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陣内が先週読んだ本 2018年1月第一週 『LIFE SHIFT』リンダ・グラットン 他4冊

2018.06.27 Wednesday

+++vol.046 2018年1月9日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■4 陣内が先週読んだ本 
期間:2018年1月第一週 12月31日〜1月6日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●内側から見た富士通 「成果主義」の崩壊

読了した日:2017年12月31日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:城繁幸
出版年:2004年
出版社:光文社ペーパーバックス

リンク:
http://amzn.asia/cFEb1UL

▼140文字ブリーフィング:

00年代に、富士通は「成果主義」を鳴り物入りで導入ました。
その結果、なんと富士通はどんどん業績を落とし、
納期の半年遅れなどを起こしニュースに取り上げられたのです。
成果主義の導入後、内部は崩壊しました。
著者はその時代に富士通に入社し、
あまりの不条理に退職してフリーランスになった人ですから、
この本は「内部からの告発」のような様相を呈します。
面白かったです。

著者の分析によると、成果主義自体に罪があったわけではなく、
組織体質には手を付けず成果主義を導入した結果、
成果主義が実力主義を後押しするのではなく、
逆に「コネと根回しのムラ社会のルール」を強化し、
「責任をとらない」という悪い部分だけが残った、
という逆説的で皮肉な現象が起きたことが悲劇だったと言います。

引用します。

→P221 
〈年功的組織下で濫造された従業員数の3割を占める管理職に、
公平で有能な評価者を期待しても、理論通りには動かないのだ。
まして、彼らは従来の超・年功的価値観の下で何十年も育成された、
新しい価値観への順応度だけで観れば新人より遙かに劣る「抵抗勢力」だ。
まったく異質な「成果主義」という理念を理解することなど、
とうてい無理なのだ。
そして、この点がクリアできないなら、
どんなに頭をひねっても、何回制度をいじくり回しても、
「成果主義」は機能しない。
そういう意味では、
富士通は貴重なモデルケースを提供してくれたと言えるかもしれない。
組織の大枠を崩すことなく、評価システムを変えた所で、
結局何一つ変わらなかったからだ。
むしろ悪化したあげくに、社業まで大きく傾いてしまった。
社員の不満、嫉妬、怨念、若手社員の離職率急上昇、
そして業績低迷。これらの現象は、
いずれも「中途半端な成果主義」という一本の線でつながっている。〉

もうひとつ面白かったのは、
日本企業が00年代に「成果主義」を大挙して導入した、
「本当の理由」です。
それは実は、「働く人のやりがい」とか、
「イノベーションを起こす」とかではないと著者は指摘します。

企業が成果主義を導入した本当の理由は「コストカット」です。
年功序列制度を維持するコストを担保できなくなったので、
「成果主義の導入」という名のコストカットが行われたわけです。

説明します。
高度経済成長の「人口ボーナス時代」が終わり、
労働人口と内需が縮小していく「人口オーナス時代」に入った結果、
日本で年功序列制度を維持するのは「無理ゲー」になったのです。

なぜか。

年功序列制度というのはつまるところ、
「ピラミッド型組織の維持」だからです。
下が大きくて上が少ない、ということですね。
組織の階級を上昇するにつれて「席の数」は減って行きます。
この「三角形の形」を維持するには、
裾野が際限なく広がらなければなりません。
「ネズミ講」の理論です。

それはつまり、企業が右肩上がりに成長するということを意味します。
そして昭和の一時期それは本当にうまくいきました。
実はこのネズミ講式の構造は年金制度にも言えます。
人口オーナス時代に入り、
それが破綻した時に企業の人事部や財務部などの、
官僚ホワイトカラー部門(コスト部門)が成果主義に飛びついたのはつまり、
今後逆三角形になっていくときに膨らむコストをカ
ットしたかったからです。
こんな動機で改革をすること自体が「欺瞞でありゆがみ」なのであり、
成果主義自体が悪だったからではない、と著者は指摘しています。
私も同意します。
引用します。

