陣内俊の読むラジオ archive2021-03-15T15:08:34+09:00「困難な時代をともに生きるためのサプリ」FVIの陣内俊によるメルマガ「読むラジオ」のバックナンバーが読めるホームページにようこそ!
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当サイトを楽しんでくださったすべての皆様へ。
2020年12月から始まったシーズン3から、
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1本10円未...陣内俊大切なお知らせ
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メルマガ執筆者
陣内俊
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■3 2019年版・陣内が今年観た映画ベスト10(3〜1位)
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Amazonプライムに入会してから、
月に平均すると10本ぐらいの映画を観るようになりまし...陣内俊陣内が観た映画ベスト10
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■3 2019年版・陣内が今年観た映画ベスト10(3〜1位)
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Amazonプライムに入会してから、
月に平均すると10本ぐらいの映画を観るようになりました。
電車やバスや新幹線で、本を読む代わりに、
タブレットで映画を観るようになって、
飛躍的に映画を観る本数が増えました。
映画は小説と同じで「他人の靴を履いて人生を歩く」、
という「疑似体験」を与えてくれます。
本と同じくランキングはあまり好きじゃないので、
年に一度だけの特別企画です。
「今年読んだ本」と同じく、
前編で10位〜8位、中編で7位〜4位、後編でベスト3を紹介します。
皆様の映画選びのお役に立てれば幸いです。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
●第3位 ワンダー 君は太陽
鑑賞した日:2019年8月10日
鑑賞した方法:Amazonビデオで有料レンタル(399円)
監督:スティーブン・チョボルスキー
主演:ジュリア・ロバーツ他
公開年・国:2017年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/FHfpvpT9
▼140文字ブリーフィング:
こちらは凄い映画でした。
遺伝的に「顔が変形している」主人公オギーを巡る物語です。
ただの「障害者」によるお涙ちょうだい映画だと思って鑑賞すると、
吹っ飛ばされます。
「障害」をめぐり、
本人の視点、姉の視点、本人の友達の視点など、
複眼的に同じ出来事を追っていく構成になっている、
「ナラティブアプローチ」の話なのです。
「よにでしセミナー」で養われる、
「複眼的視角」「批判的思考力」などを、
この映画を観ることで養うことができます。
そして最後のシーンは、
普通に涙を流して泣きました。
(235文字)
●第2位 トイストーリー4
鑑賞した日:2019年11月9日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(399円)
監督:ジョッシュ・クーリー
主演:トム・ハンクス
公開年・国:2019年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/sTAkrkY2
▼140文字ブリーフィング:
こちらもヤバイぐらい面白かったです。
見た後にずっと考えてしまう。
「ピクサー脚本、どんだけすげーんだ」
と、ため息がでます。
『トイ・ストーリー』って、
バズとウッディというおもちゃの話でもなければ、
子ども時代のおもちゃって懐かしいよね、
というような話でもありません。
バズとウッディというのは、「比喩」なのです。
何の比喩かというと、
「子育て中の親」であり、
「消費者に飽きられない努力をするクリエイター」であり、
「事業環境の変化に変化を迫られる労働者」の比喩です。
見る人によって見え方は違いますが、
本作では「親」としてのウッディの側面が、
非常に強く出ました。
「空の巣症候群」という言葉があります。
子どもが大学生になったり社会人になり、
自分の家を離れて独り立ちしていくとき、
子どもを育て終わった夫婦は、
「やけに広くなった家」に戸惑う、
という状態です。
そのときというのは多くの夫婦はちょうど、
「中年の危機」と呼ばれるライフステージとも重なっていて、
「自分たちは誰からも必要とされないのでは?」
「さて、私たちはこれからどうやって生きていけば?」
という「虚空に投げ出されたような」状態になる。
その「魂の危機」を、どうやって切り抜け、
そして未来を拓いていくことができるのか?
というのは古くから文学のテーマにもなってきた大問題です。
トイストーリー4を見るとき、
それを追体験し、
説教くさくない形で、
そのヒントをつかむことができるようになっている。
分厚い思想書を読むより、
もしかしたら濃密な学びになるかもしれません。
動画でも解説しましたので興味あるかたはこちらをクリック↓
https://youtu.be/llK5hyxx0SQ
(701文字)
●第1位 ジョーカー
鑑賞した日:2019年10月30日
鑑賞した方法:TOHOシネマズ新宿にて鑑賞(1900円)
監督:トッド・フィリップス
主演:ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ他
公開年・国:2019年(アメリカ)
リンク:
http://wwws.warnerbros.co.jp/jokermovie/
▼140文字ブリーフィング:
予測できていたと思いますが、
注目の第一位は『ジョーカー』です。
この映画は、見終わった後、
ずっとこのことについて考えてしまう映画でした。
ジョーカーはピエロのメイクをしていますが、
ピエロって口は笑っているメイクなのに、
片方の目に涙を描くじゃないですか。
あれって、「人を笑わせるピエロが、
近くで良ーく見ると、実は泣いている」
っていう意味なんですよね。
つまり「両義的」なのです。
「笑い」と「涙」なんですよ。
この両義性が、
社会全体であったり、
人の人生であったり、
「正義とは何か」であったり、
そういった現代世界の諸々を、
「批判する」という上で、
非常にうまく働くんですよね。
ここでいう「批判」はちなみに、
英語の「クリティカル・シンキング」の「批判」であって、
日本語における「非難」と混同される意味の批判ではありません。
あれは誤用なのですが、誤用が多数派になると、
言葉そのものの意味も変わるので、
批判は非難の意味に飲み込まれるようになるのかもしれません。
まぁ、「批判」という概念自体が、
日本語にするのが難しいという事情もありますが。
いずれにせよ「批判」は大切です。
「批判なき選挙・批判なき政治」という、
信じられないキャッチフレーズを選挙に使った、
自民党の某議員がいますが
「批判」なくして社会の前進はないのです。
「批判なき政治」って、
「それは独裁ってこと?」ってなりますからね。
話がそれました。
とにかく『ジョーカー』は、
笑っていながら泣いている、
というメイクからして、
「批判的」に働くのです。
社会の「トリックスター」として存在することで、
社会全体を批判的に眺めるための、
「装置」になっている。
本作中でも語られる、
チャップリンの名言に、
「人生はクローズアップでは悲劇だが、
遠くから眺めると喜劇だ」
というのがあります。
それぞれの人生の苦悩や辛酸というのは、
主観的には悲劇なのですが、
それを遠くから見る人からは、
喜劇に見える。
それは「分断の時代」といわれる現代社会に生きる、
私たち一人ひとりのことでもある。
苦悩と辛酸を舐める他者を、
ネットで「自己責任」と揶揄する我々は、
他者の悲劇を喜劇として消費する側にもなり得る。
この映画は見る私たちに、
そのような事実を突きつけるようになっている。
だから、ずっと考えちゃう。
そういう映画でした。
こちらも解説動画をアップしてますので、
興味がある人はこちらをクリック↓
https://youtu.be/1JS8HGYhI_U
(1,009文字)
●番外編
ここからは、惜しくもベスト10入りを逃した、
それでもかなり面白かった本を紹介していきます。
文字数が際限なく膨らむのを防ぐため、
こちらは有名無実と化している「140文字」の制約を、
きっちり守りつつ。
●アリー スター誕生
鑑賞した日:2019年7月13日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(399円)
監督:ブラッドリー・クーパー
主演:ブラッドリー・クーパー、レディ・ガガ
公開年・国:2018年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/v_cEChzph
▼140文字ブリーフィング:
普通に泣きました。
歌手のレディ・ガガが「演技」で、
俳優のブラッドリー・クーパーが「歌」で、
観客を魅了するというねじれ構造が素晴らしかった。
エンタテインメントという意味では同じですが、
それぞれアウェイで闘うという緊張感が、
映画全体に良い「ゆらぎ」を与えていた気がします。
(134文字)
●万引き家族
鑑賞した日:2019年4月6日
鑑賞した方法:Amazonビデオで有料レンタル(500円)
監督:是枝裕和
主演:リリー・フランキー、樹木希林、松岡茉優、安藤サクラ他
公開年・国:2018年(日本)
リンク:
https://rebrand.ly/539b0
▼140文字ブリーフィング:
「伝統的家族像」ではもはや、
家族というものを維持できなくなってきている、
多様化する現代社会に、
どうすれば「家族」をそれでも構築できるのか?
という問題設定を是枝監督ってずっとし続けてるんですよね。
本作はその集大成という感じでした。
安藤サクラの涙が、その答えになっていると思うし。
(138文字)
●シッコ
鑑賞した日:2019年4月10日(インドへの飛行機の中)
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(100円)
監督:マイケル・ムーア
主演:マイケル・ムーア(ドキュメンタリー)
公開年・国:2007年(アメリカ)
リンク:
https://amzn.to/2Z6qt2v
▼140文字ブリーフィング:
米国の医療制度の矛盾がよく分かります。
マイケル・ムーアって天才かも、って思います。
社会問題のことを、
こんなにもエンタテインメントとして面白く語れる人は、
ほかにいないんじゃないかと。
彼のヒップホップ的サンプリング手法は、
名人の域に達しています。
最近見た『華氏911』も最高でしたし。
(140文字)]]>2019年版・陣内が今年読んだ本ベスト10(3〜1位)http://blog.karashi.net/?eid=4702020-05-04T09:22:00+09:002020-01-28T00:23:55Z2020-05-04T00:22:00Z第120号(最終号) 2019年12月31日配信号
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■2 2019年版・陣内が今年読んだ本ベスト10(3〜1位)
お待たせしました、年末特別企画です。
普段私は読んだ本に点数をつけたりランキングしません。
ランキングすることで切り捨てられ...陣内俊陣内が今年読んだ本ベスト10
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■2 2019年版・陣内が今年読んだ本ベスト10(3〜1位)
お待たせしました、年末特別企画です。
普段私は読んだ本に点数をつけたりランキングしません。
ランキングすることで切り捨てられる大切なものがあるからです。
なので、この企画は「年に一度だけ」の特別企画です。
前編は10位〜8位まで、
中編は7位〜4位まで、
後編はベスト3のカウントダウン形式で、
ご紹介していきます。
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●第3位 遅刻してくれてありがとう 常識が通じない時代の生き方(上・下)
読了した日:2019年2月4日
読んだ方法:Amazonで電子書籍購入
著者:トーマス・フリードマン
出版年:2018年
出版社:日本経済新聞社
リンク:
http://amzn.asia/d/7GBnUZJ
▼140文字ブリーフィング:
本書はある方から勧めていただき、
Kindleで電子書籍を購入して読みました。
2018年にタイに行ったときに読んでた記憶があるので、
足かけ2年にわたってちびちびスルメを味わうように読んだ本です。
著者のトーマス・フリードマンは、
「フラット化する世界」を書いたことで有名な、
ピューリッツァー賞を3度も受賞している文筆家です。
知の巨人ですね。「アメリカ版・立花隆」と考えてもらって、
だいたい間違ってないんじゃないかな。
本書をひとことで定義するのは非常に難しいのですが、
「現代という時代」についての長大なエッセイ、
と考えてもらってかまわない、
と著者は本書のなかで述べています。
「今後5年から10年、
アイディアの『核』となりそうだぞ」
という着想をいくつも私は本書から得ました。
そのなかからいくつかご紹介しす。
まず前提として著者は、
現代を「加速の時代」と定義します。
そして加速の時代には、
「(これまでの)常識が通じない」と。
これが本書サブタイトルになっています。
→位置No.56
〈かつて、ドイツの金属加工職人で
印刷業者のヨハネス・グーテンベルクは、
ヨーロッパで革命的な印刷技術を発明し、
それが宗教改革への道を拓いたが、
それ以降、現在の状況に匹敵するほどの
事態はなかったと言えるだろう。
地球上の3つの大きな力
――テクノロジー、グローバリゼーション、気候変動――が、
いまはすべて同時に加速している。
その結果、私たちの社会、職場、
地政学的要素が変容しつつあり、
新しく捉え直す必要が生じている。〉
、、、何が現代をして、
「加速の時代」たらしめているのか?
それは、
・テクノロジー
・グローバリゼーション
・気候変動
この3つが同時に加速しているからだ、
と著者は言っています。
そしてその変化というのは、
「グーテンベルク以来の衝撃」なのだと。
そのような時代にそれでは、
私たちはどのように生きれば良いのか?
まず「安定とは何か?」の、
コンセプトが変わるだろう、
と著者は言います。
→位置No.699
〈テラーによれば、
イノベーションのサイクルがますます短くなり、
適応の時間がますます減るなかで、
私たちが今経験しているのは要するに
「絶え間ない不安定と、たまの不安定の違いだ」。
静止した安定の時代は過去のものだ、
とテラーは付け加えた。
だからといって、
新たなかたちの安定が得られないわけではないが、
「あらたなかたちの安定は、
動的な安定にならざるを得ない。
自転車に乗っているときのように、
じっと立っていることは出来ないが、
動き出せばかなり楽になる安定のかたちがいろいろある。
私たちにとって自然な状態とは言えない。
しかし、人類はそういう状態の中で存在することを、
学ばなければならない」。
私たちはみんな、
自転車に乗るコツを覚えなければならない。
テラーはいう。
それができたら
「曲がりなりにも私たちはまた平静になるだろうが、
それにはかなり再学習が必要だろう。
いまの私たちが、
子どもに動的安定の訓練を
施していないことは明らかだ」。〉
、、、「加速の時代」の安定は、
これまで私たちが考えてきた安定ではないのです。
社会全体が安定しているときの安定は、
「静的(スタティック)な安定」です。
つまり、頑丈でどでかいビルを建て、
その中に守られていることをもって、
「安定」と我々は呼んできたし、
ここでも指摘されているように、
いまだに私たちは子どもたちに、
「静的な安定こそが安定だよ」と、
教え続けているのです。
それはつまり、
「良い大学を出れば安心」
「大きな会社に入れば安心」
「公務員になれば安心」
みたいなやつです。
しかし、
社会全体が不安定な現代では、
本当の安定とは、
「動的(ダイナミック)な安定」
にならざるをえない、
とここで指摘されています。
逆に「静的安定」は「停滞という最大のリスク」になる。
「どでかいビル」はそれ自体が不良債権化するかもしれないし、
「ビルごと倒壊」するかもしれない時代なのです。
「動的安定」とはそれでは、一体何なのか?
それはつまり、自転車をこぎ続けているような安定です。
漕いで進んでいる自転車は、
「静止画では不安定だが動画では安定している」のです。
これからの時代を生きる私たちは、
「自転車のこぎ方を学ばなければならない」。
このアイディアは、
私自身の生き方にとっても、
とても大切なアイディアであり続けています。
では、そのような時代に、
「仕事」はどう変わるのか?
著者は、「仕事は探すもの」から、
「仕事は作るもの」になるだろう、
といいます。
→位置No.5423
〈だから私はいつも娘たちに言い聞かせる。
私が大学を卒業したときには、
職を探さなければならなかった
――それをもう40年近く続けてきた。
でも、これからは、娘たちは職を作り出さなければならない。
そして、変化のサイクルのたびに、創り続けなければならない。〉
、、、オックスフォード大学の、
「消滅する仕事ランキング」の話をするまでもなく、
今後30年で、仕事を巡る環境は激変します。
今の子どもたちは、
「仕事を選べない」のです。
「仕事を選んでいられない」
という意味ではありません。
そうではなく、
別の理由で「選択」が不可能なのです。
なぜか?
彼らは、
彼らの多くが将来就く仕事の名前を、
今はまだ知らないからです。
彼らが大人になったときに就く仕事の多くは、
現在、まだ存在すらしていないのです。
30年後の彼らは、
私たちが今はまだ耳にしたことのない職業に
就いているいる可能性が高いとフリードマンは言います。
200年前の社会人が、
現代の私たちの職業を予想できなかったのと同じように。
「どんな仕事に就きたい?」
はだから、
「大人がしてはいけない子どもへの愚かな質問」
だとフリードマンは言います。
では正しい質問は何か?
「大人になったらどんなふうになるか?」
「大好きなことは何か?」
「大好きなことを生産的にするのに、
どうするつもりか?」
私たちは子どもにこう問うべきなのです。
彼らは自分たちがこれからする仕事を、
「選ぶ」のではなく「創る」必要があるからです。
本書の構成はユニークで、
上巻では今挙げたような、
激変する「加速の時代」に、
私たちはどのように生きるか、
という示唆が続きますが、
下巻の8割ぐらいは、
著者が生まれ育ったミネアポリスの、
セントルイスパークの話になります。
未来の話をしていたかと思うと、
突然「過去の話」になるのです。
そして、彼は、
「多元的共存を実現するコミュニティ」が、
どれほど大切か、という結論に着地します。
現代のアメリカは危機に立っている。
それを救済するのは、
猛々しいナショナリズムでもなければ、
ユートピア的な社会主義でもない。
そのどちらでもなく、
「足腰の強い中間共同体」が必要なのだと著者は言います。
そのような中間共同体たるコミュニティが、
「多元的共存」を実現する。
多元的共存から人は新たなアイディアを生む、
というのは歴史の必然であり、
そこから私たちは前進していくのだ、
というのが著者のメッセージです。
トランプでもサンダースでもないんだよ。
ようはコミュニティだよ、バーカ、
ってことです。
私も賛成します。
引用します。
→位置No.5075
〈だが、トランプが就任式で述べたディストピア演説は、
そういう実像とはかけ離れていた。
トランプは、アメリカは膨大な
“大虐殺”に捕らえられた国だと表現した
――「錆び付いた工場が墓石のように散らばっている」光景が、
強権を振るう男を求め、
”アメリカ・ファースト”の方針の下、
盗まれた雇用を国際社会から取り戻せと叫んでいるのだ、と。
あまりにもショッキングな演説だったので、
就任式の舞台にいたジョージ・W・ブッシュ元大統領が
周囲の人間に「ほんとうに不気味なたわごとだ」と
ささやいたと伝えられている。
ブッシュに同感だ。
アメリカでコミュニティの没落が
蔓延しているというトランプの意見は正しい。
しかし、繁栄しているコミュニティも豊富に存在することを、
トランプは見落としている
――ワシントンDCで強権を振るう人間のおかげではなく、
地元レベルに強力な指導者がいるからだ。
それだけではなく、アメリカが、
東海岸および西海岸
(勃興し、現代化し、多元的共存を実現し、
グローバル化している)と、
そのあいだの内陸部
(雇用が消滅し、薬物中毒がはびこり、
トランプに1950年代に戻してもらうことをだれもが期待している)に
分断されている国だという突拍子もない考えは、
まったくの的外れだ。
私はアメリカ各地を旅した観点から、
大きな分断は東西海岸と内陸部の間にあるのではないと断言する。
分断は、強力なコミュニティと弱いコミュニティの間にある。
東海岸にも西海岸にも弱いコミュニティはあり、
アパラチアにも栄えているコミュニティはある。
その逆のことも言える。
大事なのはコミュニティだ、馬鹿だな
――地理じゃあない(It's the economy, stupidのもじり)。
セントルイスパークとミネアポリスは、
たまたま私が知っている場所なので、
本書で大きく取り上げた。
だが、ここ数年の旅で、
ほかにも数多くの繁栄している地方があることを、
私は知った。
だから、その裏付けを取るために、
2017年5月、私はアメリカ内陸部を4日かけて車で旅行した
――インディアナ州オースティンからはじめて、
ケンタッキー州ルイビルへと南下し、
アパラチアのくねくねとした道路を走って、
最後にはテネシー州のオークリッジ国立研究所まで行った。
この旅行をもとに、
私は《ニューヨーク・タイムズ》に長いコラムを書き、
現在のアメリカには栄えているコミュニティと
落ち目のコミュニティが、
不規則な模様をなして混在していると力説した。
*"It's the economy, stupid"
(日本語訳:ようは経済だ、バーカ)は、
アメリカ合衆国の政治において
ビル・クリントンがジョージ・H・W・ブッシュに対して
勝利を収めた1992年アメリカ合衆国大統領選挙の最中、
広く使われた言い回しである。〉
(3,917文字)
●第2位 衰退の法則 日本企業を蝕むサイレントキラーの正体
読了した日:2019年3月20日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:小城武彦
出版年:2017年
出版社:東洋経済新報社
リンク:
https://goo.gl/GwQxjK
▼140文字ブリーフィング:
産業再生機構に勤務していた著者が、
「破綻する日本企業には、類似点が多い」
という問題意識を検証するために
東大大学院に入り直して博士論文を書いたものを
一般向けにリライトしたのが本書になります。
これがすこぶる面白くって、
丸山眞男の「たこつぼ」の概念を、
さらに一歩踏み込んで、
そのメカニズムにまで立ち入り、
その自己理解を一歩進めた感じの内容です。
「組織」に興味がある人は必読です。
本書は企業に関しての分析ですが、
教会もまた組織という一面をもちますので、
教会運営にも非常に参考になるはずです。
どういうことか?
