は多くはありません。
東洋に西洋を導入する際、多くの米国人は、
「我々が持っている良いものを、
 後発国の日本に伝授しよう」
という無意識の態度を持ちますが、
その多くは前提が異なるために的外れです。
フーストン師は西洋を「相対化」し、
なおかつ時には日本人以上に日本を悉知しているので、
こういった冷徹な視点が持てるわけです。

目次を紹介します。

序論
第一章 変動する現代グローバル化社会におけるクリスチャンのアイデンティティー
第二章 東洋と西洋で基督教を脅かす実利主義、組織主義、テクノクラシー
第三章 家族関係ーー日本、欧米、そしてクリスチャン
第四章 個人的感情ーー古典、日本、西洋、そしてクリスチャンとして
第五章 人間関係に関する文化的価値観の核心ーー友情と共同体、日本人と欧米人という文脈において
第六章 人生の四季における成熟と知恵
第七章 クリスチャンによって豊かにされる苦難、沈黙、美に対する日本人の考察
結論

本書は長くないですが密度が非常に高いため、
網羅的に解説するのは不能です。

序論の前の紹介文に、
フーストン師の思想の要約が非常に端的な言葉で表されていたので、
そちらを引用したいと思います。
→P5 
〈ジェームズ・フーストンの
「霊性」と「神学」を短いことばで表そうとするなら、
「物語」と「交わり」ということができるだろうと思う。
「物語」は、「旅」「歴史」「文化」「人生行路」と言い表すこともできる。
「交わり」は、「対話」「人間関係」「家族」「社会」としても考えられる。
この「物語」と「交わり」は、それぞれの時代、
それぞれの文化によって、異なった解釈と表現がなされてきた。〉

、、、21世紀のキリスト教のあるべき姿を探る上で、
フーストン師の言葉には多くの滋養があります。
(1,179文字)



●父として考える

読了した日:2017年11月15日
読んだ方法:Kindleで電子書籍購入

著者:東浩紀 宮台真司
出版年:2010年
出版社:生活人新書

リンク: http://amzn.asia/6DWThEc

▼140文字ブリーフィング:

めちゃくちゃ頭の良い人と、
めちゃくちゃ頭の良い人の対話です。
面白くないわけがない。
、、、しかも2010年になされたこの対談は、
このタイトルが示すように二人が、
「世間より少し遅れて父になった」タイミングでなされました。
今の私にとっては非常にタイムリーで面白い題材でした。
この2ヶ月ほど、電車の中でAmazonプライムの映画を観てる時以外の、
ひとつの楽しみとして読みふけりました。
私のEvernoteメモは膨大になり全部を引用不能です。

たくさんの「目から鱗」があったのですが、
そのなかで特に2つ紹介します。

1.ネットのリスクは匿名性よりも親密圏で起きる。

→位置No.1783 
〈宮台:、、、ネットには「つながりができる面」と、
裏腹に「オフラインとオンラインの二重性ゆえの
疑心暗鬼が広まって防衛的になる面」の、両方があります。
ネットのネガティブ面というと「匿名性を利用した誹謗中傷」や、
「匿名性を利用した犯罪」が語られがちだけど、
「親しい間柄での疑心暗鬼」のほうが重大です。
子どもに携帯電話を持たせない方がいい理由として、
いまでも「匿名性を利用した犯罪」に
巻き込まれることを危惧する向きがありますが、トンチンカンです。
数的に圧倒的に問題なのは、「親しい間柄での疑心暗鬼」のせいで、
コミュニケーション一般において過剰に防衛的になったり、
親友にさえ腹を割れなくなってしまうことです。〉


2.社交性があり優秀な人間ほど単純労働を嫌がらない。

→位置No.1952 
〈宮台:最近、面白いことに気がつきました。
ソーシャルスキルのある人間ほど単純労働を嫌がらないことなんです。
最近は「一人出版社」が結構あって、出版社の社長をやりながら、
夜は別の仕事をするような人がいます。
彼が言うのは、就職状況が宮台さんの言うとおりだとしても、
世の中に仕事がないというのは完全にウソであると。
時給800円から1,000円の範囲内で「なんでもやります」と言えば、
仕事はいくらでもある。
実際に僕の知り合いの60代の人も全く困っていない。
彼は中卒で、昼は出版社の社長をやりながら、
夜は皿洗いや荷運びをやっている。
彼が言うには、「仕事はあるに決まっている。
そうじゃなければ、中国人がどうしてこれだけ接客業にいるんですか」と。
、、、親の期待過剰ゆえにはじめから無理な枠内でエントリーしていない。
つまり、ある幅以外の仕事は仕事に見えていないのが問題なんです。
、、、ここにもう一つ問題がある。
いまの大学院生の多くが単純労働を間違って捉えていることです。
単純労働「でも」大丈夫ですという人たちはおしなべて
「単純労働は非クリエイティブだ」と理解しているが、
じつは単純労働の中にも習熟がある、
と彼(前出の社長兼深夜労働者)は言います。
それまで注意を集中しなければできなかった作業が、
次第に自動的にできるようになるプロセスの事です。
自動化的習熟による負担免除によって、
自分の注意力が別の所にも拡がって、
他の新人たちにアドバイスできるようになっていく、ということもあります。
「だから単純労働に喜びがないというのはウソで、
やったことのないやつが言うことだ」と彼は言います。
「釘をまっすぐ打ち込めるようになる喜びも、
他人に教える喜びも、あるんです」と。
、、、だから堀内くんは
「単純労働まで拡げれば仕事はいくらでもある」
という僕の言い方は間違いだというわけです。
「そもそも大学院生の多くには単純労働に耐える力がないのだから」と。
このことをいろんなひとに振ってみましたが、
「本当にそうなんだよ」と誰もが首肯します。
ちなみに、単純労働に必要な資質は、実は頭脳労働にも必要なんです。〉

、、、これは本当に納得です。
私の職歴の実感からも納得できます。
獣医の世界にも、たとえば後輩のなかに、
やたら偏差値とプライドが高く「頭脳労働こそ労働」と豪語し、
試験管を洗ったり床磨きなどを嫌がる後輩が時々いるのだけど、
たいてい汚れ仕事を嫌がったり、
試験管磨きが上手にできない後輩に限って、
そいつの「頭脳労働」の結果もたいしたことはありません。
そして「言い訳」が長い。
「言い訳は時間の無駄だよ」と、
そいつに説教するのもまた時間の無駄ですから、
有能な先輩ほど早い段階でそういった後輩を見限ります。
なんでも嫌がらずにやる後輩というのは、
何をやらせても上手にできます。
いや、本当に。
(1,698文字)



●世俗都市の宗教

読了した日:2017年11月15日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:H・コックス
出版年:1986年
出版社:新教出版社

リンク:http://amzn.asia/dEkkNuu

▼140文字ブリーフィング:

面白くて夢中で読みました。
ここに概説は不能ですので、
またいつか別の機会にします。
著者は「ポストモダン神学」の大家で、
「近代が衰微する時代」に、
宗教はいかにあるべきか、という問いを、
ライフワークとして問うている神学者です。
彼が言うには「ポストモダン」は宗教衰退の時代ではなく逆だ、
ということです。
むしろ宗教性がモノを言う時代だ、と。
引用します。

→P26 
〈ポストモダン時代がどんなものになるか、
だれも自信をもって言えないにしても、
一つだけ、明白だと思われることがある。
それは激しい世俗化と宗教没落の時代であるというよりもむしろ、
宗教復興と聖なるものの復帰の時代であるようなのだ。
今日ではもう、宗教の長い夜や、
政治に対する宗教の影響力ゼロの状態について、喋々する者はいない。〉

、、、ところがその先があります。
ポストモダン時代の「宗教性」は、
前近代や近代の「伝統的」な宗教が認知できないような、
形態をとる可能性がある、と著者は言うのです。
つまり伝統的宗教者からすると宗教に見えない場所に、
ポストモダン時代の宗教性は滑り込むのだ、と。
私はそれを「オルタナ宗教」と自分で名付けました。
日本には「拝金教」「国家主義」「学歴主義」
「出世教」「安全/安心教」などの宗教があります。
キリスト教のライバルはもはや仏教や神道や八百万ではありません。
そちらはむしろ「仲間」であって、
「世俗に潜り込んだ宗教性」こそが、
私たちの「顧客を奪い合うライバル」であり、
そこに潜む人々の心の叫びをすくい上げることができなければ、
日本のキリスト教の未来は暗いでしょう。

、、、本書の話に戻しますと、
彼は80年代に特に隆盛をきわめた、
プロテスタントの側からの「ファンダメンタリズム」と、
カトリックの側からの「解放の神学」を、
ポストモダンへの両派からの対応として取り上げます。
著者は後者(解放の神学)には可能性と希望があるが、
前者(ファンダメンタリズム)にはポストモダン時代に
対応できる意義あるものとなる可能性は低い、
と結論づけています。
私はプロテスタント教徒なので、
どちらかというと前者に知り合いが多いので心苦しいのですが、
それでも著者に同意します。
(ちなみに著者もバプテスト信徒でプロテスタント教徒です)
理由は、、、まずはこの本を読んでください、
としか言いようがありません。
(965文字)



●なぜ人と組織は変われないのか

読了した日:2017年11月16日 途中とばし読み
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー
出版年:2013年
出版社:英治出版

リンク:http://amzn.asia/gkXvA1i

▼140文字ブリーフィング:

ハーバードビジネススクールのキーガン氏とレイヒー氏の共著です。
彼らは「なぜ人は変わりたいのに変われないのか」
ということを「変革を阻む免疫機構」という言葉を使って説明します。
彼らがこの本を書く動機になった「ダボス会議」の記事は面白いです。

→P400〜401 
〈世界で最も垂涎のチケットと言えば、
毎年一月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のものだろう。
4日間にわたり、スイスのアルプス地方の小さな街ダボスに
2000人ほどの世界の頭脳が集結する。
ここで、世界を代表する企業経営者、政府首脳、
大学教授、評論家、知識人たちが世界の様々な問題について話し合う。
、、、しかし、話し合われる話題は一つに集約できる。
そのテーマとは、変化だ。
「世界は変わりつつある。ビジネスも変わろうとしている。
あなた自身も変わった方がいい」というわけだ。
朝、昼、晩と、大小様々なシンポジウムや討論会、食事会、
そして移動のバスの中で、誰もが変化を話題にする。
しかし、世界の頭脳が集まっているのにもかかわらず、
――いや、それだからこそと言うべきかもしれないが――
人間の「首から下」に関心が払われることはほとんどない。
感情、不安、やる気など「変わりたくない」
という決意を強めさせる要因については、あまり話し合われない。
ダボス会議で四日間過ごしても、
「なぜ、変わることが難しいのか?」
「変わるためには、どうすればいいのか?」
について意見交換する場には一度も遭遇しない可能性もある。
この本で私たちは、これまでの研究と実践の成果を紹介し、
個人と集団の変革を妨げる主立った障害と、
その障害を克服する方法を実践的に解説してきた。
これからの時代それぞれの分野で最も成功を収めるのは、
”変革を阻む免疫機能”をくつがえす方法を身に付けたリーダーと組織だろう。〉

、、、では、変革を阻む免疫機能をくつがえしたいリーダーは、
どんなことを肝に銘じる必要があるのか?
詳述はしませんが羅列します。

1.大人になっても成長できるという前提に立つ:メタ視点、思考様式の変容

2.適切な学習方法を採用する:そのトレーニング(学習)はオンジョブ的か?

3.誰もがうちに秘めている成長への欲求をはぐくむ:
「よい問題」とは、それを通して成長できる問題である。
全員が取り組んでいる問題は、それによってその人が成長できるような問題か?

4.本当の変革には時間がかかることを覚悟する。

5.感情が重要な役割を担っていることを認識する。

6.考え方と行動のどちらも変えるべきだと理解する:
洞察思考のアプローチと行動変容思考のアプローチの二者択一は両方正しくない。
二つのアプローチを一体化させることが大切。

7.メンバーにとって安全な場所を用意する:
「試練と支援」をセットで与える。

、、、じつはこの7つ、
私が先月埼京のぞみチャペルと一緒に取り組んだ、
「愛の種まきプロジェクト」にすべて含まれていますし、
今月はじめに伊勢志摩で開催した、
「よにでしセミナー」にも、意図的に織り込んだ要素が含まれています。
特に「成長には葛藤と矛盾が必要」のところなどはまさにど真ん中です。
自分がしていることは間違っていない、
という承認を与えてくれるような本に出会い励まされました。
(1,330文字)


▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:「世俗都市の宗教」

コメント:
この本は神学者の書いた専門書ですので、
ここでリコメンドしたところで、
じっさいに手にとって読む人が何人いるかは疑問ですが笑、
非常に、非常に、とっても、学ぶ事の多い本でした。
私の中では先日の、「リンカーン、、、」にも匹敵します。
「今年の本ベスト5」には入るでしょう。




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陣内が先週読んだ本 2017年11月第二週 『羽仁もと子 生涯と思想』斉藤道子 他4冊

2018.05.03 Thursday

+++vol.038 2017年11月14日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年11月第二週 11月5日〜11日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●神の子どもたちはみな踊る

読了した日:2017年11月9日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:村上春樹
出版年:2000年
出版社:新潮社

リンク: http://amzn.asia/3kgF4QZ

▼140文字ブリーフィング:

村上春樹の短編集です。
この本は以前にも読んだことがありますが、
あるきっかけで再読したくなり手に取りました。
村上春樹の作風が変わった明らかな「節目」となっている作品で、
阪神淡路大震災をめぐる短編集です。
10年近く前に初めて読んだ時とは違い、
新たな発見が多数ありました。
小説って、5年ぐらい間を開けて再読すると、
「自分の変化」を再認識できる良いツールですね。

今回新しく発見したのは、
最後の短編「蜜蜂パイ」です。

「蜜蜂パイ」の主人公の淳平は西宮で生まれ育ったこと、
早稲田大学文学部に進んだが両親には経済学部と偽っていたこと、
そのおかげで「勘当」されたこと、
海外で神戸の地震のニュースを知り、
「自分には根がない」という啓示を受けたことなど、
あらゆる村上春樹の作品の登場人物のなかで、
村上春樹本人の自画像に最も近いです。
その主人公が最後に「決意表明」をしますが、
これは彼の作風の変化を予言する象徴的な話しです。
引用します。
(*まさきち、とんきちとは、
 淳平が親友の元妻の子どもに語り聞かせた、
 動物園のクマの「とんきち」の話です。)

→P236〜237 
〈淳平は壁に掛かった時計の針を眺めながら、
沙羅に聞かせるお話の続きを考えた。
まさきちととんきちの話しだ。
まずはこの話しに出口を見つけなくてはならない。
とんきちは無為に動物園に送られたりするべきではない。
そこには救いがなくてはならない。
淳平は物語の流れをもう一度最初から辿ってみた。
そのうちに漠然としたアイデアが彼の頭に芽を出し、
少しずつ具体的なかたちをとっていった。

「とんきちは、まさきちの集めた蜜蜂をつかって、
蜜蜂パイを焼くことを思いついた。
少し練習してみたあとで、
とんきちにはかりっとしたおいしい蜜蜂パイを作る才能があることがわかった。
まさきちはその蜜蜂パイを街に持っていって、人々に売った。
人々は蜜蜂パイを気に入り、それは飛ぶように売れた。
そしてとんきちとまさきちは離ればなれになることなく、
山の中で幸福に親友として暮すことができた。」

沙羅はきっとその新しい結末を喜ぶだろう。
おそらくは小夜子も。
これまでとは違う小説を書こう、と淳平は思う。
夜が明けて当たりが明るくなり、
その光の中で愛する人々をしっかりと抱きしめることを、
誰かが夢見て待ちわびているような、そんな小説を。
でも今はとりあえずここにいて、二人の女を護らなくてはならない。
相手が誰であろうと、わけのわからない箱に入れさせたりはしない。
たとえ空が落ちてきても、大地が音を立てて裂けても。〉

、、、じわっと感動しました。
「そこには救いがなくてはいけない」と、
「物語を紡ぐ」ことを仕事にする職業人としての村上春樹は、
1995年、阪神淡路大震災とオウム真理教のニュースを見ながら考えたのです。
あれから22年が経ちます。
日本には「新たな救済の物語」が必要とされているように見受けられます。
現代の詩人たちは大変な仕事を引き受けているのだなぁ、
と尊敬の念を覚えます。
(1,172文字)



●羽仁もと子 生涯と思想

読了した日:2017年11月9日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:斉藤道子
出版年:1988年
出版社:ドメス出版

リンク:http://amzn.asia/0vsrr2S

▼140文字ブリーフィング:

羽仁もと子という人は、
明治後期、大正、昭和初期という三つの時代を生きた信仰者です。
賀川豊彦などと、ちょうど重なります。
先月宮嶋望さんという、新得にある共働学舎という、
困難を抱えた人々のコミューンを導いておられる方の本を読み、
非常に感銘を受けました。
彼は「自由学園」というキリスト教理念に基づく東京の学校を卒業しており、
この学園の理念の「実践」が共働学舎だ、と宮嶋さんは言っています。
その「自由学園」の創始者が羽仁もと子夫妻です。
で、彼女の思想を私は知りたいと思った次第です。
しかしいかんせん、彼女の書いたものは量が多すぎます。
全集が出ていますが、まずは他者が書いた伝記を読むのが、
彼女の思想を知る近道だと思い本書を手に取りました。
彼女は賀川豊彦同様、非常にスケールの大きな「社会変革者」です。
英語ではソーシャルリフォーマーと言います。
彼女は雑誌の発行、世界初の主婦による女性運動体「友の会」の創設、
「日本人が家計簿を付けるようになるという習慣」の創始者、
自由学園の創立者など、その活動は多面的で、
常人にはすべてを把握できないほどです。
FVIは「小さな愛の行動」によって「神の国の実現」を目指す、
ということをその活動の理念としていますが、
羽仁もと子は「小から大への社会変革」を唱え、
「友の会は神の国のための運動体である」と唱道していましたから、
羽仁もと子という人は「100年前のFVI」なわけです。
学ぶところがあまりにも多いので今回は詳述を差し控えます。
いつか「本のカフェ・ラテ」で紹介出来たらと思います。
(652文字)



●米国人弁護士だから見抜けた日本国憲法の正体

読了した日:2017年11月9日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ケント・ギルバート
出版年:2017年
出版社:角川新書

リンク:http://amzn.asia/14DOnNW

▼140文字ブリーフィング:

ケント・ギルバートさんは保守的な言説で有名な人で、
私とはスタンスが違いますが彼の言うことの多くは筋が通っています。
ちなみに私は憲法改正に関しては、
「原理的護憲派」ではありません。
日本国憲法は不磨の大典とも思いませんし、
それが日本の平和を守っているとも思いません。

しかし2012年自民党改正草案のような暴挙は、
あらゆる意味で許容することができませんし、
あのやりかたを押し通すと安倍さんの本意(と本人は言っている)の、
「平和の維持」からも著しく遠ざかるでしょう。

「憲法があれば平和は守られる」という原理的護憲派も、
「憲法を改正すれば平和は守られる」という原理的改憲派も、
両方バカだと私は思っています。

憲法というのは安全保障上の数多くある要素のひとつで、
しかも憲法における安全保障というのは数多くある憲法の意義の、
小さなひとつに過ぎません。
「憲法」のもっとも大切な機能は、
「国家権力から個人の自由を守る」ということです。
これは保守とかリベラルとか関係ありません。
だから現在の自民党の「憲法観」はヤバイのです。
イカれていると言ってもいい。

これは保守派で改憲派のケント・ギルバートさんも指摘しています。
引用します。

→P149 
〈日本を含めた主要国で権利章典(人権規定)の
憲法改正事例がほとんどないのは、
正しい意味での立憲主義が根付いているからでしょう。
国民の人権は自然権として保護されるべきもので
とりわけ権利章典の中核をなす基本的人権を否定することは、
先進国においては許されません。
権利章典を巡る憲法典の改正があるとすれば
それは新しい権利を追加する場合に限られるというのが常識です。

その意味で、自民党の2012年版「日本国憲法改正草案」は、
第11条で「国民は、すべての基本的人権を享有する。
この憲法が国民に保証する基本的人権は、
侵すことのできない永久の権利である」としながらも、
第12条では「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、
国民の不断の努力により、保持されなければならない。
国民は、これを濫用してはならず、
自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、
常に公益及び公の秩序に反してはならない」とし、
第13条でも「全て国民は、人として尊重される。生命、
自由及び幸福追求に対する国民の権利については、
公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、
最大限に尊重されなければならない」としています。

自民党の2012年版「日本国憲法改正草案」にある
「公益及び公の秩序」という表現は、
「国や社会の利益や秩序」が、
自然権として保護されるべき「個人の人権」よりも大事だという
考えに立っているように受け取れます。
もしそうだとしたら、傲慢な考えと言うしかありません。〉
(1,125文字)



●アナログ

読了した日:2017年11月10日
読んだ方法:Amazonで書籍購入

著者:ビートたけし
出版年:2017年
出版社:新潮社

リンク:http://amzn.asia/6BDufh5

▼140文字ブリーフィング:

ビートたけしが又吉直樹の「劇場」を読んで、
刺激を受けて書いた恋愛小説です。
出来はともかくとして、
70歳になったビートたけしが、
30代の中堅芸人の小説を読んで、
「俺だって、、、」といって書くというそのバイタリティに、
私たちの世代は呆れるわけです。
あぁ、この世代には勝てないわ、と笑。
小説の出来では又吉の圧勝です。
当たり前じゃないですか。

でも、すごいよなぁ。
団塊の世代のバイタリティには、
私たちロスジェネ世代は歯が立ちません。
きっと彼らが「この世から退場」しても、
良くも悪くも彼らの残した遺産の上にしか、
私たちは社会を構築出来ませんし、
良くも悪くも親世代である彼らの「亡霊」と、
戦い続けるのが私たちの世代でしょうから、
今後も私たちが彼らに太刀打ちして勝つことはないでしょう。

、、、という世代論は置いておいて、
この小説のビートたけしの人間観察や日常観察力は上手です。
2つ引用します。

→P57 
〈仕方なくテレビをつける。特に観たい番組はないが、
外国の刑事ドラマを何気なく観ていた。
しかし、どれも同じような内容だ。
主人公は白人、部下に若手の白人と黒人、女性の刑事、
必ずいるのがコンピューターのプロでハッキングの天才。
豚みたいに太った厚化粧の女か、
いかにもおたく風のアジア人だ。
いつも、プロファイリングから始まり、
地元の刑事ともめて時間が来るとDNA、
指紋がプロファイル通りの人物と一致して一件落着。
まるで外国版水戸黄門だが、つい観てしまう。
合間で流れるCMは決まって、
高齢化社会を反映してか膝腰の痛みが取れたり、
目がよく見えるようになったり、デブが痩せたり、シミが取れたり、
ウンコがよく出るようになったりするサプリメントの話ばかりだ。
また必ず画面の隅に、小さくて読みづらい字で、
「あくまでも個人の感想です」と書いてある。
そして「効果効能を示すものではありません」とか
「運動と食事制限を併用しています」とか、
さらには今から三十分以内に買えば半額だとか言っている。
ところが二時間後には他のチャンネルでも同じことを言っている。
それじゃ、その金額で一日中売ってんじゃねーかと思いながら、
また明日から面倒くさい仕事がなきゃいいな〜、
とボーっとしているうちに週末は過ぎていく。〉

、、、こういう日常描写は、
「よく見てるなぁ」と思います。
お笑い芸人の「日常観察力」はたぶん、
全職業最強です。

→P104 
〈「向こうのスケジュールもあるから、
簡単には変えられないだろう。
ホテルの予定地の下水や電気の配管の件で、
地下を何階まで作れるかペンディングになっていた件があっただろ。
大阪市と話を詰めた結果、どうにか地下二階まで作れるようになったらしい。
バジェットやキャパも考えると、
もう一度プレゼンのグランドデザインを
コンシダーしてくれとオーダーしてきたんだ。」〉

、、、これは岩本という、
カタカナ語を連発する頭の悪い上司の会話です。
普段からこういう人間をビートたけしは疎ましく思っているか、
もしくは間接的に小池百合子をディスっているのでしょう笑。

私も目の前でこんな会話されたら、
顔面をグーで2回殴りますね笑。


嘘です。


「あなたの言いたいことはアンダスタンドしました」
といって、それから二度と話しかけないだけです笑。
(1,111文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:該当なし

コメント:
今週も「買って読んだ方が良いよ」と言えるほどの本はありません。
個人的に「羽仁もと子・・・」はヒットでしたが、
万人に勧められるようなものではありませんし。
「神の子どもたちはみな踊る」を未読の人がいたら、
読んで損はない本だ、というのは自信をもって言えます。



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陣内が先週読んだ本 2017年11月第一週 『村上春樹はくせになる』清水良典 他3冊

2018.04.26 Thursday

+++vol.037 2017年11月7日配信号+++


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年11月第一週 10月29日〜11月4日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●村上春樹はくせになる

読了した日:2017年10月31日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:清水良典
出版年:2006年
出版社:朝日新書

リンク: http://amzn.asia/c5gM3Fk

メルマガ読者の読書会テキストで知って興味を持ちました。
村上春樹って、時々、語りたくなります。
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」が、
ユングの「シャドウ」とか「アニマ、アニムス」、
あるいはフロイトのオルターエゴなどを踏まえている、
という話しは説得力がありました。
著者は批評家としてではなくあくまでいちファンとして、
村上春樹を「読む」ことを楽しむというスタンスを維持していて好感が持てます。
これは村上春樹自身がインタヴューなどで言っていることですが、
彼は95年の阪神大震災とオウム真理教の地下鉄サリン事件以降、
明らかに作風を変えました。
具体的には「ディタッチメント」方向から、
「コミットメント」方向に舵を切ったのです。
ターニングポイントの「竹の節」は、
阪神大震災を題材にした短編集「神の子どもたちはみな踊る」と、
地下鉄サリン事件の被害者へのインタヴュー集である、
「アンダーグラウンド」です。

2011年の東日本大震災以降、村上春樹は何を考えてきたのか、、、。
じつは私の読みは、まだ「形になっていない」というのが、
正直なところなのではないかと思っています。
2011年以降の村上春樹作品は2つ。
「色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の旅」
そして、「騎士団長殺し」です。
騎士団長殺しには「東北で出会うスバルフォレスターの男」
という表象が出てきますが、その伏線は回収されずに終わっています。
また最近友人から「多崎つくる・・・」の多崎とは、
岬がたくさんあるリアス式海岸であり、
彼を襲う友人たちとの離別や死別は、
東北の津波を意味している、という解釈を聞きました。

なるほどねぇ。。。

あくまで一読者としての、一見識にすぎないのですが、
村上春樹にとっての「95年問題」は、
2009年の「1Q84」で一応の決着を見た、と思っています。
それでも約15年かかっている。
2011年の地震はもっと大きな出来事でした。
「もう村上春樹は駄目だ」と思っている方がもしいましたら、
あと10年ぐらいは待ってあげてください笑。
(845文字)



●コミュニティデザイン

読了した日:2017年10月29日 とばし読み
読んだ方法:図書館で借りる。
著者:山崎亮
出版年:2011年
出版社:学芸出版社
リンク:http://amzn.asia/iYtGTkL

▼140文字ブリーフィング:

「街作りワークショップ」的なことを全国で行っている人です。
情熱大陸にも取り上げられたらしいです。
「復興のハード面とソフト面」という話しを思い出しました。
私が時々行っている「市長のワークショップ」にも似ています。
ただ、この本からは抽象的な原則などはほとんど何も引き出せません。
事例紹介は面白いのだけど、深い学びにはなりませんでした。
(165文字)



●ネイティブが感動する 英語にない日本語

読了した日:2017年11月2日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:フォーンクルック幹治
出版年:2017年
出版社:河出書房出新社

リンク:http://amzn.asia/6aSUmlX

▼140文字ブリーフィング:

著者は母親が日本語しか話せず、
父親が英語しか話せないという特殊な環境で育ちました。
両親の通訳を著者はしなければならないのですが、
「英語にない日本語」「日本語にない英語」に苦労しました。
そして彼は「英語にない日本語」のほうがより苦労した、
と言っており、さらにそれを集めていくと、
日本らしさとか、日本の良さみたいなものが浮き上がってきた、
と言っています。
特に本阿弥光悦の「金継ぎ」の話しは面白かったです。
引用します。

→P87 
〈日本独自の修理法「金継ぎ」については、
なじみのない人もいるかもしれません。
破損した陶器を修理する際に、
継ぎ目に金や銀などの金属粉で装飾して仕上げる技法で、
その元祖は、江戸時代初期の芸術家・本阿弥光悦とされています。

茶の湯では、金を施した疵(きず)の繕いを美しい景色と見立て、
芸術として鑑賞されてきたのだそうです。

英語では、
"Fixing pottery and putting gold between the cracks."
「陶器を修理して継ぎ目に金をまぶすこと。」
と言いますが、
最近ではそのまま”Kin-tsugi”として知られるようになっています。

一度壊れたものを修理するだけでなく、
工夫を凝らして修復後の形を楽しむ発想は、
”It gives birth to a new work of art through its own history.”
(陶器の歴史を基に新たな作品を生む)といわれ、
英語圏の人々に大変愛されている文化です。
本来、「金継ぎ」は陶器の破損している部分を
漆(うるし)で修復してから金をまぶしますが、
最近の欧米では、接着剤と金色の絵の具を用いて行う
"Kin-tsugi DIY"が一部で流行っているのです!