→P146 
〈「年功序列制度」の組織は、
前述のように際限なく組織が拡大することと、
ビジネスモデルが不変である
(少なくとも非常に緩やかな変化しかあり得ない)
という前提がなければ維持できない。
維持できれば毎年安定して若い人材も確保できる。
そうなると、人事制度の主眼は
「いかに個々の人材の能力を伸ばしていくか」ではなく、
「いかに個々の人材の規格を維持するか」
という点に力点を置いた方がずっと合理的だ。
こう考えると、「ムラ社会」の掟にも、
それなりの存在理由はあるのだ。
たとえてみると、「成果主義」は脚本もステージも設定も
まだ決まっていない自由演劇のようなもので、
「年功序列制度」は先人から代々受け継がれてきた「しきたり」にそって、
決まった衣装と舞台で毎回同じように演じる歌舞伎のようなものだろう。
前者には、自由に才能やスキルを生かせる反面、
客の反応は実際公演をやってみるまで全く予測できないというリスクがある。
その一方、歌舞伎役者にはオリジナリティや新鮮な感動は期待できないだろうが、
公演中の客の反応はもちろん、1度の興業の売り上げまで予測可能だ。〉
(1,826文字)



●人間の本性を考える 心は「空白の石版」か (中)

読了した日:2017年12月31日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:スティーブン・ピンカー
出版年:2004年
出版社:NHKブックス

リンク:
http://amzn.asia/747Tijo

▼140文字ブリーフィング:

上・中・下にまたがるこの大著は、
「ブランクスレート仮説」と呼ばれる、
「人間の心は空白の石版であり、教育や学習によって、
 どんなものにでもなり得る」という仮説への反論です。
その反論にはある程度の「遺伝子決定論」が含まれます。
つまり、(教育には効果があるものの)、
遺伝的にどうにもならない脳の優劣だったり、
人を傷つける傾向だったり、そういうものがあるのだ、
という行動遺伝学と呼ばれる分野の知見です。

困った(と著者は思っている)ことに
この分野はめちゃくちゃ評判が悪いのです。
右派(保守派)からも、左派(進歩派)からも。
引用します。

→P247 
〈心が生物学的に解明されることに対して人々が抱く重大な恐れの一つは、
解明が道徳のニヒリズムにつながるのではないかというものである。
もし人間が高尚な目的のために神によって創造されたのでなければ、
と右派の批判者は言い、
もし利己的な遺伝子の所産であるなら、
と左派の批判者は言う。
私たちが自分のことばかり気にかける
道徳性のないエゴイストになってしまうのを、
何が防止してくれるのだろうか。
、、、そして両派とも、人間性についての
生物学的な理論を受け入れた結果がナチズムであると指摘する。〉

行動遺伝学が左派からも右派からも評判が悪いその理由は、
「道徳性がなくなる」という人々の恐れだ、と著者は言います。
そして、それは完全な誤解だ、と。
「行動や心や能力が遺伝的に決定されること」と、
「道徳的に生きることの意味が失われてしまうこと」の間に、
なんの相関もないんだ、と。
この誤解は、
「至近要因と究極要因の混同による誤解」と呼ばれるそうです。
本書をここまで読んで一番のヒットは、
私にとってはこれでした。
引用します。

→P105〜106 
〈科学的知識によって人間の価値が
損なわれるのではないかという不安について考えると、
私は映画『アニー・ホール』の冒頭で、
主人公のアルビー・シンガーが子どもの頃に、
かかりつけの医師のところに連れてこられたシーンを思い出す。