「日本人が複数集まるとこうなりがち」
という「クセ」があるんです。
それは文化的要因に根ざしているので、
一般企業でも教会でもその傾向は類似しています。
ではその「クセ」を補強し、補完し、
なるべくそのマイナス面を打ち消しつつ、
プラス面が発揮されるように、
どのような介入を行えば良いか、
というのが本書の内容になっています。
これには「事業環境の激変」という、
大きな外部要因があるんです。
日本の組織が陥りがちな「クセ」っていうのは、
「事業環境が安定した状態」では、
けっこうメリットになることも多かった。
しかし事業環境が激変するとき、
その「クセ」はマイナスにしか作用しない。
そういう感じです。
運動会の種目が「綱引き」のときは、
相撲取りは有利なのですが、
種目が変わって「平均台渡り」になると、
相撲取りは不利です。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代の日本企業って、
相撲とりっぽいんですよね。
「やることが決まっていて、
それをいかに効率化するか」
ということにおいて、日本は実際世界一だったのです。
ところが現代社会は、
「そもそもやることが決まっておらず、
昨日の成功は今日、忘れなければならない。
日々、何か新しいことを
生み出していかなければならない」
という状況になると、
その「強み」が今度は「弱み」になる。
こういうことが同時多発的に起きているのが、
過去20年の日本の経済停滞の正体なのです。
ほら。
教会にも関係あると思うでしょ。
めちゃくちゃたくさんメモしたので、
網羅的に説明することはここではあきらめます。
たとえば「意志決定」ひとつを取り上げましょう。
日本型破綻企業の意思決定の特徴は、
それが「予定調和的」だということです。
引用します。
→P73〜74
〈以上が破綻企業に共通する意思決定プロセスの特徴である。
破綻企業の取締役会や経営会議は、
1.侃々諤々の議論、
「ガチンコの議論」が行われることはなく、
2.役職上位者や有力者の意見に過度に同調する傾向が見られ、
3.全会一致で決議されるのが通例であり、
4.出席者間に暗黙の相互不可侵の合意が存在するため、
部分最適の議論が大半を占めている。また、
5.対立を生じさせかねないPDCAは巧みに回避されている。
破綻企業の経営陣の意思決定プロセスには、
こうした「予定調和的色彩」がきわめて強く表出している。
こうした意思決定プロセスが、
後に破綻企業にとって
致命的なダメージを与えることになるのである。〉
、、、いかがでしょう?
日本で3年以上社会人をしている人で、
上記1〜5に心当たりがない、
という人は皆無なのではないでしょうか?
そして、このような組織文化の、
「できるヤツ」は、
今の時代に本当に必要な、「できるヤツ」と、
かなり違ってくると著者は分析します。
再び引用します。
→P77〜78
〈インタビューを通して、
浮かび上がってきた破綻企業の
「できるヤツ」の条件は、次の三つである。
1.自分の意見を控え、経営陣、
特に有力者の考えを忖度し、
その実現に向けて社内を調整する能力が高いこと
2.派閥・学閥・本流部門など、
強い政治良くを有する集団に所属すること
3.出過ぎず、気が利くこと〉
、、、どうでしょう。
「こういう人が出世する組織は破綻する」
と著者は言っています。
ではどんな組織が生き残るのか?
この逆です。
トップに対しても正論を言える人、
「波風を立てでも」必要な施策を主張できる人、
派閥、学閥などの政治に「興味ない」人、
そういったこと抜きに本当に大切なことを敢行できる人、
空気をあえて読まず、必要なことを発言できる人。
こういう人が評価される組織文化がある企業は、
不景気の中でも確実に業績を伸ばしている、
と著者は分析していきます。
そんな文化を創るにはどうすれば良いのか?
それは大企業と中小企業で違うのですが、
それぞれに具体的な提言を著者は続けます。
めちゃくちゃ面白そうでしょ?
この先が聞きたい人は、
お手数ですが私に直接聞きに来てください。
ここでは残念ながら文字数オーバーです。
(1,875文字)
●第1位 神は何のために動物を造ったのか 動物の権利の神学
読了した日:2019年3月29日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:アンドリュー・リンゼイ
出版年:2001年
出版社:教文館
リンク:
https://goo.gl/ygiKHH
▼140文字ブリーフィング:
いよいよ注目の第一です。
これは、3月に本書を読み終わった時点で、
もうすでに決まっていました。
「これが今年の本、第一位だ」と。
著者はイギリスの神学者、
アンドリュー・リンゼイという人です。
日本語の題名は「神は何のために、、、」ですが、
英語原題はズバリ、
「Animal Theology (動物神学)」です。
3年前から私は帝京科学大学の非常勤講師をしています。
とは言っても年に2度の特別講義(とレポート採点)をするだけで、
収入も単発のアルバイト程度(かそれ以下)なのですが、
私にとってその収入以上に魅力的なのが、
「教えるからには学ばねばならない」
という状況に自分が置かれ、
この分野の自分の知識の地平線が広がり続けていることです。
これは「換金不能」な価値です。
どういうことか?
私が担当している講座の名前は、
「動物国際事情」です。
私は獣医師であり、
加えてNGOの活動で海外の社会について知っている、
という二つの要素を持つ珍しい人間なので、
その私に是非、という形で、
同大学の教授をしている知り合いの方が、
私に依頼してくださったのが、
私がこの授業を担当するようになったきっかけでした。
そんで、
昨今の大学というのは、
授業の組み合わせがテトリスよりも複雑なんですよね。
授業を構成している教授陣ですら、
すべてを把握出来ないほど複雑になっている。
講師にとってそれが何を意味するかというと、
「前期と後期」および、
「去年と今年」で、
毎回、すべての学生が入れ替わるとは限らない、
ということが起きます。
そうすると講師は、「毎回違う話をする」
必要が生じる。
もちろん同じ授業なのですから、
同じことを話しても良いのですが、
私は大学生のとき、
「この先生、もう30年ぐらい、
同じ教科書を使って、
同じ授業用のノートを使って、
そして90分間それを読み上げる、
という授業をしてるんだろうなー」
という先生が何人かいて、
その授業がすこぶる退屈でした。
「これだったら自習してた方がいいわ」と。
逆に楽しい授業というのは、
その先生自身が、
その授業の内容に対して熱を帯びている授業でした。
その先生自身が「発見する喜び」に満ちていて、
知的好奇心が発露している。
そんな授業はワクワクしました。
願わくば私も、
後者でありたいわけじゃないですか。
なので毎回、
自分なりにこのテーマについて、
新しく何か発見した状態で臨みたい、
と思いまして、この三年ほど、
「動物」「世界」「思想」といったキーワードの本を、
定期的に読み続けています。
さらにこの授業は、
ほぼ100%キリスト教徒ではない学生たちに、
「聖書の言葉を使わずに、
聖書的世界観を伝える」
というまたとないチャンスでもある。
私にとってこれらの「制約」が、
とてつもなく知的なメリットをもたらしてくれるわけです。
、、、という前置きが長くなりましたが、
先ほどと同じ理由で、
到底網羅的に説明できるボリュームではありませんので、
ここでは目次を紹介して本書の概要を、
なんとなくつかんでいただくと同時に、
特に印象的だった箇所を2箇所抜粋して解説するにとどめます。
【目次】
第一部 神学的原理の確立
第1章 畏敬、責任そして権利 P20
第2章 弱者の道徳的優先権 P64
第3章 僕の種としての人間 P93
第4章 動物のための解放の神学 P122
第5章 動物の権利と寄生的本質 P145
第二部 倫理的習慣に挑戦する
第6章 非神的犠牲としての動物実験 P174
第7章 反福音的捕食としての狩猟 P205
第8章 聖書的理想としての菜食主義 P223
第9章 動物の奴隷化としての遺伝工学 P243
、、、本書のような著作が出版されることからも分かるように、
今でこそその潮流は変わりつつありますが、
キリスト教会はその2000年の歴史のなかで、
お世辞にも「動物を大切にしてきた」とは言えません。
むしろその逆で、「聖書」を盾に、
動物を人間の意のままにするということのほうを、
むしろ推し進めてきた。
これは聖書を盾に奴隷制度を肯定してきた歴史と同じで、
聖書自体は動物は人間のために存在する、
という人間中心主義を肯定していません。
リンゼイが後に言うように、
むしろ人間は動物に奉仕する事が、
神のご性質を表すことなのに。
ではその「歪んだ人間中心主義」の、
思想的源流はどこにあるか?
3人の重要人物がいます。
アリストテレス、
アウグスティヌス、
トマス・アクィナスです。
引用しましょう。
→P37〜39
〈もしもこの見解の哲学的基礎を求めるなら、
アリストテレスがその源であるということを発見しても
我々は驚かないかもしれない。
「ある物を、それが造られている
目的のために使うことは罪ではない」
とアクィナスは答える。
「さて、事物の秩序は、不完全なものは
完全なもののためにあるように造られている。
それは創造の過程においても、
自然は不自然から完全に進む・・・
それゆえに、動物の善のために植物を使うこと、
人間の善のために動物を使うことは律法に反することではない。
アリストテレスが言うように」。
動物に関するトマスの思想において支配的なのは、
自然の「事物の秩序」に訴えることである。
この解釈は聖書に言及することによって強化されるが、
あくまでもそれは結果論的、第二義的にでしかない。
アクィナスは、人間のために
食物を与えることに関心を持つ
創世記1:29と9:3を引用するが、
アリストテレスとアウグスティヌスにしたがって、
自然の摂理的計画であるとする。
前に挙げた三つの反対に対して、
アクィナスは次のように簡単に答える。
最初の反対――神は存在する全ての生物を
保とうとされていること――にたいして、
アクィナスは次のように主張する。
「動物と植物への神の支配は彼らのためではなく、
人間のために保持されている」。
それゆえに、
「アウグスティヌスが言っているように
・・・彼らの命も死も我々の使用の支配下にある」。
第二の反対――命は人間と動物に共通である
――という反対に対して、
アクィナスはほとんどまったくアリストテレスから
取られたような文で答える。
文全体を引用する価値がある。
「物言えぬ動物と植物は
運動を引き起こす理性的生活を欠いている。
彼らは言わば自然の衝動によって動かされている。
それは彼らが生まれながらにして奴隷化されており、
他者の使用に供されるという印なのである。」
第三番目の反対――他人の牛を殺すことは
モーセの律法に反するという反対――にたいして、
アクィナスは次のように答える。
旧約聖書において議論されているのは
人間の所有物として考えられている牛の命だけである。
他人の牛を殺す行為は
「殺害の罪の類いではなく、盗みの罪である」。
要約。
三つの要素が動物の生命の地位に対する
アクィナスの見解を特徴付ける。
第一、動物は非理性的であり、
心も精神も所有していない。
第二、彼らは彼ら自身の本質と神的摂理によって
人間の目的に仕えるべく存在する。
第三、彼らはそれ故に彼ら自身の中に
道徳的地位を持っていない。
何らかの人間的利益が関与すれば
――たとえば、人間の所有物として――別である。
(中略)
彼は『神学大全』のなかで議論している。
「神の摂理によって、
動物は自然の秩序の中で人間の使用のために意図されている。
ゆえに、人間が動物を殺したり、
またはどんな他の方法であっても
使用するのは悪いことではない」。〉
、、、トマス・アクィナスの『神学大全』の影響力は絶大で、
西洋キリスト教社会全体が、
この「低次の被造物である動物は、
高次の被造物である人間の益のために存在する」
という思想に基づき社会を構築してきました。
私が嫌悪する「スポーツハンティング」などは、
その思想を煮染めたようなものです。
しかし、リンゼイはそのような考え方に異を唱えます。
人間には「人権」がある。
それが黒人奴隷にもあることを西洋社会が発見したのは、
ほんの200年ほど前のことです。
それから200年経ち、私たちは
その「権利の環」を動物にも広げるまでに、
成熟すべきなのではないか?
それが「僕であるキリスト」に、
似せられていく道なのではないのか?
