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陣内が先週読んだ本2017年10月第一週 『ヤバい経済学』スティーヴン・レヴィット 他6冊

2018.03.29 Thursday

+++vol.033 2017年10月10日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 陣内が先週読んだ本 
期間:2017年10月第一週 10月1日〜7日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●ヤバイ経済学

読了した日:2017年10月1日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー
出版年:2007年
出版社:東洋経済新報社

リンク:http://amzn.asia/2G8vCoq

▼140文字ブリーフィング:

「インセンティブ」というキーワードで、
「社会のこの出来事を経済学で考えると、、、」
という読み解きを行う面白い本です。

保育園のお迎えの遅刻をなくすために、
罰金を設けたら逆に遅刻が増えた、
という社会実験があります。

なぜか?

それは「インセンティブは複数あり、
それは経済的インセンティブだけではない」
ということを罰金を科す人々が理解していなかったからです。
献血に対して報酬を払うと献血をする人は減る、
という現象も同じです。

→P20〜25 
〈この問題(保育園で親がお迎えに遅刻すると職員ひとりが
子どもと一緒に親を待たねばならない)を聞きつけた
経済学者二人が、、、解決策を持ってきた。
遅れた親からは罰金を取れば良い。

だいたい、なんでそういう子どもの面倒を
保育園がタダで見ないといけないんだ?
経済学者たちはその解決策をイスラエルのハイファにある
保育園10カ所で実証することにした。
調査は20週間続けられたけれど、
最初から罰金が科されたわけではなかった。
初めの4週間、経済学者たちは遅れてくる親の数を数えるだけだった。
平均で見ると、保育園一カ所あたり、週に8件の遅刻が起きていた。
5周目に罰金制度が実施された。
迎えに来るのが10分以上遅れた場合、
その親には毎回子どもひとりにつき3ドルの罰金を科すと発表された。
罰金は、380ドルほどの月謝に上乗せされた。

罰金制度が始まると、親の遅刻はすぐに、、、増えた。
そう経たないうちに週当たりの遅刻は20件にもなった。
元の倍以上だ。インセンティブは完全に裏目に出てしまった。

、、、インセンティブの味付けは基本的に3つある。
経済的、社会的、そして道徳的の三つだ。
インセンティブの仕組み一つが三つとも兼ね備えていることは良くある。
近年の禁煙運動を見てみよう。
1箱3ドルの「罪悪税」はタバコの購入意欲をくじく強い経済的インセンティブだ。
レストランやバーでの喫煙が禁止されていることは
強力な社会的インセンティブである。
そしてアメリカ政府が、
テロリストは闇でタバコを売って資金を調達していると主張する時、
あれは耳の痛い道徳的インセンティブになっている。

、、、しかし、保育園の罰金制度には
(3ドルだと毎日遅刻しても正規料金の6分の1という安さ以外に)
もう一つ大きな問題があった。
道徳的インセンティブ(遅れた親が感じる罪の意識)を
経済的インセンティブ(罰金3ドル)に置き換えてしまったのだ。
毎日ほんの数ドルで免罪符が買える。
そのうえ罰金が少額なので、
迎えに来るのが遅くなってもたいしたことじゃないという
シグナルが親御さんたちに送られてしまった。
、、、調査の17周目になって経済学者が罰金をやめても
遅れる親は減らなかった。
遅れてきた人たちは、罰金を払わされることもなく、
そのうえ罪の意識もなくなった。

、、、イスラエルの保育園で行われたのと同じような、
道徳的インセンティブを経済的インセンティブと
ぶつからせる研究が1970年代に行われた。
今度は献血の背後にある動機について調べようとしたのだ。

わかったこと:
献血をした人を思いやりがあると単に褒める代わりに、
彼らに少額の奨励金を払うと、献血は減る傾向がある。
奨励金で、献血は気高い慈善活動から痛い思いをして
ほんの数ドル手に入れる方法に堕落した。
そして数ドルでは全然見合わない。〉

、、、このメルマガを有料にするインセンティブも同じです。
もし「お金のため」ならば私はメルマガを書くインセンティブがありません。
有料メルマガで「稼げる」人って、日本で10人ぐらいしかいません。
「稼げない裾野」は数万人いますから、
有料メルマガはビジネス的には「墓場」です。
この業界は、死屍累々なのです。
出版社に原稿を送り続けた方がまだ勝算があると皆が認めています。
同じ大変な思いをして「労働力を換金」する、
ベターな選択肢は、他にもたくさんあります。

