カテゴリー

検索

便利な「検索」機能の使い方

上の検索バーに、「vol.○○」あるいは、「●年●月●日配信号」などと入力していただきますと、カテゴリ別だけでなく配信号ごとにお読みいただけます。

また、ブログ記事のアップロードは時系列で逐次していきますが、「カテゴリ別」表示をしますと、「Q&Aコーナー」だけを読む、あるいは「先月観た映画」のコーナーだけを読む、などの読み方が可能です。

スマートフォン

この他の活動媒体

●9年間続くブログです。↓
陣内俊 Prayer Letter ONLINE

●支援者の方々への紙媒体の活動報告のPDF版はこちらです↓
「陣内俊Prayer Letter」 PDF版

陣内が先週観た映画 2019年5月 『ヘレディタリー 継承』他

2019.11.05 Tuesday

第094号   2019年6月4日配信号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■2 陣内が先月観た映画 2019年5月

月に一度のお楽しみ、
「陣内が先月観た映画」のコーナー。

タイトルそのまんまの企画です。
先月私がいろんなかたちで観た映画を、
一挙に紹介しちゃうというコーナー。

5本以上観た月だけの限定コーナーとなります。
先月はけっこう観たので、
けっこう紹介できます。

もともと映画を観るほうではありますが、
Amazonプライムのストリーミングで観るようになって、
観る本数が3倍ぐらいに増加しました。
移動中に観れるというのが大きいです。
電車の中やバスの中で本を読むのは少し疲れますが、
映画はノーストレスです。
長時間移動がある月なんかは、
往復の移動だけで4、5本観れたりします。

観るだけではもったいないので、
皆様に紹介しちゃおう、
というのがこのコーナー。

世界一小規模の映画賞、
「月間陣内アカデミー賞」もやります(笑)。

「おもしろそうだな」と思うやつがあったら、
それをレンタルして観てみる、とか、
あとこれを読んで、観たつもりになって、
誰かに知ったかぶりする(笑)などの
使い方をしていただければ、これ幸いです。

「陣内が先週読んだ本」の
140文字ブリーフィングが好評なので、
映画評論も140文字で試みます。

時短は正義(!)ですから笑。

「読んだ本」コーナーと同じで、
140文字はあくまで「努力目標」です。

*どうしても「ネタバレ」要素をいくらか含みますので、
絶対にネタバレしたくない作品がありましたら、
器用に読み飛ばしてくだされば幸いです。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

●風の外側

鑑賞した日:2019年5月1日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:奥田瑛二
主演:安藤サクラ
公開年・国:2007年(日本)
リンク:
https://amzn.to/2PnQy90

▼140文字ブリーフィング:

ストーリーが散漫かつ強引で、
いまいち、乗れなかったですね。
奥田瑛二とその奥さんの安藤和津と、
娘の安藤サクラが出演していて、
奥田瑛二が監督しています。
「家族映画」ですね笑。
舞台の長崎の風景は良かったです。
(101文字)



●レディ・バード

鑑賞した日:2019年5月2日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:グレター・ガーウィグ
主演:アシーシャ・ローナン
公開年・国:2018年(アメリカ)
リンク:
https://amzn.to/2V4eu7A

▼140文字ブリーフィング:

思いの外面白かったです。
アメリカの女子校生の話しなのですが、
「ピアプレッシャー」の感じとか、
「親に反抗することでしか自我を確立できないもどかしさ」とか、
「本当は『クラスの二軍』だが、
イケてるグループと背伸びいて付き合う痛々しさ」など、
日本人にもよく分かる普遍的な、
「十代ならではの生乾き感」が上手に描かれていて面白かった。
主人公は「何もないサクラメント」を嫌い、
「何でもあるニューヨーク」に憧れます。
「所帯じみた母親」が嫌いで、
「何にでもなれる自分の無限の可能性」を信じます。
紙を赤く染め、親がつけた名前を嫌い、
自分のことを「レディ・バード」と呼んで、
と周囲に要求するイタさ加減。

日本だと、「自分は椎名林檎だ」と信じて疑わない、
凡庸な才能の女子校生や女子大生みたいな感じでしょうか。
ゴスロリとか着ちゃって、
下北沢とかに住んじゃう感じの。

