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陣内が先週読んだ本 2018年12月9〜2019年1月5日 『ザ・ワーク・オブ・ザ・ネーションズ』他

2019.05.15 Wednesday

+++vol.073 2019年1月8日配信号+++

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■2 陣内が先週読んだ本 
期間:2018年12月9〜2019年1月5日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●アカガミ

読了した日:2018年12月11日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:窪美澄
出版年:2016年
出版社:河出書房新社

リンク:
http://amzn.asia/d/dh1ogbq

▼140文字ブリーフィング:

以下の佐藤優の記事で知って興味を持ちました。
https://www.news-postseven.com/archives/20181125_801214.html

この記事で佐藤さんが語っているのは、
現代のディストピア小説を読むと、
80年代のそれとは違い、
「外敵」がいないことが分かる。

むしろ「敵」は私たちの社会に内在しており、
それは巧妙に社会のシステムとして織り込まれている、
そんな「未来のディストピア(ユートピアの反対)」を、
多くの小説家が描くと言うことが、
現代という時代を象徴しているのではないか、と。

後にご紹介しますが、
この記事で紹介された『アカガミ』、
『消滅世界』『橋を渡る』の3冊を、
私は先月読みました。

『アカガミ』のあらすじはこうです。
2030年、「若者の性離れ」を受け、
政府が「恋愛・妊娠・出産支援制度」を主催します。
「アカガミ」という招待状を受け取った適齢期の若者は、
男女ペアのつがいにされ、
すべてが整った団地で生活を営みます。
そこで恋愛感情が芽生えるよう、
カウンセリングを受け、
排卵日がモニターされ、
セックスに至ると国から、
家族も含めとてつもない保障が受けられる。

「アカガミ」の語源はこうです。
太平洋戦争中の「軍への召集令状」が、
赤い紙に印刷されていたため、
「赤紙が来る」ということは、
「息子を取られる(そして多分死ぬ)」
ということを意味したため、
赤紙を受け取った母親や妻は、
奥の部屋にいってひとしきり泣きました。
(人前で泣くと「お国のために戦えるという、
 名誉なことを泣くとは何ごとだ!!」
 と世間から袋叩きにあったため)

赤紙の郵送料は当時1銭5厘(1円の100分の1)でした。
この値段は銃弾一発より安い。
だから日本軍の上層部は、
「兵器は高いが兵隊は1銭」というコスト計算で、
とんでもない危険な作戦を決行したりしたのです。

この未来小説における「アカガミ」もまた、
太平洋戦争中の赤紙と本質的に、
まったく同じモノだと主人公たちは、
クライマックスで気づくことになります。

ディストピアSFが面白いのは、
それが現実世界とどこかで地続きだからです。
10年ほど前の大臣の「生む機械」発言、
「(生殖できない)LGBTは生産性が低い」という、
自民党の杉田水脈議員の発言などからは、
「アカガミ的なるもの」を感じます。

最後まで面白く読めました。
(854文字)



●愛国のリアリズムが日本を救う

読了した日:2018年12月12日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:高橋洋一
出版年:2018年
出版社:育鵬社

リンク:
http://amzn.asia/d/7YiRba6

▼140文字ブリーフィング:

高橋洋一さんは、
安倍さんと日銀の黒田総裁のブレーン的な人で、
いわゆる「異次元の金融緩和」を支持する経済学者です。
世間から「リフレ派」とか呼ばれたりもします。
海外だとポール・クルーグマンという経済学者がいて、
その人の系譜に連なる人ですね。
高橋さんの立論はですから当然、
安倍さん支持ですね。
財政緊縮などあり得ない。
増税などもっての他。
ばんばんお札を刷って、
ばんばん公共投資をして、
景気を良くしたら良い、
という話しです。

増税や緊縮財政は、
「財務省の陰謀」だとすら言っている。

うん。

なるほど。

確かに筋は通っているかもしれない。

ただ、経済学者の中には、
彼と真逆の主張をする人もいまして、
それらの本も私は読んだことがあり、
そちらも、「うん、納得」という内容でした。

それぞれがデータに基づいて「論拠がある」と言います。
経済学の論争は神学論争に似ていて、
「実証不能」です。
神学と違うのは実証的なデータがあることですが、
変動係数があまりにも多いマクロ経済学の場合、
「何がそれをもたらしたか」を特定するのは不能なので、
どんな立論も可能だったりするところが、
「論争が終わらない」理由です。

