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2019年版・陣内が今年読んだ本ベスト10(7〜4位)

2020.04.27 Monday

第119号  2019年12月24日配信号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■2 2019年版・陣内が今年読んだ本ベスト10(7〜4位)
お待たせしました、年末特別企画です。
普段私は読んだ本に点数をつけたりランキングしません。
ランキングすることで切り捨てられる大切なものがあるからです。
なので、この企画は「年に一度だけ」の特別企画です。
前編は10位〜8位まで、
中編は7位〜4位まで、
後編はベスト3のカウントダウン形式で、
ご紹介していきます。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

●第7位 『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』

読了した日:2019年6月4日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:J・D・ヴァンス
出版年:2017年
出版社:光文社

リンク:
https://bre.is/rIZEL4RNJ

▼140文字ブリーフィング:

「トランプ現象とは何なのか?」について、
多くの識者・知識人・テレビコメンテーターが、
様々なことを述べ、書籍も多数出版されていますが、
そのなかの「最良の書」は本書だと思っています。

どういうことか?

トランプ現象の背景には、
アメリカの衰退・貧困問題があります。
世の中に氾濫する「トランプ論」は、
それらを「鳥の目」で把握しようとするものですが、
本書はそれを、「虫の目」であぶり出そうとする作品だからです。

経済学者のマクロな分析からは見えてこない現実が、
アメリカンドリームを壊死させていることが、
本書を読むとわかります。
いったい何が白人労働者階級をして、
「米国で最も未来に希望を持てない人種」に、
閉じ込めているのか、ということを、
「外側からではなく内側から語る」わけです。

なぜ著者にそんなことができるのか?
著者こそは、「アパラチア」という、
アメリカで最も衰退する地方の出身者であり、
「経済的分析からは見えてこない、
 衰退を内包する文化」を体験し、
なおかつその強力な重力から逃れ、
アイビーリーグの大学を卒業し、
「鳥の目」でアメリカを見られるようになった人だからです。

彼には「鳥の目」と「虫の目」の両方があるのです。
冒頭の部分を引用します。

→P14〜15 
〈機会の平等について語るときには、
ここまで書いてきたような事実を忘れてはならない。
ノーベル賞を受賞した経済学者たちは、
中西部工業地帯の衰退や、
白人労働社会層の働き手の減少を心配する。
製造業の拠点が海外に移り、
大学を卒業していない若者が中流層の仕事に就くことは難しい、
というのが経済学者たちの主張だ。

たしかにそのとおり。私も同じ心配をしている。

だが、私が書こうとしているのは、それとは別の話である。
産業経済が落ち込む中、
現実の生活で人々に何が起こっているかをここに書きたい。
最悪の状況に、人々はどのように反応しているのか。
社会の衰退を食い止めるのではなく、
それをますます助長する文化とはどのようなものなのか、
そうしたことを書こうと思う。

タイル会社の倉庫で私が目にした問題
(無断欠勤や酷い勤務態度で次々と若者がやめていく)は、
マクロ経済の動向や国家の政策の問題よりも、
はるかに根が深い。
あまりにも多くの若者が、重労働から逃れようとしている。
良い仕事であっても、長続きしない。
支えるべき結婚相手がいたり、子どもができたり、
働くべき理由がある若者であっても、
条件の良い健康保険付の仕事を簡単に捨ててしまう。

さらに問題なのは、そんな状況に自分を追い込みながらも、
周囲の人がなんとかしてくれるべきだと考えている点だ。
つまり、自分の人生なのに、
自分ではどうにもならないと考え、
なんでも他人のせいにしようとする。
そうした姿勢は、
現在のアメリカの経済的展望とは別個の問題だと言える。

本書で焦点を当てるのは、
私がよく知っている人たち、
すなわちアパラチアに縁のある白人労働社会層である。
しかし私は、そうした人たちの方が
同情に値すると主張したいわけではない。
本書は、黒人よりも白人の方が
強い不満を抱いている理由を論じるものではない。
読者の皆さんには、本書を通じて、
人種というレンズを通した歪んだ見方をするのではなく、
「貧しい人たちにとって、
社会階層や家族がどのような影響を与えるのか」
を理解してほしい。〉