母親:気分が落ち込んでいるんです。急に何もできなくなってしまって。
医師:どうして落ち込んでいるの、アルビー。
母親:フリッカー先生にお話ししなさい。
(息子の代わりに答える)何か読んだらしいんです。
医師:何か読んだ?
アルビー:(うつむいて)宇宙は膨張している。
医師:宇宙は膨張している?
アルビー:宇宙はすべてでしょ。それが膨張しているなら、
いつかばらばらになって、何もかも終わりになってしまうんだ。
母親:それがあなたになんの関係があるの?
(医師に向かって)宿題もしなくなってしまって。
アルビー:宿題なんかに、何の意味があるのさ。

このシーンがおかしいのは、
アルビーが分析の二つの水準――宇宙をはかる数十億年という尺度と、
数十年、数年、数日という人生の尺度とを混同しているからだ。
アルビーの母親の言うとおり、
「宇宙があなたに何の関係があるの?
あなたはブルックリンにいるのよ。
ブルックリンは膨張していません!」なのだ。
私たちの動機がすべて利己的であるという答えに出会って落ち込む人は、
アルビ―と同じくらい混乱している。
究極要因(何かが自然淘汰で進化した理由)と
至近要因(それが、いまここでどのように働いているか)とを
混同しているのだ。
二つの説明はよく似ているように見える場合があるので、
混同されるのも無理はない。〉

、、、私たちの周りには他にもたくさんの、
「究極要因と至近要因の混同」による混乱や誤解が、
存在するのではないか、と私は感じました。
いつか世の終わりが来るからといって、
明日の宿題をやらなくて良いわけではありません。
人間はいつか必ず死ぬからといって、
暴飲暴食をして良い理由にはならないのです。
(1,442文字)



●歩くような速さで

読了した日:2018年1月1日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:是枝裕和
出版年:2013年
出版社:ポプラ社

リンク:
http://amzn.asia/2eVy9kJ

▼140文字ブリーフィング:

私の好きな映画監督、是枝裕和さんによるエッセイ集です。
散文的ですが、とても面白かったです。
いろいろ面白かったところがあったのですが、
その中から一つだけ厳選して引用して紹介します。

→P25 
〈作品は自己表現ではなくコミュニケーションだと昨日書きましたが、
もう少しその話題。
テレビの仕事を始めたときに一番言われたのは、
「わかりやすく」ということでした。
「誰にでも分かるように」と。
「視聴者は馬鹿なので」と平気で言う放送局員もいました。

もちろん人に伝える職業ですから、
どうしたらその話を真剣に聞いてくれるか?
語る言葉は選びますし、話す順序も考えます。
しかし、誰にでも分かる作品などあり得ない。
それは言葉や映像、
もっと言うとコミュニケーションを過信しているのだと思います。
難しくてわかりにくいことを
5分で説明してくれるのがテレビだと思われている方も多いと思いますが、
実は簡単だと思われている事象の背後に隠れている
複雑さを描いてこそテレビだという価値観も一方で存在するわけです。
だって世界は複雑なんですから。

その複雑さを無かったことにして
「わかりやすさ」だけを求め客に媚びた結果
(すべてとは言いませんが)映画もテレビも幼稚化したのだと思います。
そして現実から逃避した。
「早くこの味が分かるようになれよ」と
大人がこどもを高みへと導くような態度は、
作り手としては傲慢であるといつしか言われるようになりました。
しかし、ではどちらの態度がよりコミュニケーションというものと
真面目に向き合おうとしているでしょうか?

「誰か一人の人間を思い浮かべながら作れ」。
これもデビュー当時、先輩に言われた一言です。
視聴者などと言う曖昧な対象へ向かって作ったって結局誰にも届かない。
母親でも恋人でも良いから「ひとりの人に語りかけるように作れ」と。
つまり、作品を表現ではなく対話として捉えろ、
とその人は言いたかったのでしょう。
確かにそのことを意識すると、作品は自らのドアや窓を開き、
風通しが良いものに変質します。
僕が自己表現という言葉に感じる
「自己完結感」をこの風が払拭してくれるのです。