人間でいうところの「人権」を、
著者は動物では「神ー権」と表現しました。
引用しましょう。
→P56〜57
〈それゆえに、私は次のことを提案したい。
すなわち動物の「神ー権」(theo-rights)という
私の用語の土台となるキリスト教的基盤が存在し、
それは畏敬と責任という同じ考えに通じるものであるが、
これは伝統が今よりよい時代に結合したものである。
この提案の中心には、
我々は創造にたいする神中心の考えが必要であるという確信がある。
これには4つの側面があるが簡単な説明が必要であろう。
まず最初は、被造物は神のために存在するということである。
もし、「被造物はなんのためにあるのか」、
あるいは、「なぜ動物は存在するのか」
という質問がなされるとすれば、
満足すべき答えはたった一つだけである。
被造物はその創造者のために存在する。
人間中心主義が長い間続いたために、
この単純で、しかも根本的な点が
ほとんどまったく曖昧になってしまっているのである。
以上から帰結することは、
動物は人間の目的としてだけ
見られてはならないということである。
この神学を把握するカギは、
一般的になってしまっているが、
しかも大変間違っている見解、
すなわち、動物は人間との関係において
まったく手段的存在であるという見解を捨てることである。
人間は被造物の中では独特の重要さを持っているが、
そのことから、被造物の中の全てのものは
我々のために造られたとか、
我々を喜ばすためにあるとか、
我々の楽しみこそ
神の主要な関心事であるとかいうようなことには帰結しない。
我々は神の主要な関心について
絶対的な主張をすることに慎重である必要がある。
この点がジェイムズ・ガスタフソンによって明確に指摘されている。
「神は『人間の味方である』としても、
神は創造の主要な目的として
人間に味方しているのではないかもしれない。
神の主要な目的は人間の救いではないかもしれないのである」。〉
、、、「人間中心主義」というレンズで、
聖書を読むことを私たちはやめる時期に来ています。
そのとき、世界は本当の意味で「変わり」ます。
「白人中心主義」というレンズで聖書を読むことをやめたとき、
世界が本当に変わったように。
動物が人間のために存在するのではない、
人間は動物にむしろ仕えるべきだ、
という、著者の「仕える種」としてのビジョンに、
私も強く賛同します。
著者が引用している、
チャールズ・スポルジョンの言葉に、
本書の神学的思想が凝縮されていますので、
最後にそちらを味わってください。
→P6〜7
〈要するに、我々は被造物の内部において、
仕える種としての新しい道徳的ヴィジョンを必要としている。
それは動物だけでなく、
我々自身をも人間の暴力から救い出すのに役立てるためである。
キリスト教信仰は、
世界の他の存在をいかに扱うかについて、
真に異なった存在――積極的相違――とならなければならない。
有名なバプテストの説教者、
チャールズ・スパージョンはかつて、
ローランド・ヒル(同時代人)の考えを
さらに説明してこう言っている。
「もし彼の犬あるいは猫が、
飼われているそのことによって幸福でないとすれば、
その人はキリスト者ではない」と。
そしてコメントした。
「信仰の真偽はそれによってわかる」〉
(4,594文字)]]>2019年版・陣内が今年観た映画ベスト10(7〜4位)http://blog.karashi.net/?eid=4692020-04-28T09:21:00+09:002020-01-28T00:22:17Z2020-04-28T00:21:00Z第119号 2019年12月24日配信号
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■3 2019年版・陣内が今年観た映画ベスト10(7〜4位)
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Amazonプライムに入会してから、
月に平均すると10本ぐらいの映画を観るようになりました。
電車...陣内俊陣内が観た映画ベスト10
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■3 2019年版・陣内が今年観た映画ベスト10(7〜4位)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
Amazonプライムに入会してから、
月に平均すると10本ぐらいの映画を観るようになりました。
電車やバスや新幹線で、本を読む代わりに、
タブレットで映画を観るようになって、
飛躍的に映画を観る本数が増えました。
映画は小説と同じで「他人の靴を履いて人生を歩く」、
という「疑似体験」を与えてくれます。
本と同じくランキングはあまり好きじゃないので、
年に一度だけの特別企画です。
「今年読んだ本」と同じく、
前編で10位〜8位、中編で7位〜4位、後編でベスト3を紹介します。
皆様の映画選びのお役に立てれば幸いです。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
●第7位 『葛城事件』
鑑賞した日:2019年1月2日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典
監督:赤堀雅秋
主演:三浦友和
公開年・国:2016年(日本)
リンク:
http://amzn.asia/d/bURhe3A
▼140文字ブリーフィング:
これは面白かったです。
三浦友和の「怪演」でしたね。
ヤバかった。
秋葉原の殺傷事件、
池田小学校の詫間容疑者、
神戸の「酒鬼薔薇聖斗」事件、
こういった無差別殺傷事件というのは、
平成に幾度も繰り返されました。
こういう事件があるたびに、
「家族は何をしていたんだ!?」
という流れになるのを、
私は良いとは思いません。
それが行き着く先には、
「家族連帯責任論」みたいのが出て来て、
追い詰められた家族は自殺をしたりする。
あと、元事務次官が息子を殺傷した練馬の事件のように、
追い詰められた親が子どもを殺傷したりする。
「親が子どもを作る」というのは事実ですが、
それは事実の半分です。
親に何の落ち度もなくても、
子どもが凶悪犯になることはあり得ます。
ある種の凶悪殺人犯って、
脳に何らかの器質的な異常があることもわかっている。
それを踏まえずに家族ばかり追求すると、
「あの人が障害者なのは、
親が何か罪を犯したのでしょうか?」
という、ヨハネ9章でイエスが完全に否定している、
「因果応報論」に陥ってしまう。
これは本人もその家族をも追い詰める行為です。
、、、という前置きをした上で、
それでも「機能不全家族」がときに、
「モンスター」を生んでしまうことがあるのもまた事実。
秋葉原の殺傷事件の青年は、
大人から褒められたことが一度もなかったと言いますし、
池田小学校の詫間容疑者は幼少期に虐待されていたといいます。
そんな「機能不全家族」が、
どのように凶悪犯を「生む」のか、
それを架空の物語で描き出したのが本作です。
これを観ると、ダガーナイフで殺人をする息子より、
団塊の世代のその親の葛城氏(三浦友和)のほうが、
もっともっと恐ろしいことがわかる。
男尊女卑、DV、無駄に高いプライド、
二言目には「日本人のほこり」、
正論で人をなじる、能力が低い、、、
などの「駄目な団塊世代」を煮詰めたような葛城氏が、
「家族の力学」を崩壊させ、その結果長男は自殺し、
引きこもりの次男は無差別大量殺人の犯人となっていきます。
この映画を鑑賞中、
「家族という地獄」という言葉が
ずっと心に響いていました。
長男にとっては自殺することが、
次男にとっては犯罪を犯して刑務所に入ることのほうが、
「この地獄のような家族」のなかにいるよりは、
マシだったんじゃないかとすら、
不思議と思えてくるのです。
その「地獄の創造主」は、
三浦友和演じる葛城家の「父」なのですが、
マジでこの人物は、
思い出すだけで胸くそ悪くなります(つまり映画として最高)。
(1,010文字)
●第6位 『シェフ 三ツ星フードドラックはじめました』
鑑賞した日:2019年1月10日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典
監督:ジョン・ファブロー
主演:ジョン・ファブロー
公開年・国:2014年(アメリカ)
リンク:
http://amzn.asia/d/3MdNVbc
▼140文字ブリーフィング:
アベンジャーシリーズの怒濤のヒットの「皮切り」となった、
『アイアンマン』第一作の監督である、
ジョン・ファブローが監督かつ主演している映画です。
なので豪華脇役が凄いです。
スカーレット・ヨハンソンとか、
ロバート・ダウニー・Jrらがちょい役で出演しています。
この映画は、
料理シーンがとにかくセクシーです。
色、音、質感、手さばき、
料理のシーンだけで、
マジでずっと観ていられる。
食べ物が全部、
本当に本当に美味しそうで、、、。
「飯テロ映画」です。
減量中の人は観ない方が良いと思います。
それだけじゃなくて、
「三つ星レストランのチーフシェフ」の主人公が、
立場は安定しているが、
オーナーの都合で流行に迎合的なものをつくらされたりして、
「自分のやりたい料理」を追求できないことを不満に、
そこを「退職」し、
フードトラック(屋台)で全米を旅しながら、
クッソ美味い料理を人々に提供しつつ、
息子やお客さんとの交流を深める、、、
というのは、実は彼自身の話でもある。
ジョン・ファブローは、
アイアンマンというビッグバジェット(大予算映画)を、
成功させてしまったことで、
皮肉なことにどんどん自分がやりたいことができなくなっていきます。
いろんなプロダクションやスポンサーの言うことを聞く、
中間管理職みたいになっていく。
彼は「自分の撮りたい映画を撮る!」
っていって、半ば自主制作みたいな形で、
自分が主演して本作を撮ったのです。
つまり本作は、彼にとっての「フードトラック」
そのものなんですよね。
素晴らしい映画でした。
物作りをする人は、
きっと心と胃袋が熱くなることでしょう。
(638文字)
●第5位 『ヘレディタリー 継承』
鑑賞した日:2019年5月8日
鑑賞した方法:Amazonビデオで有料レンタル(500円)
監督:アリ・アリスター
主演:トニー・コレット
公開年・国:2018年(アメリカ)
リンク:
https://amzn.to/2Y0AQ6Z
▼140文字ブリーフィング:
私が私淑する、ライムスター宇多丸が、
「2018年年間映画ランキング」で、
第一位にこれを選んでたので、
「そりゃ観るっしょ!」
というわけで鑑賞しました。
ホラー映画の新たな金字塔が出来た、
と宇多丸さんは言っていますが、
それは正当な評価だと思います。
過去の作品のホラー技法を備えつつ、
自分のものとして昇華しています。
ホラー映画は新しい領域に突入した感じがします。
実はこの映画自体が、
監督自身のセラピーになっている、
と監督は別の場所で語っているそうです。
そして映画の主人公の女性は、
「箱庭を作ることで自分を癒やす」人です。
先ほどの『シェフ』もそうですが、
現実世界と作品が、
そんなふうに入れ子構造になっている作品が、
どうやら私は好きなようです。
とにかく度肝を抜かれ、
思わず2回観ちゃいました。
脚本がすごーく良くできています。
ちなみにAmazonレビュー平均はあまり良くない笑。
私はだからAmazonレビューを信頼していません。
あの手のものにあまり重きを置くと、
「自分が何が好きか」がだんだんわからなくなってきます。
自分の感覚を信じた方が吉です。
経験的に、
「5」と「1」の評価がすごーく多くて、
平均すると3前後ぐらいの評価になっている映画が、
私が一番好きなタイプの映画に多い感じですが、
それもまた頼りにするとハズすことがあるというね笑。
話がそれましたが、
この映画、観た後に最悪な気分になります(褒めてます)。
(596文字)
●第4位 『サーチ Search』
鑑賞した日:2019年3月9日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル視聴(399円)
監督:アニーシュ・チャガンティ(インドネシア人監督)
主演:ジョン・チョー
公開年・国:2018年(アメリカ)
リンク:
https://goo.gl/XJzKax
▼140文字ブリーフィング:
この映画は、単純にめちゃくちゃ面白かったです。
「ユージュアルサスペクツ」という、
サスペンス映画の名作があります。
観てないという人はまさかいないと思いますが笑、
もし観ていなければ今すぐに観ましょう。
あれは本当に名作なので。
本作は、「全篇ユージュアルサスペクツ」
という感じです。
観たことある人には何のことか分からないでしょうが、
「ユージュアル・・」観たことある人には分かると思います。
「マジで!そんなことできるの!?」
って思うでしょ。
できるんです。
この映画は、
「人生のすべてが『記録』されるSNS世代」
というギミックを使うことで、
観る人を本当にハラハラさせ続けることに成功している。
あと、ネット社会というのが、
「複数の文脈を引き受ける」ということなんだ、
というのもよくわかります。
すべてがパソコンの画面内で進行する、
という思い切った演出をすることで、
「我々はこういう時代に生きているんだ」
ということをよりよく知らせてくれる作品でもあります。
予算は低いはずなのですが、
ビッグバジェット映画以上にハラハラできます。
ワンアイディアでここまで面白くする。
私が映画監督だったら、
こういう作品を作ったときが、
一番「気持ちいい」だろうなーと思いながら観ました。
(518文字)]]>2019年版・陣内が今年読んだ本ベスト10(7〜4位)http://blog.karashi.net/?eid=4682020-04-27T09:19:00+09:002020-01-28T00:21:05Z2020-04-27T00:19:00Z第119号 2019年12月24日配信号
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■2 2019年版・陣内が今年読んだ本ベスト10(7〜4位)
お待たせしました、年末特別企画です。
普段私は読んだ本に点数をつけたりランキングしません。
ランキングすることで切り捨てられる大切なも...陣内俊陣内が今年読んだ本ベスト10
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■2 2019年版・陣内が今年読んだ本ベスト10(7〜4位)
お待たせしました、年末特別企画です。
普段私は読んだ本に点数をつけたりランキングしません。
ランキングすることで切り捨てられる大切なものがあるからです。
なので、この企画は「年に一度だけ」の特別企画です。
前編は10位〜8位まで、
中編は7位〜4位まで、
後編はベスト3のカウントダウン形式で、
ご紹介していきます。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
●第7位 『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』
読了した日:2019年6月4日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:J・D・ヴァンス
出版年:2017年
出版社:光文社
リンク:
https://bre.is/rIZEL4RNJ
▼140文字ブリーフィング:
「トランプ現象とは何なのか?」について、
多くの識者・知識人・テレビコメンテーターが、
様々なことを述べ、書籍も多数出版されていますが、
そのなかの「最良の書」は本書だと思っています。
どういうことか?
トランプ現象の背景には、
アメリカの衰退・貧困問題があります。
世の中に氾濫する「トランプ論」は、
それらを「鳥の目」で把握しようとするものですが、
本書はそれを、「虫の目」であぶり出そうとする作品だからです。
経済学者のマクロな分析からは見えてこない現実が、
アメリカンドリームを壊死させていることが、
本書を読むとわかります。
いったい何が白人労働者階級をして、
「米国で最も未来に希望を持てない人種」に、
閉じ込めているのか、ということを、
「外側からではなく内側から語る」わけです。
なぜ著者にそんなことができるのか?
著者こそは、「アパラチア」という、
アメリカで最も衰退する地方の出身者であり、
「経済的分析からは見えてこない、
衰退を内包する文化」を体験し、
なおかつその強力な重力から逃れ、
アイビーリーグの大学を卒業し、
「鳥の目」でアメリカを見られるようになった人だからです。
彼には「鳥の目」と「虫の目」の両方があるのです。
冒頭の部分を引用します。
→P14〜15
〈機会の平等について語るときには、
ここまで書いてきたような事実を忘れてはならない。
ノーベル賞を受賞した経済学者たちは、
中西部工業地帯の衰退や、
白人労働社会層の働き手の減少を心配する。
製造業の拠点が海外に移り、
大学を卒業していない若者が中流層の仕事に就くことは難しい、
というのが経済学者たちの主張だ。
たしかにそのとおり。私も同じ心配をしている。
だが、私が書こうとしているのは、それとは別の話である。
産業経済が落ち込む中、
現実の生活で人々に何が起こっているかをここに書きたい。
最悪の状況に、人々はどのように反応しているのか。
社会の衰退を食い止めるのではなく、
それをますます助長する文化とはどのようなものなのか、
そうしたことを書こうと思う。
タイル会社の倉庫で私が目にした問題
(無断欠勤や酷い勤務態度で次々と若者がやめていく)は、
マクロ経済の動向や国家の政策の問題よりも、
はるかに根が深い。
あまりにも多くの若者が、重労働から逃れようとしている。
良い仕事であっても、長続きしない。
支えるべき結婚相手がいたり、子どもができたり、
働くべき理由がある若者であっても、
条件の良い健康保険付の仕事を簡単に捨ててしまう。
さらに問題なのは、そんな状況に自分を追い込みながらも、
周囲の人がなんとかしてくれるべきだと考えている点だ。
つまり、自分の人生なのに、
自分ではどうにもならないと考え、
なんでも他人のせいにしようとする。
そうした姿勢は、
現在のアメリカの経済的展望とは別個の問題だと言える。
本書で焦点を当てるのは、
私がよく知っている人たち、
すなわちアパラチアに縁のある白人労働社会層である。
しかし私は、そうした人たちの方が
同情に値すると主張したいわけではない。
本書は、黒人よりも白人の方が
強い不満を抱いている理由を論じるものではない。
読者の皆さんには、本書を通じて、
人種というレンズを通した歪んだ見方をするのではなく、
「貧しい人たちにとって、
社会階層や家族がどのような影響を与えるのか」
を理解してほしい。〉
、、、アメリカの衰退は、
「台頭する中国に対し、
相対的に経済力が落ちている」
ことをもって、経済的衰退だという人もいます。
それは確かに正しい。
経済力の均衡は軍事力の均衡を意味し、
同時にそれはアメリカ一強時代の終わりの始まりであり
国際政治のパワーバランスを崩壊させるからです。
それは間違っていない。
しかし、内側から見たとき、
アメリカの衰退は、
実は「文化の衰退」なのだということが、
本書を読むとよくわかります。
→P230〜231
〈いずれも鋭い洞察に満ちてはいるものの、
私を悩ましていた問いに、
完全に答えてくれるわけではなかった。
うちの隣に住む女性は、
どうして虐待癖のある男と別れないのだろう。
彼女は何故、ドラッグに金を使うのか。
自分の行動が娘の人生をめちゃくちゃにしていることが、
どうしてわからないのだろう。
それらはすべて、その女性だけではなく、
私の母にも当てはまることだった。
なぜそんなことになるのか。
何年も後になってようやく分かったのは、
どんな本も、どんな専門家も、どんな専門分野も、
それだけでは現代アメリカのヒルビリーが抱える問題を、
完全には説明できないと言うことだ。
私たちの哀歌(エレジー)は、社会学的なものである。
それは間違いない。
ただし同時に、心理学やコミュニティや
文化や信仰の問題でもあるのだ。〉
、、、『誰もが嘘をついている』という書籍のなかで、
「もっと信頼に足るトランプ予測係数」は、
白人、ラストベルト、貧困層、プロテスタント、
プロライフ(人工中絶反対)、保守派、南部、、、
といった、メディアで言われているどれでもなかった、
と書かれています。
最も信頼できるトランプ予測係数は、
その地域において、
ネットで「ニガー」という言葉が
検索された頻度の高さだったのです。
ニガーとはちなみに黒人に対する蔑称です。
「構造的に追い詰められ、弱者となった白人」は、
「自分たちが底辺にいる理由」を外に探します。
「政府が悪い」
「宗教のリベラル化が悪い」
「民主党政権の社会主義的政策が悪い」、、、
いろいろあるのですが、
実は「責任をなすりつけ、
一時的に自分たちの痛みを和らげてくれさえすれば、
その理由は何でも良い」のです。
彼らは「手近なトランキライザー(鎮痛剤)」を求めています。
そして「オバマのようないまいましい富裕層の黒人」は、
彼らにとって格好のトランキライザーであり、
それを追認してくれるトランプもまた、
またもうひとつのトランキライザーだったのです。
著者も言っているように、
問題はトランプを非難することによっては解決しません。
文字通りにも比喩的にも、
「鎮痛剤」に手を出すほどに追い詰められた、
アパラチア地方の白人コミュニティのような、
「衰退するアメリカ」が、
西海岸と東海岸の「繁栄するアメリカ」と、
手を繋ぐことこそ大切です。
互いを理解しなければならないし、
互いに人的交流が必要です。
ところが構造的な問題により、
「格差が再生産」されるため、
衰退するアメリカ人の子どもは衰退するアメリカ人になり、
繁栄するアメリカ人の子どもは繁栄するアメリカ人になる。
アメリカはいまや「南北」で分かれているのでも、
プロテスタントと非プロテスタントで別れているのでも、
白人と移民で別れているのでもありません。
著者が語る、
「繁栄するアメリカ」と、
「衰退するアメリカ」という、
二つの国がアメリカ合衆国のなかに併存しており、
その両者の間に「底知れぬほど深い溝」があることが問題なのだと。
自らが「繁栄するアメリカ」の体現者でありながら、
「俺は衰退するアメリカ人の味方だぜ」という嘘をつき、
対立をあおることで大統領になったトランプには、
その溝を埋めることは不可能です。
「アメリカの傷」が治癒不能になる前に、
何かがなされなければならないのは確かだし、
日本もアメリカの後を追うようなことのないように、
私たちはよくよく社会を注視しなければなりません。
(2,882文字)
●第6位 『睡眠こそ最強の解決策である』
読了した日:2019年2月21日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:マシュー・ウォーカー(UCバークレー教授、睡眠コンサルタント、睡眠科学者)
出版年:2018年
出版社:SBクリエイティブ
リンク:
https://goo.gl/vfAv85
▼140文字ブリーフィング:
様々な「睡眠に関する本」を読んできましたが、
本書はその中でも歴代No.1でした。
「自分はショートスリーパーだから」
といって毎日6時間睡眠とか
それ以下で平気でいる人がいますが、
遺伝的にショートスリーパーである確率は、
12,000分の1以下だと言われていますので、
「その可能性はまずない」と考えて問題ありません。
だとするとほとんどすべての人の、
「適正な睡眠時間」は8時間前後です。
具体的には7〜9時間と言われていますが、
本書は8時間以上の睡眠を推奨しています。
睡眠時間がそれを割り込むとどんな悪いことがあるか、
本書には科学的な根拠に基づき、
膨大な証拠を挙げて紹介されています。
この本を読めば誰もが、
「睡眠時間について再考」するようになるでしょう。
いやいや、忙しくて寝れないんだよ、
という人は、まずスマホを捨ててください。
そうすると1日2時間「増えます」ので、
その分寝てください。
スマホを捨ててなお、
睡眠時間が全然確保できない人は、
是非転職をお考えになったら良いと思います。
命を削ってまで、人は職業にしがみつくべきではないので。
あなたの子どもにとっても奥さんにとっても、
あなた自身にとっても、
「あなたの収入」よりも、
「あなたの命」のほうがよっぽど大事です
私の父は52歳の若さで癌で他界しましたが、
振り返ってみると、
そのひとつの原因は「睡眠不足」だったかもしれない、
と私は思っています。
彼は働き盛りの30代、40代に、
毎日帰宅が深夜12時、1時、2時、
翌朝は6時に起きて仕事に行く、、、
というのを20年近く続けていたのです。
土日は土日でゴルフなどの、
仕事がらみの用事が入っています。
病気にならないほうがおかしい。
家族にとっての唯一の「救い」は、
父が仕事が「好き」だったことです。
彼は心から楽しんで仕事をしていました。
それがせめてもの救いで、
しかし楽しいからと言って、
身体の負担が減るわけではなく、
短時間睡眠を長年続けると、
癌、脳梗塞、心血管系疾患などのリスクが、
非常に高くなるという数々の証拠が見つかっています。
だから、どうかあなたの子どもが、
若くして親を失った私のようにならぬよう、
身体を大事にしてください。
それはつまるところ、
「たくさん寝てください」ということでもあります。
睡眠不足は、「ゴム紐を引っ張るようなもの」
と著者は言います。
いつか「パチン」と音を立ててゴムが切れるとき、
それは、あなたにとって、
「死の病の宣告」かもしれないのです。
→P10〜11
〈あなたはこの1週間、
自分は充分に眠ったと自信を持って言えるだろうか?
最後に目覚まし時計の助けを借りずに
すっきり起きた日を思い出せるだろうか?
