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陣内が先月観た映画 2019年2月

2019.07.18 Thursday

第081号   2019年3月5日配信号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■2 陣内が先月観た映画 2019年2月

月に一度のお楽しみ、
「陣内が先月観た映画」のコーナー。

タイトルそのまんまの企画です。
先月私がいろんなかたちで観た映画を、
一挙に紹介しちゃうというコーナー。

5本以上観た月だけの限定コーナーとなります。
先月はけっこう観たので、
けっこう紹介できます。

もともと映画を観るほうではありますが、
Amazonプライムのストリーミングで観るようになって、
観る本数が3倍ぐらいに増加しました。
移動中に観れるというのが大きいです。
電車の中やバスの中で本を読むのは少し疲れますが、
映画はノーストレスです。
長時間移動がある月なんかは、
往復の移動だけで4、5本観れたりします。

観るだけではもったいないので、
皆様に紹介しちゃおう、
というのがこのコーナー。

世界一小規模の映画賞、
「月間陣内アカデミー賞」もやります(笑)。

「おもしろそうだな」と思うやつがあったら、
それをレンタルして観てみる、とか、
あとこれを読んで、観たつもりになって、
誰かに知ったかぶりする(笑)などの
使い方をしていただければ、これ幸いです。

「陣内が先週読んだ本」の
140文字ブリーフィングが好評なので、
映画評論も140文字で試みます。

時短は正義(!)ですから笑。

「読んだ本」コーナーと同じで、
140文字はあくまで「努力目標」です。

*どうしても「ネタバレ」要素をいくらか含みますので、
絶対にネタバレしたくない作品がありましたら、
器用に読み飛ばしてくだされば幸いです。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

●ロッキー2

鑑賞した日:2019年2月1日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:シルベスター・スタローン
主演:シルベスター・スタローン
公開年・国:1979年(アメリカ)
リンク:
http://amzn.asia/d/bjDeCLP

▼140文字ブリーフィング:

去年「ロッキー」を見て、
衝撃の面白さだったんですよね。
「え?こんなに面白かったっけ?」って。
「ロッキー2」は、アポロ・クリードとの再戦です。

ロッキーがジョギングをしていたら子どもたちが着いてきて、
最後にフィラデルフィア美術館でガッツポーズ、
っていうシーンありますよね。

有名な。

▼参考画像:フィラデルフィア美術館のロッキー
https://goo.gl/c4f1VE

これって、ロッキー1ではなく、
ロッキー2なんですよね。
それを再認識しました。
映画の面白さは明らかに半減しています。
「3」はどうなんだ?
「復習」の旅は続きます。
分かっているのは「クリード」は最高に面白いということです。
(289文字)



●聖の青春

鑑賞した日:2019年2月2日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:森義隆
主演:松山ケンイチ
公開年・国:2016年(日本)
リンク:
http://amzn.asia/d/2idQ17r

▼140文字ブリーフィング:

29歳で腎不全で亡くなった天才旗手、
村山聖の生涯を描きます。
彼は羽生善治のライバルと目されており、
「東の羽生、西の村山」と言われていました。
腎疾患をかかえて全身がむくんでいる村山になりきるため、
20キロだかの増量をした松山ケンイチの役作りは凄いです。
ただ、映画としては「平均的」かな。
将棋自体の面白さを伝えることは、
この作品では完全に割愛されています。
もっと「この手がなんでそんなに凄いのか」
みたいなことを語る映画のほうが私は好みです。

映画見ながら、原作はきっと面白いんだろうなぁ、
と思っていますと、
先日弟と会ったときに彼が文庫本でこれを読んでいて、
「これ、面白いよ」と勧められました笑。
興味ある人は映画でなく小説をオススメします。
(294文字)



●ソロモンの偽証 前篇・事件

鑑賞した日:2019年2月2日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:成島出
主演:藤野涼子他
公開年・国:2015年(日本)
リンク:
http://amzn.asia/d/2RZEdX9

▼140文字ブリーフィング:

これは、宮部みゆきの原作小説を過去に読んでいました。
映画化されたのは知っていたけど、
原作の性質からすると「あんまり面白くはならないだろうな」
という予感があったのでスルーしてました。
しかし、YouTubeでラジオ代わりに聞いている番組で、
岡田斗司夫が絶賛していて興味を持ちました。

じっさい、面白かったです。
少なくとも前篇は。

主演の藤野涼子は、
オーディションで選ばれ、役名がそのまま芸名になった、
というこの映画デビューの子役。
あと、「まえだまえだ」という兄弟漫才コンビの、
前田君の演技も素晴らしいです。
小説と同じぐらい面白かったです。

