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【Q】日本のお笑いを楽しむ方法

2019.12.30 Monday

第102号   2019年7月30日配信号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■2 Q&Aコーナー

皆さんからお寄せ頂いた質問にお答えするコーナーです。
日頃の悩み、疑問、今更誰かに聞けないギモン、、、、
質問の種類は問いません。お気兼ねなくご質問をお寄せください。
ご利用は下記に基づいてご利用いただけると幸いです。

【Q&Aについて】
▼全てのご質問にお答えすることはできません。予めご了承ください
▼いただいたご質問は、ブログ・FVIメディアルームに掲載される可能性があります
▼本名での投稿の場合は「ペンネーム:無し」となります
▼必ず下記フォームからご質問を送信ください

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

【Q&Aコーナー専用フォーム】

▼URL
https://www.secure-cloud.jp/sf/1484051839NyovBkYI

※大変お手数ですが一つの1メール1質問を原則とさせてください。
ご協力宜しく御願い致します。

※頂いたメールはすべて目を通しております。
陣内俊への要望やメルマガの感想、激励などももちろん大歓迎です!

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

・ペンネーム:匿名(男性)
・お住いの地域:東京都

Q.
いつも陣内さんのメルマガを楽しく読ませて頂いております。
陣内さんはお笑い好きといういうことですが、
日本のお笑いって、日本のある種の文化が濃縮されていて、
私は全然面白いと思えません。
暗黙の上下関係とか、内輪のノリで笑わせたり、
あとは、マイノリティというか、
ちょっと仲間外れっぽい人をディスって笑いを取るみたいな、
見方によってはいじめっぽくて・・・

これは単に私の好みなので、
別に日本のお笑い大好きな陣内さんを
非難しようとかいう意図はございません。
こんな私がお笑いを楽しむ方法はありますか?
見なければいいだけですか?


A.
ご質問ありがとうございます。
質問者さまのご質問の意図は、
すごーくよく分かります。

結論から言いますと、
仰るとおり、
「見なければいいだけ」
というのが答えになります。
見なくても何の損もありませんから笑。
逆に、見ても何の得もありません笑。

お笑いに、知的栄養素はゼロです。
カロリーのない食事と同じなので、
「味が嫌いなのだけど
 無理して食べなきゃいけないのかな?」
とか考える必要はまったくありません。

映画やマンガは逆に、
知的栄養素の塊と言えます。
書籍からは得られないタイプの、
密度の高い情報が映画やマンガには詰まっています。
映画やマンガを軽視していると、
教養のレベルがひとつ下がると私は思う。
薄っぺらくなるというか。
まぁ、最近めっきり、
マンガ読まなくなった私が言うのもなんですが。

では、実利的に無意味なお笑いを、
私はなぜ見続けているのか?
まぁ、楽しいからというのが答えになりますね。
実質的な栄養のないスナック菓子を、
なぜ食べ続けるのか?
好きだから、というのと同じです。

、、、で、
質問者様がおっしゃっているのは、
おそらく、
「このスナック菓子は身体に悪いのではないか」
みたいなことに近いと思うのですよね。

そうですねぇ。

どこから話しましょうか。

お笑いには、
「ベタ」と「シュール」があります。
「ベタ」は英語圏だと、
「ユーモア」あるいは単に「ファニー」です。
英語圏で「シュール」は、
ブラックユーモアとか、
ドライユーモアとか言われます。

ファニーがアメリカ的(『フルハウス』的)で、
ドライがヨーロッパ的、
(眉間にしわを寄せながら他者を強烈に皮肉るタイプ)、
という風に整理できます。

日本のベタは「くまだまさし的」と言いますか、
「吉本新喜劇的」と言いますか、
「志村けんのバカ殿的」と言いますか、
3歳から90歳までの誰もが笑う、
脊髄反射的な笑いのことを指します。

これらは言語の壁を越えて、
欧米でも多分「面白い」と認識されるでしょう。
面白いおじさんが面白いメイクをして、
「あだす?なんだチミは?ってか?」
っつって、面白い動きのダンスをして、
最後に「だっふんだ!!」っていうんですから笑。
まぁ、面白いですよ。
いわばこれって、
「ベロベロバア」なんですよね。

ところが、日本の「シュール」って、
欧米圏の「ドライユーモア」ともちょっと違うんですよね。
「ベタの反対」というのは同じなのですが、
ちょっと「反対の方向性が微妙に異なる」というか。

そして、
「シュール」の笑いの、
現在の日本のデファクトスタンダードを作ったのは、
間違いなく90年代のダウンタウンです。
これは大げさな話ではなく、
日本のお笑いは、
「ダウンタウン以前」と、
「ダウンタウン以後」に別れる。