周囲はしかし、
「化けの皮の下の凡庸さ」に気づいている。
周囲が気づいていることに、
自分だけが気づいていない。
そういう「痛々しさ」を主人公は持っています。

彼女はワガママを押し通しニューヨークに行くのですが、
そこで知るのはサクラメントの美しさと、
母親の偉大さでした、、、。

という、けっこう古典的な、
「母と娘の胸が熱くなる話し」に着地します。
だれが言ったか忘れましたが笑、
この映画のなかに登場する、
「お金は人生の成績表じゃない」というセリフは、
心に残っています。
(589文字)



●しゃぼん玉

鑑賞した日:2019年5月3日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:東伸児(あずま・しんじ)
主演:林遣都(はやし・けんと)、市原悦子
公開年・国:2017年(日本)
リンク:
https://amzn.to/2DE8qrn

▼140文字ブリーフィング:

今は亡き市原悦子の「遺作」となった映画です。
市原悦子の演技も凄いですが、
主役の林遣都が良かった。
「すごい俳優が出てきたな」と思いました。
ストーリーは、正直、私はいまいち乗れませんでした。
「教育テレビ的な良い話し」に落とすのですが、
いや、そんないい話じゃねぇよ、っというね。
「きれいごと」感がどうしても拭いきれない。

あとこの映画、
ずっとご飯がおいしそうな映画なんですよね。
映画の「フード理論」っていうのを言ってる人がいて、
映画のなかで「ご飯をおいしそうに食べる人」が出てきたら、
その人は善良な人だという「記号」なのだそうです。
あと、宮崎の風景が非常にきれいな映画でもあります。
(287文字)



●ナイト・アンド・デイ

鑑賞した日:2019年5月6日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:ジェームズ・マンゴールド
主演:トム・クルーズ、キャメロン・ディアス
公開年・国:2010年(アメリカ)
リンク:
https://amzn.to/2IP8sB6

▼140文字ブリーフィング:

公開当時評判の良い映画だったと記憶していたので見ました。
たしかに「ハリウッド的傑作」かもしれないが、
私はまったく面白くなかったです笑。
「陣内の映画評がいつも不満」なひとは、
絶対に面白いと思うだろう作品です笑。
(104文字)



●君の膵臓をたべたい

鑑賞した日:2019年5月7日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:月川翔
主演:浜辺美波、北村匠海
公開年・国:2018年(日本)
リンク:
https://amzn.to/2V8WkRW

▼140文字ブリーフィング:

実は原作小説をKindleで買ってて、
インドにいるときに読了しました。
近くレビューします。

で、その映画化ですが、
Amazonの評価が異常に高いので興味を持って見ました。

自分の感覚を疑いたくなるぐらい、
私はまったく面白くなかったです(爆死)。
こういう「世間と自分の評価が逆」が続くと、
自分の方がおかしいのでは?
と思えてきます。
実際おかしいのでしょう笑。

でも、もう一度言いますが、
まったく面白くなかったです(即死)。

小説のほうがまだ良かった。
大事な「泣けるしかけ」みたいなのが、
小説にはあります。
(私は泣きませんでしたが)。

それが映画では大胆にカットされていて、
「そここそが小説のキモだろうがぁ!」
と、1ミリぐらい怒りました。
そもそも思い入れがないので、
怒りも小さいのだけど笑。

エンディングで流れる、
ミスチルの「himawari」だけは良いです。
映画のテーマと合っていて。
邦画のテーマ曲は今後、
全部ミスチルで良いんじゃないでしょうか(暴論)。
(417文字)



●ヘレディタリー

鑑賞した日:2019年5月8日
鑑賞した方法:Amazonビデオで有料レンタル(500円)

監督:アリ・アリスター
主演:トニー・コレット
公開年・国:2018年(アメリカ)
リンク:
https://amzn.to/2Y0AQ6Z

▼140文字ブリーフィング:

私の私淑する映画評論家・ラッパーの宇多丸氏が、
2018年映画ランキングで、
この映画を1位にしていたので、
「そりゃ見るっしょ」ということで、
休日に観賞しました。

「ホラー映画の新たな金字塔が出来た」
と宇多丸氏は評価していましたがその評価は正統です。

度肝を抜かれましたね。
見終わった後に最悪な気分になります(褒め言葉)。

どことなくM・ナイト・シャマランの作品のような不条理性が漂います。
過去のホラー映画でやられてきた技法を備えつつ、
自分のものとして昇華し、それを一歩前に進めている感じ。
この映画の主人公(ヤバい娘を持つ母親)は、
ジオラマを作って売ることを職業にしています。
「ジオラマ作家」なのですが、
彼女はそれをすることによって、
「自分を癒そうとしている」ことが、
だんだんと分かってきます。
それは彼女の死んだ母の異常性と関係しているのですが、
まさにこれが「箱庭セラピー」です。