環境問題が深刻になりつつある現代では
「物と自然をたいせつにする」という価値観がますます重要視されています。
「金継ぎ」や「もったいない」など、
古来、日本に伝わる文化が時代の流れと共に
世界に拡がっていることが実感できます。〉

金継ぎ、確かに良いですよね。
私が自分の家で一番気に入っている食器は、
ブラジルで買ってきた大きな水色のお皿ですが、
それは全部砂浜に落ちていた空き瓶を溶かしてつくった一点ものです。
売れ残り商品を大量に捨てまくるのも「日本文化」ですが、
ものを大切にし、渋さを味わうのも日本の文化です。
物事には両面ありますね。
(969文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:該当なし

コメント:
今週も忙しかったので、
あまり冊数を読めていないというのもあるし、
1時間以上集中して読書する時間が確保できないので、
深い読みができていません。
ですから今週も、「該当なし」です。
来週もこんな感じかな、、、。



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陣内が先週読んだ本 2017年10月第四週 『世界一の生産性バカが1年間、命がけで試してわかった25のこと』クリス・ベイリー 他4冊

2018.04.19 Thursday

+++vol.036 2017年10月31日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年10月第四週 10月22日〜28日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●世界一の生産性バカが1年間、命がけで試してわかった25のこと

読了した日:2017年10月23日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:クリス・ベイリー
出版年:2017年
出版社:TAC出版
リンク:http://amzn.asia/5S1UxgY

▼140文字ブリーフィング:

著者は一年間を使って、
自らの身体であらゆる「人体実験」をすることによって、
「生産性を上げるには何が効果があり、何が効果がないのか」
を調べ、それをブログにアップしていたら人気になり、
TEDカンファレンスに呼ばれるまでになった、という変わり者です。

彼は3日間まったく寝ないとか、
一日3時間睡眠で働き続けるとか、
逆に10時間以上寝まくるとか、
6時間瞑想をやるとか(片岡鶴太郎?)、
ベジタリアンになるとか、コーヒーを絶つとか、
運動をしまくるとか、逆にまったく運動をしないとか、
スマホを触るのを自らに禁止するとか、
ありとあらゆることを試すことで、
「こういったことは効果があるが、
 こういったことはあんまり効果がない」
という体系をまとめていきます。

その「体系」が、わりと「穏当なもの」であるということも含め、
私は興味深く読みました。

そもそも「生産性」という言葉がなぜ大事かというと、
産業構造の変化と関係がある、と著者は指摘していて、
それは「なるほど」と思いました。
引用します。

→P101〜102 
〈1950年代以降は、多くの人が工場からオフィスへと移っていった。
オートメーション化がどんどん進んでいたのも関わらず、
この60年間でアメリカのGDPに占める製造業の割合は
28パーセントから12パーセントに減った。
この間、アメリカで最も成長した業界は、
”専門およびビジネスサービス”で、ハイテク、
エンジニアリング、法律・経営・会計のコンサルティング企業が含まれている。
たとえば、アップル、グーグル、ボーイング、ゼネラル・エレクトリック、
マッキンゼー・アンド・カンパニー、デロイトなどだ。
製造業と対照的にこの業界の規模は60年間で三倍になっている。
知識を基盤とする知識経済に移行してからは、ぼくらは時間だけではなく、
技術、知識、社会的知性、ネットワーク、
そして生産性を組み合わせて報酬を得ている。
いまでは“時は金なり”だけでは通用しない。
”生産性こそが金なり”なのだ。
では、知識経済における時間管理とはどんなものだろうか。
このPARTをじっくりと読めば、うなずいてもらえるだろう。
あなたが生産的になりたいなら、
時間管理より活力と集中力のコントロールを第一に考えるべきだ。〉

「時は金なり」といういうのは二次産業(製造業)時代の遺物だ、というのです。
たしかにそうです。「ライン」が支配する工場ではまさに時は金です。
ひとつの工程を1秒縮められたら自動車会社は10億円ぐらい儲けられますし、
全労働者の労働時間を10分延ばせたら純利益はそれに比例して上がります。

しかし、知識経済においてはそうではない。
10時間かけてつくった粗悪な論文と、
30分で書いた優良な論文では、
優れているのは明らかに後者です。

「時は金」ではなく「生産性が金」なのです。
このとき大切なのは「どれだけ長時間働けたか」ではなく、
「集中して働ける時間をどれだけ確保できたか」です。

知識経済時代の長時間労働は無意味どころか害悪だ、
ということを示す実験結果を引用します。

→P112〜113 
〈研究報告によると、一週間の理想的な労働時間は、
だいたい35時間〜40時間。これ以上になると生産性は下がり始めるそうだ。
数字だけ見ると、35時間〜40時間というのは少ない気がする。
あなたのto-doリストはいつもの労働時間ではこなしきれないほど長い。
そんな状態で、週に40時間労働を始めてみたら?
同僚が50時間、60時間以上、働いているときはとくに心苦しいだろう。
締め切りが目前に迫っている場合などは、
長時間働くことで大いに生産性は上がるだろう。
しかし、長時間労働は最悪の事態を招きかねない。
とりわけ集中力と活力を上向かせるための時間がほとんどないときは要注意だ。

ここで労働時間と生産性の関係をまとめてみよう。
労働時間が35時間〜40時間を超えると、生産性が低下し始める。
週60時間労働が8週間続くと、こなした仕事量は、
週40時間労働を8週間続けた場合とほぼ同じになる。
70〜80時間労働を三週間続けると、40時間労働の時の仕事量と同じになる。
ぼくの場合は、90時間労働の達成項目数がたった二週間で20時間労働と同じになった。
短期的な場合でも、長時間労働は生産性を低下させ得る。
ある報告では、たとえ短期でも週60時間労働を続けると、
普通なら一時間で終わる仕事を片付けるのに二時間かかるという。
別の報告では、生産性は週50時間労働で完全に落ち込み、
週に70時間働く人はそのうち15時間分は何もしていないに等しい、と述べられている。

つまり、労働時間がある一点を超えると、時間ばかり費やして、
殆ど目標を達成できない状態になる。
ぼくが週90時間働いたときのように、
満足感を覚えるかもしれないが、生産的になったとは言いがたい。

誰よりも生産的で成果を出す人は時間だけでなく、
活力と集中力もしっかり制御している。
時間と集中力と活力を有効活用するためには、
仕事の時間を制限することが格好の手段となる。
これは重要なタスクでも通常業務でも同じだ。
仕事をコントロール出来ない立場では、
労働時間に制限を設けるのは難しいかもしれない。
しかしぜひとも実践して、やるべきことに活力を注ぎ込んで欲しい。〉

、、、なんと週90時間働く人の生産性は、
週20時間働く人のそれと同じに収斂する、というのです。

もうひとつ著者が20時間/90時間の労働時間を
1週間毎に2サイクルした実験で注目すべきは、
じっさいには両者の客観的な生産性は同じだったが、
主観的には90時間のときのほうが
「二倍も生産的だったと感じた」という記述です。

著者はこう言っています。
「一日中忙しくしていると生産的だった気になる。
しかし、何も達成できなければ、生産的とは言えない。」
先日紹介したデイヴィッド・アトキンソン氏が指摘する、
日本の長時間労働と生産性の低さは、
日本人が「主観的な生産性」に浸り、
客観的な結果に注目しないという
「契約より情緒」的なセンスにも起因するかもしれない、と感じます。
(2,467文字)



●大直言

読了した日:2017年10月23日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:青山繁晴×百田尚樹
出版年:2017年
出版社:新潮社

リンク:http://amzn.asia/0rXuQ90

▼140文字ブリーフィング:

ぼくちゃん大好きナルシシストと、
脳内戦争中のイカれオヤジの対談です。
「愛国心はならず者の最後の逃げ場所」という言葉を思い出します。

青山氏はルー大柴かのように横文字を連発し、
「俺は国際派だ」ということをちらつかせながら、
日本の反対勢力を批判するときは
「国際基準ではこれがスタンダードなのに、
 日本はまったく追いついていない。
 日本はナショナリズムが足りない」などと言います。
しかし国家の評価ではなぜか
「日本人ほど礼儀正しく利他的で秩序ある素晴らしい民族は他にいない」
に反転します。論理が破綻しています。

また、彼はいつも、
「実直、誠実、愚直、まっすぐ、逃げない」といっていますが、
森友学園問題のときは見事に逃げました。
彼は自らのラジオ番組で、
「森友学園は日本で最もまっとうな教育をしている」
と過去に発言していますが、国会で問題になったとき、
「かご・・いけさん、、、さて、だれでしょう?」
とすっとぼけました。
まったく信頼できません。
胡散臭さが半端ないですね。

とにかく無意味に挟む英語が不快です。
会話の文字起こしだったとしても文字化するときに、
多少直せば良いのに、と思います。

→P178 
〈百田:国力というのは、最終的には経済力が支えます。
中国も、経済がポシャったら軍事力も駄目になります。
ですから、まず、日本は中国から全面撤退してもらいたいと思っていますが。
青山:エヴリカントリーズ・エクセプト・チャイナ・アンド・コリア。
中韓以外のすべての国とのビジネスを進めていくべきだとぼくもいいたい。
チャイナの大きな問題点は、実は、国内で本当に起きていることが、
まず報道されないという点です。、、〉

、、なぜいっかい英語で言ったんだ、とぼくはいいたい。
(701文字)

▼参考記事:青山議員の手のひら返し
http://netgeek.biz/archives/94443



●シャンタラム(中)

読了した日:2017年10月26日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ
出版年:2011年
出版社:新潮文庫

リンク:http://amzn.asia/3Zgd5iH

▼140文字ブリーフィング:

先日上巻を読み、今回は「中」です。
インドを旅する冒険談です。
インド版「アラビアンナイト」みたいな感じでしょうか。
この小説は音と色と匂いに満ちています。
また、読んでいる間、「無常観」と「多様性」を感じます。
インドの持つ生命への肯定のようなエネルギーを感じる不思議な小説です。
インドに行きたいなぁと思いました。
(153文字)



●朝日新聞 日本型組織の崩壊

読了した日:2017年10月26日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:朝日新聞記者有志
出版年:2015年
出版社:文春新書
リンク:http://amzn.asia/iYffOlR

▼140文字ブリーフィング:

2011年の原発問題以降、
私は朝日新聞には辟易としています。
「プロメテウスの罠」はデマの垂れ流しだし、
結論ありきの報道姿勢によって、
「吉田調書」というきわめて悪質性の高い誤報によって、
真面目に働いている東電社員に汚名をきせました。

また従軍慰安婦に関する吉田証言の誤報に関して謝罪すべきだ、
と書いた池上彰氏のコラムを氏に相談なしに不掲載にし、
ついには世論に押し切られて社長が謝罪するに至りました。

なぜ朝日新聞がこれほど「結論ありきのイデオロギー」を、
無反省に一方的に語り続けられるのか、、、
それはじつはきわめて「日本的で官僚的」な組織体質にある、
という内部告発の意味合いを含むのがこの本です。

朝日新聞は官僚批判や政権批判で有名ですが、
彼らほど官僚的で「既得権」的な動きをする組織も他にない、
と著者らは言います。
だって、マスコミの中でも最も給料が高く、
その組織体質は中国共産党にも類比するピラミッド構造ですから。
社員の一番のモチベーションは「失敗しないこと」だそうです。
上に逆らうなど考えられない。
つまり彼らこそ「体制そのもの」であり、
「反体制を標榜する体制」と言う意味で二重に屈折しているのです。
引用します。

→P7〜8 
〈ではいったい、、、、朝日新聞のリアルな問題とは、何だったのだろうか――。
 その本質は、企業構造そのものにあるとわれわれは考える。
硬直化した官僚主義、記者たちの肥大した自尊心と自己保身のせめぎ合い、
エリート主義、減点主義の人事評価システム、
派閥の暗闘、無謬神話、上意下達の日常化・・・。
言うなれば、終戦直後に立案した食糧増産計画を平成の世にごり押しした
諫早湾(いさはやわん)干拓や、2000年代に三菱自動車で発覚した
複数回に及ぶ大規模リコール隠し、
さらには旧日本陸軍参謀本部など、
官僚的な組織に過去見られたような愚行・スキャンダルと同根の問題である。
その意味で朝日は「反日」どころか、
悪い意味で極めて日本的な組織の病に冒されている、と言える。〉

右翼からは朝日新聞は「反日」と呼ばれていますがいやいや、
彼らは反日どころか、「純日本的」なのです。
、、ちなみに戦前に最も国威発揚のための、
「戦争万歳記事」を書いて世論を煽ったのも、
朝日新聞です。

今までのは軽い悪口ですが、
ここからは真剣な話しです。
以前私の弟と会話していたとき、
「新聞社にとって戦争は最後の倒産回避策」という話しになりました。
つまり、戦争が起こると新聞の部数が一気にあがり、
新聞社(メディア)の業績はV字回復します。
じっさい、CNNという放送局は絶対に失敗すると言われていましたが、
湾岸戦争勃発によってCNNは売り上げを伸ばし生き延びました。
FOXも絶対に上手く行かないといわれていましたが、
イラク戦争がFOXを救ったと言われています。

次に日本が戦争に突き進むとしたら、
インセンティブから考えたとき、
「新聞社がつぶれそうになると、ちょっとヤバいな」
と私は思うのです。
多分彼らは無意識に経験的に知っています。
「戦争は逆転満塁ホームランになる」と。
私は「メディア性悪説」に立って、そのように警告します。
戦争リスクを考えるにあたり、
もちろん政治家を注視するのも大事ですが、
歴史を振り返れば本当に怖いのは政治ではなくメディアと世論です。
いや、ホントに。
(1,358文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:該当なし

コメント:

今週は、やたらと忙しかったので、
正直本はあまり読めませんでした。
来週もこんな感じになるかな、と思います。

敢えて言えば「生産性バカ、、」の本はけっこう面白かったですが、
「買った方がいいよ」と勧められるほどではありません。
「リコメンド本」の審査基準は、
「買って読むことをオススメできる」ということですから、
今週は該当なし。

ただ、価値基準というのは人それぞれですので、
「めちゃくちゃ良いじゃん、この本!!」
というものも含まれるかもです。
あくまで私が考える「オススメ」ですのでご了承ください。




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陣内が先週読んだ本2017年10月第三週 『リンカーン うつ病を糧に偉大さを鍛え上げた大統領』ジョシュア・ウルフ・シェンク 他4冊

2018.04.12 Thursday

+++vol.035 2017年10月24日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年10月第三週 10月15日〜21日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●農山村は消滅しない

読了した日:2017年10月17日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:小田切徳美
出版年:2014年
出版社:岩波新書

リンク: http://amzn.asia/507diVM

▼140文字ブリーフィング:

著者の小田切徳美さんに、
9月にお会いしたことから興味を持ちました。
南浦和バプテスト教会でメッセージをさせていただいたとき、
小田切先生のほうから話しかけてくださり名刺を交換しました。
先生は東大農学部卒、明治大学教授で、専門が農業で、
さらに日本の地域再生について研究なさっている、とのことでした。
著書もあることを後で知ったため、手にとって読みました。

この本の要点は、この数年で頻繁に耳にするようになった、
「限界集落」「スマートシティ」などの言葉が指し示す、
「過疎化した農山村は消滅することを前提として未来を描く」
という政府主導の考え方に異議を唱えるということです。

じっさいこれらの言葉の発端は、
「増田レポート」と呼ばれる、財務省、経産省、政府が関与している
行政と政治主導の調査報告にあります。
引用します。

→P2 
〈いわゆる「増田レポート」が「地方消滅」を言い、
世間に衝撃を与えている。
それは、「増田ショック」と表現されることさえある。
元岩手県知事、元総務相大臣の増田寛也氏を中心として
作成されたこの「増田レポート」は一本の論文ではない。
段階的に公表された複数のレポートや著作を指している。

最初に「増田レポート」が世に出たのは、『中央公論』(2013年12月号)の特集
「壊死する地方都市」の中にあった(第一レポート)。
これは「増田寛也+人口減少問題研究会」の菜で公表されており、
その研究会には、増田氏のほか、人口問題、、
労働問題の研究者等が参加している。
、、、爆発的に話題となるのは、
翌年の日本創成会議・人口減少問題検討分科会によるレポート
「成長を続ける21世紀のために『ストップ少子化・地方元気戦略』」(2014年5月8日)である(第二レポート)。
ここでは、若年女性(20〜39歳)の2040年人口を独自の方法で推計し、
現状から半分以下になる市町村を
「今後、消滅する可能性が高い」としたことにより、
注目が一挙に高まった。
この第二レポートには
、、、、財務省と総務省の二人の元事務次官も加わっている。

たたみかけるようにその二日後に刊行された「中央公論」六月号には、
「増田寛也+日本創成会議・人口減少問題兼と分科会」の名で
「消滅する市町村523」という「緊急特集」が組まれ
「ストップ人口急減社会」が公表された(第三レポート)。

、、、その後、8月25日には「増田寛也編著」として
第一レポートから第三レポートまでに加えて、
関連する座談会(いずれも『中央公論』に掲載されたもの)等を集収する本が公刊された。
タイトルは「市町村消滅」からさらにエスカレートして「地方消滅」となっている
(増田寛也編著『地方消滅』中央公論新社、2014年)。
増田レポートを「地方消滅論」と呼ぶのはこの点からである。〉

、、、小田切さんは研究者なので、プロパガンダ的に、
「そんなことはない」という結論ありきの議論を展開しません。
むしろ自分の足で地方を歩いたその「データ」を真摯に開示し、
結論は「農山村は簡単には消滅しないが、
このまま何もしないと、『臨界点』に達し、
消滅する事例も出てくるだろう。」
という控えめな反論にとどまります。

地方を実際に歩いて現場を調査する研究者として、
安倍内閣の「地方創生」が実は「地方たたみ」を前提としているのではないか
ということに対して、「消滅のレッテルを貼られた地方生活者」を代弁し、
異議を申し立てているわけです。
また反論にとどまらず、「ではどうすれば良いのか」という提案も触れられます。
この本は「過疎」という言葉が語られるようになってからこのかた、
地方がどのように格闘してきたかという
「地方創生の体系化」の試みでもあります。

政府が進めている方針への判断は別にしても、
私たちが「これからの国家像を描き直す」という
鳥羽口に立っていることは間違いありません。
引用します。

→P238 
〈前回の東京オリンピックから半世紀、
そして「過疎」という言葉が生まれてから約半世紀の今日、
日本の社会がこのような岐路にあるのは決して偶然ではない。
「これまでの50年、これからの50年」という視野での国民的議論が、
いま必要である。〉
(1,712文字)



●リンカーン うつ病を糧に偉大さを鍛え上げた大統領

読了した日:2017年10月19日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ジョシュア・ウルフ・シェンク
出版年:2013年
出版社:明石書店

リンク:http://amzn.asia/7UIaoKm

▼140文字ブリーフィング:

とんでもなく面白かったです。
夢中で読みました。

リンカーンが生涯、重い鬱病を患っていたのは今では常識ですが、
リンカーンの死後
1.リンカーンを英雄と祭り上げたかった親族
2.鬱病を「信仰上の汚点」と見なすキリスト教保守派の勢力
このふたつのイデオロギーによって、
リンカーンを語る上で避けられない「鬱病患者」としてのリンカーンは、
「歴史修正主義者」たちによって闇に葬られてきました。
つまり、「完全無欠のヒーロー」として世間は彼を神格化したわけです。
しかし近年、「等身大のリンカーン」を見直そう、
という「英雄史観からの脱却」が起き、リンカーンの鬱病研究が進んでいます。
この本はそのような歴史調査の集大成とも言える大作です。

逆説的ですが、「英雄史観」のリンカーンよりも、
鬱病を抱えながら、その内面における弁証法を、
アメリカ合衆国の「自由と奴隷制の弁証法」に適用する彼の姿を知った読者は、
リンカーンをより偉大な英雄と見なすようになる、
という不思議な読後感を持ちます。

じっさい私はこの本を読んだ後、30秒ほど放心状態で静かに遠くを見、
思いました。「歴史上で最も尊敬するイエス以外の人物は、
今までガンジーだったけど、今やリンカーンをより尊敬する」と。

限られた文字数で語る事は不能ですが、
導入の文章が本書の本質を要約してくれています。

→P22〜23 
〈本書の狙いは、
リンカーンのメランコリーを完膚なきまでに知ることではなく、
それを精一杯知ることであり、
どのような成り行き(ストーリー)になるかを見届けることである。
広義に言って、その成り行きはかなり単刀直入だ。
リンカーンは、若い頃から心理的な苦悩や苦痛をなめ、
自分は気質的に異常な程度まで苦しむ傾向があると思い込んだほどだった。
彼は自力で自分の苦しみを突き止め、自力で救いの手を見いだし、
がまんして適応する術を身に付けた。
ついに彼は、自らの苦悩から意味を鍛え上げた。
すなわち、それによって、苦悩を打ち勝つべき障害ばかりか、
その苦悩を己の良き人生の要因にまで高めたのである。

本書は、現代のためのストーリーである。
うつ病は、毎年世界中で一億人以上の人を苦しめる、
世界でもトップクラスの疾病である。
2000年、世界でおよそ100万人がこれで自殺した。
これは、同年度の戦争による死者数、
殺人による死者数を合せたのにおおよそ匹敵する数値である。

、、、この現実に直面するとき、
歴史上の卓越した人物の罹病は新たな痛切さを帯びてくる。
特に彼の病の特質ばかりではなく、
それが生産的な人生の一部になり得た姿においてこそ、痛切となるのである。

、、、本書は、大きな苦痛を大きなパワーに合体させた男の物語である。
自分の性質に「固有な不運」を嘆く少年時代の手紙から、
自殺や狂気という主題を書いた詩に至るまで、
リンカーンの生涯は自分の苦しみを説明し、
それを高い次元へと高めてさえくれる意味を求める模索が始発点になっていた。
大統領としての彼は、同胞に彼らの祝福と重荷を受け入れ、
彼らの苦悩には意味があることに気付き、
より完璧な合衆国連邦を目指す旅程に同行することを求めたのである。〉

近いうちに、この本は「本のカフェ・ラテ」コーナーで
もう少し詳述します。
(1,318文字)



●分断社会ニッポン

読了した日:2017年10月19日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:井手英策 佐藤優 前原誠司
出版年:2016年
出版社:朝日新書