劇中で90年代初期に中学生だった主人公たちは、
ちょうど私と同じ年代なので、
当時の時代的な空気感みたいなものも追体験できて、
けっこう拾い物の映画でした。
(340文字)



●ソロモンの偽証 後篇・裁判

鑑賞した日:2019年2月11日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:成島出
主演:藤野涼子他
公開年・国:2015年(日本)
リンク:
http://amzn.asia/d/7smGIs2

▼140文字ブリーフィング:

問題の後篇ですね。
中学校で起きた「自殺」事件。
警察は自殺として処理したが、
本当に自殺だったのか、ということを、
「校内裁判」で明らかにしよう、
と死んだ生徒の同級生たちが立ちあがる、、、
というのが物語の骨子です。
サブタイトルの通り、
前篇は事件が転回し、後篇は学校裁判が行われます。

結論から言いますと、
いまいち面白くなかったですね。
原因は「失速」ですね。

構成は原作に忠実なのですが、
裁判を1日目、2日目、3日目、
と言う風にトピック分けすることで、
物語のダイナミズムが失われている感じがしました。
ただ、藤野涼子役の新人女優は素晴らしかったです。
(268文字)



●ベイビー・ドライバー

鑑賞した日:2019年2月2日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(399円)

監督:エドガー・ライト
主演:アンセル・エルゴート
公開年・国:2017年(アメリカ)
リンク:
http://amzn.asia/d/4w7yA8X

▼140文字ブリーフィング:

これは休みの日に大画面で見ました。
町山智宏さんが書籍で紹介していて興味を持ち。
2017年、2年前の映画ですが、
案外この映画、後々重要な作品になるかも、と直観しました。

というのもこの作品、
「いままでに一回も見たことのない手法」で撮られているからです。
それがまた、めちゃくちゃカッコいい。
きっとこの先10年ぐらい、
これを真似した映画というのが量産されるのでは?
と思うほど。

そういう意味でこの映画は、
タランティーノの「パルプ・フィクション」とか
スコセッシの「グッド・フェローズ」とかと並び、
新しい映像技法の震源地として語られる可能性がある。

どう新しいか?

端的に言うと「ミュージカル」なんですよ、この映画。
でも、ミュージカルっぽくない。
詳しくは見ていただくしかないのですが、
この映画においてすべての「音」は、
背景の音楽(あらゆるジャンルの名曲)とシンクロして、
ビートを刻んでいるのです。
銃撃戦シーンならば銃声が、
カーチェイスシーンならば車がぶつかる音が、
歩くシーンなら足音が、
誰かが何かを説明するシーンならその台詞が、
すべてリズムを刻んでいて、それが音楽と同期している。

見ていただければ分かりますが、
それが「脳内快楽物質」を放出させるのです。
モルヒネ的中毒性がある。
めちゃくちゃテンポが良い上手い漫才を見ていて、
「もはやこれは音楽なのでは?」
みたいな「ゾーン」に入るときあるじゃないですか?
たとえばブラマヨのM-1優勝のときのネタとか、
ジャルジャルのリズムネタっぽいネタとかですね。
あのときと同じ気持ちよさです。

この映画の凄いのは、その撮影技法のイノベーションだけでなく、
それがストーリー的必然も孕んでいるということです。
主人公の「ベイビー」は、銀行強盗の逃がし屋をしています。
彼は過去に交通事故で両親を失ったトラウマのため耳鳴りがなりやまず、
24時間音楽を聴くことで音楽でそれを消しています。

なので、「音楽を聴かないと人性を生きられない」
という主人公が抱える困難と、
アクションや会話シーンのリズムがシンクロする、
という技法上の必然が絡み合って、
非常に完成度の高い仕上がりになっている。
久しぶりに映画で「やられた」と思いました。

、、、私はカーチェイスシーンが大嫌いだと、
メルマガで何度も公言していますが、
この映画に関しては例外です。
この映画における銃撃やカーチェイスは、
ただの「お約束的な記号」としてではなく、
それをやるストーリー上、および音楽上の、
「必然」があるからです。
(1,026文字)



●リンカーン

鑑賞した日:2019年2月9日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(100円)

監督:スティーブン・スピルバーグ
主演:ダニエル・デイ・ルイス、トミー・リー・ジョーンズ他
公開年・国:2013年(アメリカ)
リンク:
https://goo.gl/1JPKGM

▼140文字ブリーフィング:

ずっと観たかったんですよね、これ。
2年前の「年間読んだ本ランキング」の、
第一位は、ジョシュア・ウルフ・シェンクという人が書いた、
『リンカーン うつ病を糧に偉大さを鍛え上げた大統領』でした。
本のカフェ・ラテ形式で紹介しており、
アーカイブブログもアップロードされていますので、
詳しくはそちらをご参照ください。

この本はかなりマイナーかつ分厚く高価なため、
普段本を読まない人にとっては「三重苦」と言いますか、
読まない理由がありすぎる本です。

しかし、何人の人から、
私のメルマガを読んだあとに買って読んだ、
という声をいただき、
別に出版関係者でもないのに嬉しくなりました。

それほどに思い入れの強い本です。
この本を読んだことで私は、
イエス以外の歴史上の人物でもっとも尊敬する人が、
マハトマ・ガンジーからアブラハム・リンカーンに変わったぐらいですから。

スピルバーグという監督は、
何か映画を撮るとき、
決してそれとは言わずに、
この世界の現実に対してメッセージを発しています。
現代の「分断のアメリカ」において、
「リンカーンを語る」ということは、
非常に重要だというのが分かります。

「Divided States of America」をもう一度、
「United States of America」にしなければならない。

そのカギを握るのが、
リンカーンの行動や思想なのではないか、
というのがスピルバーグの伝えたかったことなのではないか、
というのが私の解釈です。

じっさい、この映画には、
「南北戦争」の戦争シーンは、
ほぼまったく、出てきません。
そうではなく、アメリカ合衆国憲法修正第13条という法案を、
リンカーンが議会や有力者にあらゆる根回しをして、
「是が非でも通す」という、「政治劇」なのです。

ちなみに、リンカーンが通した「修正十三条」は以下のとおりです。

第1節 
奴隷および本人の意に反する労役は、
犯罪に対する刑罰として当事者が適法に宣告を受けた場合を除き、
合衆国内あるいはその管轄に属するいずれの地にも存在してはならない。

第2節 
議会は、適当な法律の制定によって本条の規定を施行する機能を有する。


、、、つまり、奴隷制の廃止ですね。
私もこの映画で改めて気づいたぐらいなのですが、
当時はリンカーンら共和党が奴隷制撤廃を、
民主党が奴隷制継続を主張していました。
今のスタンダードでいうと逆だと思うでしょ?

下院で修正13条が通過するには、
反対している民主党から20人の賛成を取り付けなければならなりませんでした。
「世界で最も純粋な男」=リンカーンが、
世界で最も狡猾な政略を使い、
「和平と法案の二重工作」まで行って奴隷制撤廃を達成するのです。

急進派のスティーブンス議員(トミー・リー・ジョーンズ)に、
リンカーンが語った言葉が印象的でした。
「コンパスは常に真北を指してくれる。
しかし、山があり谷があり川がある。
直進するだけならきっと谷に落ちてしまうだろう。
直進しか知らないなら真北を知る意味はない。」
急進派のスティーブンス議員は「人種にかかわらず平等」と、
議会で主張すると考えられていましたが、
これを主張すると共和党の穏健派の賛成が取り付けられません。

スティーブンス議員はリンカーンに影響され、
自分の考えを曲げて、「法の下に平等」というにとどめました。
妥協に妥協を重ねるのが政治だ、というのがよく分かります。
政治家を尊敬できるようになる数少ない映画のひとつです。
民主政治というのは妥協の産物です。
理想と妥協を天秤にかけ、
ギリギリのラインで譲れない一線を通す、
という信念の人が良い政治家なのですが、
現代世界を見渡したとき、
そういう政治家はほとんど見当たりません。
(1,501文字)



●哀しき獣

鑑賞した日:2019年2月3日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:ナ・ホンジン
主演:ハ・ジョンウ
公開年・国:2012年(韓国)
リンク:
http://amzn.asia/d/6AIkc61

▼140文字ブリーフィング:

去年ナ・ホンジン監督の「コクソン」という映画を観て、
めちゃくちゃ面白かったので、
同監督のこちらの映画を観ました。
「コクソン」のときに解説しましたが、
ナ・ホンジン監督は神学校に行って、
真剣にキリスト教聖職者になることを考えたぐらい、
キリスト教に精通しています。
彼は宗教界ではなく映画界で、
「神学する」ことを選んだ。
そういう監督です。