私の近親者には経済学畑の人がいますが、
「黒田バズーカ」のチキンレースぶりに危惧を覚える、
という意見もあります。

本書で面白かったのは、
「安倍政権はもはやリベラルだ」
という、去年当メルマガでも解説した、
橘玲氏の『朝日ぎらい』と同じ主張です。

安倍政権は保育園無償化を進め、
大学無償化への準備もしています。
もはやこんなの、
完全に「リベラル」です。

朝日新聞は安倍政権を支持すべきだと思うのですが、
「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」みたいな感じで、
左翼リベラルは「安倍憎し」を前提に戦っている。
そういう「ポジショントーク的」なところが、
左翼が嫌われる理由なのだけど、
本人たちはあまり気づいていない。

自分のポジションを明確にせずに、
政治の話しをする人が多い(大多数)ですが、
それは「卑怯」だと思いますから私はいつも言いますが、
私の個人的な政治信条は「リベラル寄り」です。
しかしそれは「ポジションとしてのリベラル」ではなく、
思想としてのリベラルです。

話しとは関係ないですが、
極端に右か左に偏っている人ほど、
自分のことを「真ん中」と自称する傾向、
あれ、何なんでしょうね?
「あの新聞(媒体)は、
 他のマスゴミと違って中立だ!」
誰かが声高に語っているとき、
たいていの場合、それらは極右か極左です。
人間は「自己中心バイアス」があるので、
誰しも自分が世界の中心に見えるのは仕方ないにしても、
海外に比べ日本の「自分の立ち位置を明らかにせず、
議論を進めていくクセ」は直した方が良いと思います。
それは、「身許や出自を明らかにしないネットの言説」
に通ずるところがありますので。

めちゃ話しがそれましたので戻します。

なので、「ポジションとしてではなく、
思想としてのリベラルの私」は、
安倍さんの政策であれ良いものは良いし、
リベラル政党の政策であれ悪いものは悪いと思います。

良い、悪いの価値判断が、
「市民の自由を高め、
 差別や排他性をなくし、
 既得権を守らず、
 弱者が救済される」
というような大意において良ければ良し、
悪ければ悪し、ということです。

安倍さんがリベラルだ、
という高橋さんの主張の箇所を引用します。
(私もこれには同意します)

→P148 
〈「リベラル」は、もともと「自由主義」からきている言葉であり、
右の保守、左の共産主義・社会主義の中間・中道の政治スタンスを指す。
経済政策で見ると、雇用重視、市場重視、社会福祉に力点を置いている。
社会福祉はまだ許容できるとしても、雇用重視、市場重視になると心許ない。
すでに安倍政権が金融緩和政策をつかって雇用を伸ばすという
「リベラル」や「左派政党」のお株を完全に奪っている。
その結果、日本の政治では初めて
それを使ってめざましい成果を出してしまい、
その勢いで、市場重視、社会福祉でも矢継ぎ早に政策を出しており、
左派系野党は後れを取っている。〉
(1,329文字)



●「最前線の映画」を読む

読了した日:2018年12月18日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:町山智宏
出版年:2018年
出版社:インターナショナル新書

リンク:
http://amzn.asia/d/jhZUmod

▼140文字ブリーフィング:

めちゃくちゃ面白かったです。
やはり町山さんは「最強の映画評論家」ですね。
2018年ベスト10入りした、『哭声 コクソン』や、
スコセッシの『沈黙』など、
すでに観た映画に関しては、
「答え合わせ」のように楽しめます。
自分がどれほどこの映画の奥行きを楽しめていたか?
ということの。
町山智宏さんの解説を聞くと、
いつも「50点以下」ということが多い笑。
、、、で、また観たくなる。

そして、まだ観ていない映画に関しては、
これまためちゃくちゃ観たくなる。
町山智宏さんの映画評論は本当にスゴイです。
当メルマガの「先月観た映画」コーナーも、
これにはとうてい及びませんが、
そのような楽しみを読者に与えたいなぁ、
という願いを込めて書いています。