『夢で逢えたら』
『ごっつええ感じ』
『ガキの使いやあらへんで』
などの番組群は、完全に日本の笑いを、
その概念の根底から変えてしまった。
つまり「ダウンタウン的シュール」という、
「Made in 尼崎」の笑いが、
笑いのスタンダードとなったのです。
これはトリクルダウン的に広がり、
いまや吉本興業だけでなく、
あらゆる事務所のお笑い芸人、
またテレビ番組制作者らも、
この「ダウンタウン的シュール」の路線を基本として、
番組作りをするしかなくなってきている。

志村けんのバカ殿様のような「ベタ」は、
90年代以降の「尼崎スタンダード」とは異質なので、
むしろ現代のお笑いシーンでは「マイナー」な存在です。

ここに倒錯がある。

本来シュールは「裏」なんですよね。
陰と陽ならば「陰」の存在です。
それが90年代の「ダウンタウンの衝撃」以降、
その後のお笑い芸人たちがそれに絶大な影響を受けた結果、
シュールがメジャーになり、
ベタがマイナーになった。
裏が表になり、陰が陽になったわけです。

質問者様はご存じないかもしれませんが、
ますだおかだの岡田さんだとか、
なかやまきんに君とか、
サバンナの八木さんといった芸人たちがいます。
この人たちはとにかく「スベる」。
空気とか関係なく、
自分のギャグをマンキン(全力)でやったりする。
シュールというルールの中で、
「ベタを演じる」ことにより、
「1周まわって面白い」という状態になっている。
業界では「裏笑い」と呼ばれます。
これは単なる「ベタ」とは違います。
彼らは構造的に一段階メタ的な部分で笑いを取っている。
非常にポストモダン的な芸人群なのです。

ちょっと専門的になってきたので、
質問に立ち返りましょう。

以上の理由により、
質問者様がおっしゃっている「日本のお笑い」は、
「ダウンタウン的シュール」を指すと考えて
間違いないでしょう。
「それ」が苦手な人がいるのは、
当然だと私は思います。

シュールな笑いがなぜ海外に伝わりづらいかというと、
それが高度に文脈に依存しているからです。
「刷り込み」があるから、
その裏切りで笑えるというわけです。
漫才でも多用される「あるあるネタ」とかは、
文脈の共有の「確認」ですし、
「ごっつええ感じ」のコントは、
基本的に「違和感のある日常」を、
笑いに変えるという構図になっています。

「ゴレンジャイ」ならば、
ヒーロー戦隊ものを、
微妙に「ずらす」ことによって、
悪役から怒られることで、
シュールな笑いを作っています。
「赤レンジャイ!」
「青レンジャイ!」
「赤レンジャイ!」
「赤レンジャイ!」
「青レンジャイ!」
「五人揃って、ゴレンジャイ!」
とやることで、
「いやいや、戦われへんわ、そんなん。
 お前ら打ち合わせしてきたんか?
 色かぶっとるがな。」
と、悪役(浜ちゃん)が説教する。
ヒーロー登場のシーンから、
いっきに「反省会」が始まる。
そういうシュールさですね。

「とかげのおっさん」ならば、
銀色の安そうな時計を腕に巻いて、
バーコード頭をした、
くたびれたおっさんの、
胴体が「とかげ」なのです。
おっさんの自意識は完全に、
「大阪のくたびれたおっさん」なのですが、
周囲からは「異形の化け物」なわけです。
公園でとかげのおっさんに出会う子ども(浜ちゃん)は、
「わー、おじさん面白いね!」といって、
とかげのおっさんと友情を育む。
それを見た大人=警察官(東野)は、
「きみ、なんやのん!?」
という、至極常識的な問いを発する。
一番根本的な問いなので、
とかげのおっさんはそれに答えられない。

このコントはもはや、
フランツ・カフカの小説「変身」の域に達しています。
いつかノーベル文学賞を獲るんじゃないでしょうか。

、、、まぁ、そんなわけで、
「ダウンタウン以降」の、
尼崎スタンダードのシュールな笑いというのは、
日常を切り取る角度を「ずらす」ことで生じる違和感を、
フックにして笑いを創出するというスタイルなわけです。

たぶん質問者様がおっしゃっているのは、
「ごっつええ感じ」とかのことではなく、
『ロンドンハーツ』とか、
『アメトーーク』とか、
そういった芸人同士でわちゃわちゃしながら、
笑いを生み出すスタイルのことを言ってると思うのですよね。
『ガキの使い』とかも一部そうですよね。

、、、で、
日常を「ずらす」笑いというのは、
どうしても「自己言及的」になります。
なので、先輩後輩の力学関係とか、
楽屋ネタ的なものとか、
そういった内輪のルールといいますか、
「疑似教室」みたいなものを作り、
そしてその中でそれぞれのキャラクターをテコにして、
みんなで笑いを作り上げていきます。

そうするとどうしても、
「いじり」の要素が入ってきたり、
(フィクションとは言え)「暴力」の要素が入ります。
そもそも「ツッコミ」という文脈で、
頭を叩く、とかっていうのって、
本当に日本だけらしいのですよね。
韓国の人から聞いたことがあるのは、
韓国で「頭を叩くこと」は笑いという記号ではないので、
見ている人は引いてしまうと言ってしました。
日本の漫才のルーツと言われている、
アメリカの「アボット&コステロ」の、
スタンドアップコメディスタイルでも、
「頭を叩く」という要素はありません。