この映画の主人公は、
中国と北朝鮮の国境付近に住む、「朝鮮族」です。
私もまったく無知だったのですが、
彼らは民族としては朝鮮人ですが、
国籍としては中国人です。
彼らは虐げられた生活を強いられているので、
ときどき韓国に逃亡します。
韓国の人は街で「朝鮮族」を見かけることもあるのですが、
「苦しんでいる同胞」という扱いで、
密告する人は少なく、施しをしたりもします。

こういった「悲しい文脈」は、
分断も被支配も経験していない日本人には、
本当に理解するのが難しい。

「コクソン」ほど面白くはありませんでしたが、
韓国映画の役者の「顔力」は相変わらず凄いです。
あと、「ジャンプカット」で状況を説明する手際が、
とても良い監督だと再確認しました。
北野武監督も言っていますが、
多くの映画は「説明しすぎ」なんですよね。
主人公がスーツに着替えて人を殺してその場を後にする。
これを全部のプロセスを撮ると「ダルい」わけです。

主人公がスーツに着替える。
次のカットで主人公は道を歩いていて、
その後ろで人が死んでいる。
これでいいわけです。
「説明しなさすぎ」になって観客を置いてけぼりにせず、
「説明しすぎ」の冗長さをなくす。
この線引きが上手い監督の映画はそれだけで観ていて気持ちよいです。
(686文字)



●アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

鑑賞した日:2019年2月6日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:ギャヴィン・フッド
主演:ヘレン・ミレン
公開年・国:2015年(イギリス)
リンク:
http://amzn.asia/d/1QGwR1s

▼140文字ブリーフィング:

この映画はヤバかったです。
もう「観てください」としか言いようがないですね。
現代の戦争が「どうなってるか」よく分かります。
つまり、ドローンと無人爆撃機の組み合わせによって、
あたかもゲームをするように、
テロリストを「消去」できるようになった米軍と英国軍は、
現代どんな「戦争」を、中東やアフリカでしているのか?
バラエティ報道番組を1万時間観るよりも、
この映画を1本観ることをオススメします。

「ゲームのような戦争」に、痛みはないのか?
いや、痛みはあります。
それも、壮絶で屈折した痛みが。

、、、ここからは好例のネタバレ解説です。


▼▼▼ネタバレ注意▼▼▼


▼▼▼ネタバレ注意▼▼▼


▼▼▼ネタバレ注意▼▼▼


まず、この映画、アイキュロスという人の、
以下の言葉の引用で始まります。

「戦争の最初の犠牲者は、真実である」


、、、この意味が、最後まで観ると、
よく分かるつくりになっている。
あとこの映画の構成上の凄いところは、
約90分の出来事を、
約90分の映画に撮っているというところです。
つまり、リアルタイムドキュメンタリーになっている。
「警察24時」みたいな番組とほぼ同じ作りで、
実際の事件を鑑賞者は「追体験」します。

正直私はこの映画を観るまで、
「ドローン戦の現実がここまで来ていた」とは、
純粋に知りませんでした。

ISなどのテロ組織の最重要人物を「消す」ことが、
米軍のミッションです。
そのへんのスパイ活動については、
「ゼロ・ダーク・サーティ」という、
パキスタンでのビンラディン殺害において、
重要な役割を果たした女性捜査官の実話映画が詳しい。

しかし、ドローン戦についてはこの映画がもっとも良く描いている。
まず、カナブン型の偵察ドローンというのが出てきます。
どこからどう見てもカナブンにしか見えない。
しかしそれは「カメラ」であり、
テロリストが打ち合わせをしている家にまで入ることが出来る。
それを英国と米国の2箇所で、
軍の上層部は観ている。

場所が特定できたら次は爆撃です。
それは無人爆撃がします。
この爆撃機は人工衛星からの、
「人の顔の表情まで見える映像」により、
誤差10センチぐらいで爆撃し、
家をテロリストごと吹き飛ばすことが出来る。
その無人爆撃機を「操縦」するのは、
アメリカのネバダ州にある米軍基地に、
「シフト制勤務」する、
学生ローン免除目的の20代の「新米社会人」二人です。

めでたしめでたし。

、、、ではないのです。

ここには重大な倫理的問題があります。
この家の塀のそばには、
「パンを売る少女」がいます。
もし家を爆撃すれば、
何の罪もない少女は9割の確率で死にます。

しかし今このテロリストを爆撃しなければ、
彼らは実行犯となりショッピングモールで、
数百人の犠牲者が出ることになる(可能性が高い)。

「トロッコ問題」というのがあります。
マイケル・サンデル教授によって有名になりました。
それはこういうものです。
以下に紹介するのは脳科学者の、
マイケル・ガザニカさんの考えたバージョンです。

問題1:
トロッコが5人の作業員に向かって暴走している。
このままだと5人は死ぬ運命にある。
彼らを助ける唯一の方法は、
スイッチを押してポイントを切り替え、
トロッコの進路を変えることだ。
だがスイッチを押すと、
5人は助かるが別のひとりが犠牲になる。
この人を犠牲にしても5人を救うべきだろうか?