「ホラー映画」というのは、
「現実世界の比喩」です。
ホラー映画に登場する「この世ならぬもの」は、
この世の苦痛やスティグマや不条理やトラウマを、
比喩として具現化したものなのです。
ゾンビ映画のゾンビもそうです。
これは映画のシナリオを学んだ人なら、
常識的に知っていることだと、
町山智宏さんが言ってました(受け売り)。

、、、で、
実はこの映画自体が、
監督自身のセラピーでもある、
と監督が告白しているそうです。

具体的な内容までは言明していませんが、
アリスター監督は「自分の家族にまつわるある『トラウマ』」を、
この映画を撮影することで「昇華」させようとしたわけです。
この映画自体が「箱庭セラピーの箱庭」になっている。

そういう入れ子構造になっている作品です。

あんまり面白いんで2回見ました。
めちゃくちゃ良く出来た脚本です。
すべてのシーンに意味があり、
張り巡らされたすべての伏線が回収され、
最後は最低で最高のカタルシスを迎える。

素晴らしい映画でした。

まぁ、アマゾンレビューは低いんですけど笑。
やはり私は世間とソリが合わないみたいです。
(842文字)



●未来を花束にして

鑑賞した日:2019年5月13日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:サラ・ガヴロン
主演:キャリー・マリガン
公開年・国:2017年(イギリス)
リンク:
https://bre.is/_6RTqL4Xh

▼140文字ブリーフィング:

イギリスにおける、
女性の投票権獲得運動に身を投じた女性たちの話しです。
現代世界で女性に参政権がない社会といういうのは、
「まったくもって常軌を逸した社会」ですが、
比較的早かったイギリスにおいてすら、
女性参政権が認められたのは、
案外最近のことで、1918年です。
日本はちなみに1945年になってからです。

当時の(言うまでもなく全員が男性の)議会は、
女性の参政権や養育権に関する法律を握りつぶそうとします。
それに対して女性参政権を認めさせるための女性活動家たちは、
ロンドンの街で窓ガラスを割ったり、
(法律で禁止されていた!)集会・結社を作ったりして、
議会に対抗します。
(憲法に「集会・結社の自由」が書かれていることの重要性!)

映画を観れば分かりますが、
彼女らは今の定義で言うと「テロリスト」なんですよね。
現代世界では、
「テロを絶対悪」とする風潮がありますが、
実はそれって、
「ステイタス・クオ(現状の既得権)」を、
絶対肯定することであり、
「社会発展の可能性を紡ぐ閉塞」
を意味するこなのですが、
それに人々が気づいてすらいないことが問題です。

私はテロを肯定しません。
しかし、「テロ」というかたちでしか、
変わってこなかった世の中の現実があるのも事実です。
女性参政権もしかり、
黒人の権利もしかり、
インドの独立運動もしかり。

実は、みんな忘れてますが、
江戸幕府を倒した薩長の明治政府も、
あれって「無血クーデター」であり、
広義にはテロリズムですから。
松下村塾なんて、
テロリスト養成学校みたいなもんですから笑。
だから吉田松陰は獄中で処刑されたんでしょ。
彼の処刑は「老中殺害計画」がバレたことが理由ですから。

、、、その薩長政府の系譜に連なる現在の自民党が、
「テロを絶対に封じ込める」
と言っているのは、
「自らの出自を知っているがゆえの同族嫌悪」
と考えるのは穿ち過ぎでしょうか?
「泥棒の家の施錠が一番厳重だ」みたいな話しで。

何が言いたいかというと、
テロを擁護するとかそういう話しではなく、
「テロは絶対悪」みたいなかたちで、
公権力の監視機能を強めていく方に、
国民が諸手を挙げて賛成し、
それにだれひとり違和感を覚えていないとしたら、
それは「ヤバい」んじゃないの?
ということです。

この映画、面白かった。
最後のエンドロールは特にズルい。
胸が熱くなっちゃいます。
(887文字)



●シリアスマン

鑑賞した日:2019年5月18日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(199円)

監督:コーエン兄弟
主演:マイケル・スタールバーグ
公開年・国:2009年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/ggvAFuvGW

▼140文字ブリーフィング:

『ファーゴ』『ノー・カントリー』などで知られる、
コーエン兄弟の作品です。
コーエン兄弟ってユダヤ人なんですよね。
この作品はコーエン兄弟の自伝的作品だそうです。