あれは日本で独自進化した形態なのです。

、、、で、
その「いじり」と「暴力」が、
いわゆる学校でのいじめや、
スクールカースト的なマウンティングと、
よく似ているので、
一部の人は今の芸人たちの笑いを見て、
不快な気持ちになったりすると思うんですよね。

先ほど申し上げたように、
不快なものを敢えて見る理由はまったくありませんので、
耳をふさいでチャンネルを変えるのが一番だと思います。

ただ、芸人の「いじり」と「フィクション暴力」って、
「プロレス」だというのは、
知っておくだけで見方が変わることもあります。

私は完全に「ダウンタウン直撃世代」なので、
芸人たちがやっていることが「プロレス」
だということを、ある意味「教育」されて育ったのですよね。
なので、プロレスを安心して見られる。
ブレーンバスターを食らっている人も、
受け身を練習したプロだと知っている。
ラリアットは、うまく力を吸収するように、
倒れていることも知っている。
場外乱闘も、パイプ椅子で怪我しない叩き方、
叩かれ方を、彼らがいつも練習しているのを知っている。

そうすると彼らの試合に「興奮」できるわけです。
ミッキーマウスの中に人が入っていることを知っていても、
「夢の世界」に入り込めるのと同じです。

芸人の「いじり」も同じで、
たとえばそうですねぇ。
千原ジュニア(先輩)が、
前歯が欠けて滑舌の悪い三四郎の小宮を、
「いじっていた」としますよね。
あれは、「ブレーンバスター」なんですよね。
小宮も受け身を取れるし、
ジュニアも怪我させないやり方を知ってるから、
テレビカメラの前でああいうコミュニケーションができる。

「暴力」でいうと、
「山崎方正VSモリマン」のバトル、
っていうのが「ガキ使」にあるのですが、
モリマンが方正をごぼうでしばきまくります。
あれは「場外乱闘」なんですよね。
「方正が本当に、マジで痛がっている。
 そして実際痛い。」
という違いはありますが笑、
あれは方正とモリマンという、
お笑い界のハンセンとブロディがやってるから、
「成立」しているのです。

昔、私の母が、
父がテレビでボクシングを見たり、
私がプロレスを見たりするのを、
後ろから見て、いやーな顔をしていたのを思い出します。
「そんな暴力的で血なまぐさいものを見て。
 見ててもこっちが痛くなるだけじゃない。」
と母は思ってたと思うし、
じっさい母が父に言うのを聞いたことがあります。

きっとアメトーーク的な笑いを「受け付けない」か、
それとも楽しめるかという差は、
このあたりにあると思います。

なので、アメトーーク的なものを、
実際の人間関係で真似る、
っていうのは愚かだという図式も成り立ちます。
プロレス技を教室でやって大けがするヤツが、
年に2人ぐらいいたわけじゃないですか。
それと同じで、
芸人のいじりを真似たつもりで、
日常生活で同じ事をやると、
「面白くない」上に、
心理的な負傷を負うことになります。

このあたりって、
もうちょっと啓発したほうが良いと思うんですよね。
ダウンタウンチルドレンは常識として知ってても、
多分、日本国民の全員がそうではないので。
大食いタレントが大食いをするとき
「これはプロの業です。
 ぜったいに真似しないでください」
というテロップを出すのと同じように、
芸人たちが楽屋ネタで「いじりあって」いるとき、
「これは『プロレス』です。
 真似しないでください」
みたいに。

まぁ、それをやったときに、
見てる人は本当に「笑える」のかは疑問ですが。
プロレス中継で、
「これはプロの業です。
 じっさいには痛くありません」
ってうテロップが出ているようなものですから笑。
「興奮できるかい!!」
っていうね笑。

、、、長々と話しましたが、
私の見解は以上のようなことです。
加えて、私はお笑い芸人の「生き様」が好きなんですよね。
彼らの頭の良さ、したたかさ、純粋さ、優しさ、
そういったものに惹かれ続けてるんです。
又吉直樹「火花」を読むと、
彼らがどれぐらい真剣で、
彼らがどれぐらい純粋かが、
とてもよく分かります。

最後に質問者様のような方でも、
安心して笑えるであろう、
お笑いコンテンツをいくつかご紹介します。

1.探偵!ナイトスクープ
2.LIFE 人生に捧げるコント
3.吉本新喜劇

このあたりは、
「いじめっぽいいじり」もありませんし、
安心して笑える内容ばかりだと思います。
新喜劇の「すっちー」は本当に凄い。
めだか→辻本ときて、
彼が出てきたことで、
新喜劇は救われた感じがします。
彼がいればあと30年は大丈夫でしょう。

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