問題2:
今度もトロッコが暴走し、作業員5人の命は風前の灯だ。
あなたはトロッコと5人の間で線路上に渡された橋の上に立ち、
隣には見ず知らずの太った人がいる。
その人を線路に突き落とせばトロッコは止まる。
その人は死ぬけれど、5人の命は助かる。
さて、あなたはその見知らぬ人を線路に落として5人を助けるべきだろうか?


、、、二つの問題は客観的には「等価」です。
「5人を救うために1人を犠牲にするのは正しいのか?」

、、、しかし倫理的・主観的に、
あるいは脳科学的には「等価」ではありません。
じっさい、大多数の人は問題1にイエスと答えるが、
大多数の人は問題2にはノーと答えるのです。
二つのシナリオの人数は同じなのに、答えは違ってしまいます。

なぜか?

問題2のシナリオの場合、
あなたは「殺人」に直接加担するからです。

話しを映画に戻しましょう。
虫型ドローンと人工衛星からの映像を通して、
「神の目(アイ・イン・ザ・スカイ)」によって、
状況を観察している英米両軍の軍曹と、
ネバダ州の(誰も殺したことのない)若い兵士2人は、
問題2のシナリオに直面するのです。

ガザニカの思考実験の、「見ず知らずの太った人」が、
今は、「家の前でパンを売る少女」になっただけで、
じっさいに起きていることは同じです。

映画はどう転がるか?

「この少女が死ぬ確率」をめぐって英国と米国の軍曹、
外務大臣、さらに首相まで巻き込んだ論争が起きます。
論争とはいえ時間をかけられません。
テロリストが家から出たらタイムオーバーなのです。
どうしてもテロリストを除去したい英国の軍人は担当者に、
「爆心地をあと1メートルずらすことで、
 テロリストたちは確実に殺した上で、
 少女の致死率を60%以下に下げられないか?」
と交渉します。
英国首相と米国の国務長官は、
「爆撃の指令」を与える権限を持っていますが、
最後まで決断を先送りします。
少女を助けたいからでも、
テロリスト除去を遅らせたいからでもありません。

支持率が気になるからです。
もし爆撃によって何の罪もない一般市民、
しかも純真な少女が死んだ、
ということがマスコミの知るところとなり、
それが一般市民に知れ渡ったら?
それこそ「スノーデン事件」や、
ベトナム戦争のときの米軍の蛮行報道のように、
一気に国内は反戦ムードが高まり、
戦争を推進し爆撃を許可した政治家は、
次の選挙で当選できません。

政府の法務担当者はそれが一番気になりますから、
「少女がここを去るか、
 少女の致死率が0%に近づかない限り、
 爆撃をすることに反対だ」と主張します。

どうしてもテロリストを排除したい軍人、
どうしても責任をとりたくない政治家、
どうしても政府に倫理的ミスを犯させたくない倫理委員、
そしてその間で、
「自分の手で太った男をトロッコのレールに落とすかどうか」
の最終判断を自分以外の誰かに委ねる以外ない、
つい最近まで大学生だったネバダ州の若い二人の「操縦士」。

現場でドローンを操縦する、
米軍に雇われた現地のケニア人は、
指令を受けて少女のパンをすべて買い取ろうとしますが、
地区中にちりばめられたISの諜報員に見つかり、
その企ては失敗します。

「どちらを殺すか」というこの決断は、
この若い兵士が、この後どんな心の傷を抱えるかを考えれば分かるように、
人間にはあまりに「ハード」すぎます。
実は今、これをAIに任せようとしている、
という動きがあります。

爆撃するかどうかは、人間ではなくAIに判断させよう。

これで一件落着でしょうか?

違います。

それは考えが甘すぎる。

そうすると、今度はそのAIをプログラムする人間が、
「トロッコのレールの前の太った男を突き落とす選択をする人」
になります。
私たちはこの「ハードな選択」から逃れることができません。

どこまでいっても、
戦争というのは人間が人間を殺す行為なのです。

ここでアイキュロスの最初の引用が思い出されます。
「戦争の最初の犠牲者は、真実である」

この映画を見終わったとき、
つまり90分の爆撃作戦を終えたとき、
作戦本部長も、英米両軍の軍曹も、
米国国務長官も、英国首相も、
2人のネバダ州の新米兵士も、
現地で雇われたドローン操縦者も
そして鑑賞者も、
「まるで全部の生気が奪われたように」、
身体からエネルギーが失われ、
ぐったりします。

誰も幸せではない。
そして、心がダメージを受けます。

、、、それはなぜか?