『沈黙』の解説のなかで、
「転び伴天連(踏み絵を踏んだクリスチャン)」を、
カトリック教会が360年ぶりに「赦した」という箇所では、
涙が出そうになりました。

引用します。

→P73〜74 
〈『沈黙』のロドリゴに最後までまとわりつづける
キチジローという切支丹がいる。
生き延びるために家族を売り、
何度でも踏み絵を踏み、ロドリゴを売った。
キチジローは裏切りを重ね、そのたびに懺悔する。

最初、ロドリゴは、キチジローへの軽蔑を抑えきれない。
だが、遠藤周作は「キチジローは私です」と言っている。
卑怯で弱い裏切り者こそ最も救われるべきではないのか。

ロドリゴは自ら裏切り者に落ちていく過程で、
キチジローに共感し、キリストを裏切ったユダにも共感していく。
ユダはキリストに接吻した。
それは、「裏切りのキス」と呼ばれるが、果たしてそうだろうか。
ユダこそ、どの信徒よりもキリストを愛していたのではなかったか。
だからキリストを売るという最も辛い役割を引き受けたのではなかったか。

最後、キチジローが再び告解に現れる。
キチジローを演じる窪塚洋介の顔が
ロドリゴの脳裏のキリストの顔に非常に似ていることに観客は気づく。
スコセッシはインタビューで
「実はキチジローはロドリゴの教師なのです」と言っている。

再びキリストの声が聞こえる。
「主よ、あなたがいつも沈黙しておられるのを恨んでいました」
「私は沈黙していたのではない。一緒に苦しんでいたのだ」

人間に最も必要なのは、奇蹟でも説教でもなく、
ただ黙って肩を抱いてくれる存在ではないのか。
それに気づいたロドリゴはキチジローを抱き、黙って額を寄せた。

それはアカデミー賞のステージでスコセッシが
エリア・カザンに額をすり寄せた姿にも似ている。
イエスはユダすらも愛したはずだ。
それを確信したロドリゴはキリストの境地に達した。
スコセッシは『沈黙』を完成させるとまず、
バチカンでフランシスコ法王とイエズス会の修道士二百人を招いて試写した。
彼らがロドリゴをどれだけ追体験できたかを伝える資料はないが、
スコセッシは映画の終わりに
「迫害されたすべての切支丹と伝道士たちに捧ぐ」
との献辞と共に「神の大いなる栄光のために」
というイエズス会のモットーを掲げることをゆるされた。

遠藤周作が願って得られなかった
「転び伴天連」たちへの「ゆるし」が
三百六十年ぶりに与えられたのだ。〉
(1,277文字)



●代替医療のトリック

読了した日:2018年12月19日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:サイモン・シン/エツァート・エルンスト共著
出版年:2010年
出版社:新潮社

リンク:
http://amzn.asia/d/bEoR05G

▼140文字ブリーフィング:

『10万個の子宮』という本を先月読みました。
子宮頸がんワクチンの副反応をめぐる、
「えせ科学がいかに社会全体の福祉を損なうか」
に関する本で、非常に共感しました。
そのなかで多く引用されていたのがこの、
『代替医療のトリック』です。

そして著者はサイモン・シン。
サイモン・シンは、
『フェルマーの最終定理』と、
『宇宙創成』という、
もう、べらぼうに面白い2冊の本を書いています。
これは面白いに違いない、と思い手に取った次第です。

WHOの見解などに代表される、
「科学的根拠に基づく正規の医療」を否定する、
というのは、日本ではたびたび起きますが、
これは日本だけでなく世界的な現象なのだと分かります。
BSEのときしかり、
豚インフルエンザ、
低線量の放射線の影響、
子宮頸がんワクチン、
数えたらきりがありません。

「主流の医療」は間違っている、
国家や原発村や製薬会社の陰謀によって、
ウソの科学を流布している。
真実はコレだ!!!
だって、このような事例が報告されている!!!
(子宮頸がんワクチンならけいれんする十代少女のビデオ、
 放射線なら「福島で見つかった奇形の動物」
 BSEならイギリスの症例)
というような情報発信者が、
ウェブサイトや書籍で活動するわけですが、
彼らの根本的な間違いは、
「科学とは何か」を理解していないところにあります。