経済的インセンティブ以外のものが働いているから、
私は無料でメルマガを書き続けています。
それは私の「召命」と関与しているので換金不能です。
道徳でも社会でも経済でもない、
「超越的インセンティブ」が私にはあります。

もうひとつ面白かったのは、
全米で行われた子どもの学力調査からあぶり出された、
親の行動や資質と、子どもの学力の相関関係です。
親のどんな行動や要素が子どもの学力と関係し、
親のどんな行動や要素が子どもの学力と関係ないのか、
データを冷徹に見ると浮き上がる真実は興味深いです。
引用します。

→P209〜210 
〈さて、延々やってきたけれど、
親の大事さ一般についてどんなことが分かるだろう?
ECLS(全米で実施された大規模な子どもの学力調査)の要因のうち、
学校の成績と相関している八つをもう一回見てみよう。

・親の教育水準が高い
・親の社会・経済的地位が高い
・母親は最初の子どもを産んだ時30歳以上だった
・生まれた時未熟児だった(負の相関)
・親は家で英語を話す
・養子である(負の相関)
・親がPTAの活動をやっている
・家に本がたくさんある

それから、相関していない要因八つはこうだった。

・家族関係が保たれている
・最近より良い界隈に引っ越した
・その子が生まれてから幼稚園に入るまで母親は仕事につかなかった
・ヘッドスタート・プログラム(政府による教育補助プログラム)に参加した
・親はその子を良く美術館へ連れて行く
・よく親にぶたれる
・テレビをよく見る
・ほとんど毎日親が本を読んでくれる

ちょっとオーバーな言い方をすると、
一つ目のリストに挙がっているのは親がどんな人かだ。
二つ目のリストに挙がっているのは親が何をするかだ。
良い教育を受けていて、成功していて、
健康な親御さんの所の子どもは学校の成績も良い。
でも、子どもを美術館に連れて行ったり、ぶったり、
ヘッドスタート・プログラムに行かせたり
良く本を読んでやったり
テレビの前に座っているのを放っておいたりなんてことは、
どうやらあんまり関係ないみたいだ。

、、、もちろん親はもの凄く重要だ。
それがとても難しいところだ。
つまり、親御さんが子育ての本を手にする頃には、
もう全然手遅れになっている。
大事なことはずっと前に決まってしまっている。
ーーあなたがどんな人で、どんな人と結婚して、
どんな人生を歩んできたか、そういうことだ。
、、、あなたが親として何をするかは
あんまり大事じゃないーー大事なのは、あなたがどんな人かなのだ。〉

、、、「どんな子育てをするか」という子育て理論は、
いつの時代にも人気があり人々の関心を引きますが、
データを詳細に調べると、「どんな子育てをするか」は、
じつはあまり子どもの学力と関係がない。
勝負は子どもが生まれる前にとっくに決まっている、
と「ヤバイ経済学」は分析します。
(こういう発言はひんしゅくを買うので、
 これが「ヤバイ経済学」であるゆえんです。)
つまり、親が親になる前の20年なり30年、
どんな人生を送ってきたかということが
子どもの学力の殆どを決めてしまう。

将来子どもの学力を高めるのに一番大切なことは、
胎児にクラシック音楽を聴かせたり、
子どもをキッズ英会話に通わせたり、
週に五日間、学習塾や習い事に行かせることではありません。
(余談ですが私はそれが「虐待」にみえて仕方ないです。
 ブラック企業ならぬブラックペアレントですね。
 子どもだっていつか過労で死ぬぜ、と思います。
 たいていそういう親は「善意の塊」ですから、
 そこが問題をややこしくしているのですが。)
むしろなすべきことは、
親自身が本を読み、
親自身がひたむきに勉強し、
親自身が真摯に仕事に取り組むことです。
将来子どもに良い人間関係を築いて欲しければ、
親ができる最も大切なことは配偶者や家族と、
良好な人間関係を築くことです。
耳が痛い事実なので人はあまり「聞きたがらない」ですが、
たいせつな真理をデータは示しています。
(2,876文字)



●あの演説はなぜ人を動かしたのか

読了した日:2017年10月1日
読んだ方法:図書館で借りる

著者: 川上徹也
出版年:2009年
出版社: PHP新書

リンク: http://amzn.asia/0UA1LuK

▼140文字ブリーフィング:

歴史に残る「名演説」を取り上げて、
その演説はなぜ人の心を動かしたのかが、
分析されています。
取り上げられている演説は以下の通り。

・小泉純一郎 「郵政解散演説」
・田中角栄 「ロッキード選挙演説」
・バラク・オバマ 「2004年民主党全国大会基調演説」
・ジョージ・W・ブッシュ 「9.11直後の演説」
・ジョン・F・ケネディ 「大統領就任演説」
・フランクリン・ルーズベルト 「大統領就任演説」
・マーティン・ルーサー・キング・ジュニア 「私には夢がある」演説

著者は名演説に共通するのは
「ストーリーの黄金律」と著者が呼ぶ3要素だ、
と分析します。

→P7〜8 
〈具体的に言うと、
以下の三つの要素が含まれていることが「ストーリーの黄金律」です。

1.何かが欠落した、もしくは欠落させられた主人公
2.主人公が何としてもやり遂げようとする遠く険しい目標・ゴール
3.乗り越えなければならない数多くの葛藤・障害・敵対するもの

この三つの要素が含まれていると、
人は感情移入しやすく、心を動かされやすく、
行動に駆り立てられやすくなります。
いわば「人類共通の感動のツボ」のようなものです。〉

現在の日本の政治家も、
この「ストーリー作り」に成功した人が選挙に勝っています。
小泉純一郎の「自民党をぶっ壊す」は言うに及ばず、
2012年の第二次安倍政権誕生の選挙も、
・安倍さんの病気からの復活(欠落した主人公)
・憲法改正の悲願(困難な目的)
・朝日新聞という「巨悪」(葛藤と障害)
というストーリー作りに成功し、
鬱屈した保守層の絶大な支持を集めました。
昨年の東京都知事選挙もそうです。
・石原慎太郎から「厚化粧」と呼ばれた小池百合子(欠落した主人公)
・都政を都民の手に取り戻す(困難な目的)
・「都議会のドン」の存在(葛藤と障害と敵対者)
このストーリーに都民は熱狂した。
(自作自演というツッコミはありますが、、、)

、、、さて、
今回の国政選挙からは、
そういった「わかりやすいストーリー」が見えてきません。
そもそもなんで解散したのか(政治家以外には)分からない。
「予言」しても良いですが、投票率はかなり低くなるはずです。
思想家の東浩紀氏は「政治家の都合で無駄な選挙をしないでくれ」
という意思表示として積極的棄権を呼びかけていますが、
その気持ちは私にもよく分かります。
(私は彼とまったく同じ気持ちですが投票はするつもりです)

▼参考リンク:東浩紀「積極的棄権」への署名
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-18506.html

、、、まったく話しは変わりますがこの本には、
上記の演説が「文字おこし」されて収録されています。
2004年のオバマ氏の民主党基調演説「大いなる希望」は、
図抜けてすごかったです。
保守やリベラルの対立を乗り越えて、
より大きな国家像の絵を描き、
高度に抽象的な理想を万人に共感出来る物語に落とし込んだ、
演説として「欠点がひとつもない」完璧な演説です。
これはシビれます。
(1,219文字)

▼参考リンク:バラク・オバマ「大いなる希望」動画
https://youtu.be/hNlkMJnbvhU



●映画と本の意外な関係

読了した日:2017年10月1日 途中飛ばし読み
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 町山智浩
出版年:2017年
出版社: インターナショナル新書

リンク: http://amzn.asia/3CE7p8q

▼140文字ブリーフィング:

映画評論家の町山智浩さんが、
映画の主人公が手にしている本や、
映画の主人公の部屋の本棚にある本のタイトルには、
それを制作した人々の「意図」が隠されている、
という視点で映画を語る本です。
この人の「映画の読み込み方」はハンパじゃないです。
スピルバーグ監督の「リンカーン」という映画を、
私は見ていないですが、その映画の解説で、
リンカーンが鬱と戦っていたことが書かれていたのが、
興味深かったです。

→P105 
〈大統領のジョーク好きに手を焼いたエドウィン・スタントン陸軍長官は、
「あなたはどうして、いつもジョークばかり言っているんですか?」
と尋ねたことがある。リンカーンはこう答えたという。
「笑わないと死んでしまうからだよ」
それはジョークではなく、本当に彼は笑わないと死ぬ病気だった。
ジョシュア・ウルフ・シェンク著
『リンカーン――うつ病を糧に偉大さを鍛え上げた大統領』(06年)によると、
リンカーンは生涯、鬱病と闘ってきた。
自殺をしようと銃を持って森に入り、
通りかかった人に止められたこともあった。