いたいけな少女が死んでしまったからではありません。
もちろんそれもある。
しかし、もっと大きな無力感は、
「真実(あるいはその一部)が、
 『大義』によって傷ついた」
のがわかるからです。

人間は、真実が傷つくとき、
自分も傷つくのです。

なぜか?

「この世が生きるに値する場所である」
という確信が傷つくからです。

映画の最後に英国軍の上層部が、
英国の作戦会議本部で、
「われわれがクッキーとコーヒーと共に観たこの戦場は、、、」
と語ります。

彼はこれまでに4度、
自爆テロの現場処理に立ち会い、
転がっている数百の死体を目にしたことのある男です。

「誰も、われわれ軍人に対して、
失ったもの(少女の命)に葛藤していないなどと言えない」と。

その言葉は、コーヒーとクッキーのかわりに、
コーラとポップコーンを手に「世界一安全な場所=映画館」で、
「戦場を観賞」する映画鑑賞者に矢印が戻ってくる作りになっている。

監督はこう言いたいのです。
「この映画を見終わったあなたたちは、
 きっと人権活動家よろしく、
 『現代の戦争の悲惨さ、残酷さ、不正義さ』を叫ぶだろう。
 『いたいけな少女』の命を奪った、
 英米両軍を責めるだろう。
 事の発端となったブッシュ大統領にその非難を向けるかもしれない。
 しかし、忘れてはいけない。
 あなたちは、神経をすり減らすようにして、
 この作戦を『世界一安全な戦場』から見届けた軍人よりも、
 さらに安全な場所=映画館や自宅のカウチにいて、
 ポップコーンとコーラを口に入れている。
 あなたたちに果たして、
 軍人たちに何か言えることがあるだろうか?」と。

『世界一安全な戦場』は、
市民が望んだものです。
それを推進するアメリカ政府を、
選挙という形で支援しているのも、
徴兵制を拒否し、志願制にすることで、
学生ローンを払えない貧困層を過酷な戦場に送り続けているのも、
自分だけは火の粉すら浴びたくないと思っているのも、
私たち市民一人ひとりです。

自分だけはまったく手を汚さず、
「テロのない世界」を望み、
それを担保するために自分の代わりに手を汚す、
戦争の遂行者を非難するのは、
あまりにも虫が良すぎるのではないですか?
というのが監督の言いたいことです。

「ぐうの音も出ない」
とはこのことです。

、、、だから映画を観ないでいい、
とは思いません。
だからこそ、この映画は絶対観た方が良い、
と私は思います。
ギリギリの選択をする兵士の神経をすり減り方を、
たとえバーチャルな体験としてであれ、
追体験したかどうかは、
私たちが次の戦争を始めるかどうかを市民として、
「一票」によって決める祭の、
「良心の差動装置」になると考えるからです。
(4,193文字)



●インターステラ―

鑑賞した日:2019年2月7日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:クリストファー・ノーラン
主演:マーク・マコノヒー、アン・ハサウェイ
公開年・国:2014年(アメリカ)
リンク:
http://amzn.asia/d/1lEniqG

▼140文字ブリーフィング:

クリストファー・ノーラン監督は好きなんですよね。
『ダーク・ナイト』で鮮烈メジャーデビューし、
『インセプション』という大作を成功させました。
『ダンケルク』ではまったく新しい手法で、
有名な第二次大戦のドイツ上陸作戦を新鮮に描いて見せた。

、、、で、これですよ。

大絶賛するレビューも多くて期待しましたが、
正直な話し、私は「んんーーー?」でしたね。

この映画は完全に、
クリストファー・ノーランが考える、
「2001年宇宙の旅」なんですよね。
キューブリックの「2001年・・」に、
「モノリス」という墓石みたいのが出てきますが、
この映画に登場するロボットはまさに「そのもの」です。
露骨なオマージュですね。

映像表現とかは凄いと思うんですが、
あんまり乗れなかったんですよねぇ。

五次元空間、アインシュタイン効果、
未来から現在への人間からのメッセージなど、
「メッセージ」「コンタクト」「オデッセイ」「ゼロ・グラビティ」
など、宇宙がらみの名作映画を想起させる要素が多いのですが、
あくまでストーリーと「何を見せたいか」が大事だと思うんですよ。
その意味でこの映画は何がしたいのかよく分からなかった。