「逸話の複数形はデータではない」
という言葉によって、サイモン・シンは、
その本質を的確に述べています。

→P169 
〈要するに、医療の主流派は、
ホメオパシーについてもその他どんな治療法についても、
逸話は(人間に関するものであれ、動物の患者に関するものであれ)、
治療法を支持する根拠としては不十分だとして認めない。
逸話をどれほどたくさん集めても、
しっかりした科学的根拠にはならない。
科学者がよく言うように、
「逸話の複数形はデータではない」のだ。〉


私はこれで治りました!
という逸話というのは、
科学の言葉で言いますと、
N=1(サンプル数1)と言いまして、
何ら実証性がありません。

この手のデマゴーグに踊らされる大衆、
というのはやはり、
「科学リテラシーの低さ」に起因します。
サイモン・シンのような、
理系と文系を往復できる文筆家の活動は、
科学リテラシーの向上において、
非常に重要です。

次の引用は、
本書の要約になっています。
ヒポクラテスの時代から、
「科学VSエセ科学」の戦いはあった、
ということが分かります。


→P10 
〈本書のすべては、
エーゲ海の島コスに生まれたヒポクラテスによって、
今から二千年以上前に書かれたひとつの警句を指針としている。
医学の父として知られるヒポクラテスは、こう述べた。
 科学と意見という、二つのものがある。
 前者は知識を生み、後者は無知を生む。〉
(1,139文字)



●消滅世界

読了した日:2018年12月19日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:村田沙耶香
出版年:2015年
出版社:河出書房新社

リンク:
http://amzn.asia/d/6NUzDCC

▼140文字ブリーフィング:

こちらも先ほどの『アカガミ』と同様、
佐藤優さんの記事でして手に取りました。
著者は『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した、
村田沙耶香さん。
『コンビニ人間』は2年前に買って読みましたが、
とても面白かった記憶があります。

こちらの『消滅世界』はセックスという概念がなくなり、
人工授精で子どもを産むようになり、
夫婦がセックスするのは近親相姦と
考えられるようになった未来の話しです。

人工子宮により男も妊娠・出産出来るようになり、
生まれた子どもたちは「子どもちゃん」と呼ばれ、
イスラエルのキブツのような実験都市(千葉県)では、
社会の全員が男女関係なく「おかあさん」と呼ばれます。

「コンビニ人間」もそうでしたが、
著者は「人間性の喪失」を描くことで、
人間性を浮き彫りにする手法が上手いと感じます。
こちらはコンビニ人間より前に書かれた本ですが、
「正常と異常が逆転する感じ」も、
コンビニ人間に引き継がれていると思います。
(395文字)



●橋を渡る

読了した日:2018年12月21日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:吉田修一
出版年:2016年
出版社:文藝春秋

リンク:
http://amzn.asia/d/9K1ce9r

▼140文字ブリーフィング:

『アカガミ』『消滅世界』と同じく、
佐藤氏の記事で興味を持ちました。
作風異なる3冊の「ディストピア小説」の、
テーマがほぼ重なっているというのが興味深い。

作家というのは時代の雰囲気を先取りする嗅覚を持つ、
「預言者」的な役割を持っていると思いますので、
3人の作家が似たような小説を書くというのは、
現代という時代の「根源的不安」の質が、
90年代とも00年代とも、もちろん80年代とも違っていて、
「何か得体の知れない恐怖」であり、
それは「セックスや生殖の喪失」といった、
「人間という種の保存」にも関わる部分である、
というのが分かります。

吉田修一は映画化された『怒り』や『悪人』を書いた人ですので、
本作のようなSFは珍しい。
非常に不思議な読後感でした。
こちらは現実に起きた、
都議会での塩村あやか議員への、
「自分が生めば良いだろ」という野次問題が、
「軸」になっています。

未来(2085年)の歴史書には、この事件が起きた2014年が、
「平成の新政」と呼ばれています。
この時代には「サイン」と呼ばれる、
血液細胞から作られたクローンが100万人規模で日本におり、
兵役に就いていたり結婚の道具にされており、
選挙権もなければ基本的人権も保障されていません。

正義が溶ける現代において、
「倫理をそれでも捨てないことを選ぶかどうか」
という瀬戸際に立つ主人公たちの群像劇です。
(583文字)



●ふしぎなふしぎな子どもの物語 なぜ成長を描かなくなったのか?