、、、アメリカの衰退は、
「台頭する中国に対し、
 相対的に経済力が落ちている」
ことをもって、経済的衰退だという人もいます。
それは確かに正しい。
経済力の均衡は軍事力の均衡を意味し、
同時にそれはアメリカ一強時代の終わりの始まりであり
国際政治のパワーバランスを崩壊させるからです。

それは間違っていない。

しかし、内側から見たとき、
アメリカの衰退は、
実は「文化の衰退」なのだということが、
本書を読むとよくわかります。


→P230〜231 
〈いずれも鋭い洞察に満ちてはいるものの、
私を悩ましていた問いに、
完全に答えてくれるわけではなかった。
うちの隣に住む女性は、
どうして虐待癖のある男と別れないのだろう。
彼女は何故、ドラッグに金を使うのか。
自分の行動が娘の人生をめちゃくちゃにしていることが、
どうしてわからないのだろう。

それらはすべて、その女性だけではなく、
私の母にも当てはまることだった。
なぜそんなことになるのか。

何年も後になってようやく分かったのは、
どんな本も、どんな専門家も、どんな専門分野も、
それだけでは現代アメリカのヒルビリーが抱える問題を、
完全には説明できないと言うことだ。
私たちの哀歌(エレジー)は、社会学的なものである。
それは間違いない。
ただし同時に、心理学やコミュニティや
文化や信仰の問題でもあるのだ。〉


、、、『誰もが嘘をついている』という書籍のなかで、
「もっと信頼に足るトランプ予測係数」は、
白人、ラストベルト、貧困層、プロテスタント、
プロライフ(人工中絶反対)、保守派、南部、、、
といった、メディアで言われているどれでもなかった、
と書かれています。

最も信頼できるトランプ予測係数は、
その地域において、
ネットで「ニガー」という言葉が
検索された頻度の高さだったのです。
ニガーとはちなみに黒人に対する蔑称です。

「構造的に追い詰められ、弱者となった白人」は、
「自分たちが底辺にいる理由」を外に探します。

「政府が悪い」
「宗教のリベラル化が悪い」
「民主党政権の社会主義的政策が悪い」、、、
いろいろあるのですが、
実は「責任をなすりつけ、
一時的に自分たちの痛みを和らげてくれさえすれば、
その理由は何でも良い」のです。
彼らは「手近なトランキライザー(鎮痛剤)」を求めています。

そして「オバマのようないまいましい富裕層の黒人」は、
彼らにとって格好のトランキライザーであり、
それを追認してくれるトランプもまた、
またもうひとつのトランキライザーだったのです。

著者も言っているように、
問題はトランプを非難することによっては解決しません。
文字通りにも比喩的にも、
「鎮痛剤」に手を出すほどに追い詰められた、
アパラチア地方の白人コミュニティのような、
「衰退するアメリカ」が、
西海岸と東海岸の「繁栄するアメリカ」と、
手を繋ぐことこそ大切です。

互いを理解しなければならないし、
互いに人的交流が必要です。
ところが構造的な問題により、
「格差が再生産」されるため、
衰退するアメリカ人の子どもは衰退するアメリカ人になり、
繁栄するアメリカ人の子どもは繁栄するアメリカ人になる。

アメリカはいまや「南北」で分かれているのでも、
プロテスタントと非プロテスタントで別れているのでも、
白人と移民で別れているのでもありません。
著者が語る、
「繁栄するアメリカ」と、
「衰退するアメリカ」という、
二つの国がアメリカ合衆国のなかに併存しており、
その両者の間に「底知れぬほど深い溝」があることが問題なのだと。

自らが「繁栄するアメリカ」の体現者でありながら、
「俺は衰退するアメリカ人の味方だぜ」という嘘をつき、
対立をあおることで大統領になったトランプには、
その溝を埋めることは不可能です。

「アメリカの傷」が治癒不能になる前に、
何かがなされなければならないのは確かだし、
日本もアメリカの後を追うようなことのないように、
私たちはよくよく社会を注視しなければなりません。
(2,882文字)



●第6位 『睡眠こそ最強の解決策である』

読了した日:2019年2月21日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:マシュー・ウォーカー(UCバークレー教授、睡眠コンサルタント、睡眠科学者)
出版年:2018年
出版社:SBクリエイティブ

リンク:
https://goo.gl/vfAv85

▼140文字ブリーフィング:

様々な「睡眠に関する本」を読んできましたが、
本書はその中でも歴代No.1でした。
「自分はショートスリーパーだから」
といって毎日6時間睡眠とか
それ以下で平気でいる人がいますが、
遺伝的にショートスリーパーである確率は、
12,000分の1以下だと言われていますので、
「その可能性はまずない」と考えて問題ありません。

だとするとほとんどすべての人の、
「適正な睡眠時間」は8時間前後です。
具体的には7〜9時間と言われていますが、
本書は8時間以上の睡眠を推奨しています。

睡眠時間がそれを割り込むとどんな悪いことがあるか、
本書には科学的な根拠に基づき、
膨大な証拠を挙げて紹介されています。
この本を読めば誰もが、
「睡眠時間について再考」するようになるでしょう。

いやいや、忙しくて寝れないんだよ、
という人は、まずスマホを捨ててください。
そうすると1日2時間「増えます」ので、
その分寝てください。
スマホを捨ててなお、
睡眠時間が全然確保できない人は、
是非転職をお考えになったら良いと思います。
命を削ってまで、人は職業にしがみつくべきではないので。
あなたの子どもにとっても奥さんにとっても、
あなた自身にとっても、
「あなたの収入」よりも、
「あなたの命」のほうがよっぽど大事です

私の父は52歳の若さで癌で他界しましたが、
振り返ってみると、
そのひとつの原因は「睡眠不足」だったかもしれない、
と私は思っています。
彼は働き盛りの30代、40代に、
毎日帰宅が深夜12時、1時、2時、
翌朝は6時に起きて仕事に行く、、、
というのを20年近く続けていたのです。
土日は土日でゴルフなどの、
仕事がらみの用事が入っています。
病気にならないほうがおかしい。

家族にとっての唯一の「救い」は、
父が仕事が「好き」だったことです。
彼は心から楽しんで仕事をしていました。
それがせめてもの救いで、
しかし楽しいからと言って、
身体の負担が減るわけではなく、
短時間睡眠を長年続けると、
癌、脳梗塞、心血管系疾患などのリスクが、
非常に高くなるという数々の証拠が見つかっています。

だから、どうかあなたの子どもが、
若くして親を失った私のようにならぬよう、
身体を大事にしてください。
それはつまるところ、
「たくさん寝てください」ということでもあります。
睡眠不足は、「ゴム紐を引っ張るようなもの」
と著者は言います。

いつか「パチン」と音を立ててゴムが切れるとき、
それは、あなたにとって、
「死の病の宣告」かもしれないのです。

→P10〜11 
〈あなたはこの1週間、
自分は充分に眠ったと自信を持って言えるだろうか?
最後に目覚まし時計の助けを借りずに
すっきり起きた日を思い出せるだろうか?

たいていの人は、いずれかの答えが「ノー」になるだろう。
実際のところ、先進国にクラス大人の3分の2が、
健康に良いとされる8時間睡眠を確保できていない。

睡眠時間が6時間か7時間を下回る状態が続くと、
免疫機能が衰え、癌のリスクが2倍にもなる。
それに加えて、睡眠時間はアルツハイマー病を
発症するかどうかのカギも握る。
また、心血管病や脳卒中、
鬱血性心不全などを発症するリスクが高まる。
 (中略)
以上のことを総合すれば、
睡眠不足は寿命を短くするということも容易に理解出来るだろう。
「眠るのは死んでからだ」という言葉もあるが、
この言葉通りの人生を送っていると、
睡眠不足で生活の質が下がり、
しかも早死にするという皮肉な結果になってしまう。
睡眠不足をゴム紐に喩えるなら、
永遠に引っ張り続けることは出来ず、
いずれ必ずパチンと跳ね返ってくるということだ。

悲しいことに人類は、
自分の意思で睡眠時間を削っている唯一の種族だ。
睡眠不足は健康や幸福感に悪い影響を与えるだけでなく、
社会や経済活動の妨げにもなっている。
現に世界保健機関(WHO)が、睡眠不足は
先進国の流行病だと宣言を出したほどだ。〉


、、、睡眠不足は、
「先進国の流行病」なのです。
逆に十分に寝ることは、
製薬会社が夢見ても永遠に果たすことができない、
「スーパー万能薬」でもあります。
引用します。