たいていの人は、いずれかの答えが「ノー」になるだろう。
実際のところ、先進国にクラス大人の3分の2が、
健康に良いとされる8時間睡眠を確保できていない。
睡眠時間が6時間か7時間を下回る状態が続くと、
免疫機能が衰え、癌のリスクが2倍にもなる。
それに加えて、睡眠時間はアルツハイマー病を
発症するかどうかのカギも握る。
また、心血管病や脳卒中、
鬱血性心不全などを発症するリスクが高まる。
(中略)
以上のことを総合すれば、
睡眠不足は寿命を短くするということも容易に理解出来るだろう。
「眠るのは死んでからだ」という言葉もあるが、
この言葉通りの人生を送っていると、
睡眠不足で生活の質が下がり、
しかも早死にするという皮肉な結果になってしまう。
睡眠不足をゴム紐に喩えるなら、
永遠に引っ張り続けることは出来ず、
いずれ必ずパチンと跳ね返ってくるということだ。
悲しいことに人類は、
自分の意思で睡眠時間を削っている唯一の種族だ。
睡眠不足は健康や幸福感に悪い影響を与えるだけでなく、
社会や経済活動の妨げにもなっている。
現に世界保健機関(WHO)が、睡眠不足は
先進国の流行病だと宣言を出したほどだ。〉
、、、睡眠不足は、
「先進国の流行病」なのです。
逆に十分に寝ることは、
製薬会社が夢見ても永遠に果たすことができない、
「スーパー万能薬」でもあります。
引用します。
→P131
〈今のところはっきりしているのは、
睡眠こそが万能薬だと言うことだ。
身体の不調も、精神の不調も、必要なのは睡眠という薬だ。
この章を読み終わる頃には、
どんな熱心なショートスリープ信者も改宗していることを願っている。
(中略)
皮肉なことに、21世紀になって発見された睡眠の「新」事実は、
1611年に出版された『マクベス』の中ですべて語り尽くされている。
具体的には、第2幕第2場に登場する
「睡眠は命の宴の主菜である」という言葉だ。〉
→P191
〈とりあえずここでは、
アメリカ人起業家のE・ジョセフ・コスマンの言葉を紹介しておこう。
「絶望と希望を結ぶもっとも確実な橋は、
一晩ぐっすり寝ることだ」〉
、、、睡眠は「命の宴の主菜」であり、
「絶望と希望をつなぐもっとも確実な橋」です。
さらに睡眠は、
「身体的・知能的パフォーマンス」において、
「ドーピング」に近いような効果を発揮します。
アンドレ・イグダーラというNBAのバスケ選手が、
実験に協力していて、すごいことがわかっています。
→P160〜161
〈これらのチームに実際の睡眠指導をする前に、
私はアメリカのNBAが発表したデータを見せることにしている。
具体的には強豪ゴールデンステート・ウォリアーズの
アンドレ・イグダーラ選手の睡眠データだ。
図11は、イグダーラの睡眠時間とパフォーマンスの関係を表している。
【図11】
8時間以上の睡眠を取った場合と、
8時間未満の睡眠を取った場合の比較:
・プレー時間は12%上昇
・1分あたりのポイントは29%上昇
・スリーポイントシュートの確率は2%上昇
・フリースローの確率は9%上昇
・ターンオーバーは37%減少
・ファール数は45%減少〉
、、、上記のプレー時間、
1分あたりのポイント、
フリースロー確率の向上、
ターンオーバー、ファール数の減少を、
「別の二人のNBA選手」だと仮定しましょう。
NBA好きの私から言わせてもらうと、
「睡眠不足イグダーラ」と、
「睡眠十分イグダーラ」は、
年俸で多分5億円ぐらい違ってきます。
8時間以上寝るか寝ないかが、
「年棒5億円」の差をもたらすのです。
続いて身体的能力ではなく、
十分な睡眠は学業成績をも高める、
という証拠を見ていきましょう。
→P389
〈5000人以上の児童生徒を
長期にわたって追跡した日本の研究によると、
睡眠時間の長い子どもほど成績が良い。
被験者はそれより少ないが、
研究室のコントロールされた環境で実際に睡眠を観察した研究では、
トータルの睡眠時間が長い子ほどIQが高くなり、
成績優秀な子どもは、IQが低い子どもに比べ、
平均して40〜50分長く眠っていることが分かった。
一卵性双生児を対象にした研究を見ると、
睡眠の大切さがさらに良く理解出来る。
ルイビル・スクール・オブ・メディスンの
ロナルド・ウィルソン博士は、
1980年代に一卵性の双子に関する研究を始めた
(ちなみにこの研究は現在も続いている)。
数百組の双子を対象に、
幼少期から数十年にわたって追跡調査を行った。
とくに注目したのは、双子で睡眠時間に差があるケースだ。
睡眠時間の違いが発達にどのように影響するかを観察する。
10歳になると、双子で睡眠時間の長い方は、
短い方に比べ、
知性と学業成績がかなり優れているという結果になった。
読解力を測る標準テストで点数が高く、語彙も豊富だ。〉
、、、すごくないですか?
一卵性双生児のうち、
睡眠が長い方が、
睡眠が短い方よりも、
IQが高く、学業成績も上がるのです。
日本の経営者、吉越浩一郎さんが、
「寝ないなんて怠惰だ」
と言っている意味がよくわかります。
この本に関しては動画でも解説してますので、
興味ある人は是非ご視聴ください。
▼参考リンク:睡眠は最強の解決策である
https://youtu.be/JCbpVyzZFe8
●第5位 『ブラック・スワン(上・下)』
読了した日:2019年7月20日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:ナシーム・ニコラス・タレブ
出版年:2009年
出版社:ダイヤモンド社
リンク:
https://bre.is/YBk9MLMu8
▼140文字ブリーフィング:
この数年で最もインパクトのあったビジネス書は、
タレブの『反脆弱性』でした。
それよりも前に書かれた本書は、
その副読本として優れています。
本書を読むと『反脆弱性』をよりよく理解できる。
まず、「ブラックスワン」とは何かから入りましょう。
「黒い白鳥」という意味ですが、
「白鳥が白い」と思い込んでいる人からすると、
「予期せぬ出来事」なわけです。
ヨーロッパのひとは実際長きにわたってそう思っていたのですが、
オセアニアを発見した際、
「黒い白鳥」を文字通り見つけます。
それ以来、「あり得ないような出来事」を、
「ブラック・スワン」と呼ぶようになります。
タレブはこの「ブラックスワン」の概念を、
ビジネスの世界に敷衍し、
「リーマンショックを予言した」ことで、
世界的な名声を得、
それまでプロパーな経済学者の中では異端とされていた彼が、
世界の識者から教えを請われるほどになるのです。
タレブのブラックスワンの定義とは、
それではいかなるものなのでしょう?
→P3〜4
〈この本で黒い白鳥(ブラック・スワン)といったら、
それはほとんどの場合、次の三つの特徴を備えた事象を指す。
第一に、異常であること。
つまり、過去に照らせば、
そんなことが起こるかもしれないとはっきり示すものは何もなく、
普通に考えられる範囲の外側にあること。
第二に、とても大きな衝撃があること。
そして第三に、異常であるにもかかわらず、
私たち人間は、生まれついての性質で、
それが起こってから適当な説明をでっち上げて筋道を付けたり、
予測が可能だったことにしてしまったりすること。
ちょっと立ち止まって、
この三つの特徴をまとめてみよう。
普通は起こらないこと、とても大きな衝撃があること、
そして(事前ではなく)事後には予測が可能であることだ。〉
、、、どうでしょう?
1.異常である。
2.とても大きな衝撃がある。
3.それにもかかわらず、
事後的に人々は「予測可能だった」と言い立てる。
この3つの条件を備えた出来事は、
21世紀になってから「頻度が増えている」
と思いませんか?
リーマンショックがまさにそうでしたし、
2011年の東日本大震災と、
福島第一原子力発電所の事故もそうです。
トランプ大統領当選もそうですし、
ブレグジットもそうです。
「ブラックスワン」が、
もはや例外的な事象ではなく、
「日常の一部」となるとき、
私たちは生き方を再考しなけれなならなくなります。
ブラックスワンが頻発する世界において、
「知識」は物事を誤らせる要因になる、
とタレブは言います。
もっと言うと、
「知識に基づく予測と統御」が、
ブラックスワンに対して最も脆弱な状態を作り、
破局的な被害をもたらすのだ、と。
原発事故以前の東京電力、
リーマンショック以前のアメリカの投資家などを、
考えるとわかりやすいでしょう。
彼らは知識がなかったからではなく、
知識に基づく予測と統御によって、
未来は予見可能だと考えたそのことにより、
社会を破局に晒したのです。
では、このような時代に、
私たちはどのように生きるのか?
タレブは取り得る戦略は、
「バーベル戦略」だと言います。
当メルマガでも何度も解説していますので、
詳述はしません。
動画を出しているので興味のある方はご参考に。
▼参考リンク:バーベル戦略とは何か
https://youtu.be/LYR3RCHVHv8
タレブの言うバーベル戦略とは、
可能な限り「超保守的かつ超積極的」になることです。
しかし多くの場合、
一般の人が「保守的であるべき」と考える部分では、
タレブは超積極的にリスクを取り、
一般の人が「積極的であるべき」と考える部分では、
タレブは超保守的にリスクを避けます。
その部分を引用します。
→P215
〈自分自身に関わることでも、
私は、あるときはものすごく保守的で、
そうでない時はものすごく積極的だ。
そういう人は珍しくないかもしれない。
でも、私が保守的になるのは他の人がリスクを取るところだし、
積極的になるのは他の人が用心するところだ。
小さな失敗はそれほど心配しない。
大きな失敗、とくに致命的になりそうな失敗はとても心配する。
投機的なベンチャー企業より、
「有望な」株式市場、とくに「安全な」優良株に不安を感じる。
後者は見えないリスクの代表だ。
前者は、変動が大きいのが最初から分かっているし、
投資する額を小さくして、
裏目に出た時の損を抑えることができるから、
不意を突かれて驚く事はない。
世に騒がれる華々しいリスクは、それほど心配しない。
たちの悪い隠れたリスクを心配する。
テロを心配しない。糖尿病を心配する。
はっきり見える不安だからと言う理由で人が普通に心配することよりも、
私たちの意識の外側にあって人の話に出てこない、
そんなことのほうを心配する
(もう一つ、私はあんまりあれこれ悩まないという方も告白しておく。
つまり、私は自分でなんとかできることしか心配しないようにしている)。
私は恥をかくことよりチャンスを逃すことの方を心配する。
結局、これは全部、
ちょっとした意志決定のルール一つに根ざしている。
良い方の黒い白鳥にさらされ、
失敗しても失うものが小さい時はとても積極的になり、
悪い方の黒い白鳥にさらされているときはとても保守的になる。〉
、、、先ほどの睡眠の話もちょっと関係があります。
私もタレブに倣ってバーベル戦略をとっていますが、
私が超保守的になるのは、
「睡眠不足を徹底的に避ける」というところです。
多くの人はこのリスクを平気で取ります。
私が逆に「積極的」なのは、
微量の放射能のリスク、
BSEや鳥インフルなどの流行性伝染病のリスク、
ワクチン接種の副作用のリスクなど、
恐怖をあおる形で報道される、
「極度に死ぬ確率の低いリスク」です。
こちらは多少リスクをとったとしても、
「生活が安定していること」のほうが大事です。
福島の事故では、放射能ではなく、
「入院生活のリズムが変わった」ことで、
多くの老人が命を失いました。
鳥インフルなどは私の専門分野なので、
全然大丈夫なときに世間が騒いでいたり、
ぜったいヤバいときに、
世間が騒いでいなかったりすることが、
本当に多くあります。
「派手に喧伝される『特別な事故や病』よりも、
睡眠不足や運動不足や栄養の偏りを恐れよ」
というのがタレブ的な姿勢です。
そんなわけで、
「リスクとどう付き合うか」は、
生き方の問題でもあります。
常識が通じない時代の生き方を、
私は自分の身をもって実験中です。
当メルマガを読むことで、
皆様のバーベル戦略にも、
何らかのお役に立てていただければ幸いです。
(2,580文字)
●第4位 『知性は死なない』
読了した日:2019年4月13日
読んだ方法:札幌のブックオフで購入(889円)
著者:與那覇潤
出版年:2018年
出版社:文藝春秋
リンク:
https://amzn.to/2U6o988
▼140文字ブリーフィング:
こちらは、
訪れるといつも、
年の離れた友人のように接してくださる、
札幌の木村さんという方と、
「札幌の面白いカフェ巡り」にご案内いただいたとき、
ブックオフで「出会い頭」に買いました。
それを4月にインドに行く旅行鞄の中に突っ込んであったのです。
そして、人を5時間待つことがあったのですが、
(インドではわりと良くあることです)
その間に一気読みしました。
夢中で読みましたね。
そんで、今年の後半、約半年かけて、
当メルマガのコーナー「本のカフェ・ラテ」にて、
4回に渡って解説しました。
なので本書の内容は私の血肉となっています。
あの連載をどれだけの人が読んでくれたかはわかりませんが、
皆さんにも何らかのお役に立てたならばいいなぁ、
と思っています。
そんなわけなので本書の詳述は割愛します。
興味ある人は「本のカフェ・ラテ」を、
メルマガアーカイブブログとかで探してみてください。
大学准教授だった與那覇さんが、
うつ病を患い、
それによって魂の巡礼をした足跡を、
この本は追体験させてくれます。
本書は「うつ病って何?」
ということを知るのにも有用ですので、
そういった方にもお勧めです。
当事者として與那覇さんが、
「うつ病に関する10の誤解」を、
本書の冒頭で紹介しているのでそちらだけ引用しておきます。
【うつ病に対する10の誤解】
誤解1.うつは「こころの風邪」である。
誤解2.うつ病は「意欲がなくなる」病気である
誤解3.「うつ状態」は軽いうつ病である
誤解4.うつの人には「リラックス」をすすめる
誤解5.うつ病は「過労やストレス」が原因である
誤解6.うつ病に「なりやすい性格」がある
誤解8.うつ病は「遺伝する病気」である
誤解9.「カウンセリング」が重いうつ病に効く
誤解10.うつ病は「認知療法」でなおる
(732文字)]]>2019年版・陣内が今年観た映画ベスト10(10〜8位)http://blog.karashi.net/?eid=4672020-04-21T09:18:00+09:002020-01-28T00:19:16Z2020-04-21T00:18:00Z第118号 2019年12月17日配信号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 2019年版・陣内が今年観た映画ベスト10(10〜8位)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
Amazonプライムに入会してから、
月に平均すると10本ぐらいの映画を観るようになりました。
電車...陣内俊陣内が先月観た映画
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 2019年版・陣内が今年観た映画ベスト10(10〜8位)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
Amazonプライムに入会してから、
月に平均すると10本ぐらいの映画を観るようになりました。
電車やバスや新幹線で、本を読む代わりに、
タブレットで映画を観るようになって、
飛躍的に映画を観る本数が増えました。
映画は小説と同じで「他人の靴を履いて人生を歩く」、
という「疑似体験」を与えてくれます。
本と同じくランキングはあまり好きじゃないので、
年に一度だけの特別企画です。
「今年読んだ本」と同じく、
前編で10位〜8位、中編で7位〜4位、後編でベスト3を紹介します。
皆様の映画選びのお役に立てれば幸いです。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
●第10位 『翔んで埼玉』
鑑賞した日:2019年6月23日
鑑賞した方法:マニラに向かう飛行機の中で観賞
監督:武内英樹
主演:GACKT、二階堂ふみ
公開年・国:2019年(日本)
リンク:
http://www.tondesaitama.com/
▼140文字ブリーフィング:
この映画はフィリピンに行く飛行機の中で観ました。
ちょっと気になってたのだけど、
飛行機で見つけて「ラッキー」って。
そんで、非常に面白かった。
東京と首都圏(千葉、神奈川、埼玉)には、
「都会、田舎ヒエラルキー」みたいなものがあって、
それが非常に複雑な「カースト」を形成している。
そこでは「被差別民」がおり、
「支配階級」がいる。
そして「マウンティング」も行われるし、
「出身地・居住地ロンダリング」も行われる。
「どこまで吉祥寺駅周辺やねん!
いや、西部新宿線のほうが近いやないかい!!問題」など。
そういった悲喜こもごもを、
とんでもなく味付けの濃いファンタジーで、
コメディーとしてエンターテイメント化するという、
非常に高度なことをしています。
欺されたと思って見てみてください。
面白いから。
新感覚ですね、これは。
イチゴ大福とか、
生ハムメロンとか、
明太子パスタとか、
そういうのを最初に発見した人は偉いと思うんですよ。
「翔んで埼玉」も、
「これが面白い」と思ったところが偉いと思います。
(432文字)
●第9位 『グリーンブック』
鑑賞した日:2019年7月2日
鑑賞した方法:マニラ→成田の飛行機で観賞
監督:ピーター・ファレリー
主演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ
公開年・国:2018年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/RPFhi0NWl
▼140文字ブリーフィング:
これは先ほどのフィリピンからの、
帰り道の飛行機のなかで見ました。
端的に素晴らしい映画でした。
アカデミー作品賞も納得です。
「グリーンブック」とはちなみに、
1960年代当時のアメリカの南部で、
「黒人でも泊めてくれるホテル」を
リストアップした冊子で、実在していました。
実際の黒人天才ピアノ奏者(シャーリー)と、
彼の運転手となったイタリア系の
ニューヨーカー(トニー)の友情の話です。
最初彼は黒人が使った自分の家のコップを
ゴミに棄てるほどの差別主義者だったのですが、
シャーリーとの道中、
だんだんと黒人差別をする他の白人に、
腹が立ってくるようになってきます。
トニーとシャーリーの変化っていうのがすごく良くて、
差別する側も差別される側も、
「人間を非人間化する社会システム」によって、
目が曇っているんですよね。
それを、「一緒に過ごす」ことが、
浄化していくっていう構図がすごく良い。
「差別主義者」の別名は「世間知らず」だと、
私は常日頃から思っています。
「中国人は、、、」
「韓国人は、、」
「黒人は、、、」
とか言う輩(やから)って、
中国にも韓国にもアメリカにも行ったことがなく、
中国人、韓国人、黒人の
個人的な知り合いがいない人が大多数です。
それって食べたことない料理が「不味かった」
って言ってるのと同じで、
とても頭の悪い行為です。
その意味で「偏見」とは、
自らの無知と経験の未熟さと、
視野の狭さをひけらかす行為です。
シャーリーもトニーもそういう意味で、
一緒に旅をする前は偏見にまみれていたのだけど、
彼らは同じ空気を吸うことで視野が広がり、
偏見という自分と他者を不自由にする
「目に見えない鎖」から自由になるんですよね。
それが見ていてすがすがしい。
さっきの「翔んで埼玉」も実は同じ構造があって、
「都心生まれ」と被差別階級の「埼玉生まれ」が、
同じ時間を過ごすことで、
お互いの偏見を溶かしていく物語でもあります。
誰もそう思ってないし、
こんなことを言ったのは世界で私が初めてだと思いますが笑、
「翔んで埼玉」と「グリーンブック」は、
同じジャンルの映画なのです。
(826文字)
●第8位 『ノーカントリー』
鑑賞した日:2019年3月6日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典
監督:コーエン兄弟(ジョエル・コーエン)
主演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン
公開年・国:2007年(アメリカ)
リンク:
https://goo.gl/7o9G6J
▼140文字ブリーフィング:
コーエン兄弟の映画が好きです。
この数年で立て続けに見ているのですが、
『ノーカントリー』は本当に、
めちゃくちゃ面白かったです。
大好きな映画の一本になりました。
コーエン兄弟ってユダヤ教徒なので、
「ユダヤ的世界観の匂い」が、
そこはかとなくする感じもとても好きです。
「世界の不条理性」っていうのがいつも入っている。
その「世界の不条理」を象徴する存在が、
この映画の場合、犯人のサイコパス、
アントン・シガーです。
サイコパスが登場する映画が私は大好物なのですが、
シガーはそのなかでも史上ナンバーワンでした。
彼の「ポンプの兵器」は一生脳にこびりつきます。
最高!