読了した日:2018年12月24日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ひこ・田中
出版年:2011年
出版社:光文社新書

リンク:
http://amzn.asia/d/9qyFlpk

▼140文字ブリーフィング:

これはめちゃ面白かったです。

テレビゲーム、テレビヒーロー、
女の子のアニメ、男の子のアニメ、
世界名作劇場、マンガ、児童文学、という幅広い射程で、
戦後どのように子どもの物語が変遷してきたかを、
著者は緻密に追いかけていきます。
少年ジャンプから仮面ライダーまで、
月光仮面からアルプスの少女ハイジまで、
ドラゴンクエストからエヴァンゲリヲンまで、
その射程は多ジャンルにまたがります。

そこから浮き彫りになるのは、
昭和から平成にかけての戦後70年の間に、
子どもに向けた「物語」は、
徐々に、しかし確実に、
「成長」を描かなくなった、
という共通する傾向がある、というのです。

「子どもが成熟して大人になる」。
この王道のストーリーを、
「ビルドゥングスロマン」と言いますが、
このような物語は特に平成になってから、
どんどん描かれなくなる。

一例としてたとえばアニメなら、
80年代の「機動戦士ガンダム」では、
アムロは「十五少年漂流記」よろしく、
「子どもたちの群れ」である、
ホワイトベースに乗り込み、
ガンダムを操縦して戦います。
だって、ブライト艦長、19才ですからね(驚愕)!
ガンダムには「大人」が出てきます。
それが「シャア」だったりするのですが、
そこには「大人と対峙する子ども」という、
「出会い」が描かれている。

これが90年代の「エヴァンゲリオン」になると、
もはや少年たちは大人と向き合わない。
そして「子ども(自我)だけの閉じた環」に引きこもり、
最後は、
「自我が成長しないまま、
自閉した子どもたちだけの、
謎の自己啓発セミナー的なラスト」を迎える。

なぜこういうことが起きるのか?
ということを著者は分析します。
それは、子どもや大人が変わったのではなく、
社会自体が変わったからだ、というのが、
著者の指摘です。

つまり、これは問題ではなく結果なのだ、と。
「もういちど成長を描くべきだ」という話しではなく、
「なぜ成長が描かれなくなったのか?」
その必然について考えなければならない。

それは、もはや「子ども」「大人」
という区分が無効化されているからなのではないか、
というのが著者の分析です。
だから、物語が変わってきたし、
これからも変わっていくだろう、と。

しかし、物語は絶対に必要です。
「成長が不要になった」新しい時代に、
それでも生きるということの必然や意味を語る、
新しい物語が語られることが大切です。

「はじめに」で著者が言っていることが、
「グッときた」ので引用します。

→P7 
〈子どもが本を読まなくなったと嘆く声はよく聞かれますし、
言葉でしか表せない、言葉だからこそ伝えられる物語も確かにあります。
しかし、昔も今も一日の時間は同じなのに
本以外にも物語を提供できるメディアが増えているのですから、
読書時間が減るのは自然な現象です。

ですから、読書をして欲しい思いがあふれすぎ、
他のメディアを非難したり排除したりするのが
良い結果を生むとは思えません。

むしろ物語が届けられるのなら、
どんなメディアでもかまわないと私は思います。
他のメディアが非難されたために、
子どもが物語り嫌いになることの方を私は恐れます。

何故なら人間には物語が必要だからです。
私たちが現実世界にいることを認識できるのは、
虚構世界の物語があるからですし、
現実世界が苦しいとき、一時でもそこから待避し、
休むことが出来るのも物語です。〉


、、、そうです。
私たちには物語が必要なのです。
生きることに意味を与え、
人生に滋養を与えるような豊かな物語が、、、。
(1,386文字)



●「老いる」とはどういうことか

読了した日:2018年12月25日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:河合隼雄
出版年:1997年
出版社:講談社+α文庫

リンク:
http://amzn.asia/d/6kp7jHA

▼140文字ブリーフィング:

日本にユングを紹介した河合隼雄さんは、
私の尊敬する知識人のひとりです。
亡くなってしまったのはあまりにも惜しい。
河合隼雄さんの本はもう10冊以上読んでいますが、
こちらは新聞連載のまとめなので、
わりと軽めの本でした。