だから、アメリカに存在するユダヤ人コミュニティのことが、
この映画を観ると分かります。
ヘブライ語の学校の通ったり、
近所もユダヤ人なので、ユダヤ人の会堂で、
13歳の「ユダヤの成人式」には、
近所中のひとが集まったり、、、。

この映画は「あるユダヤコミュニティに住むお父さん」が主人公です。
お父さんは大学教授で、「真面目な人」です。
この「真面目な人」が、次々と不幸に遭う、という筋書き。

妻が不倫していて「離婚してくれ」と言います。
娘には無視され毛嫌いされます。
息子は父のクレジットカードで、
父に無断でロックバンドのCDを買っています。
隣の家に住む保守派のプロテスタント信者は、
猟銃で彼を殺すのではないかと言うぐらい、
(さしたる理由もなく)彼のことを憎んでいます。
学生から「採点が不公平だ」と訴訟されます。
テニュア(終身在籍権)の審査は、
この訴訟によって危うくなります。

この映画は、
「ただただ正しい人が、
 ただただ苦しむ話し」です。

何か聞き覚えがありますね?

そうです。

『ヨブ記』がこの映画のテーマなのです。
コーエン兄弟は「現代のヨブ記」として、
この映画を作っています。

「お父さん=現代のヨブ」は、
高名なユダヤ教のラビに、
「なぜ私はこんなに苦しんでいるのか?」
を聞きに行きます。

ラビは3人出てきます。
そうです。
ヨブの3人の友人です。

このお父さんが大学で教えているのは、
「量子論」だというのがまた面白い。
彼は授業で「不確定性原理」とか、
「シュレーティンガーの猫」を教えています。

(ユダヤ人の!)アインシュタインは、
量子物理学者のニールス・ボーアを批判し、
「神はサイコロを振らない」と言いました。
論理整合的な世界を固く信じていたアインシュタインには、
「確率が支配する世界観」は受け入れがたかったのです。
しかし歴史は(このトピックに関しては)、
ボーアに軍配を上げました。

因果応報が成り立たず、「意味」が崩壊し、
その後ろの世界で何が起きているのかを誰も説明できない
「量子論的な世界」に私たちは生きています。
可愛そうなこのお父さんは高名なラビの元に行きますが、
ラビがお父さんにする「お話」は、
まったくもってナンセンスで、
意味をなしていません。

「いったいこの話しのどこに、
 何の教訓があるんだろう?」
と思うような例話をラビはお父さんに繰り返し聞かせます。
オチもなければ要点も分からない、
ただただ不可思議な話しをラビはお父さんに語ります。
「それで?」と当然彼はラビに聞きますが。
「これでこの話しは終わりだ」とラビは言うだけ。
そこから引き出せる教訓などありそうにない。
唯一メタメッセージがあるとしたら、
「世界に意味なんてない」という
ニヒリスティックな結論だけです。

「不合理なこの世界」で、
「ヨブ」となった主人公はいかに生きるべきか、
という問いがこの作品の主題です。
つまりこの可愛そうなお父さんは、
不条理な現代を生きる私たち一人ひとりのことでもあるのです。

お父さん(ヨブ)が会いに行く3人のラビを軸に、
物語が進んで行きますが、
最後のラビ「マーシャク師」が口にするのは、
1967年のヒット曲"Somebody to Love"(邦題『あなただけを』)の歌詞です。
そのメッセージは、要約すればこんな意味です。

「真実が偽りとわかり、
 すべての喜びが消えたときであっても、
 心を尽くして人を愛しなさい」。

また、この映画、ベースは悲劇なのですが、
どことなくコミカルで、
ところどころにユーモアがちりばめられています。
量子論的に不条理なこの世界で生き抜くための、
コーエン兄弟が導き出した暫定的な答えは、
「愛すること」と「ユーモア」なのです。

そうです。

ここでまた戻ってきます。
そういえば、ユダヤ人たちは過酷なその歴史のなかで、
「愛とユーモア」によって生き残ってきた民族でしたね。
(1,509文字)



●トゥルー・グリット

鑑賞した日:2019年5月20日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:コーエン兄弟
主演:ジェフ・ブリッジス、ジョシュ・ブローリン、マット・デイモン
公開年・国:2010年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/bqqnwwmDP

▼140文字ブリーフィング:

こちらもコーエン兄弟。
コーエン兄弟は最近のマイブームです。
重厚な西部劇で、面白かったです。
なんといっても、馬が美しい映画ですね。
タランティーノ監督の、
「ヘイトフル・エイト」にも、
ちょっと似た雰囲気があります。
(104文字)