リンク:http://amzn.asia/iMrYlxf

▼140文字ブリーフィング:

去る日曜日には衆議院選挙がありました。
結果は自民党が議席数を保持し、
分裂した野党は思うように票を伸ばしませんでした。
私はテレビ東京の池上彰の特番を見ていました。
あの番組はめちゃくちゃ面白いです。

あの番組での池上彰の目は「人殺しの目」ですね。
宮本武蔵と佐々木小次郎が対峙したときの目というか。
得に小泉進次郎とのやりとりとか、二階幹事長とのやりとりなんて、
「命の切り結び」のようなヒリヒリした緊張感を覚えました。

あの間を間違って通行したら死ぬな、
と思うような、「張り詰めた空気感」は、
かつてのPRIDEの、
「ヴァンダレイ・シウバ対ミルコ・クロコップ」のような緊張感があります。
池上彰の目はシウバの目でした。

池上彰は自著に、
「政治家とは今まで一度もご飯を食べたことがないし、
これからも一緒にご飯を食べない。」と書いています。
理由は、政治家になるような人というのは、
「半径2メートルに入ってしまったら、
 好きになって惚れ込んでしまうような磁力」
とでも表現すべき人間的魅力を持っているに決まっているからだ、
と彼は言っています。
特に国政選挙に出るような人なんて、
1分話したらファンになってしまうような魅力を備えている。
だから政治家は「握手」するのです。
握手した政治家とは、心理的アタッチメントができますから、
投票する確率は格段に高まることを政治家自身がよく知っているのです。

池上さんは自らを「報道代表」と自認していているのがよく分かる。
報道の仕事は政治を見張ることです。
政治を見張りまっとうな批判を加える報道が、
政治家と「馴れ合ったら終わり」と彼は思っている。
だから距離を置くのです。

ある国に行ってその国の「民主化度」を知りたければ、
「新聞を読んでそこにどれぐらい政府への批判が含まれるか」
を観察すべきだと池上さんは言っています。
だいたいその批判の量と質が、
その国の民主化の度合いと比例する、と。

そんな池上さんと「政治代表」の、
小泉進次郎のやりとりはしびれます。
お互いへのリスペクトがありながら、
息もできない「心の竹刀のつばぜり合い」が、
見えたような気がしました。

、、、で、本の話し。
危なく本の話しを忘れてました。

、、、今回の選挙を、佐藤優氏はラジオで、
「バタフライ効果」を使って説明していました。
複雑系の科学では、その複雑性を、
「ブラジルで蝶が羽ばたくとテキサスで竜巻が起こる」
という言葉で説明します。
つまり小さなインプットが、別の場所で、
予測もつかない大きなアウトプットを引き起こす、ということです。

今回の「蝶の羽ばたき」は間違いなく、
元民進党の前原誠司氏の離党です。
彼の動きが小池新党を生み、
小池代表の「排除」発言が逆に立憲民主党人気に火を点けた。
その「つぶし合い」の漁夫の利をまんまと得たのが自民党、
というのが今回のあらかたの顛末と言って良いでしょう。

今回の選挙では自民党の中でも老獪な政治家は一様に、
厳しい顔つきをしています。
小泉進次郎は池上さんに、
「野党がボタンを掛け違えていなければ、
 政権は交代していた。」
と先の特番のなかで語りました。

今の日本の政治というのは大変不思議で、
内閣支持率は低く、安倍政権が終わって欲しいと、
国民の過半数が思っている(アンケート調査の結果)にもかかわらず、
選挙をしてみると自民党が圧勝し続ける、
という「倒錯」した状態が続いているわけです。

そんななかで大切なのは、
「与党の文句を言い続ける野党」ではなく、
「魅力的なオルタナティブ(代替案)」を、
しっかりと作り上げていく「脳に汗かく」人々の存在です。

この本は、前原誠司氏の友人である佐藤優氏と井手英策氏が、
彼が今後日本の国政で達成していく「理論武装」をするにあたり、
「一肌脱いだ」鼎談を文字化したものです。

内容については多数面白いところがあるのですが、
二つだけ紹介します。
ひとつめは佐藤優氏の指摘している、
「制度設計は性悪説で、制度運用は性善説で」
行うことの大切さです。

→P155 
〈佐藤:やはり、制度設計というのは、
基本的に性悪説で行わないといけないと思うんです。
その代り、制度の運用は性善説で行う。
往々にして我々のやり方というのは、
制度は性善説で作って、運用が性悪説になる。
そもそも論として、私はインテリジェンスの世界にいて思ったんですけど、
日本と諸外国って、制度設計の基本哲学が逆なんですよね。
例えば、イスラエルはインテリジェンスが最も進んでいますから、
これは制度設計として性悪説が基本なんです。
ところが運用になると性善説なんです。〉

、、、もうひとつは前原さんの「心の叫び」のような語りです。

→P95 
〈前原:、、、国の礎は教育にかかっていますね。
どれだけひもじい思いをしたって
大人が子どもの教育に投資をするのは大事なことで、
税の使い方や政策も含めて、
これはなんとしても国を挙げてやるべきことだと思います。
先ほど申し上げた0歳から5歳までの就学前教育は無償で行う。
大学も基本的に無償化する。
こんなことは2.7兆円、消費税1%ぐらいの税収でできることです。
これは私が自分に対していっている事ですけど、
それが実現できなかったら国会議員をやっている意味なんてないですからね。
そこの財源を取って中身をどのように充実させるかという議論があって良いと思います。
少なくともすべての子どもにチャンスを与えるべきです。
どこの地域に生まれても、親がどんな所得階層に生まれても、
子どもに教育のチャンスを等しく与える仕組みは
最低でも作らないといけません。〉

、、、前原誠司さんという人は、
自分からはあまり語りませんが大変な苦労人です。
彼は中学生のときにお父さんを鉄道自殺で亡くされています。
そして高校も大学も奨学金をもらって卒業した。
京都大学法学部では授業前に毎日、
卸売り市場でアルバイトをしてから授業を受けていた。

同志社大学神学部にいた佐藤優氏と前原氏は、
「京都に住んでいた時期」が重なっています。
佐藤氏は仕送りをもらいアルバイトをする必要がなく、
神学書をひたすら読みふけり時々飲みに出かけるような余裕があった。
前原さんのような苦学をした人を、
そんな佐藤さんは非常に尊敬しているのがわかります。

前原さんはその後松下政経塾に入り政治家になりましたから、
彼が「貧しい家庭の子どもも良い教育を受けられる社会を」というときそれは、
「本物のコンパッションから生まれた魂のこもった政治哲学」なのです。
だって、もし「奨学金制度」だとか国立大学の安い学費といった、
「優秀な学生が社会的上昇をするための国側のサポート」がなければ、
彼はきっと大学を卒業できていないし、政治家にもなれていないし、
もしかしたら父親の自殺を乗り越えられていないかもしれない。
だから彼は切実であり、それが今回の「バタフライエフェクト」となった、
「民進党への見限り」を生んだわけです。
彼の政治的な選択についてはいろんな評価があるでしょうが、
教育機会に関する政治哲学については私は彼を支持します。
(2,702文字)



●自問力 「5つの質問」と「自問自答」ですべてが好転する

読了した日:2017年10月19日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:堀江信宏
出版年:2017年
出版社:ダイヤモンド社
リンク:http://amzn.asia/346YYWF

軽い本でした。30分で読みました。
内容の99パーセントは過去に読んだことのある話しでしたので、
超速で読めます。
読書のスピードは知の集積により上がっていきます。

内容はといえば、「偽の願望」から「本物の願望」に
気付く道具としての、という話しです。
著者は2015年にガンを宣告され、2016年に寛解したそうです。
ガンはギフトだ、と考え、
自分のメソッドを当てはめてガンを克服したのは尊敬に値します。
「5つの質問」の部分を引用します。

→P30 
〈質問1 「自分が得たい結果は何だろう?」・・・問題を「自分事」として捉える質問
質問2 「どうして、自分はそれを得たいのだろう?」・・・自分の目的を明確にする質問
質問3 「どうしたら、それを実現できるだろう?」・・・可能性に目を向ける質問
質問4 「これは、自分の将来にとってどんな意味があるだろう?」・・・いい意味づけをする質問
質問5 「今、自分がすべきことは何だろう?」・・・自分を動かす質問〉

これを繰り返すことで、
「人に認められたい」「見返したい」というような偽の願望から、
「幸せを感じたい、充実した仕事がしたい」という本当の願望に気付き、
そしてそれを具体的な行動に落とし込んでいく、、、
というメソッドです。
奇抜な発想ではなく、多くの成功している人は、
無意識に毎日していることです。
(552文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:リンカーン うつ病を糧に偉大さを鍛え上げた大統領

コメント:
文句なしにオススメします。
ただ、この本の唯一にしてけっこう大きな難点は、
「翻訳が小難しい」ことです。
翻訳下手だなぁ、、と思いながら読んでみると、
訳者はどうやら日本の翻訳界の最大の大御所みたいな人でした笑。
上手すぎて読みづらいのかな、、?
そんなことってあるのかな、、、?
とか思いながら、最後の方は彼の、
「わざと難解にしているような翻訳」に慣れてきましたが、
やっぱりこの本、内容があまりにもすばらしいので、
それでも訳者には「この本を翻訳し、世に出してくれてありがとう」
という感謝を抱きました。



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陣内が先週読んだ本2017年10月第二週 『新・所得倍増論』デービッド・アトキンソン 他4冊

2018.04.05 Thursday

+++vol.034 2017年10月17日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年10月第二週 10月8日〜14日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●新・所得倍増論

読了した日:2017年10月10日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: デービッド・アトキンソン
出版年:2016年
出版社: 東洋経済新報社

リンク: http://amzn.asia/b0ep8t8

▼140文字ブリーフィング:

この二年ぐらい、アトキンソンの名前は、
いろんなところで目にするようになりました。
彼は30年以上日本に住んでいて日本語ペラペラのイギリス人です。
このレベルの外国人って、
並大抵の日本人よりはるかに日本に詳しいです。

彼はかつてゴールドマン・サックスにいた、
経済アナリストでもあります。
彼の論点は、「日本人の日本経済分析は甘い」というものです。
本書ではどこが甘く、何を見落としているのか、
ということが様々なデータから説得的に述べられます。

彼の最大の主張は、
「日本はGDPでは世界第三位だが、
 『ひとり当たり生産性』は先進国で最低ランクだ」
ということです。
それだけなら「改善すれば良い」わけですが、
問題は多くの日本人にその自覚がないことだ、と彼は言います。
「分析が甘い」からです。

日本人の多くが認識していない、
本書の前提となる現状認識を引用します。

→P3〜4 
〈日本は1990年、世界第10位の生産性を誇っていましたが、
今では先進国最下位です。
労働者ベースで見てもスペインやイタリアよりも低く、
全人口ベースでは世界第27位です。
1990年には韓国の2.4倍も高かった生産性が、
今は1.04倍まで低下しています。
このまま何も手をうたなければ、
あと2〜3年で韓国に抜かれて、
アジア第4位の生活水準にまで低下するでしょう。

なぜ、そうなったのでしょうか。
これにも、二つの原因があると思います。

ひとつは、日本は世界ランキングに酔いしれて、
実態が見えていない傾向があると言うことです。
厳しい言い方をすれば、「妄想」に浮かされているのです。

日本は、一見すると素晴らしい実績を上げているように見えます。
たとえば世界第三位のGDP総額、世界第3位の製造業生産額、
世界第4位の輸出額、世界第6位のノーベル賞受賞数
―――枚挙にいとまがありません。
しかし、これらすべては日本の人口が多いことと深く関係しています。
潜在能力を発揮できているかどうかは、
絶対数のランキングではなく、「ひとり当たり」で見るべきです。
それで見ると、1人あたりGDPは世界第27位、
1人あたり輸出額は世界第44位、1人当たりノーベル賞受賞数は世界第39位。
潜在能力に比べて明らかに低すぎる水準です。
やはり、やるべきことをやっていないといった問題以前に、
世界ランキングに酔いしれて、
何をやるべきかを分かっていないのではないかと思います。

2つめは、人口減少問題です。
いうまでもなく「GDP=人口×生産性」ですので、
日本人の数が減る中で経済成長するためには、
生産性を上げるしかありません。
本来なら、人口増加が止まった1990年には、
「生産性向上型資本主義」を目指すべきでした。
1995年以降、日本経済が横ばいに推移している理由はここにあります。
人数が増えていないのに、生産性も上げていないので、
GDPは横ばいのままです。
これに関しては、難解なデフレ論などの経済論は不要です。

分析してみて分かるのは、日本型資本主義は1977年以降、
基本的には人口激増による人口ボーナスの恩恵を受けながら
伸びてきた経済モデルだと言うことです。
1990年代に入ってから、
日本型資本主義の基礎であった人口増が人口減に転じたことで、
日本経済のあり方を全面的に変える必要がありましたが、
いまだにその意識は足りないと感じます。
だからこそ、経済は停滞したままなのです。〉

、、、「日本がアメリカの51番目の州になったら、、、」
という議論が時々出ますが、
もし今日本が「本当に」アメリカの51番目の州になったら、
人口ではもちろんトップですが、広さでは5番目です。
アラスカ、テキサス、カリフォルニア、モンタナの次です。
、、、では「ひとり当たりGDP」は?
なんと、下から2番目です。
「日本州」の下にはミシシッピ州しかありません。

「いつの間に日本はそんなに落ちぶれたんだ、、、」
と呆然とする人も多いでしょう。

じっさい生産性という意味での日本の国際的な地位は、
「失われた20年」を経て、1970年のレベルに戻ったことが、
この本を読むとよく分かります。。
まだ90年代の幻想を引きずったまま生きている人が多いのが、
頭の痛い所なのですが、、、。
それは印象論ではなくてデータ的にも確かで、
この45年の世界の株価成長率(約3,500%)は、
1,990年以降の日本の67%という異常な株価成長率の低さによって、
45年で世界平均の成長率に収斂しました。
日本は成熟国家どころか、「生産性発展途上国」であるという認識が必要です。
そのためには具体的には女性の生産性向上が喫緊の課題ですがそれは
「かけ声」や「保育所」によっては起こらないと著者は言います。
「外圧」によってインセンティブが働かなければ
「経営者が経営者の仕事をし、女性の生産性を活用する」
というところに行きません。
著者によればそのプレッシャーは政府によってかけられるべきだし、
何より変化を嫌う経営者は、
そのまま変化しなければ首が飛ぶという仕組みが必要です。
経営者は格差も貧困も自分には関係がないので、
今の仕組みのままだとひとり当たりGDPが上がらなくても、
まったく意に介しません。
「生産性が上がり株価が上がらなければ経営者が職を失う」という
インセンティブによってしか日本の経営者は動かない、
と著者は指摘しています。
私も同感です。
(2,013文字)

追伸:「希望の党」の内部留保課税というのは、
ここでいう「インセンティブ」ではありません。
あれは完全に二重課税だし、設備投資へのインセンティブは働きません。
「何年か後に非正規雇用を正社員にしなければならない法律」が、
労働者を守るどころかより苦しめる法律になるのと同じで、
「内部留保課税」はよりいびつな状況を生み出すだけです。



●天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブではない日々

読了した日:2017年10 月10日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: メイソン・カリー
出版年:2014年
出版社: フィルムアート社

リンク: http://amzn.asia/8LABePz

▼140文字ブリーフィング:

古今東西の、161人の「天才」たちの日課を、
ただただ記録するという「ブログの書籍化」です。
かなり面白いです。
「天才たち」と言ってもカテゴリはかなり限局していて、
8割は作家、残りは画家、シナリオライター、物理学者などです。
「文章を紡ぐという労働」が過酷なものであることを多くの作家が告白していて、
その部分は共感とともに読みました。
「創作活動」というのは過酷な肉体労働に勝るとも劣らない、
苛烈な労働だというのがよく分かります。

→P136 
〈創作活動は非常に過酷で心身を消耗するため、
夜は休んで頭をすっきりさせる必要があると感じていたらしい
(ジェイムス・ジョイス)〉

→P140 
〈「文芸作品がどれほどの高みを極めるかは、
苦しみが作家の心をどれほど深く削ったかによる。
それは井戸を深く掘れば掘るほど、
水面が上昇するのと同じだ」(マルセル・プルースト)〉

→P142 
〈その〈部屋ごもり期〉は、あるとき、ふとひらめいて始まった。
深夜にダブリン港の近くを散歩していたとき、
自分が冬の嵐のさなかに、埠頭の端に立っていることに気づいた。
吹きすさぶ風と荒れ狂う水に挟まれて、とつぜん悟った。
自分がそれまでの人生で―――あるいは創作で、
「必死に押さえ込もうとしていた暗闇」は、
これまで注目されることもなく、自分の目標とも一致しなかったが、
じつはそれこそが創造的インスピレーションの源にちがいない。
「これからずっと暗くふさぎ込むことになるだろう」ベケットはそう考えた。
「しかし、慰めはある。それは、このくらい側面こそ、
自分の優れた面だということを、ようやく受け入れることができた、
その実感だ。それを受け入れ、今後、自分のために役立てよう」(サミュエル・ベケット)〉

→P219 「作家業はきついなんてもんじゃない。悪夢だ」
ロスは1987年にそういっている。
炭鉱を掘るのはきつい仕事だが、作家業は悪夢だ・・・この職業には、
大きな不確実性が構造的に組み込まれている。
これでいいんだろうかという疑念が常につきまとうんだ。
それがある意味で作家を支えてもいる。
よい医者は自分の仕事と格闘したりしない。
だが、よい作家は自分の仕事と格闘している。
大抵の職業では、初期、中期、末期がある。
だが作家業には初期しかない。
仕事の性質上、我々にはそういった新鮮さが必要なんだ。
もちろん作家業にも繰り返しはある。
じっさい、すべての作家に必要なのは、
この非常に退屈な作業をしながら、
じっと座っていられる能力だ。(フィリップ・ロス)〉

、、、161人の「知的労働のポートレイト」を観ていると、
いろんなタイプの「格闘の仕方」があるというのが分かります。
しかし共通していたのは、
一日に創造的な頭脳を使える時間は多くても4時間、
短ければ1時間という「天才ですらその程度」という時間の短さでした。
その「ゾーン」を生活に組み込むためにある人はジョギングをし、
ある人は長時間睡眠をし、ある人は眠らず、
ある人は酒浸りになり、ある人はアンフェタミンに頼り、
ある人は女を抱きまくり、ある人は散歩をし、
ある人は水泳をし、ある人は料理をし、
ある人はまったく料理をしません。
ある人は収入と脳のリフレッシュのために作家業とは別に、
退屈な事務仕事などを掛け持ち、
ある人はまったくそのような仕事と無縁にひたすら書きます。

なんかよく分からないが、励まされました。
グールドが最後から二番目のインタビューで語っていますが、
脳と身体には個性があり、それは天賦のもので、
それをいかにうまく「手なずけるか」にかかっているのだ、
という先人たちのメッセージが聞こえたような気がしました。
「知的で創造的な労働」に携わる人はこの本から得るものが多いと思います。
(1,516文字)



●みんな神様をつれてやってきた

読了した日:2017年10月12日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:宮嶋望
出版年:2008年
出版社:地湧社

リンク: http://amzn.asia/0SqAl5k

▼140文字ブリーフィング:

先週に引き続き、
北海道新得にある障害を抱える人々が働く牧場、
「共働学舎」の宮嶋望さんの本を読みました。
先週読んだ「共鳴力」のほうが網羅的でしたが、
こちらの本も面白かったです。
ゼロからの酪農とチーズ作りというのは、
私も帯広に6年いましたからどれぐらい大変か想像がつきます。
私には絶対にできないと思います。
宮嶋さんは人から「どれぐらい苦労しましたか?」
と聞かれるといつも、
「北の国から」の黒板五郎さんよりちょっと大変でした、
と答えているそうです笑。
私は「純」のように根性がないので、
彼のような人を本当に尊敬します。
30年間の共働学舎の歩みを彼は「宝探し」と総括しているのが、
とても印象的でした。

→P206 
〈次の時代が求める新しい種は、どこに埋まっているだろう。
どこかで芽を出す時を待っているはずだ。
これからも僕らがいる農場には、
そうした種を宿した人間がやってくるに違いない。
それはどんなふうに育ち、どんな花を咲かせるだろう。
社会の中に存在する意味が見いだされなかった人の中に、
次の社会をつくり出す新しい可能性を見つけることができたら、
それは僕らの宝となる。
僕らが見つけてきた宝は、その持ち主を豊かにし、
周りを豊かにし、社会を豊かにしてくれる。
共働学舎新得農場を三十年続けてきて「何をしてきたか」と問われたら、
僕は「宝探し」と答えるだろう。〉
(568文字)

▼参考リンク:「共鳴力」宮嶋望
http://amzn.asia/0A94u7h



●紙の月

読了した日:2017年10月12日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 角田光代
出版年:2012年
出版社: ハルキ文庫

リンク: http://amzn.asia/5QE5PlK

▼140文字ブリーフィング:

吉田大八監督の映画を観て、
原作を読みたくなりました。
銀行で横領をした女性の話ですが、
「集金カバンから5万円を借りる」という小さな行動が、
雪だるま式にエスカレートし、最後は1億円を横領します。
臨場感があり、「ホラー」よりも人の内面は怖い、
ということを再確認できる作品です。
(135文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドます。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:「新・所得倍増論」

コメント:
アトキンソン氏の書籍はちょっとしたブームの様相を呈しています。
日本の「労働時間は長いが労働の密度は薄い」という状況を、
なんとかしなければならないのですが、
構造的な問題が潜んでいるため改革はなかなか進まない。
「一日中お茶を飲みながら噂話をし、
時々書類にはんこをついている50代の管理職が、
現場をかけずり回りながら、
社会にとってイノベーティブな生産をしている、
非正規の30代の契約社員の4倍の給料をもらっている」
というような状況が続く限り、日本の未来は暗いでしょう。
まずは「同一労働、同一賃金」に近づけることが大切、
と私は思います。
(250文字)



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陣内が先週読んだ本2017年10月第一週 『ヤバい経済学』スティーヴン・レヴィット 他6冊

2018.03.29 Thursday

+++vol.033 2017年10月10日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年10月第一週 10月1日〜7日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●ヤバイ経済学

読了した日:2017年10月1日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー
出版年:2007年
出版社:東洋経済新報社

リンク:http://amzn.asia/2G8vCoq

▼140文字ブリーフィング:

「インセンティブ」というキーワードで、
「社会のこの出来事を経済学で考えると、、、」
という読み解きを行う面白い本です。

保育園のお迎えの遅刻をなくすために、
罰金を設けたら逆に遅刻が増えた、
という社会実験があります。

なぜか?