アイヌの人々の「神用語」という概念が、
非常に印象的でした。
理性の鈍化をバカにするのが近代だとしたら、
前近代は理性の鈍化に畏敬を覚えたのです。
後近代(ポストモダン)も、
そちらに接近すると私は考えていますから、
彼らの知恵は私たちに資するところが大きいと思います。

→P83 
〈アイヌの人たちは、
老人の言うことがだんだんわかりにくくなると、
老人が神の世界に近づいていくので、
「神用語(しんようご)」を話すようになり、
そのために、一般の人間には分からなくなるのだと考える、とのことである。

老人が何か言ったときに
「あっ、ぼけはじめたな」と受け止めるのと、
「うちのおじいちゃんも、とうとう神用語を話すようになった」
と思うのとでは、老人に対する態度がずいぶんと変わってくることであろう。
「神用語」という言葉を考え出した
アイヌの人たちの知恵の深さに、われわれも学ぶべきである。〉
(485文字)



●ザ・ワーク・オブ・ネーションズ 21世紀資本主義のイメージ

読了した日:2018年12月27日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ロバート・B・ライシュ
出版年:1991年
出版社:ダイヤモンド社

リンク:
http://amzn.asia/d/5iSmaBn

▼140文字ブリーフィング:

この本は様々な本に引用されている、
「定本」のひとつなので、
いつか読んでみたかったんですよね。
「マックジョブ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
マクドナルドの店員のことを指しており、
これはつまり、低賃金の単純労働を意味します。
この「マックジョブ」という言葉を生み出したのが、
著者のロバート・ライシュだと言われています。
(本書に「マックジョブ」というフレーズは直接出てきません)

どういうことか。

この本が書かれたのは今から約30年前であり、
インターネットも黎明期です。
それにもかかわらず、
ロバート・ライシュは、
経済のグローバル化と、
情報や人材やモノのボーダーレス化によって、
「労働革命」が起きるであろう、
ということを「予言」したわけです。

どう起きるのか?

20世紀は「分厚い中産階級」があった。
つまりフォードの工場ラインで一生働いたり、
大企業の事務職として40年働いた人が、
かなり良い賃金を得て、
「中流」になれた。

しかし労働革命後、
社会の1割以下の「めちゃくちゃ稼ぐ高技能者」と、
90%の「低賃金の単純労働者」に、
労働は二極化し、分厚い中産階級は消滅するであろう、と。

前者を著者は「シンボリック・アナリスト」と呼び、
後者は後に「マックジョブ」と巷間に広まりました。
つまり、20世紀には分厚い中流層が、
(今の物価補正で)年収10万ドルに接近する稼ぎを得られたのが、
21世紀には高技能な専門職は数10万ドル〜数千万ドルを稼ぎ、
低技能なその多大勢は生活に必要なお金すら稼げなくなる。

はい。

そうです。

AI時代には、
「社会は人手不足なのに、
 巷には失業者があふれる」
と新井紀子さんは「予言」していますが、
90年代にライシュにはそれが「見えて」いたのです。

アメリカのトランプ大統領の当選理由は、
「分厚い中産階級の消滅」と直接関係があります。
彼らの「権益」を取り戻す!と宣言したことが、
ラストベルト(さび付いた五大湖周辺の州)の
集票につながったのですから。
しかし、ライシュが言うように、
「時代を20世紀に戻そうとする試み」はいつか破綻します。

ではどうすれば良いのか?

巷にあふれた失業者に、
高技能を身につけさせることです。
それこそが21世紀の本当の公共投資なのだ、
とライシュは言っています。
それはどのようになされるのか?
後日解説する、新井紀子さんの
「AI VS 教科書が読めない子どもたち」
にそのヒントがありますし、
本書にもその教育指針が示されています。

文字数の関係でその内容には立ち入りませんが、
いつか何らかの形でご紹介できたらと思います。
(999文字)



●人口減少社会の未来学

読了した日:2018年12月29日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:内田樹、池田晴彦、井上智洋、小田嶋隆、姜尚中、隈研吾、高橋博之、平川克美、平田オリザ、ブレディみかこ、藻谷浩介
出版年:2018年
出版社:文藝春秋社

リンク:
http://amzn.asia/d/hGPjAeB

▼140文字ブリーフィング:

内田樹さんがホストになって、
様々な著者が「日本の未来」について一章ずつ寄稿しています。
(まったく逆の立論も含めて)様々な論客が、
日本の未来について語っている本書は、
様々な曲調で構成される、
ミュージシャンのアルバムのような感じで「楽しめ」ました。