浦沢直樹の「モンスター」を思い出しました。
「彼を観たら人生が終わる」という恐ろしさ。
もう、震えますね。
最高にアガります。
フォー!!ってなります。
多分私もどこかぶっ壊れてると思うんですが笑。
現実世界でサイコパスに出会った場合、
ちなみに私は一目散に逃げます。
けっこう「鼻は効く」方なので、
私は「そういった人」の被害を、
あまり受けていないほうだと思います。
映画で予習しているのが、
功を奏しているのかもしれません笑。
(476文字)
]]>2019年版・陣内が今年読んだ本ベスト10(10〜8位)http://blog.karashi.net/?eid=4662020-04-20T09:16:00+09:002020-01-28T00:18:13Z2020-04-20T00:16:00Z第118号 2019年12月17日配信号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■2 2019年版・陣内が今年読んだ本ベスト10(10〜8位)
お待たせしました、年末特別企画です。
普段私は読んだ本に点数をつけたりランキングしません。
ランキングすることで切り捨てられる大切なも...陣内俊陣内が今年読んだ本ベスト10
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■2 2019年版・陣内が今年読んだ本ベスト10(10〜8位)
お待たせしました、年末特別企画です。
普段私は読んだ本に点数をつけたりランキングしません。
ランキングすることで切り捨てられる大切なものがあるからです。
なので、この企画は「年に一度だけ」の特別企画です。
前編は10位〜8位まで、
中編は7位〜4位まで、
後編はベスト3のカウントダウン形式で、
ご紹介していきます。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
●第10位 ティール組織
読了した日:2019年11月16日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:フレデリック・ラルー
出版年:2018年
出版社:英治出版
リンク:
https://bre.is/DHKshut7
▼140文字ブリーフィング:
こちらは先週紹介したばかりなので、
記憶が新鮮です。
けっこうこういう「年間ランキング」って、
じつは「後半のほうが有利」なんですよね。
記憶に焼き付く度合いが強いわけで。
そういうバイアスを排除しようしようと思って、
今年1年間に読んだ本のなかから、
純粋に面白かった10冊を選んだつもりではいます。
『ティール組織』をなぜそれでも選んだかというと、
なんか、今後じわじわ内容が響いてきそうだなと、
直観しているからです。
「自己組織化」と「自主経営」がキーワードです。
この数年で読んだビジネス書的な本でダントツに面白かった二つが、
ナシーム・ニコラス・タレブの『反脆弱性』と、
ミハイル・チクセントミハイの『フロー体験』だったのですが、
この二つの内容を「組織」という共通項で因数分解すると、
『ティール組織』になる感じがします。
何のことかわからないですよね。
チクセントミハイは、
「内発的動機付け」を重視します。
産業構造が変わり、
仕事の内容が単純作業やアルゴリズム作業ではなく、
創造的・創発的なものになっていくとき、
その動機付けは「アメとムチ」ではなく、
「内発的」になるべきだと彼は論証するのです。
タレブは、「未来が読めない不確実な現代」において、
唯一の取り得るべき戦略は、
「バーベル戦略」だと言います。
つまりそれは、
「確実に業績を上げられること」と、
「実験的なパイロットプロジェクト」の、
組み合わせにあると。
内発的動機付けと、
バーベル戦略、
この二つを可能にする組織的な構造、
ということになると、
それは「ティール組織」になるのではないかと、
私は思ったわけです。
最後の部分で著者は、
組織がティールになるだけでなく
社会全体もティールになる未来を「予言」します。
いや、そのような未来を作っていかねばならない、と。
なぜか?
「経済成長」の「最後のボトルネック」である、
「環境負荷」がもう限界に来ているからです。
「ゼロ成長社会」は歴史の必然だと著者はいいます。
環境負荷を計算に入れてしまえば、
経済成長というのは、
「未来からの前借りをGDPと呼ぶ行為」だからです。
そして「自然界の生態系に似ているティール組織」は、
「本能」によってそれらを防ぐであろう、と。
最後に私の大好きな経営者のひとり、
patagoniaのイヴォン・シュイナードの言葉が引用されているので、
それを引用します。
彼のいっていることは、
私が今年の6月に参加した、
フィリピン・マニラでのGlobal Workplace Forumでの、
「Business is Mission」と全く同じでした。
→P333〜334
〈私はもう50年近くビジネスマンをやってきた。
自分を「アル中」あるいは「弁護士」であると
認めたがらない人がいるのと同じように、
私は自分が「ビジネスマン」なんて、
なるべくなら認めたくない。
私はこの職業を尊敬したことがない。
自然の敵となり、自然の文化を破壊し、
貧乏人から奪い、金持ちに与え、
工場からの排出物で地球を汚すという
批判を受けなければならないのは、まずはビジネスだからだ。
しかし一方で、ビジネスは食料を生産し、
病気を治し、人口を抑制し、人々を雇い、
大体において人々の生活を豊かにしてくれる。
そして、自分たちにとって大切なものを失わずに、
こうした善行を積み上げて利益を上げることも出来る。〉
(1,358文字)
●第9位 勝利者キリスト
読了した日:2019年10月30日
読んだ方法:山田和音君に借りる
著者:グスタフ・アウレン
出版年:1982年(原著初版1930年)
出版社:教文館
リンク:
https://bre.is/u2ubhgZb
▼140文字ブリーフィング:
こちらも最近紹介したばかりですね。
「贖罪論」の歴史をたどり、
「古典的贖罪思想」が、
現代によみがえる必要がある、
ということを論証している本です。
現代のキリスト教会で主流の贖罪論は、
カトリックもプロテスタントも、
「ラテン型」と呼ばれるものである、
というのはこの本を読むまで知りませんでした。
「ラテン型」の顕著な特徴は、
「論理整合性」です。
そして贖罪が「法律の類比」で語られることも、
この贖罪思想の特徴です。
曰く、
「私たちは神の前に有罪だ。
正しい審判者である神は、
有罪な者を無罪とすることはできない。
キリストは私たちの罪を十字架で、
『代わりに担って』くださった。
だから私たちは信じるなら、
神の前に無罪を宣言される。」
というやつです。
クリスチャンなら1万回ぐらい聞いたことがあるでしょう。
では「古典的贖罪思想」とは何か?
それは救済を、
「神と悪魔との戦い」の類比で語ります。
そこでは「論理整合性」や、
「法的な適合性」が若干犠牲になります。
つまり、神は「法を守る方」ではなく、
「法を超越される方」になるのです。
そして悪魔とその力の根拠である「罪と死」が、
神の愛の故に、キリストによって制服され、
私たちはその勝利にあずかるのです。
この「救済の物語」の違いは、
じつは私たちの信仰の質の違いにもなってくる。
良い神学書を読むと、
「世界が文字通り広がる」体験をします。
「自分が真理のすべてだと思っていたものは、
真理の一部に過ぎなかった」と。
つまり、神の広さ、高さ、長さ、深さを知るのです。
良い神学とは、それにより神を知り愛するようになる神学です。
「神学など必要ない」と、
豪語するクリスチャンがたまにいますが、
その人の信仰の天井はたかが知れているでしょう。
いずれ頭打ちになります。
理由は、深さがなくなるから。
薄っぺらいままの信仰で渡りきれるほど、
現在の信仰者を取り巻く現状は甘くないのです。
(661文字)
●第8位 量子革命 アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突
読了した日:2019年1月26日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:マンジット・クマール(青木薫訳)
出版年:2017年
出版社:新潮文庫
リンク:
https://goo.gl/M2aRij
▼140文字ブリーフィング:
自然科学系の本とか、
物理学・数学系の本を読むのが大好きです。
本書はそのような本の中でも、
数年前に夢中になったサイモン・シンの、
『フェルマーの最終定理』に匹敵する面白さでした。
「量子論」ってじつは、
現代世界を読み解くのに「必須科目」のひとつなのですよね。
じっさい、現代の優れた創作物、
つまり映画や小説の中に、
量子論や多元世界を扱ったものが多いのは、
そういった背景があります。
『アベンジャーズ エンドゲーム』も、
量子論による多元世界が出て来ますし、
アカデミーのアニメ部門を総なめにした
『スパイダーマン スパイダーバース』は、
多元宇宙の話です。
「パラダイム」という言葉の生みの親、
科学史家のトーマス・クーンは、
「天動説から地動説への変化」
「ニュートンの古典力学から、
アインシュタインの相対性理論への変化」
をもって、「科学におけるパラダイムの転換」と表現しました。
パラダイムが変わるとき、
人々の「世界の見方」が変わります。
古典力学から相対性理論への変化は衝撃です。
「時間と空間は不変」から、
「時間と空間は相対的だ」に変わるのですから。
唯一変わらないのは「光の速度=c」だというのを、
アインシュタインは発見したわけです。
この発見がなければカーナビも使えないし、
ポケモンGOも、ドラクエウォークもありません。
人工衛星からGPS信号は、
「時間と空間のゆがみの補正」をしなければ、
正確な位置情報を知らせることができないからです。
「絶対時間・絶対空間」のパラダイムからは、
GPSは生まれないのです。
「量子論」とは、ではいかなるものか?
「相対性理論」という物理学の体系が前提とする、
「宇宙は観測可能な実在からなる」という事実を疑うのが、
量子論です。
「観測するまで、光子などの微粒子は、
『AかBかどちらかの状態で存在している』」
というのです。
「シュレーティンガーのネコ」っていうやつです。
放射性同位体を使った思考実験の箱の中で、
ネコは「生きた状態と死んだ状態が半々に存在している」
というたとえで有名なやつ。
観測したときにはじめて、
位置や状態が確定する。
それまで光子や放射性同位体は、
「Aの可能性とBの可能性を、
数%ずつ含んでいる状態にある」というのです。
そして観測によってAと確定したとき、
その「確定」は、
何万光年も離れた粒子の状態に影響を与える、
というのです。
もはやSFの世界ですが、
これ、実験室での実験に成功しているのです。
そうすると、
影響を与えた光子と、
影響を受ける光子の間で、
「光の速さを超える速度で情報が伝達された」
ことになる。
そんな「ブードゥー教の魔術」みたいなことが、
世界に起こるはずはない、
といってアインシュタインはボーアに反対しました。
有名な「神はサイコロを振らない」という言葉は、
ここで生まれます。
しかしその後の数々の実験で、
「どうやら神はサイコロを振るらしい」
という証拠のほうが多くなってきた。
これは「実在とは何か」に関する、
20世紀までの前提を揺るがすことになります。
つまり、超微細な世界では、
物事は「確率に支配される」のであって、
「因果関係に支配される」わけではない。
これって実は、
さっき紹介したティール組織の話とちょっと関係がある。
量子論の世界から派生した物理学の分野に、
「複雑系の科学」があります。
複雑系というのは、
「アマゾンで蝶が羽ばたくと、
テキサスで竜巻が起きる」
という比喩が有名ですが、
「因果関係で説明できないことが証明されている」世界です。
「予測と統御」が成り立たない。
非複雑系は「機械の比喩」で語れます。
ジャンボジェットのようなもので、
ひとつのパーツの影響は、
因果関係で予測できる。
ところが複雑系は、
「ボウルいっぱいのスパゲッティ」のようなものです。
一本のスパゲッティを抜くと、
任意のもう一本に何が起きるか、
「誰も予測できないということが数学的に証明されている」
のです。
そこにあるのは「確率」だけです。
世界は今後ますます、予測と統御が成り立たなくなり、
確率が支配するようになる。
つまり「量子論的な世界」になるのです。
、、、だとしたら、
そこで有効な組織形態は、
「自己組織化・自己進化」できる形態になる。
予測と統御のパラダイムに基づく、
「リーダーシップ/マネジメント」という概念は、
無用の長物どころか、
足を引っ張るようになる、というのです。
実は社会や経済や政治の「思想」って、
物理学の世界でのパラダイムシフトが、
それに先行して起きることが多いんですよね。
自然科学と社会科学は繋がっていて、
互いに影響し合います。
自然科学のパラダイムシフトが、
多くの場合先行するので、
自然科学に詳しいと、
社会科学にも強くなります。
(1,891文字)
●番外編
ここからは、惜しくもベスト10入りを逃した、
それでもかなり面白かった本を紹介していきます。
文字数が際限なく膨らむのを防ぐため、
こちらは有名無実と化している「140文字」の制約を、
きっちり守りつつ。
●ファシスト的公共性
読了した日:2019年1月11日
読んだ方法:義理の兄から誕生日プレゼント
著者:佐藤卓己
出版年:2018年
出版社:岩波書店
リンク:
https://goo.gl/Lutsqp
▼140文字ブリーフィング:
現代は「ポピュリズムの時代の再来」
と言われています。
20世紀初頭のヒトラー、ムッソリーニらの台頭と、
同じ事が繰り返されている。
歴史は繰り返す、とヘーゲルは言いましたが、
それがじっさいに起きている。
本書は過去の事例を引きながら、
現代を再解釈させてくれる良書です。
(130文字)
●ぼぎわんが、来る
読了した日:2019年2月9日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:澤村伊智
出版年:2015年
出版社:角川書店
リンク:
https://goo.gl/eDGqu4
▼140文字ブリーフィング:
映画化されたことで本作を知りました。
本書を読んでから澤村伊智にちょっとハマりました。
スティーブン・キングがそうであるように、
ホラー小説って、じつは現実の社会の批判になっています。
澤村さんも同じで、彼は現代社会の機能不全家族を、
ホラーという容れ物によって批判しようとしています。
(138文字)
●死にがいを求めて生きているの
読了した日:2019年11月17日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:朝井リョウ
出版年:2019年
出版社:中央公論新社
リンク:
https://bre.is/ksgC8JDt
▼140文字ブリーフィング:
20代のときにこれを書いている、
朝井リョウさんの才能に驚愕しました。
1980年代以降生まれの人は特に、
彼が書いたものを読んだ方が良いと思います。
あと、1970年代生まれ以前の人々が、
現代の若者の皮膚感覚を知るためにも、
非常に有用な資料になります。
(123文字)]]>陣内が先週読んだ本 2019年11月11日〜17日 『死にがいを求めて生きているの』他http://blog.karashi.net/?eid=4652020-04-14T09:24:00+09:002020-01-15T00:26:32Z2020-04-14T00:24:00Z第117号 2019年12月10日配信号
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■2 陣内が先週読んだ本
期間:2019年11月11日〜17日
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先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
とい...陣内俊陣内が先週読んだ本
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■2 陣内が先週読んだ本
期間:2019年11月11日〜17日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。
ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)
忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。
●デジタル・ミニマリスト
読了した日:2019年11月11日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:カル・ニューポート
出版年:2019年
出版社:早川書房
リンク:
https://bre.is/UnFkokgz
▼140文字ブリーフィング:
Facebook、YouTube、Instagram、
Twitter、Tiktokなどは、
現代社会で巨大な富を生み出すと共に、
スマホというツールを通して、
我々から二つのものを奪います。
ひとつは「注意」、
もうひとつが「時間」です。
上記のビジネスモデルは、
「アテンション・エコノミー(注意経済)」
と呼ばれていて、
消費者が1秒でも多くそのコンテンツにとどまれば、
その秒数が収益につながる収益構造になっているため、
作り手のエンジニアは意図的に、
「行為依存」という中毒状態を、
消費者に望むようになります。
パチンコやたばこなどと同じく、
消費者がそれに依存すればするほど、
作っている会社は得をするのです。
引用します。
→P13
〈デジタル・ツールは
使わずにいられなくなるように設計されている。
しかもその行為依存を助長する文化的な圧力はすさまじく、
小手先の対処法では到底歯が立たない。
この問題を追及した結果、
私は次のような結論に達した。
必要なのは、自分の根本をなす価値観に基づいた、
妥協のない“テクノロジー利用に関する哲学”だ。
どのツールを利用すべきか、
どのように使うべきかという問題に明確な答えを提示できる哲学。
そして、選んだツール以外の一切を
無視できるだけの自信を与えてくれることも、
同じくらい重要な条件だ。
この二つの条件を満たす考え方は数多くある。
極端な例では、
ネオ・ラッダイト(ラッダイトは技術革新反対者のこと)が挙げられる。
新しいテクノロジーの
ほぼすべての利用を控えようと主張する人々だ。
これと対極に位置するのは、
自己定量化に熱中する人々だろう。
彼らは人生の最適化を目標とし、
生活のあらゆる領域にデジタル・デバイスを組み込む。
そういった多種多様な哲学を吟味するうち、
テクノロジー過多の時代をうまく渡っていきたい人々に
最適な答えとなりそうな一つが浮かび上がった。
私はそれを“デジタル・ミニマリズム”と命名した。
デジタル・ツールと付き合う上では、
”少ないほど豊かになれる”とする考え方だ。〉
著者は「注意」と「時間」を、
テック企業に搾取されないために、
「デジタルミニマリズム」を提唱します。
消費主義に人生を奪われないために、
モノをなるべく持たないようにする
「ミニマリズム」が発達したのと同じように、
これからの時代、
デジタル・ミニマリズムのような思想は、
私たちの心と人生を守る上で、
非常に重要な役割を果たすことになる、
と私は本書を読んで確信しました。
ちなみに私はデジタル・ミニマリストと言って良いでしょう。
なんせ、スマホを持ってないんですから。
その結果「注意」と「時間」を搾取されない。
だからこそ毎週こんな分量の文章を書けるのです。
「時間」を奪われるダメージは大きいですがそれ以上に、
「注意」を奪われることに私は耐えられません。
祈るにも考えるにも何かを生み出すにも、
「断片化した思考」は、
研いでいない包丁とおなじで、
何の役にも立ちませんから。
私は自分の能力を最大化するために、
スマホを拒絶しています。
しかしSNSなどを肯定する人々の中には、
「いや、人とつながるのは素晴らしいじゃないか!」
という人もいます。
それは否定しませんし、
私がSNSを「卒業」したけれど、
アカウントは削除していない理由もそこにあります。
しかし、スマホで1時間おきに
「いいね」をチェックするみたいな使い方は、
人をつなげるより、むしろ人を分断し、
孤独感を助長する、
という調査結果が出てきています。
引用します。
→P168
〈これは2017年に、
権威ある学術誌《アメリカン・ジャーナル・
オブ・プリベンティブ・メディシン》に掲載された。
プリマック率いる研究チームは、
選挙期間中の世論調査でランダムに
サンプルを抽出するサイト同じテクニックを使い、
19歳から32歳までの成人を全国代表サンプルとした。
そして被験者に対し一連の質問をして、
被験者自身が認識する社会的孤独(PSI)
――いわば孤独指数――を計測した。
また人気のあるソーシャルメディア・サービスを
11種類選び、それぞれの利用頻度と利用時間を尋ねた。
解答を集計したところ、
ソーシャルメディアを利用すればするほど、
孤独指数は上昇する傾向にあることが分かった。
ソーシャルメディアの利用頻度と利用時間が
多い方から4分の1までに属する被験者は、
少ない方から4分の1に属する被験者に比べ、
孤独指数はなんと3倍高かった。
年齢、性別、交際相手の有無、世帯収入、
学歴などの要員を調整した後でも結果は変わらなかった。
NPRの取材に応じたプリマックは、
この結果に驚いていると延べている。
「ソーシャルメディアなのですから、
社会的(ソーシャル)なつながりが強まると思うでしょう?」
しかし、データは明快だった。
そういったサービスを使って
”つながればつながるほど”、
孤独感は強まる傾向が認められる。〉
、、、SNSでつながればつながるほど、
私たちは孤独になります。
時間も注意力も奪われます。
私はデジタルなダイエットは必須だと思いますが、
まぁ、強制はもちろんしません。
各自が決めたら良いと思います。
ただ、ダイエットすると幸せになるよ、
というのは証言しておきます。
こちらの書籍はYouTubeでもご紹介していますので、
ご興味のある方は見てみてください。
▼参考リンク:デジタル・ミニマリスト
https://youtu.be/6Ef3rHFHdTI
(2,201文字)
●ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
読了した日:2019年11月16日 後半3分の1の「実践」はながし読み
読んだ方法:図書館で借りる
著者:フレデリック・ラルー
出版年:2018年
出版社:英治出版
リンク:
https://bre.is/DHKshut7
▼140文字ブリーフィング:
これもかなり面白かったです。
ボリュームがすごい本なので、
後半の「実例」は流し読みしましたが、
前半の「理論」のところだけでも十分に面白い。
「組織のあり方」を、
石器時代まで遡って、
それらがどう「進化」してきたかを分析し、
そして現代社会に到来している、
「未来の組織形態=ティール組織」について語る本です。
それではまず、過去に組織はどう「進化」してきたか、
これを著者は「色分け」しながらこう説明します。
1.無色
血縁関係中心の小集団。
「自己と他者」「自己と環境」という区別がない。
2.マゼンダ(神秘的)
数百人の人々で構成される部族への拡大。
自己と他者の区別が始まるが世界の中心は自分。
物事の因果関係の理解が不十分で神秘的。
3.レッド(衝動型)
組織生活の最初の形態、数百人から数万人規模。
力、恐怖による支配。
マフィア、ギャングなど。
自他の区分、単純な因果関係の理解により分業が成立。
4.アンバー(順応型)
部族社会から農業、国家、文明、官僚統制の時代へ。
時間の流れによる因果関係を理解し、計画が可能に。
規則、規律、規範による階層構造の誕生。
教会、軍隊、官僚。
5.オレンジ(達成型)
科学技術の発展と、イノベーション、起業家精神の時代へ。
「命令と統制」から「予測と統御」。
実力主義の誕生。効率的で複雑な階層組織。多国籍企業。
6.グリーン(多元型)
多様性と平等と文化を重視するコミュニティ型組織の時代へ。
ボトムアップの意志決定。
多数のステークホルダー。
7.ティール(進化型)
変化の激しい時代における生命体型組織の時代へ。
自主経営(セルフマネジメント)、
全体性(ホールネス)、
存在目的を重視する独自の慣行。
、、、読めばわかるように、
通常我々が「組織」と呼ぶのは、
レッド以降です。
あえて現代の日本社会に落とし込むと、
・レッド=前時代的なワンマン社長中小企業
・アンバー=官僚・地方自治体的のような、
めちゃくちゃ「書類や決済」の多い組織
・オレンジ=能力主義の株式会社・多国籍企業
・グリーン=先進的なNPOや社会企業
(『世界でいちばん大切にしたい会社』に紹介されるたぐいの)
・ティール=まだ出てきていないが、あるとしたら多分、
周囲から「不可解な集団」と思われている。
この「ティール」というパラダイムが、
どれだけ異質か?