それは「インセンティブは複数あり、
それは経済的インセンティブだけではない」
ということを罰金を科す人々が理解していなかったからです。
献血に対して報酬を払うと献血をする人は減る、
という現象も同じです。

→P20〜25 
〈この問題(保育園で親がお迎えに遅刻すると職員ひとりが
子どもと一緒に親を待たねばならない)を聞きつけた
経済学者二人が、、、解決策を持ってきた。
遅れた親からは罰金を取れば良い。

だいたい、なんでそういう子どもの面倒を
保育園がタダで見ないといけないんだ?
経済学者たちはその解決策をイスラエルのハイファにある
保育園10カ所で実証することにした。
調査は20週間続けられたけれど、
最初から罰金が科されたわけではなかった。
初めの4週間、経済学者たちは遅れてくる親の数を数えるだけだった。
平均で見ると、保育園一カ所あたり、週に8件の遅刻が起きていた。
5周目に罰金制度が実施された。
迎えに来るのが10分以上遅れた場合、
その親には毎回子どもひとりにつき3ドルの罰金を科すと発表された。
罰金は、380ドルほどの月謝に上乗せされた。

罰金制度が始まると、親の遅刻はすぐに、、、増えた。
そう経たないうちに週当たりの遅刻は20件にもなった。
元の倍以上だ。インセンティブは完全に裏目に出てしまった。

、、、インセンティブの味付けは基本的に3つある。
経済的、社会的、そして道徳的の三つだ。
インセンティブの仕組み一つが三つとも兼ね備えていることは良くある。
近年の禁煙運動を見てみよう。
1箱3ドルの「罪悪税」はタバコの購入意欲をくじく強い経済的インセンティブだ。
レストランやバーでの喫煙が禁止されていることは
強力な社会的インセンティブである。
そしてアメリカ政府が、
テロリストは闇でタバコを売って資金を調達していると主張する時、
あれは耳の痛い道徳的インセンティブになっている。

、、、しかし、保育園の罰金制度には
(3ドルだと毎日遅刻しても正規料金の6分の1という安さ以外に)
もう一つ大きな問題があった。
道徳的インセンティブ(遅れた親が感じる罪の意識)を
経済的インセンティブ(罰金3ドル)に置き換えてしまったのだ。
毎日ほんの数ドルで免罪符が買える。
そのうえ罰金が少額なので、
迎えに来るのが遅くなってもたいしたことじゃないという
シグナルが親御さんたちに送られてしまった。
、、、調査の17周目になって経済学者が罰金をやめても
遅れる親は減らなかった。
遅れてきた人たちは、罰金を払わされることもなく、
そのうえ罪の意識もなくなった。

、、、イスラエルの保育園で行われたのと同じような、
道徳的インセンティブを経済的インセンティブと
ぶつからせる研究が1970年代に行われた。
今度は献血の背後にある動機について調べようとしたのだ。

わかったこと:
献血をした人を思いやりがあると単に褒める代わりに、
彼らに少額の奨励金を払うと、献血は減る傾向がある。
奨励金で、献血は気高い慈善活動から痛い思いをして
ほんの数ドル手に入れる方法に堕落した。
そして数ドルでは全然見合わない。〉

、、、このメルマガを有料にするインセンティブも同じです。
もし「お金のため」ならば私はメルマガを書くインセンティブがありません。
有料メルマガで「稼げる」人って、日本で10人ぐらいしかいません。
「稼げない裾野」は数万人いますから、
有料メルマガはビジネス的には「墓場」です。
この業界は、死屍累々なのです。
出版社に原稿を送り続けた方がまだ勝算があると皆が認めています。
同じ大変な思いをして「労働力を換金」する、
ベターな選択肢は、他にもたくさんあります。

経済的インセンティブ以外のものが働いているから、
私は無料でメルマガを書き続けています。
それは私の「召命」と関与しているので換金不能です。
道徳でも社会でも経済でもない、
「超越的インセンティブ」が私にはあります。

もうひとつ面白かったのは、
全米で行われた子どもの学力調査からあぶり出された、
親の行動や資質と、子どもの学力の相関関係です。
親のどんな行動や要素が子どもの学力と関係し、
親のどんな行動や要素が子どもの学力と関係ないのか、
データを冷徹に見ると浮き上がる真実は興味深いです。
引用します。

→P209〜210 
〈さて、延々やってきたけれど、
親の大事さ一般についてどんなことが分かるだろう?
ECLS(全米で実施された大規模な子どもの学力調査)の要因のうち、
学校の成績と相関している八つをもう一回見てみよう。

・親の教育水準が高い
・親の社会・経済的地位が高い
・母親は最初の子どもを産んだ時30歳以上だった
・生まれた時未熟児だった(負の相関)
・親は家で英語を話す
・養子である(負の相関)
・親がPTAの活動をやっている
・家に本がたくさんある

それから、相関していない要因八つはこうだった。

・家族関係が保たれている
・最近より良い界隈に引っ越した
・その子が生まれてから幼稚園に入るまで母親は仕事につかなかった
・ヘッドスタート・プログラム(政府による教育補助プログラム)に参加した
・親はその子を良く美術館へ連れて行く
・よく親にぶたれる
・テレビをよく見る
・ほとんど毎日親が本を読んでくれる

ちょっとオーバーな言い方をすると、
一つ目のリストに挙がっているのは親がどんな人かだ。
二つ目のリストに挙がっているのは親が何をするかだ。
良い教育を受けていて、成功していて、
健康な親御さんの所の子どもは学校の成績も良い。
でも、子どもを美術館に連れて行ったり、ぶったり、
ヘッドスタート・プログラムに行かせたり
良く本を読んでやったり
テレビの前に座っているのを放っておいたりなんてことは、
どうやらあんまり関係ないみたいだ。

、、、もちろん親はもの凄く重要だ。
それがとても難しいところだ。
つまり、親御さんが子育ての本を手にする頃には、
もう全然手遅れになっている。
大事なことはずっと前に決まってしまっている。
ーーあなたがどんな人で、どんな人と結婚して、
どんな人生を歩んできたか、そういうことだ。
、、、あなたが親として何をするかは
あんまり大事じゃないーー大事なのは、あなたがどんな人かなのだ。〉

、、、「どんな子育てをするか」という子育て理論は、
いつの時代にも人気があり人々の関心を引きますが、
データを詳細に調べると、「どんな子育てをするか」は、
じつはあまり子どもの学力と関係がない。
勝負は子どもが生まれる前にとっくに決まっている、
と「ヤバイ経済学」は分析します。
(こういう発言はひんしゅくを買うので、
 これが「ヤバイ経済学」であるゆえんです。)
つまり、親が親になる前の20年なり30年、
どんな人生を送ってきたかということが
子どもの学力の殆どを決めてしまう。

将来子どもの学力を高めるのに一番大切なことは、
胎児にクラシック音楽を聴かせたり、
子どもをキッズ英会話に通わせたり、
週に五日間、学習塾や習い事に行かせることではありません。
(余談ですが私はそれが「虐待」にみえて仕方ないです。
 ブラック企業ならぬブラックペアレントですね。
 子どもだっていつか過労で死ぬぜ、と思います。
 たいていそういう親は「善意の塊」ですから、
 そこが問題をややこしくしているのですが。)
むしろなすべきことは、
親自身が本を読み、
親自身がひたむきに勉強し、
親自身が真摯に仕事に取り組むことです。
将来子どもに良い人間関係を築いて欲しければ、
親ができる最も大切なことは配偶者や家族と、
良好な人間関係を築くことです。
耳が痛い事実なので人はあまり「聞きたがらない」ですが、
たいせつな真理をデータは示しています。
(2,876文字)



●あの演説はなぜ人を動かしたのか

読了した日:2017年10月1日
読んだ方法:図書館で借りる

著者: 川上徹也
出版年:2009年
出版社: PHP新書

リンク: http://amzn.asia/0UA1LuK

▼140文字ブリーフィング:

歴史に残る「名演説」を取り上げて、
その演説はなぜ人の心を動かしたのかが、
分析されています。
取り上げられている演説は以下の通り。

・小泉純一郎 「郵政解散演説」
・田中角栄 「ロッキード選挙演説」
・バラク・オバマ 「2004年民主党全国大会基調演説」
・ジョージ・W・ブッシュ 「9.11直後の演説」
・ジョン・F・ケネディ 「大統領就任演説」
・フランクリン・ルーズベルト 「大統領就任演説」
・マーティン・ルーサー・キング・ジュニア 「私には夢がある」演説

著者は名演説に共通するのは
「ストーリーの黄金律」と著者が呼ぶ3要素だ、
と分析します。

→P7〜8 
〈具体的に言うと、
以下の三つの要素が含まれていることが「ストーリーの黄金律」です。

1.何かが欠落した、もしくは欠落させられた主人公
2.主人公が何としてもやり遂げようとする遠く険しい目標・ゴール
3.乗り越えなければならない数多くの葛藤・障害・敵対するもの

この三つの要素が含まれていると、
人は感情移入しやすく、心を動かされやすく、
行動に駆り立てられやすくなります。
いわば「人類共通の感動のツボ」のようなものです。〉

現在の日本の政治家も、
この「ストーリー作り」に成功した人が選挙に勝っています。
小泉純一郎の「自民党をぶっ壊す」は言うに及ばず、
2012年の第二次安倍政権誕生の選挙も、
・安倍さんの病気からの復活(欠落した主人公)
・憲法改正の悲願(困難な目的)
・朝日新聞という「巨悪」(葛藤と障害)
というストーリー作りに成功し、
鬱屈した保守層の絶大な支持を集めました。
昨年の東京都知事選挙もそうです。
・石原慎太郎から「厚化粧」と呼ばれた小池百合子(欠落した主人公)
・都政を都民の手に取り戻す(困難な目的)
・「都議会のドン」の存在(葛藤と障害と敵対者)
このストーリーに都民は熱狂した。
(自作自演というツッコミはありますが、、、)

、、、さて、
今回の国政選挙からは、
そういった「わかりやすいストーリー」が見えてきません。
そもそもなんで解散したのか(政治家以外には)分からない。
「予言」しても良いですが、投票率はかなり低くなるはずです。
思想家の東浩紀氏は「政治家の都合で無駄な選挙をしないでくれ」
という意思表示として積極的棄権を呼びかけていますが、
その気持ちは私にもよく分かります。
(私は彼とまったく同じ気持ちですが投票はするつもりです)

▼参考リンク:東浩紀「積極的棄権」への署名
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-18506.html

、、、まったく話しは変わりますがこの本には、
上記の演説が「文字おこし」されて収録されています。
2004年のオバマ氏の民主党基調演説「大いなる希望」は、
図抜けてすごかったです。
保守やリベラルの対立を乗り越えて、
より大きな国家像の絵を描き、
高度に抽象的な理想を万人に共感出来る物語に落とし込んだ、
演説として「欠点がひとつもない」完璧な演説です。
これはシビれます。
(1,219文字)

▼参考リンク:バラク・オバマ「大いなる希望」動画
https://youtu.be/hNlkMJnbvhU



●映画と本の意外な関係

読了した日:2017年10月1日 途中飛ばし読み
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 町山智浩
出版年:2017年
出版社: インターナショナル新書

リンク: http://amzn.asia/3CE7p8q

▼140文字ブリーフィング:

映画評論家の町山智浩さんが、
映画の主人公が手にしている本や、
映画の主人公の部屋の本棚にある本のタイトルには、
それを制作した人々の「意図」が隠されている、
という視点で映画を語る本です。
この人の「映画の読み込み方」はハンパじゃないです。
スピルバーグ監督の「リンカーン」という映画を、
私は見ていないですが、その映画の解説で、
リンカーンが鬱と戦っていたことが書かれていたのが、
興味深かったです。

→P105 
〈大統領のジョーク好きに手を焼いたエドウィン・スタントン陸軍長官は、
「あなたはどうして、いつもジョークばかり言っているんですか?」
と尋ねたことがある。リンカーンはこう答えたという。
「笑わないと死んでしまうからだよ」
それはジョークではなく、本当に彼は笑わないと死ぬ病気だった。
ジョシュア・ウルフ・シェンク著
『リンカーン――うつ病を糧に偉大さを鍛え上げた大統領』(06年)によると、
リンカーンは生涯、鬱病と闘ってきた。
自殺をしようと銃を持って森に入り、
通りかかった人に止められたこともあった。

シェンクによるとリンカーンの鬱はまず遺伝的なもので、
両親の家系がともに鬱病の傾向が強かった。
父は飲酒どころかダンスも罪と考える厳格なキリスト教徒で、
ユーモアのセンスに欠けていた。
母はいつも悲しげな女性だったという。
健康でもなかった。
リンカーンは人並み外れてて足が長く、
それを利用して欠けレスリングで稼いだこともあったが、
現在では身体の結合組織に影響する遺伝子疾患の
アルファン症候群という先天性の病気だった可能性が高い。
また、晩年、声が非常に甲高くなったが、
それも甲状腺腫瘍のためらしい。そのせいか常に病気がちだった。〉
(701文字)



●シャンタラム(上)

読了した日:2017年10月4日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ
出版年:2011年
出版社:新潮文庫

リンク: http://amzn.asia/4cMrhnD

▼140文字ブリーフィング:

養老孟司が複数の本で言及していて興味を持ちました。
上、中、下巻あり、それぞれ700ページある大長編です。
「ワケあり」の主人公がインドを冒険します。
その描写が非常に「嗅覚、触覚、聴覚、視覚、味覚」に訴える、
生き生きしたものなので、2008年に4ヶ月間、
私がインドに滞在したときのことを昨日のように思い出しました。
「シャンタラム」というのは主人公に付けられた「ヒンディネーム」で、
「平和を愛するもの」という意味です。
私にはヒンディ語の家庭教師がつけてくれた「アナンドゥ(喜び)」という、
ヒンディネームがあることを久しぶりに思い出しました。
(267文字)



●文部省の研究 「理想の日本人像」を求めた150年

読了した日:2017年10月5日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 辻田真佐憲
出版年:2017年
出版社: 文春新書

リンク: http://amzn.asia/7AdKo7Y

▼140文字ブリーフィング:

目次は以下のとおりです。
第一章 文部省の誕生と理想の百家争鳴 1868〜1891年
第二章 転落する文部省、動揺する「教育勅語」 1892〜1926年
第三章 思想官庁の反撃と蹉跌 1926〜1945年
第四章 文部省の独立と高すぎた理想 1945〜1956年
第五章 企業戦士育成の光と影 1956〜1990年
第六章 グローバリズムとナショナリズムの狭間で 1991〜2017年

明治政府誕生から現在までの文部省(現在の文科省)の歴史をひもとくと、
「理想の日本人像」を求めてさまよった日本人の足跡がわかります。
この研究から驚くべき事が見えてきます。
それは150年間、日本人は、「普遍主義」と「共同体主義」、
言葉を変えると「グローバリズム」と「ナショナリズム」の間の、
振り子を行ったり来たりしてきた、ということです。
そのうえで「グローバリズムを否定」、
「ナショナリズムを否定」することに、
まったく意味はない、と著者は言います。
引用します。

→P251 
〈では、この歴史を踏まえて未来の
「理想の日本人像」はいかにあるべきだろうか。
今日、グローバリズムとナショナリズムの組み合わせは評判が悪い。
グローバリズムは、経済競争に勝ち抜くためと称して、
国民を階層化し格差を是認する。
ナショナリズムはバラバラになった国民を安易な記号で結合し、
不満のはけ口を提供しようとする。
国旗掲揚と国歌斉唱の実施、
「教育勅語」の復活、「自虐史観」の否定と歴史教育の見直しなどがその例だ。
たしかに、このような組み合わせは、ろくなものではない。

ただ、現在の世界において、
グローバリズムとナショナリズムを完全否定することは得策ではない。
むしろ、これらの欠陥があるシステムを上手く使いこなすことが求められる。
かつてイギリスの首相チャーチルは、
「民主主義は最悪の政治制度だが、
それ以外の政治制度に比べればマシだ」という主旨の発言を行った。
グローバリズムとナショナリズムもまたしかりである。

グローバリズムによる階層化は、
ナショナリズムの同胞意識で掣肘できるかもしれず、
ナショナリズムによる自国中心主義(今日的に言えば「ジャパン・ファースト」)は、
グローバリズムの経済的合理性で抑制できるかもしれない。
この両者を適切に組み合わせ、
新しい「理想の日本人像」を模索することが必要だ。

その点で、「改正教育基本法」は、それほど悪いものではない。
普遍主義と共同体主義の両方に配慮が見られ、
提示された「理想の日本人像」もナショナリズム一辺倒ではない。
過度のナショナリズム批判は、かえってこの性格をゆがめかねない。
それよりも、多義的に読み解くことで、
普遍主義とのバランスを取るべきである。

今日の問題は、特定の思想の全否定や全肯定ではなく、
普遍主義と共同体主義のバランスの中で、
現実の教育をいかに「実装」していくかだ。
その意味で、文部科学省の役割は重要である。

1990年代以降、政治主導の教育改革によってその存在感は薄らいでいる。
今後「官邸文科室」などと揶揄されるかもしれない。
だが、教育改革は派手だが、地道な作業も必要だ。
政治は急変し、有識者はイデオロギーを好み、有権者は気まぐれである。
そのなかで、安定的に継続して地道に教育全般を見渡す組織は欠かせない。
派手な教育改革が一段落した後で、
文部科学省や中教審の存在が重要になってくるのではないかと思われる。〉

、、、「理想の日本人像」というのは、
「虚構だったとしても必要」と著者は言います。
私もそう思います。そこが定義されていないと、
教育なんて組み立てられませんから。
ですがその使い方は、
「アクセルとしてではなく、ブレーキとして」使うべき、
という著者の視点は秀逸です。

→P253 
〈「理想の日本人像」は、
特定の思想をブーストするための装置ではなく、
特定の思想の暴発を制御する安全装置として位置づけられるべきである。
、、「理想の日本人像」は不完全な虚構ではあるが、
それを踏まえた上で、教育の指針として利用されるべきである。〉

極端な国家主義者や、
極端なアナーキストが量産されれば、
いつか国は危ない方向に迷ってしまうか、
もしくは解体してしまうでしょう。
国家主義のブレーキとして普遍主義が、
アナーキズムのブレーキとして共同体主義が機能する、
という著者の意見に私も賛成です。
(1,751文字)



●羊と鋼の森

読了した日:2017年10月5日
読んだ方法:Kindleで電子書籍購入

著者:宮下奈都
出版年:2015年
出版社:文藝春秋

リンク: http://amzn.asia/85P6l64

▼140文字ブリーフィング:

北海道の田舎で生まれ育ち、
札幌でピアノ調律師の見習いをする主人公が一人前の調律師になっていく、
というストーリーです。
未熟な個人が一人前になっていく、という物語話法を、
「ビルドゥングス・ロマン」と言います。
佐藤優氏が、現代のビルドゥングス・ロマンとして推奨していたので、
Kindleで買って読んでみました。

「羊」というのはピアノのハンマーのフェルト綿のことであり、
「鋼」というのはピアノ線のことです。

→位置No.2261 
〈「調律って、どうすればうまくなるんでしょう」
 ひとりごとだった。席に戻りながら、思わず口に出ていたらしい。
 「まず、一万時間だって」
 その声にふりむくと、北川さんが僕を見ていた。
 「どんなことでも一万時間かければ形になるらしいから、
悩むなら、一万時間かけてから悩めばいいの。」
 一万時間というのがどれくらいの日数になるのかぼんやり計算する。
 「だいたい5、6年って感じじゃない?」〉

主人公のまっすぐさとひたむきさは、
ともすると「退屈」と思われるむきがありますが、
私の職業人生からしても、
3年目にしてなおメモ帳とペンを肌身離さないような、
主人公のような「不器用でバカ真面目」な人こそが、
最後には「巨匠」になります。
1年目から小器用にルーティーンをこなすような新人はたいてい、
3年目ぐらいで成長が止まります。

あと、この作者の文章は飲物に喩えると、
「死ぬほど飲みやすい」です。
文章の「のどごし」が半端ない。
私は文章を日常的に書いていますので、
これがどれぐらいすごいことか、想像がつきます。
プリンやポタージュで言うなら、
「何回、裏ごしをしたんだろう?」ということです。
何十回、いや何百回プリントアウトし、音読し、推敲したら、
これほど「軽い」読み心地の文章が仕上がるのだろう、、、。
気が遠くなりそうです。
きっと著者もまた文章を磨くために、
「1万時間の努力」をされたのでしょう。
(787文字)




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陣内が先週読んだ本 2017年9月第四週 『共鳴力』宮嶋望 他7冊

2018.03.22 Thursday

+++vol.032 2017年10月3日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年9月第四週 9月22日〜28日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●ジャニーズと日本

読了した日:2017年9月25日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:矢野利裕
出版年:2016年
出版社:講談社現代新書

リンク: http://amzn.asia/6aHetbs

▼140文字ブリーフィング:

「東京ポッド許可局」という、
最近私がハマっているラジオ番組で知りました。
ジャニーズの歴史って、
知っているようで案外知らないことが沢山ありました。
そしてその歴史は様々なことを私たちに語りかけます。
いくつか引用します。

→P19 
〈この経験(伝道師であったジャニー喜多川の父が
ロサンゼルスに持っていた真言密教の寺院で行われた
芸能人のステージ手伝い経験)は、
ジャニーズにおけるショービジネスのルーツにもなった。
ジャニーはこのとき、手伝いの一環として、
アメリカで公演する彼らのブロマイドを会場で一枚50セント、
三枚1ドルで売り、その売り上げをタレントが所属する芸能事務所に渡していた。
当時の日本の芸能事務所は、そんなお金はもらえないと断ったそうだが、
ジャニーは未成年ながらに強固な姿勢で売り上げを渡していたという。
ジャニーがラジオで強調していたのは、自分がこのとき、
早くも「肖像権」という「価値観」をもっていたことだ。
ジャニーズと言えば、AmazonにCDジャケットすら掲載しないくらい、
肖像権に対して異常に厳しいことで有名だ。
このエピソードは、そんなジャニーズの強硬な態度の
ルーツが示されているようで興味深い。〉

、、、ジャニーズの創業者はジャニー喜多川(通称ジャニーさん)という、
「アメリカ生まれの日本人」です。
彼の父親の職業はなんと真言密教をアメリカに伝える、
「伝道師」でした(知ってました?私は知りませんでした)。
その子どものジャニー喜多川が、
ジャニーズを通して生涯一貫してしてきたことは、
「日本にアメリカの自由、平等、民主主義といった価値観を伝道」
することだった、という著者の見立ては秀逸です。
「伝道者の子どもは伝道者」だったのです。
父は真言密教を日本→アメリカという方向で。
息子は自由・平等をアメリカ→日本という方向で。
ジャニーズが「アメリカの価値を日本に伝えた」
ということの意味を引用します。

→P21〜24 
〈アメリカ人ジャニー喜多川が芸能の世界に入る以前、
すでに戦後日本の芸能は少なからず、
アメリカとの関係の上で成立していた。
日本における芸能事務所の先駆的存在である
渡辺プロダクションを作った渡辺晋、あるいは、
堀プロダクションの堀威夫やサンミュージックの相沢秀禎。
戦後を代表する芸能事務所の創業者はいずれも、
アメリカ進駐軍が持ち込んだジャズやロカビリーといった音楽に影響を受け、
自身もミュージシャンとして活動をしていた。

とはいえ、そのなかで、
これら芸能事務所とジャニーズが決定的に異なるのは、
やはり「ジャニー喜多川がアメリカからやってきた」という一点においてである。
、、、ジャニーにとって芸能活動は、教育的な精神にもとづいたものである。
ジャニーズ事務所が、アイドル育成とともに
ひとりひとりの人格形成を目指すことを
標榜していることはよく知られているが、
そのことも、アメリカというジャニーの出自と立場に関わっている。

あおきひろし『ボクの夢はキミたちが描く夢
ーージャニー喜多川が語るジャニーズ塾の子供たち』(メタモル出版、1999)には、
ジャニーの教育方針として、次のような発言が掲載されている。

「夢を持った素朴な少年であればいいんだ。
そういう少年たちこそ、良い環境の中では育っていくものなんだ。
そのとき強烈な個性の持ち主でなくても、
それこそ磨いていくうちに、個性ある輝きを発してくるものなんだ。」

「僕がいつも注意していること、それは難しいことだが、
すべての子に分け隔てなく目線を向けてやることだ。
特に同じグループ内で不平等があってはならない。
そうしたことがシコリになってしまったら、もうおしまいだ。
誰かひとりを特別扱いしないことが一番大事なんだ。」

そこにあるのは、素朴な少年を導く教師のようなジャニーの姿である。
これ以外にも、ジャニーはしばしば、自身の教育哲学を語る。
内実はどうあれ一貫して彼が重視し言及しているのは、
引用部にあるような「個人の尊重」と「機会の平等」といったものである。
ここであることに気付く。
これらは、アメリカが戦後日本に教えようとした
民主的な価値観と少なからず重なってくると言うことだ。
つまり、ジャニーにとって芸能活動とは、
いわば民主的な教育機関としての役割を担っている。〉

どうです?
面白いでしょ?
昨年のSMAP解散によって、
ことはさらに複雑になり、さらに興味深くなってきます。
というのは「自由と平等と民主主義の伝道者」たるジャニーズ事務所が、
まさに「抑圧としがらみと権威主義」の象徴のように、
SMAP5人の上にのしかかったという皮肉がそこにはあるからです。
あとがきから引用します。

→P237 
〈本書でジャニーズの歩みを追って見えてきたのは、
戦後民主主義を体現するかのようなあり方だった。
しかし、執筆中に巻き起こったSMAP解散騒動は、
そのようなジャニーズのありかたが問い直されるような出来事だった。
、、、戦後70年以上経った現在、民主主義のあり方も、
日本とアメリカの関係も、ジャニーズのありかたも
再考すべき時代に来ているのかもしれない。
芸能にしても戦後日本にしても
誰かを抑圧することで成立する華やかな世界など、もうまっぴらである。
筆者は、ジャニー喜多川自身が本来目指したような、
自由で、それぞれの個性が発揮されるような芸能文化を
形成すべき時だと思っている。〉

おりしも先月、
ジャニーズ事務所を脱退した元SMAPの3名(香取、草なぎ、稲垣)が、
新しい活動を開始し、そのあり方はジャニーズ事務所と真逆です。
SNSの解禁、肖像権の自由化、YouTube、Twitterなどなど。
香取慎吾は私と同じ年生まれでもありますが、
彼の世代が「そういうこと」をしたくなる理由は分かります。
競輪のように「最初の挑戦者は風の抵抗で最後には負ける」のかもしれませんが、
それでも彼らの挑戦を私は応援したいと思っています。
「なんだかんだ言って体制にしがみつき、
 既得権益に守られた人が最後は勝つ」
そんな社会に住みたいなんて、
もうだれも思ってないんですから。
(2,466文字)



●オカルト

読了した日:2017年9月25日 とばし読み
読んだ方法:図書館で借りる

著者:森達也
出版年:2012年
出版社:角川書店

リンク: http://amzn.asia/2Dsui5q

▼140文字ブリーフィング:

ジャーナリストで映画監督の森達也氏が、
スプーン曲げやイタコや心霊現象やUFO召還者や超能力者に取材し、
「オカルトは本当なのか」を検証する本です。
科学者が真実を暴く、みたいな構図ではなく、
彼は冷徹に事実を見つめ、最後は判断を留保します。
結果的に彼の目の前で「オカルト現象」はついぞ起こりませんが、
オカルトを職業にする人々は、
「疑う人の前では何も起こらない」みたいなことを言います。
最後の「解説」が面白かったです。
オカルトの人々は「(疑う)鑑賞者がオカルト現象に影響を与えるから、
疑う人の前では何も起こらない」というがそれは、
「鑑賞者の観察が現象に干渉するというジレンマ」という意味で、
量子論とまったく同じだ、と森さんは指摘します。
「オカルトは鑑賞者の心の中にこそある」という仮説は有力です。
(344文字)



●「他人」の壁

読了した日:2017年9月27日
読んだ方法:東京駅の本屋で購入

著者:養老孟司 名越康文
出版年:2017年
出版社:SB新書

リンク: http://amzn.asia/d1Nsn9a

▼140文字ブリーフィング:

この本は珍しく「リアル書店」で買いました。
この数年、KindleとAmazonで書籍を買うことが増えたので、
「リアルな書店」で買う本の割合はとても減りました。
年に10〜15冊ぐらいでしょうか、、、。
20代のころは多分30〜40冊は買っていたので、
Kindle、Amazonの力はすごいと思います。
ただ、「リアル書店」の良さは絶対にあります。
Amazonの場合「アルゴリズム」によって、
「あなたにおすすめの本」がパソコンに表示されますから、
「似たような本を読み続ける」ことになってしまう。
例えば政治なら、
リベラルな人はリベラルな本ばかり読み、
保守な人は保守な本ばかり読むことになってしまう。
そして不運な場合「意見が先鋭化し偏狭になる」という副作用をもたらす。
ネットのキュレーションサイトやニュースサイトもまったく同じです。
「リアル書店」はその解毒剤です。
自分が探している本の隣に、
「自分には抜け落ちた視点」をもたらす本や、
「これとこれがつながるとは思っていなかった」
という本が置いてあるからです。
リアル書店を歩くだけで、脳のシナプスのつなぎ替えが起こるのです。
学校の「クラス替え」のようなもので、
煮詰まった人間関係をリフレッシュし新たな刺激が生まれます。
2ヶ月ほど前にリアル書店で見つけたこの本も新鮮な発見がありました。
(私は書店で「養老孟司」という字を見つけると
 反射的に買ってしまう病気なのですが)
、、、で、気になる内容ですが、
文字数オーバーなので諦めます(笑)。
近々久しぶりにこの本で「本のエスプレッソ」を、
やろうかと思っていますので(やれなかったらすみません)、
詳細はそのときに。
(692文字)



●共鳴力

読了した日:2017年9月27日
読んだ方法:友人に借りる

著者:宮嶋望
出版年:2017年
出版社:地湧社

リンク: http://amzn.asia/0A94u7h

▼140文字ブリーフィング:

友人に借りて読みました。
衝撃を受けました。
北海道の新得町に「共働学舎」という牧場があります。
この牧場はキリスト教の精神で、
様々な障がいを抱えた人々とともに共同生活を行うコミューンで、
性質としては浦河の「べてるの家」だとか、
ジャン・バニエやヘンリ・ナウエンが関わった「ラルシュ共同体」に近いです。
「共働学舎」の独特なのはその「酪農との関連」であり、
彼らは約70人(健常者と障がい者が半々)で一緒に牧場経営をし、
付加価値の高いラクレットチーズを売ることで収益を上げ、
「寄付と自活の間」の運営をしています。
将来的には経済的に完全に自立したいと宮嶋望さんは考えているそうです。
「べてるの家」の向谷地生良さんもおっしゃっていたことなのですが、
何かの比喩でもなんでもなく「障がい者は現代の預言者である」
という確信であり思想が、2年間「障がい者同然」の経験をした私には強く響きました。
いくつか引用します。

→P222〜223 
〈やがてあるときから僕は、ここに来る弱い人たちは、
僕たちに何かを伝える貴重なメッセンジャーではないのか、
と考えるようになりました。
いつの時代のどんな社会にも、
それを動かす仕組みに巧く適応することができない人たちがいる。
見方を変えれば、彼らは多くの人に、
この社会がまだまだ不完全なものであることを教えてくれているのです。〉

→P229 
〈障がい者は救済されるべき対象ではなくて、
むしろ世の中を変える先駆者です。
病んでいるのはむしろ表の世界の人間であると。
今一般の人がはるかに病んでいると訴えていけば、
共感を得られると思っています。
これは今の社会のアンチテーゼなのです。
具体的には、その人がその人の考えで自分の肉体を使って
自由に行動していけることを目指しています。
この農場の究極の目的は、利潤を出すことではありません。
「その人その人の考えで自分の肉体を使って
自由に行動していけるようになること」です。
命令も指示もノルマもありません。〉

→P235 
〈もし彼らがうちで生活する中で、前向きに人生を考えるようになり、
何かしらできることを見つけて活動し始めたとしたら、
そこには問題解決の糸口があるわけです。
彼らはそれを伝えに来たメッセンジャーなのです。
次の世の中がもう少し良くなるために、
何が必要なのかを伝えに来ている。
これはとても大切な、大きな使命でしょう。〉

余談ですが「障がい者」と「障害者」という二つの表記があり、
宮嶋さんは「障がい者」という言葉を使っているので今回私は、
それに従っています。
しかし普段私は「障害者」と敢えて言う方を好みます。
なぜなら、「障害者を障害者だと思う健常者のほうに『害』がある」
というメッセージを薄めたくないからです。

被差別部落にしても視覚・聴覚障害者にしてもそうですが、
外部者が「この呼び方やめようよ」というとき、
それは外部の人々の自らの偏見の罪責感を薄めるための、
たんなるエクスキューズであったり、
無意識の「自己正当化」が透けて見えますから、
あの手の「言葉狩り」ほど嫌いなものはありません。
人を無自覚に差別している偏差値秀才の腐臭がします。

私は以前いわゆる「屠殺場(とさつば)」で働いていました。
それが昭和に「屠畜場(とちくじょう)」になり、
平成に「と畜場」になりました。
「屠」「殺」という言葉がそこで働いている人への差別になるから、、
という理由だそうですが、そういう「声」にこそ偏見と傲慢を感じます。
毎日動物から命をいただいて肉を食べていながら、
どんだけ「死」を直視したくないんだ、と。
どこまでわがままなんだ、と。
働いている当事者は誰も「屠殺場で働いている」ことを恥じていません。
むしろ世間の嫌がるような仕事をして社会に貢献していることを、
誇りに思っている。私はそうでした。

話しがそれましたが、「障がい者」「障害者」問題。
どちらでも良いです。
「障害者は外部にいて自分が健常者である」と思っている人ほど、
重い(認知的)障害を抱えた人はいないのですから。
(1,485文字)



●歴史を変えた6つの飲物

読了した日:2017年9月29日  途中飛ばし読み
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: トム・スタンデージ
出版年:2017年
出版社:楽工社

リンク:http://amzn.asia/bo1Rp1B

▼140文字ブリーフィング:

「人類史というものはない。
 何かについての人類の歴史があるだけだ。」
という名言から始まるこの本は、
「飲物」という切り口から人類史を語ります。
ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、茶、コーラです。
茶はイギリスの象徴でありコーラはアメリカの象徴、
という話しは面白かったです。

→P244 
〈アメリカの台頭と、20世紀における戦争、政治、
コミュニケーションのグローバル化は、
コカ・コーラーー世界で最も価値の高い有名ブランドであり、
アメリカとその価値観を体現している、
と世界中の人々に思われている飲物
ーーが世界に普及していく動きと、ぴったりと符合している。
合衆国を肯定する人々にとって、コーラは経済的・政治的な選択の自由、
消費者主義と民主主義、そしてアメリカン・ドリームの象徴だ。
一方の否定派にしてみれば、この飲物が象徴しているのは、
情け容赦のないグローバル資本主義、グローバルな企業とブランドによる支配、
そしてさまざまに異なる地域文化や価値観のアメリカ化および均質化である。
一杯の茶の中に大英帝国の物語が隠されているように、
アメリカが台頭し、世界一にまで上り詰める物語は、
コカ・コーラという、茶色くて甘い炭酸飲料の普及と併行して進んだのである。〉

→P277 
〈、、、両連合(NATOとワルシャワ条約機構)がたがいの影響力を競い合い、
直接対決こそなかったが、世界各地で代理戦争を繰り広げる中、
コカ・コーラはアメリカだけでなく、自由、民主主義、
自由市場を基盤とする資本主義という西側の価値観全体と結びついていく。
共産主義者の間では反対に、コカ・コーラは資本主義の
ありとあらゆる欠点の象徴であると、
なかでも消費者の往々にして取るに足らない需要を
満たすことが経済を成り立たせる基本であるべき、
という考えの代表的存在であると、みなされるようになった。
1948年のコカ・コーラ社の総会で掲げられたプラカードの文章に、
この対比が端的に表れているーー
「共産主義者について考える時、我々の頭には鉄のカーテンが思い浮かぶ。
だが、共産主義者が民主主義について考える時、
彼らの頭に浮かぶのはコカ・コーラだ」

、、、「グッバイ・レーニン」という映画があります。
心臓発作で倒れた東ドイツに住む主人公の母親は共産党に忠誠を尽くし、
「共産主義の理想」に燃えるコミュニストママです。
彼女が8ヶ月意識を失っている間にベルリンの壁は崩壊し、
ベルリン市内に「西ドイツと資本主義」が侵入してきます。
「東ドイツ」という国がなくなってしまったことを知ったら、
母親はまた発作を起こすのではないかと恐れた主人公は、
家の状態を「東西ドイツ統一前」に戻します。

具体的には過去のニュースの録画を流して体制が続いているとうそぶき、
「資本主義」を連想させるすべての製品を家から除去します。
そのとき主人公が一番苦慮したのが、
窓から見えている「コカ・コーラ」の看板でした。
「コカ・コーラの看板が窓から見える」ということは、
「自由化」の象徴だったのです。

私はアメリカ至上主義者ではありませんし、
コカ・コーラの飲み過ぎは体に悪いと思っていますが、
いつの日か北朝鮮の家々の窓からコカ・コーラの看板が
見えるようになったらいいな、と願わずにいられません。
そのときは誰かが「グッバイ・イルソン(金日成)」という、
オマージュ映画を作るでしょう笑。
(1,373文字)

▼参考リンク:「グッバイ・レーニン」
http://amzn.asia/3Jul1WC



●はじめてのアンガーマネジメント実践ブック

読了した日:2017年9月29日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 安藤俊介
出版年:2016年
出版社: ディスカバー・トゥエンティワン

リンク: http://amzn.asia/5cvqSTl

▼140文字ブリーフィング:

「自分の怒りのパターンを知り、怒りをコントロールできるようになる」
という手引き書です。
アンガーマネジメントは「怒らなくなる方法」ではない、
ということや、「怒りは二次感情である」
「怒りの正体は『べき』である」などの心のからくりは、
「なるほどぉ」と思いました。
→P32 
〈アンガーマネジメントとは、
怒らなくなることが目的ではなくて、
怒る必要になることは上手に怒れるようになる一方で、
怒る必要のないことは怒らなくてすむようになることです。〉

→P34 
〈アンガーマネジメントができるようになると、
人を傷つけず、自分傷つけず、モノに当たることなく、
「自分は怒っている」ということを上手に表現出来るようになります。〉

→P42 
〈怒っている人は、基本的にこの一次感情
(つらい、悲しい、不安、痛い、疲れた、嫌だ、むなしい、さみしいなど)を
理解して欲しくて怒っていると言っても過言ではありません。
この怒りのメカニズムを知っておくと、
怒っている人と上手に付き合うことができるようになります。〉

→P50 
〈簡単に言うと、私たちが怒るのは、
自分が信じている「べき」が目の前で裏切られた時です。
、、、ということは、自分がどのような「べき」を
信じているのかが分かれば、いつどういう場合に
自分が怒ってしまうのか、ある程度は想像がつきます。〉
(551文字)



●正義から享楽へ 映画は近代の幻を暴く

読了した日:2017年9月29日  途中飛ばし読み
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 宮台真司
出版年:2016年
出版社: 垣内出版

リンク: http://amzn.asia/2ucvHyk

▼140文字ブリーフィング:

思想家の宮台真司さんによる映画評です。
クリントン的〈正義〉とトランプ的〈享楽〉と帯に書いてあります。
映画評は高度すぎるし観ていない映画が殆どなので、
正直読みにくい本でしたが、
映画という窓から現代の政治を読み解く、
という姿勢は参考になります。
今のリベラルがなぜ空転するのか、というのが隠れテーマです。

→P359 
〈最後に、ヒラリーに代表されるリベラルのどこが
クソ感を与えるのかをお話しします。
結論から言うと、昨今のリベラルは〈安全・安心・便利・快適〉が柱の一つです。
実際ヒラリーは「フィール・グッド・ステイト」という言葉で
それを理念化しています。
しかし人はそれで幸せになれるのか。
でも、僕がよく言うように、〈安心と安全〉より
〈混沌と眩暈〉こそが大切だという価値観があり得ます。 
、、、僕の考えでは、新反動主義やそれを含むオルタナ右翼に媚びる
トランプの移民排斥への呼びかけは、
一見ヒラリーと同じく「テロの脅威」を口実にしますが、
メッセージの質感は、〈安心と安全〉よりもむしろ闘争による
〈混沌と眩暈〉の取りもどしを呼びかけるものだと断言できます。
リベラルのもう一つの柱が〈権利獲得〉です。
昨今の典型がLGBT問題です。しかし僕が各所で述べるように、
〈権利獲得〉しても性愛で幸せになれるわけではない。
むしろ無関係です。
性愛の幸せは〈権利獲得〉ではなく
〈生き方〉ー生存の美学ーの問題だからです。
フェミニズム界隈に目立つ勘違いです。
、、、リベラルは〈権利獲得〉に傾斜するあまりに
〈生き方〉への美学的注目をないがしろにしてきました。
オルタナ右翼は、女性憎悪というゲイの〈生き方〉を肯定しています。
、、、勘違いにまみれた昨今のリベラルは、
マルクーゼに照らせば一次元性に塗れたクソです。
そう感じる者が、ヒラリーを嫌悪し、
トランプに軍配を挙げるのは、何の不思議もありません。
たとえ演技にせよ、トランプが、〈安心と安全〉と〈権利獲得〉で
フラット化するしかない生Livingの、
反対側を生きているように見えるからです。
トランプはリベラルのクソ化が生み出したのです。〉

→P381〜383 
〈世界中でリベラルや左翼が退潮する理由は簡単だ。
「正しいけれど、つまらない」からである。
「正義」の軸と「享楽」の軸がある。
「正しさ」と「楽しさ」と言ってもいい。
昨今のリベラルは「正しいけれど、つまらない」。
享楽が欠けているという事実に鈍感なのだ。
、、、正義と享楽の一致は稀だというこの問題を、
伝統的な大衆社会論が主題化してきた。
一致の条件は分厚い中間層が支えるソーシャル・キャピタル(人間関係資本)だ。
仲間に自分が埋め込まれているという感覚があれば、
仲間を傷つける連中に憤ることが、正義であり享楽になる。
中間層が空洞化し、個人が分断され孤立した状態で、
貧困化「しつつある」とのおびえがある場合、
正義と享楽は分離し、正義ならぬ享楽へとコミットするようになる。
、、、私はいってきた。必要なのは「正義」と「享楽」の一致だ。
でも「正しいけれど、楽しくもある」じゃあ駄目。
「楽しいけど、正しくもある」が必要だ。
多くの人は鬱屈して「享楽」が欲しいのだから
「同じ楽しむなら、正しい方がいいぜ、続くし」と巻き込むのがベストだ、と。〉

、、、今の日本で民進党が「融解」するのは必然なのです。
みな「リベラルの正しさと退屈さ」にうんざりしているからです。
、、、では、どんな「道」があるのか?
「希望の党」に関する評価は私はまだ留保しています。
小池百合子という人間を私はまだ把握できていないからです。
彼女がリベラルではないことは間違いないわけで、
日本は10月22日の選挙後、「保守二大政党」という、
世界で誰も見たことのない政治状況を迎えるのかもしれません。

ここまで来ると「リベラルを再生する」という発想では無理です。
息絶え絶えのリベラルにカンフル剤を打って再生させる試みには、
もはや何の効果もないし、そういう段階ではありません。
「リベラルを内側から解体し、脱構築し、
 そして新しい何かを立ち上げる。」
という換骨奪胎、もしくは「破壊と創造」が必要なのですが、
そういった思想的な基礎工事は大変な作業です。
(キリスト教にもほぼ同じことが言えると、
 ちなみに私は思っています。)
世界で多くの人が脳に汗してそれを構築しようとしていますが、
日本だと東浩紀さんが良い仕事をしていると感じます。
「ゲンロン0」はそのような取り組みのひとつです。
(1,710文字)

▼参考リンク:「ゲンロン0」
http://amzn.asia/jh4QWE0



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陣内が先週読んだ本 2017年9月第三週 『クリエイティブ都市論』リチャード・フロリダ 他4冊

2018.03.15 Thursday

+++vol.031 2017年9月26日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年9月第三週 9月17日〜23日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●感情の政治学

読了した日:2017年9月19日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:吉田徹
出版年:2014年
出版社:講談社選書メチエ

リンク: http://amzn.asia/0R0u5lM

▼140文字ブリーフィング:

著者の吉田徹さんは北海道大学法学研究科教授で、
友人の医師、土畠智幸氏の「師匠」です。
土畠氏は医者をしながら北大の大学院に通い、
公共政策学の修士の学位を取りました。
彼は今は別の博士課程をやっています。
土畠氏から吉田先生のことはいろいろ聞いていたので、
興味をもって以前「ポピュリズムとは何か」を読みました。
今回別の本で「感情の政治学」が引用されていて面白そうだと思い、
また手に取りました。

吉田氏の本というのは、
政治に関する「考えるための補助線」を与えてくれる、
という感じがします。
どういうことかというと、この「感情の政治学」においては、
(「ポピュリズムとは何か」にも同じことが言えるのですが)
現代社会の人々の政治行動(投票、デモ、党派、献金など)を分析する際、
政治学者を含め専門家のほとんどは、
「人間というものは合理的に行動する」という前提で論じる。
しかしノーベル賞経済学者のアマルティア・センがいみじくも言ったように、
人間は必ずしも合理的に行動するわけではないのです。
彼の「合理的な愚か者」という言葉はそういうことを言っています。

現代人の政治行動を「読み解く」のに欠けている補助線は、
それでは何なのか。
それが「感情」だというのがこの本の論旨です。

→P25 
〈そもそもある人間がある目的を達成しようとした場合、
その目的がその人にとって価値あるものと信じる
「世界観」なり「信仰」がなければ、それは目的にすらならない。
「あらゆる価値信仰は、還元されることのない、
意味され得ないものがなければ成り立たず、
それが成り立つことではじめてある合理性の形態が出てくる」からだ。
簡単にいえば、人間は理性に還元され得ない目的を設定しなければ、
合理的な行動はとれない。
、、、どのような政策が正しいのかを論じることが不毛なのではない。
どのような政策を選択すべきかを決めるためには、
まず価値体系がなければならないのだ。〉

→P43 
〈個人の感情的態度を基礎にするポピュリズムや
テロリズムが2000年代に入って勃興してきたのはなぜなのか。
その説明として国際政治学者のドミニク・モイジは、
国際社会においてハンチントン流の「文明の衝突」のような見取り図よりも、
むしろ「感情の衝突」と形容することの方が
適切になってきている、と主張する。
それはグローバル化が人々の不安の根源と化している現状があり、
この不安はそのまま「我々は何者なのか」という
自分のアイデンティティに対する問いかけを
提起することになっているからである。
あるアイデンティティが齟齬なく獲得され、供給されるためには、
その国の人々が何らかの「自信」を持っていなければならない。
しかしグローバル化はその「自信」が絶えず他者からの承認、
その反対に他者からの否定にあうことでしか
得られないという状況を生み出している。
他人を介在させることになるがゆえに、
この「自信」はつねに希望や屈辱、
恐れといった感情に左右されてしまうことになるのだ。〉

→P76 
〈因果関係はさておくとしても、投票先や支持政党は、
人のイデオロギーではなく、
パーソナリティや心性と何らかの形で深く関わっている、
とみるのが妥当である。
例えば、右の研究では共産主義者だけでなく、
ファシズム支持者も、同じような「堅固な心」を持っているとされた。
このことは、共産主義とファシズムという、
本来は相対する政治イデオロギーが、
これを支持する人々のパーソナリティや心性を通してみた場合、
共通のものを持っていることを意味している。
その前提を置かないまま、
政策を合理的に選択すれば最適な選択がなされると主張するのであれば、
それはかなりナンセンスな議論となりかねない。〉

、、、最初の引用の、
「合理性は理性に還元されない価値を抜きに存在し得ない」
というのは至言です。
人は「合理的に考えて超越的な結論に至る」と考えがちですが逆だと。
超越的な結論を直観的に持ち、それを後から合理化している、
というのが本当です。

また、二番目の引用の、
「文明の衝突」ではなく「感情の衝突」というのも納得です。
2016年の「Brexit(英国のEU脱退)」、
そしてアメリカ大統領選挙もそうです。
大統領選は表面では「共和党(保守)」と、「民主党(リベラル)」の、
思想的政治的対立ですが、本当に起きていたのは
「感情の対立」だったと考えるとすっきりします。
「テレビ討論会」で圧勝し論理的に人を納得させたヒラリーより、
Twitterで人々のエモーションに直接訴えかけたトランプが勝ったのは、
あれが「政治的な戦い」ではなく「感情の戦い」だったからです。

三番目の引用では、
「同じ感情傾向をもつ投票者」が、
まったく逆のイデオロギーを支持することもあり得る、
と指摘されています。
リベラルを「パヨク」と罵倒する「ネトウヨ」と、
「アベ政治を許さない」というデモを行う左翼活動家は、
じつは同じ感情的理由からそうしているかもしれないということです。
それはたとえば「ルサンチマン」といった抑圧だったりします。

21世紀になって政治はますます宗教に近づいてきている、
というのは私の実感ですが、「なぜそうなるのか」、
ということをこの本は腑に落ちる形で説明してくれています。
(2,103文字)

▼参考リンク:「ポピュリズムを考える」吉田徹
http://amzn.asia/c03TLqb



●メディア論 人間の拡張の諸相

読了した日:2017年9月20日 後半速読
読んだ方法:図書館で借りる

著者:マーシャル・マクルーハン
出版年:1987年
出版社:みすず書房

リンク: http://amzn.asia/1DvpBa9

▼140文字ブリーフィング:

この本は実にさまざまな本で引用される「定本」ですので、
いつか読みたいと思っていたのがやっと実現しました。
「メディアはメッセージである」という名言はこの本が元ネタです。
メディアはそれ自体メッセージであり、
それによって伝わる内容ではなく、そのメディアのあり方が、
人々の考え方や行動様式を変えてしまうのだという主張です。
インターネット登場前に書かれた本ですが、
ネット社会の現在、この本の重要性はかえって増しています。
(205文字)



●頼るな、備えよ

読了した日:2017年9月20日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:櫻井よしこ
出版年:2017年
出版社:ダイヤモンド社

リンク: http://amzn.asia/2cnuChP

▼140文字ブリーフィング:

ネット右翼に代表される、
日本における「明治復古運動」かのような「超保守」は、
先ほどの吉田徹さんの論に引きつけるなら、
政治活動と言うよりも「宗教」だというのが私の見解ですが、
その「宗教」における「巫女」の役割を果たしているのが、
「保守の女神」櫻井よしこ氏です。

私は「この宗教」の信者ではありませんから、
彼女の意見に大筋において同意しません。
しかし、「彼らの内在的論理」は何か、
を知ることはたいせつだと考えますので、
この手の本を定期的に読むようにしています。
先週の稲田朋美氏の本と同じです。

彼女の本をひとことで要約してヤンキーの言葉で言い換えると、
「中国と韓国にはマジでトサカ来てるんですけど」ということです。
もうひとつおまけを言えば、
「日本人マジ最高なんですけど」です。
自覚的にかそうでないのかは定かでありませんが、
彼女らの陣営は「日本人性善説」「中国・韓国人性悪説」
という二本柱に支えられています。

私はこの人間観・歴史観をまったくの間違いだと思います。
「サイコーの日本人もいればサイテーの日本人もいる」
「サイテーの韓国人、中国人もいるが、
 サイコーの韓国人、中国人もいる」
が私が聖書から学んでいる普遍的な人間観であり歴史観です。

、、、というような疑義を呈すると百田尚樹氏のように、
「中韓を擁護する日本人は日本人にあらず」みたいな超論理が登場します。
櫻井よしこ氏と共著も出している百田氏はツィッターで今年の4月13日に、
「もし北朝鮮のミサイルで私の家族が死に、
私が生き残れば、私はテロ組織を作って、
日本国内の敵を潰していく。」
と発言しています。

私のように「日本人性善説」への疑義を呈する人は、
「非国民・売国奴」と「敵認定」され、
切り捨てていくの彼らの「超論理」は、
もはやちょっと手が付けられません。
こういう言説を野放図にさせてはいけないと、
私は個人的に思っています。

公正を期すために言っておきますと本書には、
ドゥテルテ大統領が中国に接近しているのは、
亡くなった彼の無二の親友が共産党の重鎮だったという事実や、
安倍首相とオバマ首相の広島ー真珠湾双方訪問に、
安倍昭恵首相夫人の隠れたファインプレーがあったから、
などの私が知らなかった有用な情報も含まれていました。
(922文字)




●クリエイティブ都市論

読了した日:2017年9月20日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:リチャード・フロリダ
出版年:2009年
出版社:ダイヤモンド社

リンク: http://amzn.asia/59yP04j

▼140文字ブリーフィング:

リチャード・フロリダのこの本は、
けっこう多くの本で引用されている「定本」ですが、
非常に面白かったです。
本書の前提となる認識は、
「インターネットによってどこでも仕事ができるようになったから、
 住む場所というのはどこでもかまわなくなったのだ!」
という言説への反論です。
フロリダ氏が指摘するのは、
「状況はむしろ逆である。
 さまざまな数量的なデータを解析すれば、
 世界というのはますますフラットでなくなり、
 住む場所によって成功もすれば失敗もするようになってきている」
という、あまり認識されていない事実です。引用します。

→P17 
〈私が本書を書いたのは、読者が、
自分に適した居住地を選ぶのに役立つためだ。
25年以上にわたる独自の調査結果と、
ほかの人が行った多数の研究や調査結果について、
皆さんと共有することにしたい。
本書では次の3つのポイントに沿って、私自身の意見を構築している。

1.グローバリゼーションや「フラットな世界」について、
誇大な主張が数々なされている。
だが現実には、居住地がグローバル経済の中で占める重要性は、
これまでになく増している。

2.住む場所の多様化と特殊化は、さまざまな観点において進んでいる。
それは経済的な構造や労働市場に始まり、得られる生活の質、
そこに住む人間の性格にまでおよぶ。

3.私たちはきわめて移住志向の強い社会に生活している。
ゆえに居住地について考える機会を何度も持ち得る。

以上、三つの事項が総合的に意味すること、
それは居住地の選択が、家計や仕事の選択肢、友人関係、
未来の結婚相手、子どもの将来に至るまで、
ありとあらゆる物事に大きな影響を与えると言うことだ。〉

、、、住む場所は重要です。
これは親の転勤や大学、就職、転職、、、といった理由で、
いままでの人生で多分20回ぐらいは転居している私も、
実感を伴って言うことができます。
自分の人生の質を最大限に高めるのはどの都市か、、、
この質問に答えるのは簡単ではありません。

自然を好むか都会を好むか?
知的な刺激か芸術か買い物か?
医療や学校や公共サービスの質は?
どんなタイプの人と友人でありたいか?
保守的で閉鎖的な場所かオープンでリベラルな場所か?
職場までの通勤時間はどれぐらい許容できるか?
家賃や物価などは得られそうな収入とバランスが取れているか?