一番の問題は物理学の「時空表現」が、
あまりにご都合主義なところです。
めちゃくちゃリアルなものを撮ろうとしているのに、
タイムトラベル表現が「ドラえもん」レベルなんですよね。
なので「フィクションライン」がどこに設定されているのか、
いまいちよく分からない。

先ほど上げた4作品は全部、
フィクションラインに整合性がある。
だから面白いんですよねぇ。
ちょっとノーラン監督の「中二病」が発動した感じで、
私は乗れませんでしたね。
凡庸な映画でした。

私の映画レビューがいつも自分と逆、
という人は絶対に面白いはずです笑。
その人は観ましょう笑。
(736文字)



●レザボア・ドッグス

鑑賞した日:2019年2月9日
鑑賞した方法:Amazonでレンタル(199円)

監督:クエンティン・タランティーノ
主演:クエンティン・タランティーノ他
公開年・国:1992年
リンク:
http://amzn.asia/d/iRrbp9o

▼140文字ブリーフィング:

友人とタランティーノの話をして、
突如観たくなりました。
『パルプ・フィクション』のほうがエンターテイメント性は高いけれど、
その元となるアイディアはすべてここに詰まってるんですよね。
やはりこの映画の影響力は凄い、
と思いましたね。
タランティーノ以前の映画って、
「劇中のすべてのセリフはストーリーと関係ある」
という「コード(約束事)」があったのです。

タランティーノはそれを破り、
「ストーリーと関係のない雑談」を、
長尺でぶちこむ。
しかもそれがクールで、
なおかつメタレベルではストーリーを補強する、
という、誰もしたことのない技を編み出したのです。

オープニングの全員ダークスーツを来て、
スローモーションシーンで歩くシーンは、
その後の映画作家が「みんな真似した」ほどクールでした。
90年代以降の映画を語る上で外せないマスターピースですね。

先週テレビプロデューサーの藤井健太郎氏の本で解説したとおり、
タランティーノの作品というのは、
あらゆるシーンがあらゆる映画からのオマージュ(パクリ)であり、
サンプリングからなるヒップホップの手法を映画でやっている、
という点において、過去にいたあらゆる映画監督と、
そもそも作り方からして違うのです。
彼がなぜそれを出来たか?
それは彼が映画業界のプロパーなキャリアではなく、
「オタク」出身者だからです。
「オタク万歳!」ですね。
(570文字)



●クワイエット・プレイス

鑑賞した日:2019年2月9日
鑑賞した方法:Amazonビデオで有料レンタル(399円)

監督:ジョン・クラシンスキー
主演:エミリ・ブラント、ジョン・クラシンスキー
公開年・国:2018年(アメリカ)
リンク:
http://amzn.asia/d/8oCDiGU

▼140文字ブリーフィング:

ごめんなさい。
もっと解説したいのだけど、
文字数が制限に近づいてきましたので、
ここからは駆け足で解説します。
最近、後半はいつもこうですね笑。

音を立てると「何か」が襲ってくるという設定が面白く、
その面白さだけで最後まで引っ張っていく映画です。
構造的には『ドント・ブリーズ』という2016年の映画と酷似しています。
設定の矛盾のなさ、物語の建て付けは、
『ドント・ブリーズ』のほうが優れていますが、
エンターテイメント性などではこちらも引けを取りません。

ちなみに、
監督(兼主演)のジョン・クラシンスキーと、
主演のエミリ・ブラントは本当の夫婦だそうです。
奥さんのほうが成功していて有名、
という「格差夫婦」だったのが、
この映画の大ヒットによって、
旦那さんの株が一気に上がったのだそう。
なかなか胸熱ですね。
(344文字)



●ペンタゴン・ペーパーズ

鑑賞した日:2019年2月11日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:スティーブン・スピルバーグ
主演:メリル・ストリープ、トム・ハンクス他
公開年・国:2018年(アメリカ)
リンク:
https://goo.gl/Tmxnmg

▼140文字ブリーフィング:

アメリカ政府が、
「このままではベトナム戦争に勝てない」
というレポートを無視し、
戦線を拡大していたという事実を、
ローカル紙のワシントンポスト紙が報じ、
これに全国紙も追随します。