ティールの世界観に経つと、
リーダーシップやマネジメントという言葉自体が、
前時代的で不要なものになる、といいます。
→P474
〈今日の大規模な組織を支える
リーダーシップやマネジメントという思想は
組織としての成功に制約を与えている。
これは、16世紀、と17世紀に
封建制度という思想が
経済的な成功に制約を与えていたのと同じである
――ゲイリー・ハメル〉
、、、本書では世界中の組織を調査した著者が、
現代社会で未来を先取りしている、
「ティール組織」の実例をいくつか紹介します。
業界は本当に様々で、
看護師の集団から、医療組織、
機械の部品を作る工場から、
エネルギー企業まで多岐にわたり、
規模も数十人から数万人までばらばらです。
しかしその「組織の動き方」に、
共通するものがあることを、
著者は紹介していくのです。
ティール組織はときに中枢神経を持たないクラゲのようです。
現場で働く人数に対し、
「コスト部門」と呼ばれるホワイトカラーの部門が、
異常に小さい。
あり得ないぐらい小さい。
たとえば7000人の看護師を擁するティール企業の、
オランダの「ビュートゾルフ」のスタッフ部門には、
たった30名!しか働いていません。
その全員が看護師をサポートすることのみに献身していて、
彼らには何の決定権はないのです。
組織で働いたことのある人ならわかるでしょうが、
これは非常に「異常な事態」です。
なぜなら通常の組織では常に、
「コスト部門」が意志決定するからです。
それを言い表すビュートゾルフの看護師の言葉が、
脚注に引用されています。
→P119
〈官僚主義は、自分たちは必要な仕事をしていることを
(とりわけ実は必要ないのではないか、と思っているときほど)
証明しようと忙しく動き回っている人々によって築かれていく
――リカルド・セムラー〉
、、、フロリダにあるサン・ハイドローリックスもまた、
ティール組織のひとつとして紹介されます。
この会社は製造業ですが、
会議も文書仕事もありません。
理由は、「忙しくしている」ことに、
無駄な時間を過ごす暇はないからだ、といいます。
→P140〜141
〈サン・ハイドローリックスでは、
以上のすべての手順が徹底的に簡素化されている。
この複雑な状況をすべて理解して統制したいという経営陣は存在しない。
プロジェクトは有機的に、かつ非公式に起こる。
エンジニアはたいてい並行して複数のプロジェクトに携わっている。
彼らは、その時点で最も重要な仕事、
最も緊急な仕事、あるいは最も楽しい仕事は何かを考えながら、
自分の優先順位を常に調整し直す。
グーグルには、
エンジニアたちが毎週金曜日の時間をどう過ごすかを自由に決められる、
「20%ルール」として知られる慣行がある。
サンをはじめとする自主経営(セルフマネジメント)組織の場合、
基本的にこの自由時間が100%なのだ。
全体計画(マスタープラン)は存在しない。
プロジェクト計画ではなく、人員配置を心配する者もいない。
プロジェクト・チームは自然発生的に生まれ、
仕事が終われば解散する。
プロジェクトが時間通り、
あるいは予算通りに進んでいるかを誰も知らない。
なぜならば90%の人々は、文書でスケジュールを書いたり、
予算を立てたりすることを気にしていないからだ。
プロジェクト計画に関する手続きが
一切ないことで膨大な時間が削減される。
要するに、計画書の作成、承認プロセス、
進捗状況の報告、変更点の説明、
スケジュールの組み直し、再見積がないのだ。
もちろん、プロジェクトのための
経営資源を獲得するための政治的な動きも、
プロジェクトが予定通りに進まず、
また予算がオーバーしたときに
責任を押しつける相手を探す必要もない。
私がサンのリーダーの一人、カーステン・リーガルに、
同社の会議室がほとんど使われていないように見えますね、
と話したとき、彼女はあっさりとこう答えた。
「私たちは『忙しくしている』
ことに無駄な時間を費やしていないのです」〉
、、、ティール組織を理解するのに必要な二つの言葉があります。
これが前のパラダイムでいう
「リーダーシップ」と「マネジメント」に替わる言葉です。
その二つの言葉とは何か?
ひとつめは、
「自主経営」
もうひとつが、
「自己組織化」です。
なぜティール組織というパラダイムが、
「アンバー=順応型・官僚型」
「オレンジ=達成型・効率型」や、
「アンバー=多元型」に、
取って代わられると筆者が予測するのか?
それは、世界が「複雑系」になっていくからだ、
というのが筆者の回答です。
引用します。
→P354〜355
〈予測と統御という枠組みで働くと、
人は完全な答えを探したくなってくる。
もし将来が予測できるのであれば、
自分たちの仕事は、
予測できる将来にベストな結果をもたらす解決策を探し出すことになる。
入り組んだ(complicated)世界で予測をすることは有益だが、
複雑な(complex)世界ではあらゆる関連性が失われてしまう。
FAVIのジャン・フランソワ・ゾブリストは、
この違いを説明する比喩を見つけ出した。
ボーイング747などの航空機は
「入り組んだ」システムだ。
数百万の部品がスムーズに連携しないと動かないからだ。
しかし、あらゆる部品は精密に組み立てられているので、
一つの部品を変更すると、
それがどのような結果をもたらすかを予想出来る。
一方、ボウルいっぱいのスパゲッティは、
「複雑な」システムだ。
もちろん、数十の「パーツ」はあるだろうが、
たとえばボウルからはみ出ている
一本のスパゲッティの先を引っ張ると
何が起こるのかを予測するのは事実上不可能なのだ。
予測をすると、
自分が統制しているという安心感を得ることが出来る。
しかし実際には、私たちの生きている組織や世界は
スパゲッティのような複雑なシステムなのだ。
そのようなシステムでは、将来を予測することにも、
ベストの判断にたどり着くために
それまでのやり方を分析することにも意味がない。
習慣的に分析したところで、
自分たちは統制と予測をしているのだという幻想を抱くだけで、
エネルギーと時間を浪費しているに過ぎない。
進化型組織は、完璧な予測など出来ない複雑な世界と、
うまく折り合いを付けられる。
考えられる限りでベストの判断を明確に狙うわけではなく、
すぐに使える実行可能な解決策を狙う。
新しい情報が入ると、それに応じて判断は見直され、
どの時点でも改善が図られる。〉
、、、飛行機の機体には「予測と統御」が成り立ちますが、
ボウルいっぱいのスパゲッティには、
「予測と統御」が成り立ちません。
前者は「非・複雑系」で、
後者は「複雑系」だからです。
なぜそうなるのかも、
数学的に「証明」されています。
では、世界はどちらなのか?
現代の世界は間違いなく、
「複雑系」なのです。
だとしたら、
飛行機の機体を運営するような、
「マネジメントとリーダーシップ」ではなく、
生き物が自分をアップデートしていくやり方、
「自己組織化」と「自主経営」のほうが、
次の時代には主流になっていくのではないか?
という未来予測です。
世界にまだ数えるしかないティール組織が、
厳しい事業環境のなかで、
卓抜した業績を残し続けているのは、
彼らの戦略が時代にフィットしていることの、
ひとつの証拠だといえるでしょう。
(3,855文字)
●夜
読了した日:2019年11月17日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:エリ・ヴィーゼル
出版年:1967年
出版社:みすず書房
リンク:
https://bre.is/uVmfrCwq
▼140文字ブリーフィング:
何度も耳にしたことはあったのだけど、
やっと手に取って読みました。
エリ・ヴィーゼルはナチスの収容所を生き延びた人物で、
収容所の現実を小説として世に問い、
1986年にノーベル平和賞を受賞しています。
彼は経験なユダヤ教徒で神を信じていましたが、
ナチスの収容所での経験が、
「彼の中の神を殺した」といいます。
しかし彼の小説を読むとわかるのですが、
「神が死んだ世界をそれでも生きる彼」のなかに、
「信仰」という言葉では包摂できない、
さらに深い「信仰心」のようなものがあるのがわかるのです。
少年が収容所で絞首台に乗せられたとき、
ヴィーゼルのとなりにいた男が
「神はどこにいるのか?」と呟くシーンは忘れられません。
→P127〜128
〈三人の死刑囚は、
いちどきにそれぞれの椅子に乗った。
三人の首は同時に絞索の輪に入れられた。
「自由万歳!」と、二人の大人は叫んだ。
子どもはというと、黙っていた。
「〈神さま〉はどこだ、どこにおられるのだ」。
私のうしろでだれかが尋ねた。
収容所長の合図のもと、三つの椅子が倒された。
全収容所内が完全に静まりかえった。
地平線には、太陽が沈みかけていた。
「脱帽!」と、収容所長がどなった。
その声はかれていた。
私たちはというと涙を流していた。
「着帽!」
ついで行進が始まった。
二人の大人はもう生きていなかった。
膨れ上がり、青みがかって、彼らの舌はたれていた。
しかし三番目の綱はじっとしてはいなかった
――男の子はごく軽いので、まだ生きていた…。
三十分あまりというもの、
彼は私たちの目のもとで臨死の苦しみを続けながら、
そのようにして生と死の間を闘っていた。
そして私たちは、彼をまっこうから見つめねばならなかった。
私が彼のまえを通ったとき、彼はまだ生きていた。
彼の舌はまだ赤く、
彼の目はまだ元気が消えていなかった。
私のうしろで、さっきと同じ男が尋ねるのが聞こえた。
「いったい〈神〉はどこにおられるのだ」
そして私は、心の中で、
だれかの声がその男に答えているのを感じた。
「どこだって?ここにおられる
――ここに、この絞首台につるされておられる・・・」
その晩、スープは死体の味がした。〉
、、、神は、絞首台につるされておられる。
人間はこんなにも残酷になれるのだ、
ということを示したのがナチスの所業でした。
その残酷性は我々の中にも内在しています。
訳者は後書きで、
神を信じていた「エリエゼル(エリ・ヴィーゼルの本名)」と、
ナチスを生き延びたエリ・ヴィーゼルの間には、
「超えられない溝」があると言います。
その溝には600万人の死者たちがいると。
戦後に生まれた人間のなかで、
「いや、神はいるよ。
信じようよ!」
なんてこの人に言えるのは、
頭がすっからかんのバカだけだというのは確かです。
私は600万人の死を見ていないし、
少年が30分絞首台でつるされるのを見ていません。
見ていない私に言えることはありませんが、
エリ・ヴィーゼルのその「うめき」こそが、
私たちが未来に神を知るための、
細い糸になっているのは確かです。
彼のような人を「預言者」というのでしょう。
→P208
〈彼は今、幼少時の、
神秘に憑かれていた頃の自分に戻ることが出来ずにいます。
なぜならば、戦後のエリと幼年期のエリエゼル
(《神は我が祈りを叶え給えり》または《神は助けである》の意)
とのあいだに、墓に埋められなかった
600万人の死者たちがいるからです。
それに、収容所での第一夜に〈神〉を殺害されたエリエゼルは、
いわばその瞬間に〈神〉とともに死んだのです。
エリエゼルと〈神〉とが去った後、
彼の内面には底なしの空洞が残りました。
彼が果てしなく続けてきた、
その空洞との対話の最初の結実が『夜』なのです。〉
(1,511文字)
●死にがいを求めて生きているの
読了した日:2019年11月17日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:朝井リョウ
出版年:2019年
出版社:中央公論新社
リンク:
https://bre.is/ksgC8JDt
▼140文字ブリーフィング:
朝井リョウさんは、
映画『桐島、部活やめるってよ』
の原作者として認識していました。
映画があまりにも面白かったので、
文庫本を買ってはあったのですが、
今まで読んでなかった、っていうね笑。
買うと安心して読まないというね笑。
「積ん読」というやつです。
、、、でひょんなことから、
彼の長編小説を今回読んでみたんですよね。
まぁ、とんでもないですよ。
面白くて度肝を抜かれました。
彼は1989年生まれでまだ若干30歳!ですよ。
20代でこれを書くって、
もう、なんか、ため息が出ます。
嫉妬とかいうレベルじゃなく、
脱力してしまう。
あーあ、って。
天賦の才能、ってあるなぁ、って。
すげー書き手が出てきたなぁって。
具体的に何がすごいかを説明するのは困難ですが、
あえて言うと、
SNS時代の「強い嫉妬と自己愛ゆえの存在不安」
みたいなものを、
本当に上手に言葉として結晶化させている、という感じ。
今まで彼の小説で映画化されたのは、
『桐島、部活やめるってよ』と、
『何者』なのですが、
2本ともすこぶる面白いし、
彼の小説の雰囲気を損なってません。
彼の作品は映像化しやすいんだと思います。
これも彼がデジタルネイティブ世代なのと、
おそらく関係あるでしょう。
朝井リョウの文才に、
ちょっと、驚きましたね。
またひとり、天才が出てきたな、って。
(543文字)
●躁うつ病を生きる
読了した日:2019年11月17日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:ケイ・ジャミソン
出版年:1998年
出版社:新曜社
リンク:
https://bre.is/WQGPJmpC
▼140文字ブリーフィング:
著者は躁うつ病の研究者であり、
同時に躁うつ病の患者、という珍しい本です。
彼女は自伝的に躁うつ病を軸に自分を語る。
詩的センスにあふれているが学術的な匂いもする不思議な書籍でした。
彼女は「躁うつ病と対決するのでなく、
躁うつ病をパートナーとして歩むことを選んだ」
といっていて、それが私の経験とも合致していて共鳴しました。
エピローグの4ページが素晴らしいのでご紹介します。
→P237〜239
〈ときどきわたしは自分に聞いてみる。
かりに選択できるなら、
わたしは躁うつ病であることを選ぶだろうかと。
もし炭酸リチウムがなかったら、
あるいはわたしに効かなかったら、答えははっきりしている。
ノーだ。
恐怖にぞくっとしながら、
それが唯一の答えだ。
だが、炭酸リチウムはしっかり効いている。
だからこの質問を考え直すことができそうだと思う。
奇妙なことだが、わたしは病気であることを選ぶと思う。
説明しにくいことだ。
うつ病はことばや響きやイメージを超えた恐ろしいものだ。
わたしは長期のうつ病をもう一度は切り抜けられないだろう。
疑い深くなって人とのつながりを絶ち切り、
信頼と自尊心を失い、生活を楽しむことができなくなり、
普通に歩くことも話すことも考えることもできず、
疲れ切り、夜も日中も恐怖におののく。
いいことは何一つない。
年を取るとは、年を取って病気になるとは、
死ぬとは、物わかりがわるいとは、
優雅さ、洗練、調和を欠くとは、不機嫌とはどういうことか、
人生の可能性、セックスの楽しさ、音楽の絶妙さ、
あるいは自分自身と他人を笑わせる力を
信じられなくなるとはどういうことかと経験できるほかは。
離婚や失業、別れをくぐり抜けてきたから、
憂うつになるとはどういうことか知っていると人は言う。
しかし、そういう経験は彼らに気持ちを味わわせるだけだ。
うつ病は、そうではなく、鈍く、うつろで、耐えられないのだ。
やっかいでもある。
あなたがうつ病なら、人はあなたのそばにいられない。
彼らはそうすべきだと思うかもしれない。
そうしようとさえするかもしれない。
しかし、あなたにはわかる。
そして彼らにもわかる。
あなたは信じられないほど退屈なのだ。
怒りっぽく、偏執的で、ユーモアがなく、
生気に欠け、不安定で、わがままで、まったく自信がない。
あなたはこわがり、こわがらせ、あなたは
「まったく自分らしくないけど、
すぐになんとかなるはず」だとおもい、
しかしなんともならないことを知っている。
それなのに、なぜこの病気に望むことがあるというのだろう。
だが、病気だったから得たものがあると、
本当にわたしは思うのだ。
わたしはより多くのことを、より強く感じた。
より多くのことを、より強烈に経験した。
より愛し、より愛された。
よく泣いたがよく笑った。
どんな長い冬にも春の喜びがあるのを知った。
「デニムのように擦り切れた」死を味わい、
そして生をさらに味わった。
人のもっとも優れた面ともっとも恐ろしい面を見て、
そしてすこしずつ、人を思いやること、誠実さ、
物事の本質を見抜くことを学んだ。
わたしは自分の心の大きさ、深さ、広さを見た。
それがいかにもろいものか、そしてついに、
それがいかに知ることのできないものかを知った。
うつ病の時、わたしは部屋の向こうへ
四つんばいになって這っていくしかなかった。
わたしは何ヶ月もそうした。
けれども正常なとき、あるいは躁病のとき、
わたしは速く走った。
頭は素早く回転した。
いままででもっともすばやく愛した。
自分の病気がそれに深く関連していると思う。
病気の激しさ、それが新たな物事をもたらし、立ち向かわせた。
わたしの心の限界(望む限りもちこたえている)と
わたしの育ち、家族、教育、友人の力が試されたのだと思う。〉
、、、躁うつ病、
今は双極性障害と呼ばれている病気について、
私は多くを知りません。
精神疾患というのは、
脳という臓器の複雑性ゆえ、
同じうつ病でも、
100人いれば100通りの症状があります。
まして双極性障害のことは、
うつ病を患っただけの私には、
理解したとは到底言えません。
著者は自らの躁うつ病と闘いながら、
自らの病気を研究者として研究し、
それによってキャリアを築くという、
まさに「病気を職業としてしまった」ような人です。
彼女が引用した文章で言っている、
「病気だったからこそ得たものがあると、
本当に思うのだ」
というのは心からの言葉だと思います。
私も同じですから。
病気は本当に辛いです。
本当に。
嫌に決まってるじゃないですか。
マジで辛いですから。
文字通り、死ぬほど辛いですから。
でも、それによって得たものもある、
と私も思います。
それは「雨降って地固まる」みたいな話とはちょっと違っていて、
著者もそうだと思うのだけど、
私の病気と、私というパーソナリティは、
切っても切れないのだと思うのです。
ある種の極端な能力を持った人に、
精神疾患の人が多いというのは、
脳の機能のベルカーブ曲線みたいなものを書いたとき、
それらの人々は、そのカーブの、
「とてつもなく端っこ」にいるからだと思うんですよ。
とてつもなく何らかの分野で優秀な人というのは、
実は「疾病」に分類されるほどの個性と、
「抱き合わせ」みたいな形でそのような能力を持ってたりする。
「角を矯めて牛を殺す」という言葉があります。
危険な角を切ったは良いが、
牛全体が死んでしまってはなんともならない、
ということですね。
彼女にとっての躁うつ病も、
私にとってのうつ病も、
この「角」みたいなものなのかなーと思ってます。
だから「病気は悪いモノ。治すべき。」
という「勝利主義」みたいなものを押しつけられると、
当事者は二重にも三重にも苦しむわけです。
当事者の魂からの言葉だけが、
そういった薄っぺらな世界観を、
内在的に批判し、脱構築することができます。
彼女のような存在はだから、
世界にとって貴重なのです。
(2,338文字)
▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼
ご紹介した本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。
▼今週の一冊:『死にがいを求めていきているの』
コメント:
全部、とても面白かったのだけど、
迷った結果、朝井リョウの小説を、
今週の一冊に選びました。
「平成以降の日本」を、
世代を代表する形で描くことのできる、
希有な作家です。
村上春樹がポストモダン的だと良く言われるのだけど、
どこか無理してるところがあるんですよね。
昭和の重力と戦いながらそうしているというか。
1989年生まれの朝井リョウは、
昭和の重力から完全に自由です。
ポストモダンネイティブって感じで、
ちょっと衝撃を受けました。
▼▼▼部門賞▼▼▼
ご紹介した書籍の中から、
陣内の独断と偏見で、
「○○賞」という形で、
特筆すべき本をピックアップします。
こちらも何かのご参考にしてくだされば幸いです。
▼「じわじわ面白い賞」
『ティール組織』
コメント:
『ティール組織』は、
急いで読んだのもあって、
まぁ良くある流行りのビジネス書のひとつかな、
ぐらいに思って「一応眼を通しておくか」ぐらいな感覚でしたが、
後々、じわじわとそれについて考える感じの本です。
これを神格化して、「これがすべてを解決する!」
みたいに興奮するのは、
そもそも本の読み方として間違っています。
(でもそういう人多いんだろうなー。)
話を戻しますと、
「未来の組織」は、
「機械モデル」から「有機体モデル」に変わる、
みたいな「自己組織化」の考え方は、
組織論を考える上で有力な補助線になります。
]]>快眠のためにしていることは?http://blog.karashi.net/?eid=4642020-04-13T09:23:00+09:002020-01-15T00:24:44Z2020-04-13T00:23:00Z第117号 2019年12月10日配信号
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■1 今週のオープニングトーク
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▼▼▼快眠のためにしていること▼▼▼
メルマガ読者の皆様、こんにちは。
先週告知しましたように、
「シー...陣内俊今週の「オープニングトーク」
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■1 今週のオープニングトーク
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
▼▼▼快眠のためにしていること▼▼▼
メルマガ読者の皆様、こんにちは。
先週告知しましたように、
「シーズン2」もあと残すところ4回になりました。
来週から「読んだ本・観た映画ベスト10」を
やっていこうと思ってるので、
レギュラーコーナーは今日で最後になります。
名残惜しいですが、
さっそく質問カードからやっていきましょう!