、、、変数が複数ある関数を解く作業が、
「自分がどこに住むか」を決定するためには必要だ、
と著者は語ります。

この本の最後の章にはこの関数を解く、
11ステップからなる手引きが載っていますが、
それを自分でやってみたところ、
世界で私が最も住みたい都市の候補が、
いくつか挙がりましたので掲載します。
(詳しい説明は省きますが)
・バンクーバー(カナダ)
・デンバー(アメリカ、コロラド州)
・神戸(日本)
・札幌(日本)
・シドニー(オーストラリア)

、、、で、もうひとつ本書で再認識したのは、
いろんな要素があるが、「友人が近くにいる」ことの価値です。
引用します。

→P104 
〈ロンドン大学の経済学者ナッタブド・ポウドサベーは、
2007年に興味深い研究を行っている。
その内容はアンケート調査によって、
頻繁に会う友人や親戚の金銭的価値を試算するものだった。
彼によると、友人や親戚と毎日欠かさず会えることは
10万ドル以上の追加収入に匹敵するという。
その喪失感は13万3,000ドルに相当するというのだ。〉

、、、ゴミゴミしてコンクリートで固められた東京は、
「どこにでも住んで良いと言われたら私が挙げる、
 最下位の土地のひとつ」ですが(笑)、
なぜここに住んでいるかは、これがすべてかと思います。

東京にいる妻の両親や家族からは子育てや信仰について多くを学べますし、
FVIやお世話になっている教会からも多くの益を受けています。
また東京は「日本の交差点」ですので、
国内外のいろんな人が最も会いに来やすく、
そして自分もいろんな場所の人に会いに行きやすい。
30代を東京で過ごしたことによって、
(そして今のところしばらくはそうするつもりであることによって)
私が得ているもの(人との出会いと友人・親族との交わり)を、
金銭に換算したらこの研究と同じように、
「年間1,000万円以上の価値」は、
余裕であるというのは否定できません。

将来神が召し出されるところにいつでもいけるように、
私たち夫婦は「持ち家は買わない」
(買おうと思っても頭金すら払えないですが笑)と、
早々に決めていますから、
10年後に東京に住んでいるかどうかは神にしか分かりません。
居住地を「選べる」時代に生きているということは幸せなことでもありますが、
同時に難問を突きつけられていることでもあります。
「クリエイティブ都市論」はその難問を解くのに良い手引き書です。
ちなみに著書のフロリダ氏はこの本に書いたことを自ら実践し、
10年ほど前にワシントンDCからトロントに移住したそうです。
(1,946文字)


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陣内が先週読んだ本 2017年9月第二週 『教養としてのプロレス』プチ鹿島 他4冊

2018.03.08 Thursday

+++vol.030 2017年9月19日配信号+++

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■3 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年9月第二週 9月10日〜16日
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先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●キラーストレス

読了した日:2017年9月15日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:NHKスペシャル取材班
出版年:2016年
出版社:NHK出版新書

リンク: http://amzn.asia/hWQJH4T

▼140文字ブリーフィング:

NHKスペシャルで放映された内容の書籍化です。
医学の発達によって「ストレス」が精神的な病だけでなく、
がんや心臓病など、文字通り人を殺す病気のトリガーとなる、
ということが分かってきています。
現代人を蝕むストレスにどう対処するかというのが本書のテーマです。

→P114〜115 
〈アメリカ心理学会では、
一般の人に向けて五つのストレス対策を推奨している。
1.ストレスの原因を避ける
2.笑い
3.友人や家族のサポートを得る
4.運動
5.瞑想〉

私は鬱病を経験してから「1」に関しては、
細心の注意を払うようになりました。
また「2」の笑い、「3」の家族、友人のサポートは、
生活の中に取り込まれていますし、
「5」の瞑想は、日々の祈りという形で実践しています。
あとは「4」の運動なのですが、、、

、、、

、、、みたいな「真面目なところ」を
まずは止めなければなりません笑。

適当で良いのです。

「コーピング」という技術は参考になりました。
ストレスに対処するための方策をできるだけ沢山、
できるだけ小さなものを用意しておく、というのがそれですが、
たとえば私の場合、
「ジェットスキーで海を滑走する」みたいのより、
「コーヒー豆を挽いて美味しい珈琲を淹れる」とか、
「無心でトイレ掃除をする」とか、
「コンビニでポテチを買ってきて全部食べる」とか、
「部屋でジャズをかけてひたすら本を読む」
「靴を磨きながらお笑い番組を鑑賞する」とか、
そういった小さなものを沢山用意しておくことが大切だそうです。
(621文字)



●自由にものが言える時代、言えない時代

読了した日:2017年9月15日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:爆笑問題&町山智浩
出版年:2015年
出版社:太田出版

リンク: http://amzn.asia/fY1mMto

▼140文字ブリーフィング:

爆笑問題はもう長い間、
ずーっと、毎月「時事漫才」を作り続けています。
本人たちは「時事ネタなら刷り込みが浸透しているから、
フリが効いた状態にあるので作りやすかっただけ」
と言っていますが、本当に凄いことだと思います。
「日本のお笑い芸人は政権批判をしないチキンだ」
という意味のことを茂木健一郎がツィッターでつぶやいて、
炎上するという出来事が今年の春頃にありました。

じっさい大手事務所に所属している芸人は、
政権批判はやりにくいだろうなと思います。
だってクレーム電話がスポンサー企業に行き、
スポンサー企業からテレビ局の制作チームに伝わり、
それが事務所に伝わったら、
その芸人は「クソほど叱られる」もしくは、
最悪の場合、「干される」ということになりますから。

その点、個人事務所を持っている芸人は強いです。
最悪自分が仕事減るだけ、という覚悟さえあれば、
きわどい話題にも切り込んでいける。
北野武と爆笑問題は例外的に政権批判を続けていますが、
それは彼らが個人事務所だからです。
爆笑問題の笑い自体が特に好きなわけではありませんが、
彼らのそういう「スタンドアローンな姿」は、
凜としてカッコいいと私は思っています。

この本には5年分ぐらいの、
「毎月の時事漫才」が文章に起こされて収録されています。
彼らの漫才を見たことがある人なら、
文字を読みながら漫才を「脳内再生」することが可能です。
(565文字)



●私は日本を守りたい

読了した日:2017年9月15日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 稲田朋美
出版年:2010年
出版社: PHP研究所

リンク: http://amzn.asia/gpORVD3

▼140文字ブリーフィング:

南スーダンPKOの日報問題、そして選挙演説での、
「自衛隊としてお願いします」という失言で、
安倍さんの秘蔵っ子、「ともちゃん」こと、
稲田朋美氏は防衛大臣の座を降りました。
彼女の父は「成長の家」の熱心な信者で、
自らも教祖谷口雅春の「生命の実相」が座右の書だと公言しています。
「成長の家」は後に右翼思想の「日本会議」に受け継がれますから、
彼女は「保守のアイドル」として短期間に地歩を固めた人です。
第二次改造内閣のときに彼女が防衛大臣になったとき、
「マジか」と背筋が凍ったのを覚えています。
ちょっと「ヤバイ人」というのが私の認識でしたから。
彼女は政治家の中で私が最も支持しないタイプなのですが、
私は二つの理由から彼女のような人の書いた本を読みます。
ひとつは、いったい彼らの内在的論理は何なのかを知るため、
もうひとつは、「99でたらめなことを言っていても、
1ぐらい良いことを言ってることもあるから」です。

最初の「内在的論理を知る」という点ですが、
私と彼女では「結論」が違います。
いや、真逆です。

ある人とある人が結論が違う場合、
二つの可能性があります。
1つは前提が違う場合。
もう一つは前提は共有されていて、
その「導出(論理の道筋)」が違う場合。
稲田さんと私の違いは前提の違いです。

日本には二種類の人がいます。
「あの戦争に負けて、かえって良かった」と思う人と、
「あの戦争に負けたのは悔しい!なかったことにしたい!!」
と思う人です。

祖父が戦争で頭に銃弾を食らい死にかけている私は当然前者ですが、
「東京裁判は裁判ごっこ」で「日本国憲法は占領下だから正統性に欠く」
と言っている彼女は後者なのでしょう。

彼女の決定的な矛盾は「日本国憲法の正統性」を疑っていながら、
国会答弁で大臣を追求する時などの彼女の決め台詞が、
きっと弁護士という肩書きをちらつかせたいのでしょうが、
「これでも法治国家と言えますか!?」だということです。

日本のあらゆる法律の根幹は日本国憲法ですから、
彼女は自分が正統性を疑っている法体系を盾に、
他者を訴追しようとしているわけです。

、、、附録として、この本から2カ所引用しておきます。
ひとつは、彼女の民主党(当時)批判。

→P12〜13 
〈しかし、この不道徳さは民主党政権だけにあるのではなく、
戦後60年かけて私たち日本人が日本の伝統や文化、
歴史をないがしろにし、
日本の国柄や日本の心を失ってきた、その結果なのです。
私たち自身が選んだ結末ともいえるのです。
自分たちだけよければよい。勝つためには手段を選ばない。
嘘をついても責任は取らず、傲慢なのに国民におもねり、
テレビ映りを気にして、
いかに自分が誠実で有能に見えるかばかり考えている政治家たち。
そして利益誘導型政治の横行・・・これら民主党政権の不道徳さは、
戦後体制そのものの不道徳さです。〉

説明は不要なのですが、
「嘘をついても責任は取らず、
 傲慢なのに国民におもねり、
 テレビ映りを気にして、、、」
のくだり、稲田朋美氏ご自身の形容ですね。
「自衛隊としてもお願いしたい」という、
「政治家として一発レッドカード」の発言をしたときも
「誤解を与えたのなら申し訳ない」を繰り返しました。
つまりこれは「誤解したあなたたちがバカなのだ」と、
言外に言っているのと同じだと言うことに気付いていない(ほど傲慢である)。
さらに日報問題については、安倍さんが秘蔵っ子の彼女を、
「隠した」ため、ついぞ彼女は、
それについて説明責任を果たすことはなかった。
彼女が民主党を指して罵倒した言葉は、
ブーメランとなって彼女自身にきれいに帰ってきました。

、、、おまけに言うと安倍内閣の「森友・加計学園問題」は、
彼女がこの箇所で激しくやり玉に挙げている、
「利益誘導型政治」の教科書的なお手本です。

もうひとつ。
彼女が外国人の生活保護受給を糾弾しているくだりです。

→P63 
〈生活保護は外国人にも支給されています。
この問題については平静22年5月19日の厚労委員会で
長妻昭大臣に質問をしました。
どういう資格の外国人が受給しているのかというと、
「適法に日本に滞在し、就労活動に制限を受けない、
永住、定住等の在留資格を有する外国人」です。
この受給資格を有する外国人は、
平成20年度末の統計によると143万人(日本人の配偶者を含む)、
そのなかで平成20年度に生活保護を受給していた
外国人世帯の世帯員の合計は5万人、
割合としては3.6%が生活保護受給者と言うことになります。
日本人の生活保護受給率は、
平成22年2月時点で1.4%ですから、
日本人に比して外国人は2.5倍以上の割合で
生活保護を受給していることになります。〉

彼女はどうやら算数ができないようです。
絶対数が日本人の場合1億人の1.4%で170万人。
外国人は153万人の3.4%の5万人。
これを「2.5倍」とするのは単純に計算ができない、
残念な人としか言いようがありません。

他にも稲田氏は1000万人の子ども手当を受ける日本人の存在を差し置いて、
5万人の外国人への子ども手当をやり玉にあげて民主党政権を批判しています。

そもそも日本人の生活保護受給者の割合(絶対数ではない)が、
相対的に少ないのは彼女や自民党右派が大好きな、
「家族の扶養義務」によって国の福祉を、
家族に負担させているからなのにもかかわらず、
臆面もなくこのようなことが言えるというのはダブルスタンダードです。

外国人の「確率的に2.5倍」は当たり前で、
「扶養義務のある家族」がいないからです。
諸外国でも在留外国人の生活保護受給率は、
自国民のそれより3倍以上というのは標準ですし、
そのような困窮した人々を救う国家こそが、
彼女が一生懸命唱えている「道義国家」なのではないでしょうか。
彼女に足りないのは「普遍」の概念と「想像力」です。
いちど海外の外国人居住地区でマイノリティとして生活してみたら、
きっと今と同じことは二度と言わなくなるでしょう。
(ハイヒールで戦艦に乗り込みひんしゅくを買うような人ですから、
 きっと「そんな辺鄙な所行きたくないわ」と言われて終わりでしょうが。)

彼女が守りたいのはきっと日本ではなく自分の地位や、
パブリックイメージなのでしょう。
、、、最後に「稲田朋美という現象」を解釈するのに、
非常に良くまとまった「良記事」を見つけましたので紹介します。

▼参考記事:「ネット右翼のアイドル」稲田朋美防衛大臣辞意〜その栄枯盛衰を振り返る〜
https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20170727-00073818/

(2,590文字)



●教養としてのプロレス

読了した日:2017年9月16日
読んだ方法: Kindleで電子書籍購入

著者: プチ鹿島
出版年:2016年
出版社: 双葉文庫

リンク: http://amzn.asia/gk7huqN

▼140文字ブリーフィング:

ちょっとここには書き切れないぐらい、
数多くの学びがありました。
タイトルの印象に反して、
めちゃくちゃ中身のぎっしり詰まった良書です。
下手な哲学書よりも勉強になります。
プチ鹿島さんは「プロレスファンであったことによって、
自分は複眼的にものを見るメガネを手にれた」
とこの本で言っています。

というよりこの本の内容はそれがすべてです。
先週私が教会でした、
「情報化社会における信仰者の生き方」というメッセージのキモは、
「複眼的な視角」と「批判的な思考」を身に付けようということでした。
「立体的に物事を見、自分を疑う力を養おう」ということです。
「プロレスという教養」を身に付けている人にはそれがある、
というのがプチ鹿島さんの主張で、
この主張には説得力があります。

引用します。

→位置No.350 
〈「プロレスは真剣勝負だ、それ以外の考えは受け付けない」
という純粋な「信」は、頭が硬直化するだけで余裕がない。
かといって、「プロレスは八百長さ。
でも、それを踏まえて楽しむのだよ」という、
妙に達観した「不信」はパサパサして味気ない気がする。
「半信半疑」が一番精神的にもバランスが取れ、
遊び心がある立ち位置だと思った。
そしてその見方はプロレスどころか、
日常のさまざまなモノの見方や考え方にも有効であると知った。

疑うことなくすべて信じたらそれは「オカルト」
(最終地点はカルト)に通じてしまうし、
信じることを全くしなくなったそれは「ニヒリズム」
(最終地点は価値と潤いのない世界)に通じてしまう。
だからさまざまな角度からワクワクできる「半信半疑」でいいのだ。
オウム真理教の信者たちを見ていて、
プロレスを経験した私は
「この人たちは自分より死ぬほど頭は良いけど、
白か黒かだけで遊び心が感じられないなぁ」と、
なんとなく思っていた。〉

95年に日本を震撼させたオウム真理教事件の最大の衝撃は、
なぜ学歴エリート、偏差値秀才が、あんな教えに心酔してしまったのか、
という、いまだに答えが出ていない大きな問題です。
実は日本社会はまだこの問いに答えていない。
社会はくさいものに蓋をするように、
「あれは狂信者の異常な行動だ」と切り捨てることで、
考えることを止めてしまった。

社会全体として答えが出ていないから、
形を変えてこの問題は繰り返すことでしょう。
今度はISやテロ組織への関与という形を取るかもしれない。
プチ鹿島さんはここで、
「プロレスを通して批判的思考力を鍛えていたから、
 私はオウム真理教的なるものへの免疫を備えていた」
と言っているのです。

それを彼は「半信半疑力」と表現しています。
「宗教は嫌だ」「宗教は怖い」「宗教は全部嘘」というのも実は、
「宗教否定原理主義」という名のもう一つの狂信であるということに、
日本人の多くは無自覚です。

かといって100%の「信」は確かに怖い。
「半信半疑」が大事なんだ、と鹿島さんはプロレスから学んだ。

私も「半信半疑」が大切だと思っています。

これは絶対者なる神への不信ではなく逆です。
神が絶対だから、人間の世の中には絶対はあり得ない、
という神への信仰の表明が、
「現世で起こるあらゆることへの判断を留保する」
という態度につながります。

感覚的な言葉になりますが、キリスト教徒に限らず、
あらゆる宗教に帰依する人には2タイプあると私は思います。
「信仰が立体的」な人と、
「信仰が平板」な人です。
平時には後者のほうが勢いが良く熱心に見えますが、
本当に強いのは前者の信仰を持つ人です。
後者の信仰は強い分「パキっ」と折れやすいですが、
前者の信仰はしなやかで嵐をも耐え忍び、
嵐によってさらに奥行きを増します。
そして「立体的な信仰を持つ人」とは、
「100%の信」を留保出来る人です。
プロレスの世界と信仰の世界は、意外と近いのです。
(1,544文字)




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陣内が先週読んだ本 2017年9月第一週 『ぼくのおとうとは機械の鼻』みんなのことば舎 他8冊

2018.03.01 Thursday

+++vol.029 2017年9月12日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年9月第一週 9月3日〜9日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●福翁自伝

読了した日:2017年9月4日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:福澤諭吉 斎藤孝編訳
出版年:2011年(初版)
出版社:ちくま新書

リンク: http://amzn.asia/7cmpLAR

▼140文字ブリーフィング:

先週読んだ岩田靖夫氏の本のなかで、
「福翁自伝」が紹介されていて興味を持ちました。
「一万円札のひと」福澤諭吉は、
「日本で最初の合理主義者」と言われることもありますが、
この自伝に出てくるエピソードを読むとなるほどとうなずける。
その「合理主義者ぶり」は筋金入りで、
小さい頃、「神社の中の物質に拝んでいる大人は馬鹿に違いない」
と思った福澤諭吉は神社の御神体の御札(おふだ)を盗み、
代わりに拾った小石を置いておきます。
、、、で、周囲の大人がずっと、
「自分の置いた小石をありがたそうに、
 うやうやしく拝んでいる姿」を観て、
「小石を拝んでめでたい人たちだ」と心で笑っていた。
、、、で、何のタタリもなかったから、
あの御札はやはりただの紙切れだったのだろうと結論します。
キリスト教徒の私ですら少し胸が痛むような話しですから(笑)、
彼の「破格のスケールの合理性」がわかります。

また、福澤諭吉は慶應義塾大学の創始者ですが、
その前身「慶應義塾」は、日本で初めて授業料をとった私塾でもあります。
→P191 
〈さて鉄砲州の塾を新銀座に移したのは
明治元年すなわち慶応四年(1886年)明治改元の前だったので、
塾の名をときの年号から取って慶應義塾と名付け、
一次散り散りになっていた生徒も
次第に帰ってきて塾は次第に盛んになった。
塾が盛んになって生徒が多くなれば、
校舎の取り締まりも必要になるから、
塾則のようなものを書き、これもいちいち書き写していては
手間がかかるというので版をつくって印刷本にして、
これもいちいち書き写していては手間がかかるというので
版をつくって印刷本にして、一冊ずつ生徒に渡した。
それにはいろいろな箇条のある中に、
「生徒から毎月金を取る」ということもあて、
これは慶應義塾がはじめた新案である
それまで日本の私塾では中国風を真似たのか、
生徒入学のときには「束しゅう」と言われる謝礼を納めて、
教授する日とを先生と仰ぎ奉り、入学の後も盆暮れの二度ぐらいに、
生徒それぞれの分に応じて、お金なり品物なり、
熨斗を付けて先生家に進上する習わしであった。
だが、私どもの考えでは、とてもこんなことでは活発に働く者はない。
「教授もやはり人間の仕事だ。
人間が人間の仕事をして金を取るのに何の不都合がある。
かまうことはないから公然と値を決めて取るが良い」
というので、授業料という名をつくって、
生徒ひとりから毎月金二分ずつ取り立て、
その生徒には塾中の先輩が教えることにしました。〉
(1,011文字)


●ネット・バカ インターネットが私たちの脳にしていること

読了した日:2017年9月4日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ニコラス・G・カー
出版年:2010年
出版社:青土社

リンク: http://amzn.asia/790Rk1X

▼140文字ブリーフィング:

タイトルがバカっぽいですが、
かなり学術的で専門的な本です。
原題は「the Shallows」といい、
「薄っぺらな人々」あるいは「うつろな人々」というような意味です。
サブタイトルが示しているようにこの「薄っぺらな人々」は、
インターネットが人間の脳に働きかけたことにより生み出される、
「ある種の思考形態を身に付けた21世紀の我々」を指しています。
マーシャル・マクルーハンという人が「メディア論」という本のなかで、
「メディアはメッセージである」という名言を残しています。
インターネットで「何を」観るかは重要ではなく、
インターネットというメディアが脳の働き方を変えてしまうのだ、
ということをこの本は実証的に論じていきます。

→P168 
〈インターネットの使用には多くのパラドクスがともなうが、
われわれの思考様式に対して、
確実に最大の長期的影響を与えるだろうパラドクスは以下のものだ
ーーネットは注意を惹きつけるが、結局はそれを分散させる。〉

、、、インターネットが私たちの脳にいったい何を「した」のか、
その検証にはあと50年ぐらいはかかるでしょうが、
何をしつつあるのかは分かってきています。
それは注意を分散させ、
長い文章や長い理論を理解する能力を低下させ、
深い分析、内省、批判を行う力を衰えさせ、
物事を表層的に捉えさせるようにますますしているということです。
(570文字)



●このあとどうしちゃおう

読了した日:2017年9月4日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ヨシタケシンスケ
出版年:2016年
出版社:ブロンズ新社

リンク: http://amzn.asia/5GAoBn8

▼140文字ブリーフィング:

ヨシタケシンスケさんの絵本は、
メルマガ読者に教えてもらいました。
これは中でも特に傑作でした。
一冊購入して我が家に置いておきたいと思うぐらい。
死んだおじいちゃんが遺したノートには、
「このあとどうしちゃおう」と書かれていた、
というところからお話が始まります。
「天国にいってこんな楽しいことをして、、むふふ、、、」
というおじいちゃんの妄想がノートには書かれています。
ポップなようで深い本です。
その技巧は絶妙と言っても良い。
限りなく軽いユーモアだからこそ、
もう片方に限りなく重い「死」というテーマを載せて
バランスが取れているのです。
死を考えさせる絵本としては、
これもメルマガ読者に教えていただいた、
「かないくん」と双璧をなす傑作だと思います。
(317文字)



●子どもを守る30の祈り

読了した日:2017年9月4日
読んだ方法:キリスト教書店で購入

著者: ストーミー・オマーティアン
出版年:2001年
出版社: CS成長センター

リンク: http://amzn.asia/3zI7lLC

▼140文字ブリーフィング:

「親になる準備」として妻が読んでいた本を、
妻の後に読ませてもらいました。
「一日一章」のスタイルで30章まである本なので、
網羅的に語るのは不可能ですから、「目次」を載せます。
1.祈る両親になる。
2.わが子を御手にゆだねる。
3.危険からの守り
4.受容と愛を感じること
5.最も伝えたいこと 永遠の未来を築くために
6.父と母を敬うことと反抗の禁止
7.家族関係の平和
8.子どもの友人関係のために
9.神への飢え渇きを育てる
10.神につくられた目的をしる
11.真理に歩み、嘘を拒絶する
12.いやしと健康
13.自分の身体に気を遣う
14.学びへの熱意
15.賜物を明らかに
16.命をもたらす言葉を語る
17.きよさと純粋さの魅力
18.子ども部屋のための祈り
19.恐れからの解放
20.主からの全き心
21.主の喜びの中に
22.家系のくびきを打ち砕く
23.依存症や中毒を回避する
24.性的不道徳の拒絶
25.完璧な伴侶を見つける
26.ゆるせない思いからの解放
27.罪の告白と悔い改め
28.サタンの要塞を打ち砕く
29.知恵と見分ける力を求める
30.信仰に生かされて成長する

父親は「一家の祭司」ですから、
子どもや妻のために日々祈ることを、
ますます習慣化していきたいと思わされました。
(524文字)



●黒本 弐

読了した日:2017年9月6日
読んだ方法:Amazonプライム特典月一冊無料本

著者:高城剛
出版年:2015年
出版社: Amazon Services International, Inc.