いろいろ面白い部分があったのですが、
井上智洋氏の執筆パートにあった、
「頭脳資本主義」という概念が面白かったので引用します。

→P80〜82 
〈ただし、日本経済が抱えているのは、
財政・金融政策によって
直接解決可能な需要サイドの問題だけではない。
企業や大学、行政機構、あらゆる組織で非効率が蔓延しており、
生産性が低迷している。

2016年の日本の一時間当たり生産性は、
OECD35カ国中20位である(日本生産性本部「労働生産性の国際比較」)。

労働生産性は当てにならない指標だと指摘されることが多いが、
2016年の日本のひとり当たり購買力平価GDP
(物価を考慮したGDPに関する指標)は、
全ての国々の中で30位である
(IMF"World Economic Outlook Databases")。
フランスのちょっと下、韓国やイタリアのちょっと上という一であり、
先進国最低クラスだ。

いかなる指標を参照しても、
日本の生産性の低迷を反証することは難しい。
これからそのような生産性の低迷は一層深刻になっていくだろう。
未来において、一国のGDPを決定づけるのは、
労働人口や労働時間よりも、
科学技術力を始めとする人々の知力となるからであり、
日本の知力が今まさに危ぶまれているからである。
 (中略)
しかしこれからの世界経済は、労働人数の頭数ではなく、
人々の頭脳レベルが一国のGDPや企業の収益を決定する
「頭脳資本主義」に転換していく。
作家で評論家の堺屋太一氏が、
1985年に『知価革命』で知恵が価値を持つ
「知価社会」の到来を予見しているが、
そのような社会が本格的に到来するというわけである。
それゆえ、少子高齢化ではなく科学技術力などの知力の衰退の方が、
経済に対するより大きなマイナス効果を持つようになる。

「頭脳資本主義」は、
もともと神戸大学の松田卓也名誉教授が作った用語であり、
経済思想の分野における「認知資本主義」や
ピーター・ドラッカーの「知識社会」とも類似した概念である。
しかし、いずれの言葉よりも語呂が良いのでここでは
「頭脳資本主義」を用いることにする。〉


、、、先ほどの「ワーク・オブ・ザ・ネーションズ」と、
まったく同じ話ですね。
「頭脳資本主義」とはつまり、
ライシュ氏の言う、「シンボルアナリスト」が、
社会の富(価値)の大部分を生み出してしまう、
という社会の在り方のことです。

このような時代における「国力」は、
「国民の頭脳」が決めます。

このとき「頭脳」とは何を指すのか?
「ワーク・オブ・ザ・ネーションズ」が指摘している、
4つの要素をご紹介します。
・抽象思考
・体系的思考
・実験思考
・共同作業

詳説はしませんが簡単に素描すると、
上の2つは「数学(=論理力)」であり、
3つ目つは「科学リテラシー」です。
最後は、上の3つが出来ているという前提のもと、
シナジーを生みだ出すコミュニケーション能力がある、
ということを意味します。

これらを磨く教育をしなければ、
日本の国力は今後も衰退していく一方でしょう。
来週「本のカフェ・ラテ」でご紹介予定(後編)の、
『AI VS 教科書が読めない子どもたち』では、
「では、日本の国力が衰退しないために、
 何が出来るのか?」
ということのヒントがつかめます(宣伝)。
(1,446文字)


▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

ご紹介した本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:『ふしぎなふしぎな子どもの物語』

コメント:

「物語」に興味があります。
「物語」が人生に何をもたらすのか?
これは「物語神学」が注目される昨今、
多分にキリスト教の話題でもあります。
この手の本で今までで一番面白かったのは、
『モモ』『はてしない物語』の作者、
ミヒャエル・エンデの『エンデのメモ箱』でした。



▼▼▼部門賞▼▼▼

ご紹介した書籍の中から、
陣内の独断と偏見で、
「○○賞」という形で、
特筆すべき本をピックアップします。
こちらも何かのご参考にしてくだされば幸いです。

▼「預言者賞」
『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ』

コメント:

90年代に書かれた本が、
約30年後の現代をも見通しているその射程の広さに驚きました。
多くの本に引用されるのも納得です。
「定本」認定ですね。

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