▼質問:快眠のためにしていることは何かありますか?
、、、そうですねぇ。
私は案外「寝られる人」なので、
けっこう睡眠で苦労することは少ないのですよね。
病気になったときは睡眠もおかしくなりましたが、
身体が健康である限りは、
どこでもいつでも眠れてしまう、
恵まれた体質だと思います。
あと、長く眠れます。
ロングスリーパーです。
毎日10時間とかでも、
余裕で寝られますが、
最近はだいたい8時間〜9時間に落ち着いています。
それでも長いですが。
睡眠時間はどこから拠出しているかというと、
スマホを持たないことで生み出した時間を、
すべて睡眠に充てている感じです。
スマホを手放すと、
どんな人でも「1日2時間増える」
というのは、自信をもって言えます。
私はガラケーなので、
その分時間があるのです。
それを全部睡眠に充てると、
ちょうど6時間睡眠の人とバランスがとれる。
「スマホと睡眠」どちらが脳に良いか?
どちらが生産性に貢献するか?
言うまでもありません。
100:0で睡眠です。
数々の科学的証拠がそれを追認しています。
スマホのない生活は快適だよー、
マジで。
あと、寝ている時間って、
「損してる」と思ってる人が多いですが、
それは完全な間違いです。
寝てる時間って仕事してるんです。
脳はちゃんと働いていて、
明日の頭脳労働のための準備をしています。
6時間睡眠を5日間続けた人の運転技術は、
認知能力の低下により、
飲酒運転並みに低くなる、
っていう研究があるぐらいなので、
じつは睡眠不足で毎日仕事行っている人って、
酒飲んだ状態で仕事モードに入っているのと同じです。
「寝てない自慢」なんていう時代の遺物は、
今すぐに生ゴミボックスに捨ててしまいましょう。
、、、というわけで、
睡眠に苦労はしていませんが、
睡眠を私は真剣に捉えています。
「寝ているときから、
明日の仕事が始まっている」
とすら思っている。
吉越浩一郎さんが言うように、
「寝ないなんて怠惰」なのです。
というわけで私は、
毎日勤勉に寝ています。
そして、睡眠の質がなるべく高くなるようにも、
それなりに工夫しています。
まず、遮光カーテン、
これは必須ですね。
これがあるとないとで、
睡眠の質はかなり変わる、
というのも研究で実証されています。
それから、夜寝る前は、
「読書の時間」としています。
かなり幅はありますが、
だいたい1日1〜4時間ぐらい読みます。
この時間をテレビモニターやスマホの前で過ごすと、
ブルーライトが網膜を刺激して、
睡眠障害につながることもわかっています。
それから、
寝る前に「鼻炎スプレー」を鼻にします。
私はアレルギー性鼻炎をもってるので、
基本的に慢性的に鼻が詰まっていて、
それを解消してやると、
かなり眠りが深くなることを去年発見してから、
さらに睡眠が快適になりました。
あと、寝るときは、
「くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン」
を、タブレットで耳元で小さな音量で聞いています。
自動的に切れるように設定して。
これが、マジで良い子守歌なんですよね。
「無音」だと人間って、
いろんなこと考えちゃうじゃないですか。
特に心配事があるときなんかは、
そのことがベッドの中でぐるぐる回って、、、
みたいのってありますよね。
有田と上田のバカ話を聞いてると、
なんかそういう「悩みのるつぼ」から、
思考のトラックが外れて、
そしてすんなりと眠りに誘ってくれます。
この習慣はうつ病療養中に身につけたのですが、
それから今でも続いています。
、、、という感じで、
私の睡眠のためにしていることは、
これぐらいでしょうか。
皆さんは何か、
睡眠のためにしていることはありますか?]]>陣内が先月観た映画 2019年11月 『トイ・ストーリー4』他http://blog.karashi.net/?eid=4632020-04-07T09:22:00+09:002020-01-15T00:23:25Z2020-04-07T00:22:00Z第116号 2019年12月3日配信号
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■2 陣内が先月観た映画 2019年11月
月に一度のお楽しみ、
「陣内が先月観た映画」のコーナー。
タイトルそのまんまの企画です。
先月私がいろんなかたちで観た映画を、
一挙に紹介しちゃうとい...陣内俊陣内が先月観た映画
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■2 陣内が先月観た映画 2019年11月
月に一度のお楽しみ、
「陣内が先月観た映画」のコーナー。
タイトルそのまんまの企画です。
先月私がいろんなかたちで観た映画を、
一挙に紹介しちゃうというコーナー。
5本以上観た月だけの限定コーナーとなります。
先月はけっこう観たので、
けっこう紹介できます。
もともと映画を観るほうではありますが、
Amazonプライムのストリーミングで観るようになって、
観る本数が3倍ぐらいに増加しました。
移動中に観れるというのが大きいです。
電車の中やバスの中で本を読むのは少し疲れますが、
映画はノーストレスです。
長時間移動がある月なんかは、
往復の移動だけで4、5本観れたりします。
観るだけではもったいないので、
皆様に紹介しちゃおう、
というのがこのコーナー。
世界一小規模の映画賞、
「月間陣内アカデミー賞」もやります(笑)。
「おもしろそうだな」と思うやつがあったら、
それをレンタルして観てみる、とか、
あとこれを読んで、観たつもりになって、
誰かに知ったかぶりする(笑)などの
使い方をしていただければ、これ幸いです。
「陣内が先週読んだ本」の
140文字ブリーフィングが好評なので、
映画評論も140文字で試みます。
時短は正義(!)ですから笑。
「読んだ本」コーナーと同じで、
140文字はあくまで「努力目標」です。
*どうしても「ネタバレ」要素をいくらか含みますので、
絶対にネタバレしたくない作品がありましたら、
器用に読み飛ばしてくだされば幸いです。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
●キング・オブ・コメディー
鑑賞した日:2019年11月7日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典
監督:マーティン・スコセッシ
主演:ロバート・デ・ニーロ
公開年・国:1963年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/vvU3z7eR
▼140文字ブリーフィング:
先月観た『ジョーカー』の衝撃が未だに残っています。
あれを見て、いてもたってもいられなくなり、
こちらを鑑賞しました。
トッド・フィリップスの『ジョーカー』って、
マーティン・スコセッシの二つの映画へのオマージュなんです。
『タクシードライバー』と『キング・オブ・コメディー』です。
『キング・オブ・コメディ』のルパート・パプキンと、
『タクシードライバー』のトラヴィスを合わせた人間が、
『ジョーカー』のアーサー・フレックなんですよ。
訳わかんないでよすね笑。
説明します。
『キング・オブ・コメディ』は、
ルパート・パプキンという、
今で言うニートが主人公の映画です。
彼は30代の中年になっても母親と暮らしていて、
「自分は天才的なコメディアンになる才能がある」
という妄想を抱いています。
彼は『ジェリー・ラングフォード・ショー』という、
超人気番組の司会者であり、
全米トップコメディアンのジェリーを崇拝している。
パプキンは自分が書いたギャグを吹き込んだカセットテープを、
ジェリーの事務所に送り続けています。
いつかジェリーが自分の才能に気づき、
『ジェリー・ラングフォード・ショー』に出演する日を夢見て。
ここまでは良い。
ここからだんだんおかしくなってきます。
パプキンはジェリーの「出待ち」もしています。
彼がテレビ局から出てくるところを待ち構え、
「あのカセットテープを聞いてくれた?」ってやってる。
ある日、なんかの拍子に、パプキンはジェリーの車に乗って、
彼の家まで車に同乗することになる。
そこでパプキンはジェリーに、
コメディアンになる夢を語ります。
ジェリーは面倒くさいので、
「きっと君は成功するよ」と言うのです。
パプキンはその言葉を額面通り受け取り、
その妄想はだんだん暴走に変わってくる。
ついに彼はジェリーの事務所に行きますがそこで無視されます。
当然です。
パプキンは今度はジェリーの別荘に勝手に上がり込み、
ジェリーを誘拐監禁するのです。
そして彼の命を人質にして番組プロデューサーを脅し、
ジェリーの帯番組に出演する、、、、
というのがこの映画の筋書きです。
この映画はパプキンの主観目線で描かれるので、
どこからが現実でどこからが彼の幻想なのか分からなくなってます。
これもまた『ジョーカー』に踏襲されます。
『タクシードライバー』はじゃあ、
どういう話か?
ベトナム戦争の後遺症で精神にダメージを負ったトラヴィスは、
深夜のタクシードライバーという低賃金労働をしますが、
ある日彼は「自分が世界を救う」という妄想を抱く。
そして身体を鍛え銃の扱いを覚え、
最後は大統領候補の暗殺を企てる、、、という話です。
『ジョーカー』のアーサーはどんな男か?
強迫神経症により、
「笑ってはいけない状況で
どうしても笑いが止まらなくなる」
という精神疾患を抱えていて、
ピエロの仕事をしているアーサーは、
30代で低収入で、自治体の提供するカウンセリングを受けています。
自治体の予算はカットされ彼は薬をもらえなくなり、
その症状は悪化します。
彼はちなみに、母親と二人暮らし(!)です。
アーサーはコメディアンを目指しており、
マーレイ・フランクリンという、
全米一のコメディアンの番組を見ることが唯一の楽しみで、
マーレイに認められてその番組に出演することだけが、
彼の人生の希望になっています。
ひょんなことから「キレ」て、
女性にちょっかいを出していた、
ウォール街のエリート3人を、
ピエロの格好のまま射殺します。
その行為が社会の不満分子に火を付け、
それが「ピエロの覆面運動」のような大衆を巻き込むデモになり、
そのデモはゴッサムシティの次期市長殺害につながります。
ほらね。
アーサー=パプキン+トラヴィスなのです。
ちなみに、
スコセッシの映画で
パプキンを演じているのはロバート・デ・ニーロ。
トラヴィスを演じているのもロバート・デ・ニーロ。
そして、
『ジョーカー』でマーレイを演じているのが、
ロバート・デ・ニーロなのです。
もう、完全に意図された配役でしょ。
なので、『ジョーカー』を100%楽しみたい人は、
『ジョーカー』をまずは見て、
次に『キング・オブ・コメディ』を見て、
そして『タクシードライバー』を見て、
最後に『ジョーカー』をもう一回見るのが「吉」です。
だれもそんな面倒なことしないでしょうけど。
でも、映画って「引用・参照」が結構あるので、
その引用元、参照元を知ってると、
映画体験に奥行きが出るんですよね。
これは読書にも言えることですが。
(1,814文字)
●IT イット
鑑賞した日:2019年11月9日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(100円)
監督:アンディ・ムスキエティ
主演:ジェイディン・リーバハー
公開年・国:2017年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/AMYtrcnS
▼140文字ブリーフィング:
スティーブン・キングのホラー小説の映画化です。
「IT」とは何の象徴か?
町山智宏さんの解説で知ったのですが、
この「IT」って、鬼ごっこの「鬼」のことなんですよね。
アメリカで子どもが鬼ごっこするとき、
「あなたIT(鬼)ね!」っていうわけですよ。
だからこの映画「リアル鬼ごっこ」みたいな感じで、
ピエロの格好をした「鬼」が子どもを「連れて行く」。
これに対抗するために子ども達が立ち上がり、
命がけの鬼ごっこが始まる、、、という感じの映画です。
ところが、町山さんが言ってて気づいたのだけど、
この映画の日本語のポスターやDVDパッケージや字幕翻訳は、
「IT=鬼ごっこの鬼」っていうことを、
あきらかに知らない人の手によって作られていて、
「それ」が来ると、恐怖につつまれる、、、。
みたいなホラータッチで宣伝されている。
これってミスリードなんですよね。
あと町山さんの解説でこれも知ったのだけど、
この原作小説は、浦沢直樹の漫画「21世紀少年」の、
明らかにネタ元です。
なぜか?
主人公達が住む田舎町デリーに、
27年おきに「鬼」はやってくる。
小学校の時の「いじめられっ子仲間」たちが、
大人になってまたあの「鬼」と闘う、
という、過去と未来が錯綜する話になってるからです。
浦沢直樹の21世紀少年でも、
子どもの頃の会話が大人になって
「ともだち教団」に影響していたりする、
っていう伏線の張られ方がするのですが、
これは「IT」の構成そのものです。
、、、で、ITとは何の象徴なのか?
それは見た人の数だけあるのでしょうが、
この街の「異常さ」にヒントがあると私は思います。
大人達はそれを異常とすら思ってないのですが、
この田舎町では「いじめ」が横行しています。
腕力の強い上級生が弱い下級生を虐める。
それを大人達は見て見ぬふりをするのです。
この「大人の無関心」こそ、
「IT」が象徴するものなのではないか、
と私は思います。
印象的なシーンで、
ことごとく大人が子どもに関心を示さず、
無視し、虐げます。
そして大人達は「IT」の作った惨状を、
見ることが出来ないのです。
これって、子どもの世界で起きている虐めを、
大人が「見ないふりをする」のと同じですよね。
あと、本作の主人公の弟は、
「IT」に連れ去られる設定なのですが、
そのあと「弟を失ったことで希望を失い、
兄である主人公を無視し続ける両親」というのは、
完全にキングの名作『スタンド・バイ・ミー』と同じです。
スタンド・バイ・ミーでは、
死んだのが兄だったというだけで。
スティーブン・キングの描きたいひとつのテーマが、
こういう形で貫かれているに気づくとちょっとうれしいです。
(1,075文字)
●トイストーリー4
鑑賞した日:2019年11月9日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(399円)
監督:ジョッシュ・クーリー
主演:トム・ハンクス
公開年・国:2019年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/sTAkrkY2
▼140文字ブリーフィング:
これはねぇ。
もう、ヤバイぐらい面白かったです。
見た後も、ずっと考えてしまうぐらい。
トイストーリーにおける「おもちゃ」って、
我々のことなんですよね。
ウッディやバズ・ライトイヤーって、
私でありあなたなのです。
そして、もっとツッコんだ話をすると、
バズやウッディって、
子育て中の親なんですよ。
じっさい、ウッディの最初の所有者のアンディは、
劇中で「父親」が出てきません。
ピクサーの制作陣の設定では、
アンディの父親って死んでるんです。
そしてウッディは、
アンディが亡き父から譲り受けた、
「ファミリー・トイ」なんです。
だから比喩的に、
アンディの父親は、
ウッディの両眼を通して、
アンディを見守る、という構図になっている。
だから前作、
『トイストーリー3』で、
アンディが大学生になり、
ウッディのことをもう必要としなくなったとき、
ウッディは「アイデンティティクライシス」に陥るのです。
あれは「空の巣症候群」のことなのです。
そして『3』はもう、
完璧な終わり方をしてるんですよね。
私は『3』を9年前に映画館で見ましたが、
もう、これは文句付けようがない、
とうなってしまいました。
「100点の映画」というものがあるとしたら、
それは『トイストーリー3』だ、と。
あの終わり方は完璧でした。
だからこそ、
ファンは『4』が作られることを知ったとき、
ちょっと複雑な心境になったのです。
「完璧」なものに、
さらに何を付け足すの?と。
結果的に、
『4』はアメリカでは大ヒットし、
そして絶賛一色だったそうです。
日本ではところが、
賛否両論だったのです。
なぜアメリカでは絶賛の嵐で、
日本では評価が分かれるのか?