シェンクによるとリンカーンの鬱はまず遺伝的なもので、
両親の家系がともに鬱病の傾向が強かった。
父は飲酒どころかダンスも罪と考える厳格なキリスト教徒で、
ユーモアのセンスに欠けていた。
母はいつも悲しげな女性だったという。
健康でもなかった。
リンカーンは人並み外れてて足が長く、
それを利用して欠けレスリングで稼いだこともあったが、
現在では身体の結合組織に影響する遺伝子疾患の
アルファン症候群という先天性の病気だった可能性が高い。
また、晩年、声が非常に甲高くなったが、
それも甲状腺腫瘍のためらしい。そのせいか常に病気がちだった。〉
(701文字)



●シャンタラム(上)

読了した日:2017年10月4日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ
出版年:2011年
出版社:新潮文庫

リンク: http://amzn.asia/4cMrhnD

▼140文字ブリーフィング:

養老孟司が複数の本で言及していて興味を持ちました。
上、中、下巻あり、それぞれ700ページある大長編です。
「ワケあり」の主人公がインドを冒険します。
その描写が非常に「嗅覚、触覚、聴覚、視覚、味覚」に訴える、
生き生きしたものなので、2008年に4ヶ月間、
私がインドに滞在したときのことを昨日のように思い出しました。
「シャンタラム」というのは主人公に付けられた「ヒンディネーム」で、
「平和を愛するもの」という意味です。
私にはヒンディ語の家庭教師がつけてくれた「アナンドゥ(喜び)」という、
ヒンディネームがあることを久しぶりに思い出しました。
(267文字)



●文部省の研究 「理想の日本人像」を求めた150年

読了した日:2017年10月5日
読んだ方法: 図書館で借りる

著者: 辻田真佐憲
出版年:2017年
出版社: 文春新書

リンク: http://amzn.asia/7AdKo7Y

▼140文字ブリーフィング:

目次は以下のとおりです。
第一章 文部省の誕生と理想の百家争鳴 1868〜1891年
第二章 転落する文部省、動揺する「教育勅語」 1892〜1926年
第三章 思想官庁の反撃と蹉跌 1926〜1945年
第四章 文部省の独立と高すぎた理想 1945〜1956年
第五章 企業戦士育成の光と影 1956〜1990年
第六章 グローバリズムとナショナリズムの狭間で 1991〜2017年

明治政府誕生から現在までの文部省(現在の文科省)の歴史をひもとくと、
「理想の日本人像」を求めてさまよった日本人の足跡がわかります。
この研究から驚くべき事が見えてきます。
それは150年間、日本人は、「普遍主義」と「共同体主義」、
言葉を変えると「グローバリズム」と「ナショナリズム」の間の、
振り子を行ったり来たりしてきた、ということです。
そのうえで「グローバリズムを否定」、
「ナショナリズムを否定」することに、
まったく意味はない、と著者は言います。
引用します。

→P251 
〈では、この歴史を踏まえて未来の
「理想の日本人像」はいかにあるべきだろうか。
今日、グローバリズムとナショナリズムの組み合わせは評判が悪い。
グローバリズムは、経済競争に勝ち抜くためと称して、
国民を階層化し格差を是認する。
ナショナリズムはバラバラになった国民を安易な記号で結合し、
不満のはけ口を提供しようとする。
国旗掲揚と国歌斉唱の実施、
「教育勅語」の復活、「自虐史観」の否定と歴史教育の見直しなどがその例だ。
たしかに、このような組み合わせは、ろくなものではない。

ただ、現在の世界において、
グローバリズムとナショナリズムを完全否定することは得策ではない。
むしろ、これらの欠陥があるシステムを上手く使いこなすことが求められる。
かつてイギリスの首相チャーチルは、
「民主主義は最悪の政治制度だが、
それ以外の政治制度に比べればマシだ」という主旨の発言を行った。
グローバリズムとナショナリズムもまたしかりである。

グローバリズムによる階層化は、
ナショナリズムの同胞意識で掣肘できるかもしれず、
ナショナリズムによる自国中心主義(今日的に言えば「ジャパン・ファースト」)は、
グローバリズムの経済的合理性で抑制できるかもしれない。
この両者を適切に組み合わせ、
新しい「理想の日本人像」を模索することが必要だ。