●はじまりへの旅

鑑賞した日:2019年5月18日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:マット・ロス
主演:ヴィゴ・モーテンセン
公開年・国:2016年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/w5n-9emm6

▼140文字ブリーフィング:

原題は「Captain Fantastic」
邦題と似ても似つかぬタイトルですね。
「哲人王」として育てられた子どもたちと、
その父親のロードムービーです。
哲人王とはプラトンの概念なのですが、
その意味はこの映画を観ると分かります。

お父さんは元大学教授の、
ゴリゴリの無神論者で、
ハイパー知識人です。
6人(だったかな?)の子どもたちはみんな、
未就学年齢からプラトンの『国家』とか、
ニーチェの『ツァラトゥストラ』とか、
ヘーゲルとかカントとか読んでて、
アイビーリーグの学生よりも賢い知性を持ちます。

お父さんは言ってみたら、
「北の国から」の黒板五郎の最終進化形みたいな感じなので、
恐るべき知性だけでなく子どもたちは全員最低5カ国語を操り、
アスリート並みの肉体を持ち、
あらゆるサバイバル技術に長けています。

その家族が「お父さんと別居していた妻」の遺言に従って、
「お母さんを火葬に付すための旅」に旅立つという話し。
うつ病だったお母さんもまた、
お父さんと同じ「哲人王的な思想」を持ってるので、
火葬にして川に灰をまいてほしい、という遺言を残すのですが、
保守的なキリスト教家族のお母さんの親たち(祖父母)は、
絶対に土葬だし、絶対にキリスト教式で葬儀をする!
と言って両者は対立する、、、という話し。

お話も面白いですし、
音楽や映像や、
何と言っても自然の描写が素晴らしいです。
ただ、「一点だけこの家族にどうしても共感できない」
部分があるんですよね。
映画や小説を楽しむ上で、
必ずしも登場人物に共感する必要はありません。
よくレビューで「共感出来なかった」
といって低い点数を付ける人がいますが、
それはバカの所行というものです。
私がここで「共感できない」といったのは、
もうちょっと説明が必要で、
主人公たちは「最高に知性的」という設定になっていて、
その知性ゆえにアメリカのバカさ加減を見下すわけです。
そこまでは良い。
しかし、ある一線を超えるところで、
「もうそれって知性じゃないんじゃないの?」
ということになる。
ソクラテスやプラトンをあなたたちは崇拝しており、
アメリカ的キリスト教根本主義をバカにしている。
それは良い。
でも、あなたたちのその行動は、
ソクラテスやプラトンからすると、
「知性の真逆」なんじゃないの?
というツッコミが拭いきれないシーンがあるわけです。

監督は衒学的に様々な知性を、
主人公たちの口を通して観客に見せつけるが、
監督の「知性とは何か??」の定義に、
私はまったく同意できない。
そういう意味の「メタ的な共感できなさ」が、
この映画にはありました。

平たく言うと、監督は彼らを、
とんでもなく賢いものとして描きたいはずなのに、
その一点によって、
「こいつらさほど賢くないな」と思っちゃうわけです。

そこが一番大事なのに、、、、。

アキレス腱が弱いというか、詰めが甘いというか、、、。
もったいない映画でした。
テーマとか音楽とか映像とか、
その他の部分が凄く良かったので、
余計残念でした。
(750文字)



●22年目の告白 私が殺人犯です

鑑賞した日:2019年5月20日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:入江悠
主演:藤原竜也、伊藤英明
公開年・国:2017年(日本)
リンク:
https://bre.is/ZFe2bOe9k

▼140文字ブリーフィング:

演出が過剰かつ矛盾に満ちていて楽しめなかったです。
味付けが濃すぎるんですよねぇ。
最後の「銃を向ける」シーンは失笑ものです。
あんな行動はあり得ないです。
ガスのにおいに気づいている場所に、
警察官が飛び込むとかもあり得ないし。
それで「ドカン」とか。
警察はそんなにバカじゃないでしょ。
登場人物がいちいちバカすぎる。
邦画の悪いところが出た作品。
例によってAmazonレビューでの評価は高いです。
私の評価がいつも気にくわないという方は(以下省略)。
(160文字)



●ミスター・ガラス

鑑賞した日:2019年5月10日
鑑賞した方法:Amazonビデオで有料レンタル(500円)