リンク: http://amzn.asia/8YVxkdz

▼140文字ブリーフィング:

「ハイパーメディアクリエイター」の、
高城剛のメルマガに寄せられた「Q&A」の書籍化です。
ハズレもありますが時々面白い回答もあります。
365日ホテル住まいで世界を放浪している著者ならではの視点、
というのが具体的にはそういった面白い回答でした。
「世界のあれこれ」とは無関係ですが、
「CO2クリエイター」という言葉には笑いました。
→位置No.1209 
〈また、僕が「なんじゃその言葉っ」と仰天した言葉は、
「無職」「引きこもり」の別名が「CO2クリエイター」であることです。
やるなあ。〉

、、、「CO2クリエイターの陣内です(キリッ)。」
って、言ってみたいなぁ。
いや、言ってみたいか?
やっぱり言ってみたくないです。
(298文字)



●ヘンな論文

読了した日:2017年9月7日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:サンキュータツオ
出版年:2015年
出版社:角川学芸出版

リンク: http://amzn.asia/bNCWFoR

▼140文字ブリーフィング:

大学で教えたりもしている「文系芸人」の、
サンキュータツオさんが、
「ヘンな論文」を紹介していく、という本です。
たとえば「川辺に座るカップルの間の距離」は、
その隣にいる人との距離とどのように相関するか、
といったことをデータをもとに検証する論文だとか、
「ヘンな論文」が世の中にはたくさんあります。
論文の常ですが、研究している人は大まじめなので、
「ツッコミ甲斐」があるのです。

私が一番興味をもったのは、
「○○とかけて××と解きます、その心は●●でしょう。」
という、「なぞかけ」を面白くさせるのは、
一体何なのか、という研究です。

→P132 
〈、、、「反応速度」の測定方法は、
学生が「なぞかけ」を読んで、
おもしろさがわかったところで、
パソコンのエンターキーを押してもらうというもの。
その結果判明したことは「強く面白い」(非常に面白い)作品は
「短い時間で分かる」ということである。
これは、笑いの研究における定説通りだった。
しかし、その一方で、「おもしろい」と思える作品は、
「つまらない」と思う作品よりも「時間がかかる」ものが多かったのである。
つまり、「その心は○○」と聞いてから「あー、なるほど!」と
腑に落ちるまでの時間のかかるものが多かったというのだ。
あとからジワジワくる、というやつですね。
これは非常に興味深い実験結果であった。〉

これはIPPONグランプリなどの大喜利にも言えることなのですが、
「面白さ」には2種類あります。
瞬発的に爆笑が起こるタイプと、
1、2秒あとに「じわじわ」と笑いが起こるタイプです。
「爆発的な笑い」はコスられすぎていますから、
「時差の笑い」をできるコンビは今は有利なんだろうなぁ、
とか思いながら読みました。
「笑撃戦隊」というコンビが、
ツッコミを先に言って、
後でボケを考えるというネタをやっていますが、
これは典型的な「時差の笑い」です。
(773文字)

▼参考動画:「笑撃戦隊」ネタ
https://youtu.be/y6YkzXjTjf0



●わかりあえないことから

読了した日:2017年9月7日 後半とばし読み
読んだ方法:図書館で借りる

著者:平田オリザ
出版年:2012年
出版社:講談社現代新書

リンク:http://amzn.asia/783xyPW

▼140文字ブリーフィング:

著者は大阪大学で教えている、
「コミュニケーション能力」の専門家です。
現代の若者たちは企業から「ダブルバインド」を課せられている、
というところから話しは始まります。
どういうことか。
表向き企業は、
「異文化コミュニケーション能力」のある若者を求める、
ということになっています。
つまり自分と他人の意見の違いや文脈の違いを理解し、
その上で自分の意見をしっかり主張し、
相手との妥協点を見つける、といったスキルですね。
ところが実際の職場では逆のことが求められる。
つまり上司や先輩の思惑を「忖度」し、
場の空気を読んで相手に合せる、
という能力が求められる。

これは明らかなダブルバインドで、
「ゆっくり早く走れ!」という命令と同じです。
「静かに大声を出せ!」と同じです。
命令された方はフリーズしてしまう。
平田オリザさんは、この「ダブルバインド」がなぜ起こるかというと、
「21世紀になってコミュニケーションの定義が変化しつつある」ことに、
企業の側が気がついてもおらず言語化もできておらず、
ゆえに当然対応できていないからだ、と言います。
この本の「結論」でもある部分を引用します。

→P205 
〈、、、日本人に要求されているコミュニケーションの質が、
いま、大きく変わりつつあるのだと思う。
いままでは、遠くで誰かが決めたていることをなんとなく理解する能力、
空気を読むと言った能力、あるいは集団論で言えば
「心を一つに」「一致団結」といった
「価値観を一つにする方向のコミュニケーション能力」が求められてきた。
しかし、もう日本人はバラバラなのだ。
さらに、日本の個の狭い国土に住むのは、
決して日本文化を前提とした人々だけではない。
だから、この新しい時代には、
「バラバラな人間が、価値観はバラバラなままで、
どうにかしてうまくやっていく能力」が求められる。
私はこれを「協調性から社交性へ」と呼んできた。〉
(746文字)



●ひとの目、脅威の進化

読了した日:2017年9月8日 後半飛ばし読み
読んだ方法:図書館で借りる

著者: マーク・チャンギージー
出版年:2012年
出版社: インターシフト

リンク: http://amzn.asia/d1un4Kh

▼140文字ブリーフィング:

この本は4つの章からなり、
「ひとの目」のすごさを教えてくれます。
1章では「肌の色の不思議」について、
2章では「両目があることによって障害物の先を見る力」について、
3章では「0.1秒後を脳内で予測する標準装備のソフト」について、
4章では「文字を形として一瞬で識別する力」についてです。

私は「肌の色がどんな色にでもなる」というくだりに、
一番驚きました。
色というのはただ「白」「赤」というだけでなく、
どの光の波長がどのぐらい強いか、
という「スペクトル」を形成します。
「声紋」のようなものです。
その波形を比べると、黒人、アジア人、白人の、
「スペクトルの形」はそっくりです。
クレヨンで描いた肌色と本当の肌のスペクトルはまったく違いますが、
白人と黒人の肌のスペクトルは「ほぼ相似」なのです。
人種による違いはそのスペクトルが音楽ならば、
「0.5オクターブ」高かったり低かったりするだけで、
波形は同じなのです。
、、、で、顔色の違いというのは顔を流れる静脈の色で変わるのですが、
その色はなんと、あらゆる色を表現出来る、
という驚くべき事実に私は打たれました。

→P35 
〈血液の量を調節すると、肌の色は黄と青の間で変わり、
血液中の酸素飽和度を調節すると、肌の色は赤と緑の間で変化する。
この味気ない観察から途方もない結論が導かれる。
肌はどんな色合いも帯びうるのだ!
それはなぜか?
どんな色合いも原色(青、緑、黄、赤)の組み合わせで生み出せるからだ。〉

、、、すごくないですか?
他者の顔色を見て感情を読み取ることが、
人間にとって生死を分けるほどに大切なことだから、
こういう仕組みになっているのです。
「黒人が青ざめる」「黒人の顔が真っ赤になる」
というのは比喩でも何でもなく、日々起きていることですが、
人種が違うと「デフォルト値」が異なるため、
それに慣れるのに数ヶ月かかるだけだそうです。
アフリカに2ヶ月ぐらいいると、黒人の顔が「紅潮」するのが、
本当に分かります。
(814文字)



●ぼくのおとうとは機械の鼻

読了した日:2017年9月9日
読んだ方法:Amazonで予約購入

著者:みんなのことば舎
出版年:2017年
出版社:医療法人稲生会

リンク: http://amzn.asia/bsRsNxM

▼140文字ブリーフィング:
私の友人の土畠智幸氏が理事長を務める、
札幌の医療法人稲生会が出版した絵本です。
Amazonで予約購入しました。
この絵本は実は私も数年前から構想を聞いていましたし、
去年ぐらいから「ゲラ段階」のものも逐次見させていただいていて、
「ついに形になった」という感慨があります。
内容は、YouTubeに動画がありますから、
是非そちらを御覧下さい。
絵本は教材として非常に良いので、
個人でも教会でも学校でも、
是非一冊、買って持っておいても損はないと思います(宣伝)。

→あとがき より
〈僕は子どもの頃、「自分には価値がない」と思い込んでいました。
でも、病気や障害があっても、なくても、
人はそれぞれ多様性のある存在として、
「みんな、とくべつなひとり」として、
愛されているのだということを知ることができました。
それを子どもたちに伝えたくて、小児科医になりました。
自分は「とくべつなひとり」なんだ、
自分には価値があるんだと子どものときに知ることができれば、
他の人に対しても優しくなれるかもしれない。
そう思って、この絵本をつくりました。〉

土畠氏が講演会などでよく話す、
私の好きなエピソードがあります。
彼の奥さんも小児科医なのですが、
お互い医学生同士で交際していたとき、
土畠氏は彼女であった今の奥さんに、
「僕は障害児医療に進みたい。
 神さまが間違えて作ってしまった先天性の障害を、
 僕は治してあげたいんだ」
と言いました。
多分、自信をもって。
そのとき奥さんが、
かつて観たことがないほどに「激怒」したそうです。
「神さまは間違いなんて犯さない。
 障害児はそのままで完全な神の作品。
 そんな傲慢な考え方は絶対に受け入れられない。」と。
それが彼にとっての「天啓」だったと言います。

中世のヨーロッパや近世以前の日本では、
精神や肉体に先天的な障害をかかえた人は、
「神の使い」と考えられていた、と私は本で読んだことがあります。
それが「近代」に完全に逆転し、
障害を隠すべきもの、なるべくないほうが良いもの、
と人々は考えるようになった。

しかし障害を持つ人が「神の使い」というのは比喩ではなく、
まったく事実なのではないかと私はこの数年思うのです。
土畠氏の実践や「べてるの家」の精神疾患当時者の「声」は、
まさに鬱病療養中の私にとって「啓示」に他ならなかった、
という経験からそう確信するようになりました。
「困難を抱える人と共に生きる」彼の実践から学べるのは、
当事者やその家族だけではありません。
私たちの社会全体が、困難を抱える方々から、
滋養に富んだ豊かな真理を学べると思うのです。
(1,059文字)

▼参考動画:「ぼくのおとうとは機械の鼻」
https://youtu.be/oHA2q2jE6lA



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陣内が先週読んだ本 2017年8月第五週 『ロングテール』クリス・アンダーソン 他6冊

2018.02.22 Thursday

+++vol.028 2017年9月5日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年8月第五週 8月27日〜9月2日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●よく生きる

読了した日:2017年8月28日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 岩田靖夫
出版年:2005年
出版社: ちくま新書

リンク: http://amzn.asia/1Jbp0nG

▼140文字ブリーフィング:

Q&Aコーナーで取り上げましたように、
岩田靖夫さんという著者については知りませんでしたが、
メルマガ読者の方からのメールで、
紹介していただいて手にとりました。
この本は東北大学の先生でもある著者が、
若い大学生を対象に語りかける、
という内容になっていて、構成は以下の通り。

【目次】
第一章 幸福
第二章 他者
第三章 神
第四章 社会

印象に残ったセンテンスをご紹介します。

→P127 
〈、、、他者はそういう意味では所与ではないのです。
他者は根源的な意味である、としか言えない。
その根源的な意味に向かって、
私たちはいろいろな文化的表現、自然の祝祭を行っている。
私は学生達によく冗談で言うんですけれども、
授業の間にですね、
「人間はいったい何のために生きているんだ」。
毎日学校へやってきて、
友達に「こんにちは」って言うために生きてるんだ、
というのが私の答えです。
そう、本当にそうなんです。
「こんにちは」「おはようございます」。
で、うちに帰ってお父さんやお母さんに
「おやすみなさい」って言うために生きている。
それが人間が生きている意味です。
挨拶することが嬉しくて生きているのです。私たちは。〉

著者はギリシャ哲学(ソクラテス、プラトン、アリストテレス)、
哲学者のインマニュエル・レヴィナス、
そして政治哲学者のジョン・ロールズという軸を持ちながら、
この本では「他者、社会、神、幸せ」というテーマで、
若い読者に優しく語りかけています。
(587文字)



●ギリシア哲学入門

読了した日:2017年8月28日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 岩田靖夫
出版年:2011年
出版社: ちくま新書

リンク: http://amzn.asia/bDDTDBk

▼140文字ブリーフィング:

「よく生きる」と内容はかなり重なりますが、
こちらは「ギリシャ哲学」により重心が置かれています。
構成は以下の通り。

【目次】
第1章 哲学のはじめ
第2章 ポリス的生の成立とその限界
第3章 精神革命としてのソクラテス哲学
第4章 プラトンの『国家』における正義
第5章 アリストテレス政治思想の現代的意義
第6章 人はなぜ戦争をするのか
第7章 根源への還帰

西洋の人が書いたものを本当に理解したければ、
3つの基礎知識が不可欠だ、と佐藤優氏は指摘しています。
1.聖書
2.ギリシャ神話
3.ギリシャ哲学
です。
これにシェークスピアなどの文学を加えることもありますが、
「コルプス・クリスティアヌム(西洋キリスト教社会)」の、
「知的前提」となっているこれらに関する知識がなければ、
西洋の人が書いたものをきちんと理解することが出来ない。

日本人が何の説明もなく「徳川がさぁ、、、」とか、
「それは古事記の時代からの伝統だよね、、」
とかいうのと同じで、
西洋の人は何の説明もなく「ヨブの場合は、、、」とか、
「オイエディプス神話によれば、、、」とか、
「現代の労働はシュシポスのそれと同じだね、、、」
「それはプラトンのイデアに近いのだが、、、」
といった調子で話しを進めます。
私たち東洋人が好むと好まざるとに関わらず、
産業革命以降の「知のドミナンス」は西洋社会にありますから、
「聖書、ギリシャ神話、ギリシャ哲学に関する知識」
というのは、現代社会の知的営為の「前提」となります。
ここをスキップすると、そもそもスタート地点にも立てない。

ところが私も含めての話しですが、
聖書、ギリシャ神話、ギリシャ哲学に関する素養を、
きちんと持った日本人というのは多くはない。
私はクリスチャンなので聖書には精通しているつもりですが、
ギリシャ哲学やギリシャ神話の知識は体系的ではありません。
プラトンの「国家」も、
アリストテレスの「政治論」も読んだことがない。

岩田靖夫さんのこの本は、
ギリシャ哲学について無知な私のような読者にとって、、
おおまか地図を与えてくれる良書です。
(843文字)



●「ないがまま」で生きる

読了した日:2017年8月28日 飛ばし読み
読んだ方法:図書館で借りる

著者:玄侑宗久
出版年:2016年
出版社:SB新書

リンク: http://amzn.asia/hnqGVQc

▼140文字ブリーフィング:

仏教思想を超ポップに語るエッセイ集です。

【目次】
第一章 無分別
第二章 無為自然
第三章 無常
第四章 無限
第五章 無我
第六章 無心

スマップのヒット曲に代表されるように、
この20年ほど日本では「あるがまま」という言葉が好んで使われますが、
仏教のお坊さんである著者は、「そうじゃないんだ、ないがままなんだ」
という提案をしています。
「ある」がままというのはそもそも、
「西洋近代的自我」みたいなものを前提としていて、
仏教的にみればそれすらも「とらわれ」であると。
引用します。

→P21
〈「あるがまま」ではどの自己が肯定すべき自己なのか、
その迷いがどんどん深まって自縄自縛になるのに対し、
「ないがまま」ならもとより裸一貫、
その場で新たに自己を立ち上げるしかない。〉
(318文字)



●ロングテール

読了した日:2017年8月28日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: クリス・アンダーソン
出版年:2014年
出版社: ハヤカワ新書

リンク: http://amzn.asia/igKmu0g

▼140文字ブリーフィング:

この本はめちゃくちゃ面白かったです。
クリス・アンダーソンというこの本の著者は、
「ロングテール」という言葉の提唱者であり、
この本のあとに「FREE」という本を書き、
「インターネット時代のポスト貨幣経済」について「予言」している、
現代のビジネス界の「預言者」みたいな人です。

私は「FREE」を読んだことがありましたが、
こちらの「ロングテール」は未読でした。
ロングテールというのは直訳で「長い尻尾」です。

iTunesに存在するすべての曲を、
ダウンロード回数1位から最下位までを横軸に並べます。
縦軸に1位から最下位までの「ダウンロード回数」を取ります。
ちなみに現在iTunesでダウンロード可能な曲目数は、
3700万曲(!)あります。
マジか。

1位はたとえばジャスティン・ビーバーとか
レディ・ガガの新譜になります。
これは数百万とか数千万とか、億単位のダウンロード回数になります。
100位ぐらいにJ-POPの、例えば宇多田ヒカルとかが入るかも知れない。
これは数百万回とかのダウンロード数としましょう。
10,000位ぐらいになると数百とか数十ダウンロードになる。
グラフの形は、「ヘッド(頭)」がぐんと高くて、
「テール(尻尾)」がどこまでも続く、
「L字カーブ」になる。
スキーのジャンプ台を横から見たのを、
さらに急にした感じと言ったらいいでしょうか。
こういうグラフを「べき分布のグラフ」と言い、
本の売り上げからYouTubeの再生回数、
あらゆる単語の日常会話で使われる頻度まで、
世の中のいろんなことがこの「べき分布(ロングテール)」の、
法則に従うことが知られています。

この法則を別の言葉で表わしたものとしては、
20世紀までの経済学では、「パレートの法則」が有名です。
「2割8割の法則」というやつです。
「売り上げの8割は2割の製品が占める」というあれです。
iTunesだと、上位2割の曲目が、総ダウンロード数の8割を占める。
おそらく現実はもっと極端で、
「上位1%の製品が売り上げの半分を占める」ぐらいになっています。

、、、で、この話しはここで終わらない。
むしろここからが本題です。
20世紀までと21世紀からのマーケットの一番の違いは、
「在庫の物理的リミットの解除」です。
どういうことか。
「タワーレコード」ですと、
「棚」という物理的制約がありますから、
どう逆立ちしても、店舗における商品(CD)の数は、
数万〜数十万枚が上限だった。
先ほどのグラフを念頭に置きますと、
上位数%の数万枚を入荷して販売するのが、
経営としての「最適解」になります。
グラフの「長い尻尾」は切り捨てるのです。
しかし、インターネットの登場は事態を変えました。
「在庫という物理的制約」から解き放たれたMP3の音楽は、
論理上は無限に増やすことができる。
先ほども言ったようにiTunesの曲目数は3,700万曲で、
1億曲に届く日も来るでしょう。
尻尾が限りなくどこまでも続くのです。
だから「ロングテール」なのです。

クリス・アンダーソンが気付いた、
この尻尾の長いグラフの面白い点は、
どこまで尻尾のほうに下がっていっても、
ダウンロード数が「ゼロ」にならないことです。
第3,500万位の曲ですら、1年に1回とか2回売れている。
グラフを90度回転してみると、
なんと、3,000万曲のテールが年に1回から10回ダウンロードされることと、
レディ・ガガの新譜一曲が3億回ダウンロードされることによって、
もたらされる利益は同じか、
むしろ「テールの方が多い」という結果にすらなる。
いままで市場がまったく注目していなかった、
「年に1回しか売れないようなニッチな商品」が、
ちゃんと利益を生むぞ、ということに人々は気づきはじめた。

このような「ロングテール」を実践している企業が、
21世紀に勝ち残るであろう、と多くの人が指摘しているわけですが、
その先鞭をつけたのがクリス・アンダーソンです。
この「ロングテール効果」を実践している代表的な企業が、
Appleであり、Amazonであり、イーベイであり、
楽天であり、Googleで、YouTubeであり、
「全米古本屋ネットワーク」のような、
かつて存在しなかった業態なのだ、とアンダーソンは言います。

20世紀は10人が同じ1つの商品を欲しがりました。
21世紀になって、
ひとりが別々のひとつずつの商品を欲しがるようになりました。
「セルフカスタマイズ」というやつです。
さらにその先があります。
これからはおそらく、1人が10種類の側面をもつかのように、
消費行動をし始めるでしょう。
そのような世界で「ロングテール」を知らない、
もしくは軽く見ることは大きなハンディキャップになります。
たとえば日本の大手マスコミがYouTubeやNetflixに喰われるとしたら、
それは「ロングテール効果の軽視」が原因になるでしょう。
(勢い余って1,837文字)

▼参考リンク:「FREE」
http://amzn.asia/hKFJGfW

▼参考記事:陣内ブログ、「FREE」の話し
https://ameblo.jp/shunjinnai-kingdomcome/entry-12200030873.html



●日米同盟のリアリズム

読了した日:2017年8月31日
読んだ方法:Kindleで電子書籍購入

著者:小川和久
出版年:2017年
出版社:文春新書

リンク: http://amzn.asia/iymQI8z

▼140文字ブリーフィング:

右翼や保守の論客が、
「憲法9条を廃棄し、日米同盟を解消し、
 自主防衛によって誇りを持てる国に(キリッ)!」
みたいな威勢の良いことを言って拍手喝采されたりしている、
異様な光景をときどき見ますが、
それがどれだけ現実無視のファンタジーなのか、
ということがこの本を読むとよく分かります。
本当にいろいろと理由があるのですが、二つだけ理由を挙げます。
まずコスト面。

→位置No.101 
〈武田、武藤両教授は、「日米同盟のコスト」を、
(a)日米安保条約に基づき米国の防衛協力を維持するために日本が負担する直接費用
(b)在日米軍基地を提供することで失う利益を勘案した間接費用
 の合計と見積もっている。

(a)は接受国支援(いわゆる思いやり予算)や基地対策費などで4374億円。
(b)は米国基地が別のものに置き換わる経済効果などで1兆3284億円。
以上を足した約1兆7700億円が、日米同盟を維持するコストである
(2012年の現行価格。以下同じ)。

 次に、「自主防衛のコスト」を、
(c)新たな装備調達に必要な直接費用
(d)自主防衛によって失う利益を勘案した間接費用
 の合計と見積もる。
(c)は空母機動部隊や戦闘機の取得など4兆2069億円。
(d)は貿易縮小によるGDP縮小約7兆円や株・国債・為替の
価格下落約12兆円など19兆8250億円〜21兆3250億円。

以上の合計約24兆〜25兆5000億円が、
在日米軍がいない場合の自主防衛コストである。
ちなみに、この計算には自衛隊員の人件費は含まれていない。
後者の自主防衛コストから前者の日米同盟コストを引けば、
「日米同盟の解体コスト」が明らかになる。
これを計算すると、年に22兆2661億円〜23兆7661億円になるというのである。
日本だけの力で日米同盟があったときと同じようなレベルの
平和と安全を維持していくためには、
このように毎年約22兆〜24兆円もかかるのだ。〉

、、、日米同盟解消のコストはこのように毎年24兆円ですが、
これは現在の日本の年間のすべての税収の50%に相当します。
国家の収入に対するこの水準の防衛費の割合とういうのは、
北朝鮮などの軍事独裁政権をも上回ります。

次に、これはあまり報道されませんが、
第二次大戦の敗戦国であるドイツ、イタリア、日本の軍隊というのは、
「戦勝国との同盟なしに機能しないように細工されて」います。

→位置No.120 
〈日本の防衛力を形成する自衛隊の戦力構造は、
一般に錯覚されているものとは異なり、
自立できない構造になっている。
これはドイツも同じである。
第2次世界大戦後の再軍備の際、
米国が日独の戦力を自立できない構造に規制したのである。
日本は米国との同盟関係、
ドイツの場合はNATOとの同盟関係によってはじめて、
自国の安全を保つことができる形になった。
たとえはよくないが、人間の身体に置き換えれば、
外科手術で右足を切除され、義足を履かせてもらっていないのが
日本とドイツの軍事力の実態である。
そこにおいては米国と肩を組まなければ自由に歩くこともできない。
日本の場合、この軍事力の構造である限り、
仮に現在の10倍、100倍の防衛費を投入できたとしても、
海を渡って外国に侵攻することは逆立ちしてもできないのである。〉

、、、日本の自衛隊やドイツの軍隊というのは極端な話し、
ファミコンのカセットだけ持ってるのと同じで、
「本体」はアメリカやNATOが所有しています。
防衛費を10倍にふくらませてもカセットが10本になるだけで、
本体は作成できません。
同盟を解消し日本が「本体」に手をだす動きを見せれば、
日本全体を麻痺させることなどアメリカにとっては、
赤子の手をひねるより簡単です。

、、、こういった事実を踏まえずに、
「自主防衛で誇りを持てる国に!」とか言っている、
「自称・憂国の士」または「自称・愛国者」は、
本当に国益を大きく毀損するるデマゴーグ、
もしくは国家の安全保障と、
暴走族の縄張り争いとの区別がついていない、
「脳内が田舎のヤンキー」です。
いずれにせよ事実を踏まえない、
無責任な言説が幅を利かせるというのは、
あまり日本にとってプラスになりませんので、
「勢いの良いことを言っている自称愛国者」には用心しましょう。
(1,713文字)



●ケプラー予想

読了した日:2017年8月31日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ジョージ・G・スピロー
出版年:2005年
出版社:新潮文庫

リンク: http://amzn.asia/20B9yOQ

▼140文字ブリーフィング:

「ケプラー予想」とは別名、
「オレンジ問題」とも呼ばれる幾何学の問題です。
空間内で球体をもっとも密に詰め込もうとすると、
1つの球に12個の球が接する、
「八百屋がオレンジを積み上げるやり方」が最適だ、
という仮説をケプラーが立てたのですが、
この問題が「数学的に証明」されるのには
400年という歳月がかかりました。

→P8 
〈私がはじめてケプラー予想に出会ったのは1968年、
スイス連邦工科大学の1年生として数学を学んでいたときのことだった。
幾何学の教授がふとした話しのついでに、
「旧を最も密に空間に詰め込むには、
どの球のまわりにも12個の球が
接するようにすれば良いと考えられている」
と言ったのだ。
その教授は、はじめてこの予想を立てたのはケプラーであり、
フェルマーの有名な定理とともに、
最も古い数学の予想の一つだと教えてくれた。〉

この問題はヘールズという数学者によって、
1998年に証明されました。
、、、スーパーコンピュータを使って。
この証明はまったくエレガントではなく、
証明は電話帳何冊もの厚さにおよび、
それを「読める」人が世界に10人もいないぐらい長い。
一般に数学の証明というのはエレガントで美しいものなのですが、
この「ケプラー予想」の証明はそういった既成概念を打ち破る、
「力業」でした。
しかしこの問題を解く過程で使われる、、
「他変数をもつ系における最適解の調整」という数学の概念は、
経営、経済、政治、輸送など、
さまざまな分野で応用される大切なテーマです。
(619文字)




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陣内が先週読んだ本 2017年8月第四週 『カモメのジョナサン 完全版』リチャード・バック 他5冊

2018.02.15 Thursday

+++vol.027 2017年8月29日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年8月第四週 8月20日〜26日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●「ポスト真実」の時代