→P131 
〈今のところはっきりしているのは、
睡眠こそが万能薬だと言うことだ。
身体の不調も、精神の不調も、必要なのは睡眠という薬だ。
この章を読み終わる頃には、
どんな熱心なショートスリープ信者も改宗していることを願っている。
 (中略)
皮肉なことに、21世紀になって発見された睡眠の「新」事実は、
1611年に出版された『マクベス』の中ですべて語り尽くされている。
具体的には、第2幕第2場に登場する
「睡眠は命の宴の主菜である」という言葉だ。〉


→P191 
〈とりあえずここでは、
アメリカ人起業家のE・ジョセフ・コスマンの言葉を紹介しておこう。
「絶望と希望を結ぶもっとも確実な橋は、
一晩ぐっすり寝ることだ」〉


、、、睡眠は「命の宴の主菜」であり、
「絶望と希望をつなぐもっとも確実な橋」です。
さらに睡眠は、
「身体的・知能的パフォーマンス」において、
「ドーピング」に近いような効果を発揮します。
アンドレ・イグダーラというNBAのバスケ選手が、
実験に協力していて、すごいことがわかっています。

→P160〜161 
〈これらのチームに実際の睡眠指導をする前に、
私はアメリカのNBAが発表したデータを見せることにしている。
具体的には強豪ゴールデンステート・ウォリアーズの
アンドレ・イグダーラ選手の睡眠データだ。
図11は、イグダーラの睡眠時間とパフォーマンスの関係を表している。

【図11】 
8時間以上の睡眠を取った場合と、
8時間未満の睡眠を取った場合の比較:
・プレー時間は12%上昇
・1分あたりのポイントは29%上昇
・スリーポイントシュートの確率は2%上昇
・フリースローの確率は9%上昇
・ターンオーバーは37%減少
・ファール数は45%減少〉


、、、上記のプレー時間、
1分あたりのポイント、
フリースロー確率の向上、
ターンオーバー、ファール数の減少を、
「別の二人のNBA選手」だと仮定しましょう。

NBA好きの私から言わせてもらうと、
「睡眠不足イグダーラ」と、
「睡眠十分イグダーラ」は、
年俸で多分5億円ぐらい違ってきます。
8時間以上寝るか寝ないかが、
「年棒5億円」の差をもたらすのです。

続いて身体的能力ではなく、
十分な睡眠は学業成績をも高める、
という証拠を見ていきましょう。

→P389 
〈5000人以上の児童生徒を
長期にわたって追跡した日本の研究によると、
睡眠時間の長い子どもほど成績が良い。
被験者はそれより少ないが、
研究室のコントロールされた環境で実際に睡眠を観察した研究では、
トータルの睡眠時間が長い子ほどIQが高くなり、
成績優秀な子どもは、IQが低い子どもに比べ、
平均して40〜50分長く眠っていることが分かった。

一卵性双生児を対象にした研究を見ると、
睡眠の大切さがさらに良く理解出来る。
ルイビル・スクール・オブ・メディスンの
ロナルド・ウィルソン博士は、
1980年代に一卵性の双子に関する研究を始めた
(ちなみにこの研究は現在も続いている)。
数百組の双子を対象に、
幼少期から数十年にわたって追跡調査を行った。

とくに注目したのは、双子で睡眠時間に差があるケースだ。
睡眠時間の違いが発達にどのように影響するかを観察する。
10歳になると、双子で睡眠時間の長い方は、
短い方に比べ、
知性と学業成績がかなり優れているという結果になった。
読解力を測る標準テストで点数が高く、語彙も豊富だ。〉


、、、すごくないですか?
一卵性双生児のうち、
睡眠が長い方が、
睡眠が短い方よりも、
IQが高く、学業成績も上がるのです。
日本の経営者、吉越浩一郎さんが、
「寝ないなんて怠惰だ」
と言っている意味がよくわかります。

この本に関しては動画でも解説してますので、
興味ある人は是非ご視聴ください。

▼参考リンク:睡眠は最強の解決策である
https://youtu.be/JCbpVyzZFe8



●第5位 『ブラック・スワン(上・下)』

読了した日:2019年7月20日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ナシーム・ニコラス・タレブ
出版年:2009年
出版社:ダイヤモンド社

リンク:
https://bre.is/YBk9MLMu8

▼140文字ブリーフィング:

この数年で最もインパクトのあったビジネス書は、
タレブの『反脆弱性』でした。
それよりも前に書かれた本書は、
その副読本として優れています。
本書を読むと『反脆弱性』をよりよく理解できる。