政府はこれを握りつぶそうとし、
日本で言う「特定秘密保護法」違反だとして最高裁に訴えるが、
最高裁で政府は敗訴するのです。
よく似た映画に、
「スポットライト 世紀のスクープ」
という名作があります。
こちらの場合、スキャンダルは司祭による少年の性的虐待、
「圧力」はカトリック教会とバチカンでしたが。

この映画は監督のスピルバーグ本人が、
トランプ大統領就任を受けて、
「フェイクニュースに対する解毒剤」として撮った、
と自ら語っている映画です。

「大事なニュースというのは、
誰かがそれを圧力でつぶそうとするようなニュースだ」
と劇中のセリフに出てきますが、
それがスピルバーグがもっとも語りたかったことでしょう。
日本も「耳が痛い」話しです。
(394文字)



●みんなのいえ

鑑賞した日:2019年2月20日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:三谷幸喜
主演:田中直樹、田中邦衛、唐沢寿明
公開年・国:2001年(日本)
リンク:
https://goo.gl/reMScy

▼140文字ブリーフィング:

いまいち楽しめなかったですねー。
三谷幸喜映画、昔好きだったんだけどなぁ。
最近あまり刺さらないんですよね。
ただ、「田中邦衛を見るイメージビデオ」としては最高でした。
(81文字)



●ピクセル

鑑賞した日:2019年2月22日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:クリス・コロンブス
主演:アダム・サンドラ―
公開年・国:2015年(アメリカ)
リンク:
https://goo.gl/ecFgkj

▼140文字ブリーフィング:

ずっとばかばかしい映画です。
ずっとばかばかしい映画と分かっていても、
それでもばかばかしいです。
「無」の映画。
純粋な時間の浪費をしたい人には良いチョイスです笑。
(79文字)



●おのぼり物語

鑑賞した日:2019年2月26日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:毛利安孝
主演:井上芳雄
公開年・国:2010年(日本)
リンク:
https://goo.gl/L134U7

▼140文字ブリーフィング:

愛知県で友人が教えてくれて、
東京への帰りの新幹線で鑑賞しました。
私が住む街、東伏見を舞台にしたマンガ原作の映画です。
映画としては、特に語るべきことはありませんが笑、
近所の風景で映画を観られるうれしさがありました。
家から徒歩1分のところに雰囲気の良い喫茶店があるのですが、
そこも重要なシーンで何度も出てきたりして。
東伏見がさらに好きになりました。
(172文字)



▼▼▼月間陣内アカデミー賞▼▼▼

世界一小さな映画賞、
「月間陣内アカデミー賞」を、開催いたします。
主催者、プレゼンターは陣内がつとめます。

作品賞、主演(助演)俳優賞、そしてもうひとつ、
という感じで、ぬるーくやります。
皆さんの映画選考の参考にしていただければ幸いです。


▼作品賞
「アイ・イン・ザ・スカイ」

コメント:

解説の熱量で分かったかもしれませんが、
やはりこの映画は衝撃でしたね。
かなり「消耗する」映画ですが、
観て損はない、というか、
観た人はほとんど「みなが観るべきだ」と思うような、
そんな映画です。



▼主演(助演)男優賞
ダニエル・デイ・ルイス(リンカーン)

コメント:

本物みたいでした。
(本物観たことないけど笑)

リンカーンって痩せていて背が高くて(193cm)、
そして片足が悪かった、
ということが知られています。
そして小さな声でジョークを言う。
そういった史実に基づくリンカーン像が忠実に再現されていたのは、
もちろんスピルバーグの腕前なのですが、
役者の憑依の仕方もすごいものがありました。



▼主演(助演)女優賞
メリル・ストリープ(ペンタゴン・ペーパーズ)

コメント:

ワシントンポスト社が、
ベトナム戦争を終結させ、
後のウォーターゲート事件と、
ニクソン大統領の弾劾にまでつながる流れを作った、
というのはものすごい快挙だったのです。
首都とはいえ、一地方紙ですから。

それをやったときのポスト社の社長は、
ずっと専業主婦だったが、
夫で社主が病死したことをきっかけに、
「いちども社会で働いたことのない女性」だった、
ということが物語をさらに面白くします。
しかもそれが実話だというのが凄い。

この社長を演じたのがメリル・ストリープなのですが、
彼女の演技により「世間知らずだが純粋」
「この記事を出すと会社が潰れるかもしれないが、
 それでもやるべきことをやる」
という決断に多義性を生んでいます。



▼その他部門賞「撮影技法賞」
「ベイビー・ドライバー」

コメント:

これは完全にやられました。
めちゃくちゃクールです。
自分が映画監督だったら、
真似したくなりますもん笑。


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