読了した日:2017年8月24日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 津田大介×日比嘉高
出版年:2017年
出版社: 祥伝社

リンク: http://amzn.asia/7K1geXU

▼140文字ブリーフィング:
本書の冒頭にオックスフォード英語辞典の
「ポスト真実」という言葉の定義が、
書かれているので引用します。

→P14 
〈”世論を形成する際に、客観的な事実よりも、
むしろ感情や個人的信条へのアピールの方が
より影響力があるような状況”
について言及したり現したりする形容詞〉

「トム・ソーヤ」の作者で知られるマーク・トウェインの名言に、
「真実が靴を履いている間に、嘘は世界を半周する。」
というのがありますが、まさにそれが露骨な形で実現しているのが、
現代世界の状況です。
SNSによって人々がニュースを得るようになったことは、
この状況と大いに関係があります。
調査によると、友達がシェアしたニュースサイトを、
「シェア」する人の59パーセントは、
なんとそのニュースの本文をまったく読んでいないそうです。
「マスゴミ」批判をして「伝統的メディアは嘘だらけ」、
と言っている人のほとんどは、
そもそも、新聞を読んでおらず「伝統的メディア」を、
読解する力すら持っていません。
「ネットにこそ真実がある」、みたいな言説から距離をおき、
まずは「公開情報を読み解く力」をつけることが大切です。
(456文字)



●暴力の人類史(下)

読了した日:2017年8月24日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:スティーブン・ピンカー
出版年:2015年
出版社:青土社

リンク: http://amzn.asia/0zOnvy9

▼140文字ブリーフィング:

上下巻で1,200ページを超える大作でした。
久しぶりに読後に心地よい虚脱感を覚える本でした。
この大作が言っていることはたったひとつで、
「多くの人々が思い込んでいるのとは逆に、
 人類史を通して『暴力』は一貫して減り続けている」
という主張です。
「主張」を「実証」に変えるのがデータと議論なわけですが、
まさに「骨太の議論」が1,000ページ以上展開されるわけです。
ここに要約することは不可能ですが、
リヴァイアサン(法治国家)、
権利革命、通商とグローバル化、啓蒙革命といった要素が、
複雑に絡み合って「暴力を減らしてきた」というのが著者の主張であり、
非常に説得力がありました。
(279文字)



●カモメのジョナサン 完成版

読了した日:2017年8月24日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:リチャード・バック
出版年:2014年(英語初版1970年)
出版社:新潮文庫

リンク: http://amzn.asia/9OLaxz8

▼140文字ブリーフィング:

有名な本ですが今まで読んだことのなかった本です。
面白すぎて図書館に返した後、
自腹で本を購入しました。
2014年に著者が「40年のときを経て」、
第四章を公開した「完全版」です。

第一章から第三章までは、カモメのジョナサンが、
「飛行の高みを目指した結果俗世間を解脱して、
 高みの境地に達する」という話しです。
ドラゴンボールでいう「スーパーサイヤ人」みたいになります。
で、ジョナサンは、ソクラテスが処刑されたのと同じ理由で、
社会の不満分子と見なされカモメ社会から波紋されます。
群れを離れたジョナサンが彼を慕う「フレッチャー」という弟子に、
自分の教えを受け渡すところで、第三章は終わります。

善い物語は複数の解釈が可能ですが、
ひとつのあり得べき解釈、
というかおそらく著者の頭にもあったのは、
ジョナサン=キリスト
フレッチャー=弟子(ペテロやパウロ)という構図です。

ここまでは良い。

第四章が衝撃です。
ジョナサンは神格化され、
フレッチャーは祭り上げられ、
カモメたちはなんと教条主義に陥り神学論争を始め、
「飛行の本質」は形骸化していくのです。
引用します。

→P148〜149 
〈しばらくは、真に飛ぶことを求めるカモメたちの黄金時代だった。
大勢のカモメが、いまや神聖な鳥とみなされる
ジョナサンと直接に接した弟子に近づこうと、
フレッチャーの元に集まった。
フレッチャーはジョナサンはわれわれと変わらないカモメだった、
われわれが学べることを同じように学んだだけだと話したが、
いくら言っても無駄だった。
彼らは終始フレッチャーを追いかけ、
ジョナサンがいったとおりの言葉、そのままの仕草について聞き、
あらゆる些細なことまで知りたがった。
彼らがつまらぬ知識を求めれば求めるほど、
フレッチャーは落ちつかない気持ちになった。
ひとたび、メッセージを学ぶ事に興味を持つと、
彼らは厄介な努力を、つまり訓練、高速飛行、自由、
空で輝くことなどを怠るようになっていった。そして、
ジョナサンの伝説のほうにややもすれば狂気じみた目を向けはじめた。
アイドルのファンクラブのように。
「フレッチャー先生」と彼らはたずねた。
「素晴らしきジョナサン様は
『われわれは〈まさしく〉偉大なカモメの思想の体現者である』
とおっしゃったのでしょうか。
それとも、
『われわれは〈まぎれもなく〉偉大なカモメの思想の体現者』と?
どちらでしょう」〉

、、、どうでしょう?
既視感がありませんか?
キリスト教の形骸化ももちろんそうですが、
「翻訳文化」の日本はあらゆる分野で、
これを繰り返しているように思います。
物事の本質を求めず、
物事の「形式」を模倣しはじめるのです。
最近読んだ本では最も衝撃的な本でした。
(1,075文字)



●言語が違えば、世界も違って見えるわけ

読了した日:2017年8月25日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: ガイ・ドイッチャー
出版年:2012年
出版社: インターシフト

リンク: http://amzn.asia/5DOQcLU

▼140文字ブリーフィング:

『イリアス』、『オデッセイア』の研究者である、
1,800年代に生きたグラッドストンという研究者の、
「彼らにとって海は本当に葡萄色だったのではないか」
「古代ギリシャ人の色彩感覚は現代人とは違っていたのではないか」
という仮説から著者の研究の旅は始まります。
問いの根幹は、
「世界が違って見えるから言語が違うのか」それとも、
「言語が違うから世界が違って見えるのか」
どちらなのだろうか、ということです。

グーグ・イミディル語という少数民族の言葉が興味深かったです。
彼らには「右、左、前、後ろ」という位置を相対的に現す言葉がありません。
「あなたの北に木がある」
「本のページを東のほうにめくって」と彼らは表現します。
彼らは「絶対的方向感覚」を持っているそうです。
目をつぶってぐるぐる回って地下室に連れて行っても、
どちらが北か言い当てることができる。
、、、それが分かっていないと生活できないからです。
「お母さんの北東にあるケチャップを取って、、、」
というのが日常会話ですから、北がどちらかわからないと、
会話が成立しないわけです。
彼らの絶対方向感覚は、
使っている言語と関係があります。
著者の結論は、私たちの「認知」は、
使う言語に影響を受ける、ということです。
(509文字)



●サンキュータツオの芸人の因数分解

読了した日:2017年8月26日
読んだ方法:Kindleで電子書籍購入

著者:サンキュータツオ
出版年:2012年
出版社:学研プラス

リンク: http://amzn.asia/5ofijzx

▼140文字ブリーフィング:

芸人のサンキュータツオさんが、
芸人の「ネタ」を素因数分解します。
たとえばこんな風に。

→位置No.291
〈ブラックマヨネーズのネタは、、、実は古典的だ。
でもそれが新鮮に映るのは二人のキャラクターの設定にある。
「ちょっと神経質な人」と「ちょっと大雑把な人」が、
次第に「かなり神経質な人」と「かなり大雑把な人」になる。
キッカケはささいな日常的な会話から、
気付いたらブラマヨ迷宮に入り込んでいるのだ。〉

グライスという人が「会話の公理」という四原則を提唱しています。
「量の公理」「質の公理」「関係性の公理」「様式の公理」
というのがそれですが、
この四原則を意図的に違反したときに笑いが起こる、
という分析が面白かったです。
グライスの本、図書館にはないので、
買おうかと試案しているほどです。
(334文字)




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陣内が先週読んだ本 2017年8月第二、第三週 『暴力の人類史 上』スティーブン・ピンカー他4冊

2018.02.08 Thursday

+++vol.026 2017年8月22日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年8月第二、三週 8月6日〜19日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。

*今週は病気で本を読んでいませんので、
今回ご紹介するのは先々週に読んだ本です。
あと、体調が本調子になるまで、
読む本はけっこう減ると思われますので、
あらかじめご了承ください。


●仕事なんか生きがいにするな

読了した日:2017年8月7日
読んだ方法:Kindleで電子書籍購入

著者:泉谷閑示
出版年:2017年
出版社:幻冬舎新書

リンク: http://amzn.asia/2ekzjTg

▼140文字ブリーフィング:

著者の泉谷氏は精神科医で、
私は病気療養の初期の2014年に、
著者の「クスリに頼らなくても『うつ』は治る」に、
大きなヒントを得て以来、彼の書くものを結構読んできました。
泉谷さんは現代の精神疾患の増加の背景に、
21世紀における価値観の地殻変動を見ています。
「生きることの意義」は生産性で測られますが、
「生きることの意味」は生産性とは関係ありません。
引用します。

→位置No.1059 
〈しかし、一方の「意味」というものは、
「意義」のような「価値」の有無を必ずしも問うものではありません。
しかも、他人にそれがどう思われるかに関係なく、
本人さえそこに「意味」を感じられたのなら「意味がある」ということになる。
つまり、ひたすら主観的で感覚的な満足によって決まるのが「意味」なのです。
これを、別の言い方で説明してみましょう。
「意義」とは、われわれの「頭」の損得勘定に関係しているものなのですが、
他方の「意味」とは、「心=身体」による
感覚や感情の喜びによって捉えられるものであり、
そこには「味わう」というニュアンスが込められています。〉

「あん」という映画があります。
社会から隔絶されその「存在を末梢されてきた」
ハンセン氏病の当事者を描いた映画です。
樹木希林演じるハンセン氏病患者がこの映画の最後に、
こう言っています。

「ねえ、店長さん。わたしたちはこの世を見るために、
聞くために生まれてきた。
だとすれば、何かになれなくてもわたしたちは、
わたしたちには、生きる意味が、あるのよ。」
(629文字)

▼参考リンク:クスリに頼らなくても「うつ」は治る 泉谷閑示
http://amzn.asia/fQXvIbQ

▼参考リンク:映画「あん」
http://amzn.asia/aLhjOzO



●放射線医が語る 福島で起こっている本当のこと

読了した日:2017年8月8日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 中川恵一
出版年:2014年
出版社: KKベストセラーズ

リンク: http://amzn.asia/cpGhCeH

▼140文字ブリーフィング:

東大医学部の中川恵一先生は、
東海村のJOC臨界事故で急性放射線障害により亡くなった、
2人の作業員の方の治療に携わった放射線医です。
彼は養老孟司さんの盟友でもあり、
2011年の福島原発事故以降、
多くのデマゴーグが現れては消えるなか、一貫して、
「まっとうな科学的な発言」をし続けている勇気ある人です。
彼が言っているのはずっと「冷静になれ」ということです。
9.11同時多発テロのあと米国中の人が飛行機を避けた結果、
めちゃくちゃ多くの交通事故死(数千人単位の死者数)が起きましたが、
福島でも同じことが起きていると著者は指摘しています。
大学で「放射線学」の単位を取得した私も、まったく同感です。

→P22 
〈一方、世界のCTスキャナの3分の1が日本にあります。
これだけCTスキャナが身近にあるということは、
当然、医療被曝も多くなるわけです。
CTは病気を見つける能力が非常に高く、
日本人の長寿にプラスになっています。
用はメリットとデメリットのバランスです。
世界一医療被曝が多い日本人が
世界一長生きになっていることを忘れてはいけません。
これらを踏まえると、1ミリシーベルト以下を目指して、
除染に兆単位の予算を割くなら、
住民とのリスクコミュニケーションなどにお金を割くべきだと私は思います。
この場合のリスクコミュニケーションとは、
被災者と専門家がリスクについて話し合う双方向コミュニケーションのことです。
 、、、私も福島支援の研究班を立ち上げて、
部下のひとりに、全村避難を続けている
飯館村の松川第一仮説に住んでもらい、
福島市内に避難している飯館村役場の健康福祉課に勤務してもらってきましたが、
「リスクコミュニケーション」といった分野になかなか予算を割いてもらえない。
一方、我々から見るとムダに見える除染に莫大な予算をかけているのは、
なんともアンバランスだなと思います。〉

BSEしかり、ヒアリしかり、放射能しかり、
日本人の行動というのは合理的じゃなくて絶望的な気持ちになります。
その行動はまるで、
「高層ビルから落ちたスパナが脳天に直撃して死んだ人のニュース」
をテレビで見た次の日に、ヘルメットをかぶって出勤する人のようです。
それによって狭くなった視界による交通事故の死亡リスクは、
おそらく「スパナリスク」の100万倍以上です笑。
冗談のように聞こえるかも知れませんが、
こういうことを日本人は事象を変えては繰り返しています。
(958文字)



●ポアンカレ予想

読了した日:2017年8月8日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ジョージ・G・スピーロ
出版年:2011年
出版社:ハヤカワ文庫

リンク: http://amzn.asia/3Ckf9yB

▼140文字ブリーフィング:

100年間解けなかった数学の難問「ポアンカレ予想」をめぐる物語です。
リーマン予想の「素数の音楽」と違うのは、
最後にこの問題が「解けた」ことです。
2006年にペレルマンというロシア人数学者によって解かれました。
ポアンカレ予想は「リーマン予想」や「フェルマーの問題」と違い、
高校数学までの知識ではイメージできません。
「ドーナツとマグカップは同じものである」という、
位相幾何学という名の数学の分野があるのですが、
その分野に関する問題で、5次元、6次元、7次元、それ以上、、、
という高次元空間における「証明されない仮説」の話しです。
ポアンカレの大天才ぶりには驚きました。
「系に加わる微細な擾乱が大きな影響を及ぼす可能性がある」
という複雑系の論理(バタフライ効果)の原型も彼が発端だし、
位相幾何学(トポロジー)の基礎も彼が作りました。
ちなみに素粒子論の「超ひも理論」はトポロジーから来ていますから、
ポアンカレは現代の先端物理学の始祖と言えるかも知れません。
(423文字)



●暴力の人類史(上)

読了した日:2017年8月8日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: スティーブン・ピンカー
出版年:2015年
出版社: 青土社

リンク: http://amzn.asia/jc6PIeA

▼140文字ブリーフィング:

ビル・ゲイツが「私が読んだ本で最も重要な本だ」
と絶賛して話題になった本です。
上下巻で1200ページを超える大作ですので、
140文字ではブリーフィングできません。
(まだ下巻は途中ですし)
目次を以下に記します。

目次と構造
【上巻】(全652ページ)
第1章 異国
第2章 平和化のプロセス
第3章 文明化のプロセス
第4章 人道主義革命
第5章 長い平和
第6章 新しい平和

【下巻】(全579ページ)
第7章 権利革命
第8章 内なる悪魔
第9章 善なる天使
第10章 天使の翼に乗って

この本の論旨は、
「多くの思想家や社会学者や政治家の指摘とは逆で、
人類史が始まってから、暴力というのは、
一貫して減り続けている」ということであり、
欧米人らしい緻密かつ遠大な論理でそれを実証的に説明していきます。
「人類史を大づかみに語る」というのが、どうやらこの10年ほどの、
欧米社会における言論界のブームのようです。
ジャレド・ダイヤモンドの「銃・病原体・鉄」もそうですし、
ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」もそうです。
(432文字)




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陣内が先週読んだ本 2017年8月第一週 『りんごかもしれない』ヨシタケシンスケ 他6冊

2018.02.01 Thursday

+++vol.025 2017年8月8日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年8月第一週 7月30日〜8月5日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●オタクの息子に悩んでます

読了した日:2017年8月1日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 岡田斗司夫
出版年:2012年
出版社: 幻冬舎新書

リンク: http://amzn.asia/8WyLBQl

▼140文字ブリーフィング:

岡田斗司夫さんはもともとアニメ業界から出てきた人ですが、
いまはFREEexという不思議な業態で活動している、
ちょっと「謎の人」です。
キワモノみたいに扱われることも多いし、
私生活で「この人大丈夫だろうか?」
というツッコミも多いですが、
頭良い人なのは間違いないです。
本書は朝日新聞の「悩みのるつぼ」という
「読者の質問コーナー」の質問に、岡田さんが答えた回答と、
その回答に至るまでの岡田さんの「思考ツール」を開陳した、
という書籍です。
当メルマガの「Q&Aコーナー」を書くにあたり、
非常に参考になりました。
もっとも共感したのは以下の文章です。

→P99 
〈(素人さんの回答は)相談に対して即答しすぎる。
文章の分析をいきなりバーッと始めて、で、
相談者にはこんなトラウマがあるんじゃないかと書いてしまう。
文章を分析するのは、正しい。
正しいんだけど、分析したらちゃんと
「じゃあ、自分の経験で似たようなものは何があるだろうか」
「本質的にこれは何なんだろうか」というのを自分の心の深部や、
論理のたぐり寄せ出ずっと遠いところまで考察しないとダメ。
「人間誰しもが持っているような普遍的な問題」
にまでいきついて、さらって帰ってこないと、考えたことにならない。
どれぐらい遠くまで行って帰ってこられるか、これがポイントなんです。〉

、、、カール・ロジャースという心理学の大家が、
「最も個人的なことは最も普遍的なことなのだ」
という言葉を遺していますが、
日本において「質問コーナー」へのニーズが常に高いのは、
日本人のなかに抽象思考が得意な人が多くないことと関係している、
と私は思っています。

岡田さんが強調しているのは、
「個々の質問」という徹頭徹尾具体的な問題を、
いちど「普遍的な問題」にまで掘り下げ、
その普遍的な問題に回答する形にして提示すると、
質問した本人だけでなく、
「その背後にいる同じような問題を抱える10万人の読者」
に伝わる、ということです。

つまり読者は、具体→抽象→具体というルートを経由して、
見ず知らずの他者の問題を、
自らの問題に引きつけることができる。

抽象を普遍と置き換えても意味は同じです。
普遍→具体の論理操作を、「演繹」といいますが、
この「演繹」が得意な日本人というのは、
私の感覚でいうと、100人に5人ぐらいだと思います。
(ちなみに具体的事例から抽象的原則を導き出す、
 これと逆の論理操作を「帰納」と言います。)

、、、ですから日本で「原理原則」をそのまま語っても、
それを日常の生活や現実の出来事に「応用」できる人は少ない。
数学の「公理」を学んでも、個々の問題が解けないのと同じです。
これができるようになるには、繰り返し繰り返し、
公理(普遍)→問題(具体)の操作を練習する必要がある。
数学の問題集、算数のドリルと同じです。
新聞やラジオや雑誌の「質問コーナー」というのは、
この論理操作の練習として優れているから、
日本では昔から人気があると私は見立てています。

(質問した他者の)具体
→(回答者が到達した)抽象または普遍
→(自分の身近な問題としての)具体’
という風に、具体と抽象の間を「一往復」させることによって、
抽象思考の苦手な私たち日本人は、
初めて自分の問題に引きつけて原理原則を応用できる。

教会の説教もこの往復ができている説教は人に伝わりますが、
「ただ真理を語れば良いのである」という教条主義に陥り、
ひたすら抽象(聖書の釈義)をひとり語りしているだけの説教は、
端的に申し上げて人の人生も社会も変えることは期待できません。
喫茶店でのおしゃべりのごとく、
ただ具体的な出来事だけを長々と語っているのも同様にダメです。
たいせつなのは「普遍と具体の間に橋を架ける」という作業です。
これをするには人並みを超えた勉強も必要ですし、
大脳新皮質を雑巾のように絞り、脳に汗をかくことも必要ですし、
自らの人生で怪我をしながら学んだ体験知が必要ですし、
最後に「愛」が必要です。

この「橋を架ける練習」として、
当メルマガの「Q&Aコーナー」も、
人の役に立てれば嬉しいと思っていますので、
ますます磨きをかけていきたいと願っています。
、、、なので皆さん、質問をどしどし送ってください!
あなたの質問は他者のためにもなります。

、、、後半は書評でも何でもなくなりました笑。
自分の思いの丈をぶつけるかたちになってしまい恐縮です。
(1,784文字)



●自分を責めずにはいられない人

読了した日:2017年8月1日 速読
読んだ方法:図書館で借りる

著者:片田珠美
出版年:2017年
出版社:PHP新書

リンク:http://amzn.asia/at3eU6O

▼140文字ブリーフィング:

先日、義理の兄と話したとき、
「いま読んでいる本」として挙げていて興味を持ち、
手に取りました。
著者の前著は「他人を攻撃せずにはいられない人」だそうですが、
読むと分かるのは、「自分を責めずにはいられない人」と、
「他人を攻撃せずにはいられない人」は、
「同じ人」だということです。
共通の犯人がいるからです。
それをフロイトの用語で「超自我」と言います。
自らの中にいる「怒れる風紀委員」みたいなものです。
コイツが普段自覚されず抑圧されていますと、
あるときは自罰者として、あるときは他罰者として顕現します。
そいつとどう上手に付き合うかがたいせつだよ、と著者は言います。
「そんな超自我は心病んだ人だけの問題であって、私には関係ない」
と言っている人はもっとも危険です。
なぜなら「抑圧のレベル」がそれだけ深いということですから。
(344文字)



●ネットメディア覇権戦争

読了した日:2017年8月1日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 藤代裕之
出版年:2017年
出版社:光文社新書

リンク: http://amzn.asia/fVdRnak

▼140文字ブリーフィング:

ヤフーニュース、日経電子版、LINEニュース、、、
などデジタルな「ニュース業界」というのは、
新旧入り乱れた覇権争いの泥仕合をこの数十年続けてきた、
というのがよく分かります。
入り乱れているのは新旧だけでなく「虚と実」もであり、
だからこそ昨年の世界の流行語は「ポスト真実」だったのです。
人々はもはやファクト(裏付けのある事実)には興味はなく、
自分の信じたい嘘を信じます。
そのような世界では「胸を張って自信を持って嘘を突き通す」
ことが政治的な最適解になる。
これは悪夢のような世界だと私は思いますが、
この数年間の政権与党の行動を見ていれば納得ですし、
トランプ大統領もまた、その台風の目です。
そのようなトレンドのなか、
「真実」または「真理」を求めるのは、
もはや無料でもなければ受動でも不可能です。
私たちは額に汗し、身銭を切って、
「真実を勝ち取る」ことが必要な時代となったと、
私は認識しています。

この数年私は「各種メディアがどのように作られているのか」
という「舞台裏」の本を定期的に読んでいますが、
それは何が「虚」であり何が「実」なのかという、
選球眼を養うためです。
(473文字)



●恐慌論

読了した日:2017年8月1日 ななめ読み
読んだ方法:図書館で借りる

著者:宇野弘蔵
出版年:1953年
出版社:岩波文庫

リンク: http://amzn.asia/cHfc9Jz

▼140文字ブリーフィング:

宇野弘蔵という、かつての「労農派」の、
マルクス経済学者の古典です。
佐藤優が頻繁に宇野弘蔵を引用すること、
そして6月に読んだ「他者の倫理学」が素晴らしく、
そこにも宇野弘蔵が登場したので、
いいかげん原典に当たっておかねばと思い、
手に取りました。
結果、理解できたのは2割ぐらいです。
まだ私の「読解力の歯」は柔らかすぎました。
数年後に再挑戦したい本です。
(173文字)

▼参考リンク「他者の倫理学」青木孝平
http://amzn.asia/23zeEdw



●涼宮ハルヒの憂鬱

読了した日:2017年8月2日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:谷川流
出版年:2000年
出版社:角川スニーカー文庫

リンク: http://amzn.asia/4paOpFe

▼140文字ブリーフィング:

先月読んだ東浩紀の「セカイからもっと近くに」という、
サブカル界でいわゆる「セカイ系」と呼ばれる作品群について、
思想家の東浩紀氏が語ると言う内容の本を読みました。
ちなみに「セカイ系」とは、東氏の定義に従えば、
「国家や社会などの現実的な舞台設定の導入抜きに、
主人公の小さな恋愛と世界の破滅のような巨大な出来事を
短絡させる物語類型の総称」です。
「涼宮ハルヒ」は東浩紀がセカイ系を語るときに多用する作品だったので、
興味を持ち読んでみました。
なるほど「君の名は」にも通ずる物語の類型がここにある、
と感じました。
ポストモダンの世界に暮す私たちは、
「実存的で個人的な、半径2メートルの出来事」を持っている。
同時に「定義の曖昧なコスモロジーという幻想」も持っている。
しかしその間を架橋する家族もなければ社会もない。
それらを語る文体を持たず世界観を持たない、
というのが冷戦終結後の世界の実存的不安だ、
と私は理解しています。
ですから私たち(と名乗っていいのか謎ですが)宗教の役割というのは、
「一貫した世界観で社会や家族を語る話法を見いだす」ことです。
「我々は真理のみを語れば良いのだ」という教条主義に引きこもり、
社会を語ることを避けるのは明らかな怠慢であり欺瞞です。
(523文字)

▼参考リンク:「セカイからもっと近くに」東浩紀
http://amzn.asia/eLUsoWX



●りんごかもしれない

読了した日:2017年8月3日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: ヨシタケシンスケ
出版年:2013年
出版社: ブロンズ新書

リンク: http://amzn.asia/6RsMSvQ

▼140文字ブリーフィング:

メルマガ読者の、
ラジオネームのりまきさんが以前勧めてくれて、
それからこの著者の絵本を読むのは2冊目です。
この「りんごかもしれない」は名作です。
机の上にリンゴがある。
これは「りんごかもしれない」。
しかし「そうでないかもしれない。」
というところから、子どもの想像力は、
何にも縛られずひらひらと羽ばたきます。
最初の「僕から見ていない部分はみかんなのかもしれない」
という一文は哲学的に深く、
じつはこれはヒュームの「因果律批判」そのものです。
(216文字)



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