その点で、「改正教育基本法」は、それほど悪いものではない。
普遍主義と共同体主義の両方に配慮が見られ、
提示された「理想の日本人像」もナショナリズム一辺倒ではない。
過度のナショナリズム批判は、かえってこの性格をゆがめかねない。
それよりも、多義的に読み解くことで、
普遍主義とのバランスを取るべきである。

今日の問題は、特定の思想の全否定や全肯定ではなく、
普遍主義と共同体主義のバランスの中で、
現実の教育をいかに「実装」していくかだ。
その意味で、文部科学省の役割は重要である。

1990年代以降、政治主導の教育改革によってその存在感は薄らいでいる。
今後「官邸文科室」などと揶揄されるかもしれない。
だが、教育改革は派手だが、地道な作業も必要だ。
政治は急変し、有識者はイデオロギーを好み、有権者は気まぐれである。
そのなかで、安定的に継続して地道に教育全般を見渡す組織は欠かせない。
派手な教育改革が一段落した後で、
文部科学省や中教審の存在が重要になってくるのではないかと思われる。〉

、、、「理想の日本人像」というのは、
「虚構だったとしても必要」と著者は言います。
私もそう思います。そこが定義されていないと、
教育なんて組み立てられませんから。
ですがその使い方は、
「アクセルとしてではなく、ブレーキとして」使うべき、
という著者の視点は秀逸です。

→P253 
〈「理想の日本人像」は、
特定の思想をブーストするための装置ではなく、
特定の思想の暴発を制御する安全装置として位置づけられるべきである。
、、「理想の日本人像」は不完全な虚構ではあるが、
それを踏まえた上で、教育の指針として利用されるべきである。〉

極端な国家主義者や、
極端なアナーキストが量産されれば、
いつか国は危ない方向に迷ってしまうか、
もしくは解体してしまうでしょう。
国家主義のブレーキとして普遍主義が、
アナーキズムのブレーキとして共同体主義が機能する、
という著者の意見に私も賛成です。
(1,751文字)



●羊と鋼の森

読了した日:2017年10月5日
読んだ方法:Kindleで電子書籍購入

著者:宮下奈都
出版年:2015年
出版社:文藝春秋

リンク: http://amzn.asia/85P6l64

▼140文字ブリーフィング:

北海道の田舎で生まれ育ち、
札幌でピアノ調律師の見習いをする主人公が一人前の調律師になっていく、
というストーリーです。
未熟な個人が一人前になっていく、という物語話法を、
「ビルドゥングス・ロマン」と言います。
佐藤優氏が、現代のビルドゥングス・ロマンとして推奨していたので、
Kindleで買って読んでみました。

「羊」というのはピアノのハンマーのフェルト綿のことであり、
「鋼」というのはピアノ線のことです。

→位置No.2261 
〈「調律って、どうすればうまくなるんでしょう」
 ひとりごとだった。席に戻りながら、思わず口に出ていたらしい。
 「まず、一万時間だって」
 その声にふりむくと、北川さんが僕を見ていた。
 「どんなことでも一万時間かければ形になるらしいから、
悩むなら、一万時間かけてから悩めばいいの。」
 一万時間というのがどれくらいの日数になるのかぼんやり計算する。
 「だいたい5、6年って感じじゃない?」〉

主人公のまっすぐさとひたむきさは、
ともすると「退屈」と思われるむきがありますが、
私の職業人生からしても、
3年目にしてなおメモ帳とペンを肌身離さないような、
主人公のような「不器用でバカ真面目」な人こそが、
最後には「巨匠」になります。
1年目から小器用にルーティーンをこなすような新人はたいてい、
3年目ぐらいで成長が止まります。

あと、この作者の文章は飲物に喩えると、
「死ぬほど飲みやすい」です。
文章の「のどごし」が半端ない。
私は文章を日常的に書いていますので、
これがどれぐらいすごいことか、想像がつきます。
プリンやポタージュで言うなら、
「何回、裏ごしをしたんだろう?」ということです。
何十回、いや何百回プリントアウトし、音読し、推敲したら、
これほど「軽い」読み心地の文章が仕上がるのだろう、、、。
気が遠くなりそうです。
きっと著者もまた文章を磨くために、
「1万時間の努力」をされたのでしょう。
(787文字)




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