まず、「ブラックスワン」とは何かから入りましょう。
「黒い白鳥」という意味ですが、
「白鳥が白い」と思い込んでいる人からすると、
「予期せぬ出来事」なわけです。
ヨーロッパのひとは実際長きにわたってそう思っていたのですが、
オセアニアを発見した際、
「黒い白鳥」を文字通り見つけます。
それ以来、「あり得ないような出来事」を、
「ブラック・スワン」と呼ぶようになります。
タレブはこの「ブラックスワン」の概念を、
ビジネスの世界に敷衍し、
「リーマンショックを予言した」ことで、
世界的な名声を得、
それまでプロパーな経済学者の中では異端とされていた彼が、
世界の識者から教えを請われるほどになるのです。

タレブのブラックスワンの定義とは、
それではいかなるものなのでしょう?

→P3〜4 
〈この本で黒い白鳥(ブラック・スワン)といったら、
それはほとんどの場合、次の三つの特徴を備えた事象を指す。

第一に、異常であること。
つまり、過去に照らせば、
そんなことが起こるかもしれないとはっきり示すものは何もなく、
普通に考えられる範囲の外側にあること。

第二に、とても大きな衝撃があること。

そして第三に、異常であるにもかかわらず、
私たち人間は、生まれついての性質で、
それが起こってから適当な説明をでっち上げて筋道を付けたり、
予測が可能だったことにしてしまったりすること。

ちょっと立ち止まって、
この三つの特徴をまとめてみよう。
普通は起こらないこと、とても大きな衝撃があること、
そして(事前ではなく)事後には予測が可能であることだ。〉


、、、どうでしょう?
1.異常である。
2.とても大きな衝撃がある。
3.それにもかかわらず、
事後的に人々は「予測可能だった」と言い立てる。

この3つの条件を備えた出来事は、
21世紀になってから「頻度が増えている」
と思いませんか?

リーマンショックがまさにそうでしたし、
2011年の東日本大震災と、
福島第一原子力発電所の事故もそうです。
トランプ大統領当選もそうですし、
ブレグジットもそうです。

「ブラックスワン」が、
もはや例外的な事象ではなく、
「日常の一部」となるとき、
私たちは生き方を再考しなけれなならなくなります。

ブラックスワンが頻発する世界において、
「知識」は物事を誤らせる要因になる、
とタレブは言います。
もっと言うと、
「知識に基づく予測と統御」が、
ブラックスワンに対して最も脆弱な状態を作り、
破局的な被害をもたらすのだ、と。

原発事故以前の東京電力、
リーマンショック以前のアメリカの投資家などを、
考えるとわかりやすいでしょう。
彼らは知識がなかったからではなく、
知識に基づく予測と統御によって、
未来は予見可能だと考えたそのことにより、
社会を破局に晒したのです。

では、このような時代に、
私たちはどのように生きるのか?
タレブは取り得る戦略は、
「バーベル戦略」だと言います。
当メルマガでも何度も解説していますので、
詳述はしません。
動画を出しているので興味のある方はご参考に。

▼参考リンク:バーベル戦略とは何か
https://youtu.be/LYR3RCHVHv8

タレブの言うバーベル戦略とは、
可能な限り「超保守的かつ超積極的」になることです。
しかし多くの場合、
一般の人が「保守的であるべき」と考える部分では、
タレブは超積極的にリスクを取り、
一般の人が「積極的であるべき」と考える部分では、
タレブは超保守的にリスクを避けます。

その部分を引用します。

→P215 
〈自分自身に関わることでも、
私は、あるときはものすごく保守的で、
そうでない時はものすごく積極的だ。
そういう人は珍しくないかもしれない。
でも、私が保守的になるのは他の人がリスクを取るところだし、
積極的になるのは他の人が用心するところだ。

小さな失敗はそれほど心配しない。
大きな失敗、とくに致命的になりそうな失敗はとても心配する。
投機的なベンチャー企業より、
「有望な」株式市場、とくに「安全な」優良株に不安を感じる。
後者は見えないリスクの代表だ。