映画『奇跡』は、今3歳の娘が10歳になった時に見せたいと思って作りました。
世界は豊かで、日常はそのままで美しく、
生命はそれ自体「奇跡」なのだと、
そう語りかけるように作ったつもりです。〉

、、、「世界は複雑なのだから。」
痺れますね。
こういう表現者がいる日本は、
「まだ大丈夫だ」と思います。
彼は日本の宝ですね。
あらゆるものを「分かり易く説明してくれ」と要求する視聴者は、
言い換えると「俺は難しいことは考えたくない」と言っているのであり、
その人々は「複雑な世界を複雑なまま理解する」
という努力を放棄しています。
厳しく言えば「知的に怠慢」なのです。
そういった一人一人の「ちょっとずつの怠慢」が、
テレビをつまらなくし、
世の中に「分かり易いお手軽なもの」を充満させ、
そして世界をちょっとずつ行きづらくしている、
と私は感じていますから、
この是枝監督の言葉には大いに共感しました。
(1,229文字)



●LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略

読了した日:2018年1月1日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット
出版年:2016年
出版社:東洋経済新報社

リンク:
http://amzn.asia/cq7YpSm

▼140文字ブリーフィング:

こちらは小泉進次郎が引用したりして、
去年話題になったベストセラーです。
この著作は前著「WORK SHIFT」を下敷きにして書かれていますが、
そちらのほうが包括的で内容も重厚でした。

「WORK SHIFT」のレビューはかつてメルマガでがっつり書き、
アーカイブブログのほうにもアップロードしていますから、
是非そちらをご参照ください。

▼参考リンク:メルマガ記事「WORK SHIFT」
http://blog.karashi.net/?eid=154

両方読んでみて、
今回の本が前著より売れた理由は私には分かります。
それは後半にケーススタディを持ってきて話を単純化したところにあります。
戦後の団塊世代のジャック、
団塊ジュニア世代で1971年生まれのジミー、
1998年生まれのジェーンという、
3人の人生をシミュレーションするという構成になっていて、
その対比が話を分かり易くしています。

著者の言いたいことの要約はこうです。

過去200年の人類の寿命の推移から割り出すと、
現在生まれる赤ん坊は、
かなりの確率で100年近く生きることになる。
そして、彼らが60歳になったとき、
世の中に「定年退職」という概念自体がなくなる。
(それは人類の長寿化と国家の年金運営が、
 早晩破綻するという二つの理由による)
そのような時代の働き方は、
産業革命後に人類が経験した
「働き方の革命」に匹敵する大変革となる。
具体的には過去の革命は、農業主体から工業主体への変革であり、
その時代に「8時間労働・週休2日制・年功序列・年金制度」
といった現在私たちが知る労働慣行が形成された。
しかし我々がこれから経験する「働き方革命」は、
「農業から工業へのシフト」とは違うインパクトをもたらすであろう。
工業時代(現在)は「3ステージの人生」がスタンダードだ。
つまり「教育のステージ(〜20歳前後)
→労働のステージ(20前後〜65歳前後)
→引退のステージ(65歳〜)」
という3ステージである。
しかし今後このような「3ステージ」は完全に解体されるだろう。

、、、で、この「ポスト3ステージ」の働き方を、
著者は「ポートフォリオ・ワーカー」と呼びます。
直訳すれば「分散投資型の労働者」という意味であり、
じっさいには、人生がマルチステージになるということです。
教育→職業A→職業B→
教育に戻る→職業C→サバティカル(長期の休養)
→職業D→、、、、
みたいな働き方です。
「3ステージ」との大きな違いは、
1.人生に引退という概念がなくなることと、
2.そして職業A〜D(もしくはそれ以上)のうち、
かなりの部分を「雇われて」働くのでなく、
「フリーエイジェント」として働くことになること、
3.「教育」は人生の最初に一度だけでは間に合わず、
職業人生の途中に随時技術や情報をアップデートするために、
自己教育が欠かせなくなること
などが挙げられています。