監督:M・ナイト・シャマラン
主演:ブルース・ウィリス、サミュエル・L・ジャクソン、ジェームズ・マカヴォイ、アニャ・テイラー=ジョイ
公開年・国:2019年(米国)
リンク:
https://bre.is/Y-USImXdA

▼140文字ブリーフィング:

私はシャマラン監督の不条理感が好きな、
「シャマラニスト」ですので、
アンブレイカブル、スプリットの続編にして完結編である、
本作は見ないわけには行かないでしょう、
というこで休日に観賞。

面白かったです。

「人間を超えたものたち」を隠蔽しようとする組織と、
「すべてを解き放とうとする人々」の物語です。
その動力源は「虐待などのトラウマだ」というのも凄い。
「コインロッカー・ベイビーズ」という村上龍の作品があります。
コインロッカーに捨てられた2人の赤ん坊が、
世界を転覆する、という話しなのですが、
ちょっとそれに構図としては似ている。

あと、マーベルヒーローズの、
「エピソードゼロ」としても鑑賞可能。
そのポップ性みたいなものは、
真逆に振れているわけですが。
シャマランはサブカルの神になれる、
と思いました。
(343文字)



●ギフテッド

鑑賞した日:2019年5月25日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(セールで100円)

監督:マーク・ウェブ
主演:クリス・エヴァンス
公開年・国:2017年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/_y16TyciIa

▼140文字ブリーフィング:

自殺した天才数学者の母を持つ天才の女の子と、
その子を「普通に育てたい」と願う叔父(母の弟)の物語です。
母と叔父の母(女の子の祖母)が、
実は「毒親」だというストーリー展開になっていくあたりから、
かなり引き込まれます。
かなり面白かった低予算映画、
『500日のサマー』の監督だそうです。
子役の演技がすさまじく上手いのと、
「毒親」という日本にも多く見る現象を、
テーマとして選んでいるという意味で、
日本人が見ても、かなり「刺さる」のではないでしょうか。
(222文字)



●トランセンデンス

鑑賞した日:2019年5月23日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:ウォーリー・フィスター
主演:ジョニー・デップ
公開年・国:2014年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/2OfJg1lQr

▼140文字ブリーフィング:

脳のシナプスを全部、
コンピューターに投射することで究極のAIを作る、
という『SFとしてはありふれた』話しです。
でも、結構楽しめました。

主人公の科学者は死後もインターネットの中で生き続け、
世界を変革していきます。
水滴の中に量子コンピュータがあるので、
それが世界を究極の「モノのインターネットIOT」
にしていくというは発想として面白かった。
タイトルの「トランセンデンス」は、
人工知能の世界でいう、
「シンギュラリティ」の意味です。
(212文字)



▼▼▼月間陣内アカデミー賞▼▼▼

世界一小さな映画賞、
「月間陣内アカデミー賞」を、開催いたします。
主催者、プレゼンターは陣内がつとめます。

作品賞、主演(助演)俳優賞、そしてもうひとつ、
という感じで、ぬるーくやります。
皆さんの映画選考の参考にしていただければ幸いです。


▼作品賞
「ヘレディタリー」

コメント:

完全に圧倒されました。
多分だれも見ないでしょうけど笑。

ホラー、みんな好きじゃないよね笑。

ホラーを喜々として語れる人と、
心ゆくまで話し合いたい、
と思える作品でした。
なんせ、2回見ましたからね笑。


▼主演(助演)男優賞
対象者なし


▼主演(助演)女優賞
アシーシャ・ローナン(レディ・バード)

コメント:

クラスの「一軍」ではないのに、
一軍と付き合おうとする痛々しさ。
十代の「自我の首が据わってない感じ」
など、演技として非常に難しい「危うさ」バランスを、
絶妙なさじ加減で演じていました。
ほとんど他で見たことない女優さんですが、
脳裏に焼き付きました。


▼その他部門賞「不条理賞」
「シリアスマン」

コメント:

シャマランのミスター・ガラスも不条理ですが、
シリアスマンの不条理さにはかないません。
生活の「そこはかとない一貫性のなさ」
みたいなものが、現代という時代の、
残酷なまでに解釈を拒む感じを伝えていて良かった。
主人公の大学教授の授業のなかで、
「ハイゼンベルクの不確定性原理」とか、
「シュレーティンガーの猫」が出てきますが、
現代のヨブとしての主人公自身が、
量子の確立に生命を委ねる以外ない、
可愛そうなシュレーティンガーの猫に見えてきます。

この記事のトラックバックURL
トラックバック