前者は、変動が大きいのが最初から分かっているし、
投資する額を小さくして、
裏目に出た時の損を抑えることができるから、
不意を突かれて驚く事はない。

世に騒がれる華々しいリスクは、それほど心配しない。
たちの悪い隠れたリスクを心配する。
テロを心配しない。糖尿病を心配する。
はっきり見える不安だからと言う理由で人が普通に心配することよりも、
私たちの意識の外側にあって人の話に出てこない、
そんなことのほうを心配する
(もう一つ、私はあんまりあれこれ悩まないという方も告白しておく。
つまり、私は自分でなんとかできることしか心配しないようにしている)。

私は恥をかくことよりチャンスを逃すことの方を心配する。

結局、これは全部、
ちょっとした意志決定のルール一つに根ざしている。
良い方の黒い白鳥にさらされ、
失敗しても失うものが小さい時はとても積極的になり、
悪い方の黒い白鳥にさらされているときはとても保守的になる。〉


、、、先ほどの睡眠の話もちょっと関係があります。
私もタレブに倣ってバーベル戦略をとっていますが、
私が超保守的になるのは、
「睡眠不足を徹底的に避ける」というところです。
多くの人はこのリスクを平気で取ります。

私が逆に「積極的」なのは、
微量の放射能のリスク、
BSEや鳥インフルなどの流行性伝染病のリスク、
ワクチン接種の副作用のリスクなど、
恐怖をあおる形で報道される、
「極度に死ぬ確率の低いリスク」です。

こちらは多少リスクをとったとしても、
「生活が安定していること」のほうが大事です。
福島の事故では、放射能ではなく、
「入院生活のリズムが変わった」ことで、
多くの老人が命を失いました。

鳥インフルなどは私の専門分野なので、
全然大丈夫なときに世間が騒いでいたり、
ぜったいヤバいときに、
世間が騒いでいなかったりすることが、
本当に多くあります。

「派手に喧伝される『特別な事故や病』よりも、
 睡眠不足や運動不足や栄養の偏りを恐れよ」
というのがタレブ的な姿勢です。

そんなわけで、
「リスクとどう付き合うか」は、
生き方の問題でもあります。
常識が通じない時代の生き方を、
私は自分の身をもって実験中です。
当メルマガを読むことで、
皆様のバーベル戦略にも、
何らかのお役に立てていただければ幸いです。
(2,580文字)



●第4位 『知性は死なない』

読了した日:2019年4月13日
読んだ方法:札幌のブックオフで購入(889円)

著者:與那覇潤
出版年:2018年
出版社:文藝春秋

リンク:
https://amzn.to/2U6o988

▼140文字ブリーフィング:

こちらは、
訪れるといつも、
年の離れた友人のように接してくださる、
札幌の木村さんという方と、
「札幌の面白いカフェ巡り」にご案内いただいたとき、
ブックオフで「出会い頭」に買いました。

それを4月にインドに行く旅行鞄の中に突っ込んであったのです。
そして、人を5時間待つことがあったのですが、
(インドではわりと良くあることです)
その間に一気読みしました。
夢中で読みましたね。

そんで、今年の後半、約半年かけて、
当メルマガのコーナー「本のカフェ・ラテ」にて、
4回に渡って解説しました。

なので本書の内容は私の血肉となっています。
あの連載をどれだけの人が読んでくれたかはわかりませんが、
皆さんにも何らかのお役に立てたならばいいなぁ、
と思っています。

そんなわけなので本書の詳述は割愛します。
興味ある人は「本のカフェ・ラテ」を、
メルマガアーカイブブログとかで探してみてください。

大学准教授だった與那覇さんが、
うつ病を患い、
それによって魂の巡礼をした足跡を、
この本は追体験させてくれます。

本書は「うつ病って何?」
ということを知るのにも有用ですので、
そういった方にもお勧めです。
当事者として與那覇さんが、
「うつ病に関する10の誤解」を、
本書の冒頭で紹介しているのでそちらだけ引用しておきます。

【うつ病に対する10の誤解】
誤解1.うつは「こころの風邪」である。
誤解2.うつ病は「意欲がなくなる」病気である
誤解3.「うつ状態」は軽いうつ病である
誤解4.うつの人には「リラックス」をすすめる
誤解5.うつ病は「過労やストレス」が原因である
誤解6.うつ病に「なりやすい性格」がある
誤解8.うつ病は「遺伝する病気」である
誤解9.「カウンセリング」が重いうつ病に効く
誤解10.うつ病は「認知療法」でなおる
(732文字)