グラットン氏が指摘している、
「100年ライフ」における大切な無形資産(お金以外の資産)には、
「変身資産」という、
これまでには必要とされなかったタイプの「資産」が含まれる、
という点が、私にとっては最も新鮮でした。
引用します。

→P127 
〈こうした(先天的な)要素を除いても、
無形の資産には非常に多くのものが含まれる。
長寿化との関係を基準に、これらを三つのカテゴリーに分類してみた。

1.一つ目は、生産性資産。
人が仕事で生産性を高めて成功し、
所得を増やすのに役立つ要素のことだ。
スキルと知識が主たる構成要素であることは言うまでもないが、
ほかにもさまざまな要素が含まれる。

2.二つ目は活力資産。
大ざっぱに言うと、肉体的・精神的な健康と幸福のことだ。
健康、友人関係、パートナーやその他の家族との良好な関係などが該当する。
長期追跡調査によれば、活力資産を潤沢に蓄えていることは、
良い人生の重要な要素の一つだ。

3.最後は変身資産。
100年ライフを生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験し、
多くの変身を遂げることになる。
そのために必要な資産が変身資産だ。
自分についてよく知っていること、
多様性に富んだ人的ネットワークを持っていること、
新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていることなどが含まれる。
このタイプの資産は、
旧来の3ステージの人生ではあまり必要とされなかったが、
マルチステージの人生では非常に重要になる。〉

、、、で、この変身資産には、
「自分に関する知識」が含まれるというのです。
つまり、「己を知っている人」ほど、「変身」がしやすい。
一つの職業的アイデンティティだけで、
100年ライフ時代のキャリアを全うできる人は少数派になります。
人間はほぼ例外なく「転職」「転身」を経験する世の中が到来した時、
「アイデンティティを確立できているかどうか」が
勝負を決めるというのです。

日本に引きつけて語るなら、昭和の日本は、
「私は●●株式会社の●●部で部長をしていた者です」
というアイデンティティが、退職後も通用した。
しかし、100年ライフ時代には、
そういった名刺=アイデンティティは通用しません。
「なんですかそれ?」になります。

なぜか?

現代の「企業」は人の職業人生より短いからです。
ということはあなたは、「私は山田太郎です」という、
固有名詞を名乗らなければならない。
その「山田太郎」は、
去年までは勤め人として中間管理職に就き、
今は大学院に通いながら、
新しい会社を起こす準備をしているかもしれない。
そのときに大切なのは、
「役割」ではない自分を語れることです。

引用します。

→P161〜163 
〈生涯に多くの役割を経験するほど、
一つの役割によってはアイデンティティが決まらなくなる。
アイデンティティは、引き受けるものや親から受け継ぐものと言うより、
丹念に作り上げるものになったのだ。
そのプロセスでは、自分についての知識が大きな意味を持つ。
自分のことをよく理解し、よく学ぶためには、
他の人たちに意見を求め、寄せられた意見について内省することが有効だ。
内省の重要性はきわめて大きい。

自分と世界についての認識に新しい情報を加えるだけなら、誰でもできる。
変身資産を積極的に築こうとする人が他の人と違うのは、
単に情報を加えるだけでなく、自己認識と世界の見方を変更することだ。
その結果として、自分についての理解が広く深くなり、
いくつもの欲求と不確実性に対処する能力が高まる。

心理学者のロバート・キーガンによれば、
人が大きく変わるのは、一歩下がって内省し、
その結果について判断を下す時だ。
行動の仕方やものの感じ方だけでなく、
ものの知り方を変えるとき――そう、何を知っているかだけでなく、
どのように知っているかを変える時――変化は起きる。
アイデンティティを主体的に作り上げる側面が大きくなると、
私たちは、心理学者のヘーゼル・マーカスと
ポーラ・ヌリウスが言うところの「ありうる自己像」への理解を深め、
その結果、アイデンティティが未来に広がるようになる。

、、、自分についての知識は、
変化を遂げるための道筋を示すことに加えて、
人が変化を経験しながらもアイデンティティと
自分らしさを保てるようにする役割を持つ。
自分についてよく理解している人は、
人生に意味と一貫性を持たせる道を選びやすい。
そのため、過度に落ち着きのない人生を送らずにすむ。
往々にして、寿命が延びると、
外的要因により慌ただしい日々を強いられたり、
職や居住地を頻繁に変えることでせわしない生活に陥ったりする。
その点、自分についての知識を持っている人は、
人生の新しいステージで成功する確率が高く、
変化によりアイデンティティが脅かされているとあまり感じない。〉

→P163 
〈アイデンティティの変化は、本人にとって難しい経験だ。
なにかが変わる時は、なにが変わらないのかが重要な意味を持つ。
人類学者のシャーロット・リンデは、
大勢の人たちとのライフ・ストーリー
(みずからの人生や生活について語る物語)に耳を傾けた。
すると、とくに際立っていたのは、
一貫性を持った人生の物語を描くことに
人々が多大なエネルギーを費やすという点だった。

人生の物語が一貫性を持つためには、
継続性(自分の変わらない要素とはなんなのか?)と因果関係
(自分に起きたどの出来事が原因で変化が起きたのか)
の両方の要素が欠かせない。
リンデによれば、自分についての深い知識は、
その継続性と因果関係の要素を形作る上できわめて重要だという。〉

、、、以上の分析から著者は、
現代の若者が「自分探し」などをするのは、
「世代論」に還元できない、と強調します。
つまり、若者の自分探しなどの「自己意識の高さ」は、
世代の特徴ではなく、寿命の長さこそが
真の理由だと彼女は分析しています。
鋭い分析です。

→P361 
〈ジェーン(1998年生まれ)の人生には、
自己意識を一つの旅として捉える姿勢がよく表れている。
「私はどういう人間か?」という問いに対するジェーンの答えは、
長い人生の間に変わっていく。
基本的には、人生のどの時点でも未来のあり得る自己像を多数持っているのだ。
この世代の行動が年長世代と大きく異なる理由は、この点にある。
世代による行動様式の違いを生んでいる要因は、誕生年の違いではない。
それは「ミレニアル世代だから」「Y世代だから」といった
怪しげな世代論で説明すべきものではないのだ。

その真の要因は、寿命が延びていることだと、著者達は考えている。
この世代は、無責任だとか、権利意識が強すぎるなどと批判されることが多い。
しかし、そうした行動は明らかに、
人生という長旅を始めるにあたって
自己意識に投資しようとする姿勢と見なせる。
ジェーンたちは、人生の様々なステージと
移行期間の構成を決める上で、
自己意識が非常に大きな意味を持つとよく理解しているのだ。〉
(3,894文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

陣内が過去一週間に読んだ本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:LIFE SHIFT

コメント:
ご紹介したとおりですが、
「LIFE SHIFT」は前著「WORK SHIFT」とあわせて、
購入して読むに値する本です。
欧州では既に定年退職の年齢を68歳に引き上げ、
長期的には撤廃する動きが始まっており、
日本も近未来において必ず同じ事が起きます。

私は「自分が定年退職する未来」を、
人生のシナリオの中にもはや持っていません。
おそらく私達の世代以下は全員そうだと思いますが、
年金を「もらえる」などとは、最初から思っていない。

、、、そのような社会で、自分が社会のお荷物になるのでも、
既得権益にしがみつくのでも、
老害となって若者の邪魔をするのでもなく、
社会を益する存在として能力を還元し続けられるように、
今から体力においても知力においても経験においても、
信仰においても準備しておくべきだ、という危機感を、
私はこの二冊を読んでから自然に抱くようになりました。



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