この理由を考えるのが、
めちゃくちゃ面白いんですよね。
ちなみに私は絶賛派です。
まだ新しい映画なので、
内容には立ち入りませんが、
トム・ハンクス演じるウッディって、
「団塊の世代」なんですよ。
彼らの『魂の成熟』を巡る物語でもあるわけです。
現在60〜70代を迎える彼らが、
これからどのように生きるのか、
その「問い」を巡る物語なのです。
トイ・ストーリーは、
問い・ストーリーなのです。
、、、という、
完全に「大人の物語」なのに、
親子で映画館に行くと、
子どもはまったく違う視点で、
純粋にこの話を楽しむことが出来る。
まさに「同床異夢」なのですが、
大人と子どもが同じコンテンツを見て、
違う理由で同じぐらい楽しめる、
というこの「話法」を発明したピクサーは、
やっぱり凄いとしか言いようがありません。
(1,013文字)
●彼女がその名を知らない鳥たち
鑑賞した日:2019年11月10日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典
監督:白石和彌
主演:蒼井優、阿部サダヲ
公開年・国:2017年(日本)
リンク:
https://bre.is/oh3W4K4d
▼140文字ブリーフィング:
どこかで「面白い」と聞いた記憶が残ってた作品が、
Amazonプライムで見られるようになってたので鑑賞しました。
蒼井優と阿部サダヲの演技が凄かったです。
特に阿部サダヲの「汚い男感」は凄い。
「食べ方が汚い演技−1グランプリ」があったら、
彼は優勝するでしょう。
そして、「恐ろしいほどの愛」が最後に描かれます。
賛否両論あるでしょうが、
鑑賞者に感情の爪痕を残すのは確かです。
(182文字)
●ドリーム
鑑賞した日:2019年11月21日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル100円
監督:セオドア・メルフィ
主演:タラジ・P・ヘンソン
公開年・国:2016年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/fX5TUVc9
▼140文字ブリーフィング:
アポロ計画に参加した黒人女性達の話です。
ケネディ大統領時代の当時、
まだまだ黒人差別というのはひどく、
NASAの中にも「白人専用トイレ」と、
「有色人種専用トイレ」がありました。
天才的な数学センスを持つ主人公の黒人女性は、
ロケットの軌道を計算するチームに抜擢されますが、
トイレに行くのに黒人専用トイレがある東棟まで、
往復40分走らなければならない、
みたいなことが起きていたわけです。
そのような中で3人の女性達は、
自分たちの能力を証明することで、
自分たちの地位を勝ち取っていきます。
先月観た「42 世界を変えた男」もそうですが、
こういった映画が現在も作られるということは、
逆に言えば今も有色人種差別があるということでもある。
特に今は人種差別主義者が大統領ですから、
そういった差別を助長する側面もあることでしょう。
マイノリティの権利というのは、
実はキリスト教の中心テーマでもあります。
「いかなる文化といえども、
社会秩序の上にある人々は相応なものが備えられる。
しかし文化の試金石とは、
底辺の人がどのように扱われるかにかかる」。
ワレス・メンデルソン
この言葉は、
聖書的な「社会観」と合致します。
当時はソ連との東西冷戦まっただ中ですが、
アメリカという国が偉大なのは、
こういう局面で差別感情を抜きにして、
能力のある人の能力を活かしてきたからなのだ、
というのもこの映画を観ると分かる。
じつはアメリカの偉大さって、
その「寛容さ」だと私は思っています。
だから世界から優秀な頭脳が集まり、
アメリカに富をもたらす。
現在のグーグルのCEOはインド人ですし、
スティーブ・ジョブズはシリア移民の子どもです。
ローマ帝国が衰退したのは、
ゲルマン系の移民を、
ローマ人達が虐げ始めたところから始まった、
と指摘する歴史学者がいますが、
昨今のアメリカにうごめく白人至上主義や排外主義が、
アメリカの「終わりの始まり」にならないと良いんだけど、
と私は思いながらアメリカを見ています。
(814文字)
▼▼▼月間陣内アカデミー賞▼▼▼
世界一小さな映画賞、
「月間陣内アカデミー賞」を、開催いたします。
主催者、プレゼンターは陣内がつとめます。
作品賞、主演(助演)俳優賞、そしてもうひとつ、
という感じで、ぬるーくやります。
皆さんの映画選考の参考にしていただければ幸いです。
▼作品賞
『トイストーリー4』
コメント:
これはもう、文句なしに凄かった。
見て損はありません。
これをどう思うか、
というのは、結構その人が出る感じがします。
日本人はきっと嫌いな人もいるだろうなぁ、
というラストも、とても良い。
ピクサー、凄すぎます。
▼主演(助演)男優賞
阿部サダヲ(彼女がその名を知らない鳥たち)
コメント:
先ほども書きましたが、
アカデミー賞に、「食べ方が汚い部門」があったら、
この映画は受賞するでしょう。
阿部サダヲの汚い食べ方が、
脳にこびりつきます。
褒めてます。
▼主演(助演)女優賞
該当なし
コメント:
▼その他部門賞「ピクサー凄すぎる賞」
『トイ・ストーリー4』
コメント:
何度も言いますが、
ピクサーは凄すぎる。
映像技術は言うまでもないんですが、
やはり「脚本」が、
次元が違うんですよね。
アニメーションを超えて、
あらゆる映像作品のなかで、
ピクサーの脚本って一番考え抜かれている気がする。
舞台作家とか映画監督になりたい、
っていう人はピクサーをもっと研究すべきでしょう。
すでにしてるでしょうけど。]]>もういちど入りたい大学・学部http://blog.karashi.net/?eid=4622020-04-06T09:20:00+09:002020-01-15T00:21:55Z2020-04-06T00:20:00Z第116号 2019年12月3日配信号
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■1 今週のオープニングトーク
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▼▼▼もういちど入りたい大学・学部▼▼▼
メルマガ読者の皆様、こんにちは。
東京に戻ってきました。
今回...陣内俊今週の「オープニングトーク」
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■1 今週のオープニングトーク
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▼▼▼もういちど入りたい大学・学部▼▼▼
メルマガ読者の皆様、こんにちは。
東京に戻ってきました。
今回の西への旅は、
とても充実した時間でした。
さて。
今週も質問カードからいってみましょう!
▼社会人としてもういちど大学に入る
時間とお金の余裕があったら、
どの大学のどの学部がよいですか?
、、、リンダ・グラットンの著作、
『LIFE SHIFT』によれば、
人生100年時代に、
ほとんどの人は「複数のキャリアを持つ」ようになる、
といいます。
これまでの「3ステージの人生」は過去のものとなります。
3ステージとはちなみに、
「教育→就職→退職後」のことで、
これが100年時代には「マルチステージ」になると。
教育1→仕事1→仕事2→教育2→仕事3→仕事4
→(引退はあったりなかったりその人次第)
というのが彼女の言う「釣り鐘型のキャリア」です。
教育1と教育2があるというのは
「社会に出てある程度キャリアを積んでから、
再教育を受けるために大学に入る」
などのキャリアデザインが一般的になるだろう、
ということです。
これってつまり「ひとつの専門」では、
一生食べていけなくなるということであり、
つまり厳しい時代でもあります。
欧米圏ではこのキャリアパスは、
かなり一般的になっていますが、
日本ではまだ「3ステージ信仰」が強いので、
社会人が人生の半ばでもういちど大学に行く
というのは例外的なことと見做されています。
しかし、産業構造の変化と人類の長寿化からすると、
日本もまたマルチステージ型にならざるを得ません。
あとは時期の問題であって、
日本の働き方が変化しない、
ということは未来予測的にあり得ません。
(理由は『LIFE SHIFT』を読んでください)
、、、さて。
私たちの子どもの世代は、
「マルチステージ」がデフォルトになるとして、
私の世代はどうなのでしょう?
けっこう「時代の端境期」だと思うのですよね。
「3ステージ」で逃げ切れる最後の世代は、
現在の50代までだと言われていて、
40代以下は、「マルチステージ型」に社会が移行する、
ちょうど中間的な世代になるはずです。
そうすると、
「3ステージ型」と、
「マルチステージ型」の、
二つの世界観が、
同じ世代に共存するようになる。
つまり私たちの世代は、
「昭和的世界観」を持つグループと、
「令和的世界観」を持つグループの、
二極化することが予想されます。
中間(平成)はたぶん、ありません。
私は「令和的世界観」でありたいと思っています。
理由は前者を選択した場合、
「既存の権益を温存する方向」に志向性が傾き、
結果として新しい世代の邪魔をすることになるからです。
悪気はなかったとしても、結果的にそうなります。
30歳のときに公務員を退職したのは大きいです。
もしあのときに退職していなければ、
今の私は昭和的世界観を持っていたはずですし、
既存の権益を温存する方向に考えが傾いていたと思います。
人というのは弱いもので、
「自分の利益・権益を追認する方」に、
いつもバイアスが働きますから。
さて。
私はそんな感じで、
「過渡期」にあるので、
一生涯「自己教育」をし続ける、
という決意はしています。
たぶんそのへんの大学院生よりも、
年間に読む本の冊数は多いですし、
彼らが書く論文以上の分量の文章を、
毎年書いています。
私は「2年ごとに新しく大学院を卒業する」
というぐらいのインプットを続けています。
しかし、
「学を体系化する」には、
やはり既存の教育機関は効率が良いので、
どこかでそういう教育機会があれば、
それはそれに超したことはない。
あと、独学では絶対に得られないものとして、
「学友と師」これとの出会いもある。
私の場合家族がいたり、
今すでにコミットしている仕事があったり、
ライフステージを考えると現実的な選択肢から除外されますが、
でも、大学に入り直して学び直す、
というのが有意義だし魅力的なのは疑いようがありません。
では私はどこの大学の何学部に入るか?
日本ならもう、一択ですね。
同志社大学神学部です。
同志社大学神学部では、
今、卒業生でもある佐藤優が教えているんですよね。
あと、同志社の神学部の人が書いた卒論が書籍になってて、
それとかもめちゃくちゃ面白かった。
同志社は「自由主義」にカテゴライズされるので、
私が属する教会(福音派)とは「ジャンル」が違うのは、
百も承知です。
でも、というか、
だからこそ学びたい。
じっさい、
自分の既存の価値観を揺るがさず、
自分の既存の信念を強化するだけの学びなんて、
「学び」の定義から言ってスカスカに違いありません。
自分とは違う立場の人々がどう考えるか、
これを知ることで自分の足下での奥行きが生まれるのです。
あと、同志社大学神学部に、
福音派(アッセンブリー教団)から学びにいった、
青木さんという牧師の方が書いた、
「アメリカの福音派」という本も、
すこぶる面白かった。
こういう学びを出来る場所が日本にあるのだから、
もしチャンスがあれば学んでみたいなーという気持ちはあります。
、、、あと、日本じゃなかったら、
そうですねぇ。
カナダのバンクーバーにある、
リージェントカレッジという神学大学にも行ってみたい。
あそこはジェームズ・フーストンという人が、
「牧師養成塾」としての神学校のあり方に疑問を抱き、
社会で生きる一般の人が、
「生活の中で神学するとはどういうことか」
を学ぶことが出来るような教育機関が世界にない。
じゃあ作ろう、ということで作った大学です。
めちゃ興味があります。
両大学の所在地も魅力的です。
同志社は京都ですし、
リージェントはバンクーバー。
両方とも都市としての魅力が高い。
人生で一度は住んでみたい、
と思わせる何かがあります。
あとはそうですねぇ。
コロラドに住みたいので、
コロラド州立大学とかでしょうか。
学部はどこでもいいです笑。
不純な動機です笑。
みなさんは学びたい大学・学部はありますか?]]>陣内が先週読んだ本 2019年 10月30日〜11月10日『勝利者キリスト』他http://blog.karashi.net/?eid=4612020-03-31T09:18:00+09:002020-01-15T00:20:43Z2020-03-31T00:18:00Z第115号 2019年11月26日配信号
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■2 陣内が先週読んだ本
期間:2019年 10月30日〜11月10日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
...陣内俊陣内が先週読んだ本
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■2 陣内が先週読んだ本
期間:2019年 10月30日〜11月10日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。
ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)
忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。
●勝利者キリスト
読了した日:2019年10月30日
読んだ方法:山田和音君に借りる
著者:グスタフ・アウレン
出版年:1982年(原著初版1930年)
出版社:教文館
リンク:
https://bre.is/u2ubhgZb
▼140文字ブリーフィング:
「よにでしセミナー」の第一期修了生でもあり、
それ以来の友人でもある山田和音くんとは、
時々話しては「最近面白かった本は?」と教えてもらってます。
「良い本を紹介してくれる友人」は、
人生を確実に豊かにしてくれます。
『勝利者キリスト』は、
今年の春に彼から紹介してもらって、
読みたかったんだけど、
もう絶版になってて、
Amazonで古本を買うと、
なんと2万円オーバー!!
ということで、
山田君に夏に会ったときに貸してもらいました。
そんで読んだわけですけど、
確かにすごく面白かったです。
著者のスウェーデンの神学者、
グスタフ・アウレンは、
ディートリッヒ・ボンヘッファーとかと同じ世代です。
本書は、キリスト教の歴史を通して、
「贖罪(救済)」というものが、
どのように変遷してきたかをなぞる、
という内容の書籍です。
神学の世界ではこれを「贖罪論」と呼ぶので、
「贖罪論の歴史」が本書のテーマです。
著者は、プロテスタント神学では主流の、
「ラテン型」救済論の陰に隠れてきたが、
確実に同じぐらい重要であるはずなのに、
長らく忘れられてきた「古典型」贖罪論が存在するのだ、
と指摘します。
→P11
〈それゆえ、
私は普通客観説と呼ばれる類型の贖罪説を「ラテン」型と呼ぼう。
なぜなら、それは西方のラテン的土壌で埋まれ、
発展したからである。
そして、二元論的な
ドラマティックな見解を贖罪の「古典的思想」と呼ぼう。
古典的思想は、実のところ、
その重要性を誇張してもしすぎることがないほどの位置を、
キリスト教教理史の中で占めてきた。
それは種々な形態において表現されており、
そのすべてが同じような実りをもたらしたわけではないけれども、
初期の教会においては
ずっと支配的な贖罪思想であったことは議論の余地がない。
それはまた実際新約聖書における支配的な思想でもある。
そのことを私は示したいと思う。〉
、、、クリスチャンの中に、
「神学なんて必要ない」
という人が時々いますが、
それは暴論というものです。
もっと言えば「あさはか」です。
もし神学というものがなければ、
我々はそもそも、
いまだに日本語で聖書を読んでいないでしょうし、
「祭司を通してしか祈れない」ため、
日々神に祈る、という私たちの、
当たり前の信仰の形も存在しません。
神学は私たち「信仰の呼吸をする環境」
を整えているようなものなので、
「神学が必要ない」と言っている人は、
水や空気が当たり前にありすぎて、
その恩恵を意識できていない人と同じです。
「上下水道局など必要ない」と言うのは自由ですが、
本当になくなればその人は「万年下痢確定」です。
ではたとえば「贖罪論」は、
どのような影響を、
我々の信仰に及ぼすか?
めちゃくちゃ及ぼします。
キリストは「罪の罰」を、
その十字架で担ってくれた。
それは裁判で有罪になったあなたの、
「保釈金」を払ってくれたようなものだ。
だからあなたは自由の身になれる、
っていう説明ってあるじゃないですか。
あるいはこういうのもあります。
あなたはおもちゃ職人が作ったおもちゃで、
めちゃくちゃ高価なものだった。
しかしそれがある日盗まれてしまった。
そのおもちゃ職人が、
ある日旅先で訪れた古美術屋で、
「あなた」が1000万円で売られているのを見つけた。
おもちゃ職人は、それが本当は自分のものだと知りながら、
1000万円を支払い、あなたを「再度買い取った」。
これがあなたと神の間に起きたことです。
こういった「比喩」の背後には、
「贖罪論」があります。
どのような「贖罪論」をとるかによって、
私たちの「救済の意味」すら変わるのです。
ひとつ忘れてはならないのは、
それらの贖罪論は互いに排他的なものではなく、
複数の贖罪論(救済観)は共存可能だということです。
なぜなら神学の究極のテキストは聖書であり、
その聖書というテキストをもとに、
神学者は「贖罪論」を構成していくからです。
さて。
アウレンは「主観論」と「客観論(=ラテン型)」が、
現在の西方キリスト教会、
つまりプロテスタントとカトリックでは主流であり、
それによって「古典型贖罪論」のもつ豊かさが、
隅に追いやられている、と論ずるわけです。
ちなみに私が先ほど挙げた二つの例、
「裁判で有罪になったあなたの罪の保釈金」
「おもちゃ職人がおもちゃを再度買い取る」
これは両方とも「ラテン型」贖罪観に基づきます。
「ラテン型」の顕著な特徴は、
それが「法律」の類比で理解されることです。
そしてこの立場を取ると便利なのは、
「神義論」と呼ばれる、
「神の正しさと不変性」を論証する神学の分野と、
矛盾が生じないことです。
この「論理的なわかりやすさ」
こそが、特に近世以降の、
「合理主義・啓蒙主義」の流れのなかで、
多くの神学者たちの心を捉えたから、
「ラテン型贖罪論」はこれほど支配的になったんだよ、
とアウレンは言うのです。
→P184
〈以上の考察は、古典的贖罪思想が抑圧され、
軽蔑をもって扱われてきた
一つの究極的理由を
我々に明らかにするのに役立つであろう。
神学があらゆるものを十分に
合理的に説明しようと思い始めるとき
あらゆる矛盾を含む古典的思想を
排除しなければならないのは余りに明らかである。
それは真理を表現する企てにおける粗野で原始的な段階であり、
もっと正確で適切な定式に
取って代わられなければならないからである。〉
、、、しかし、
神は果たして「合理的」なのだろうか?
というのがアウレンの問いです。
じっさい、宗教改革者マルティン・ルターのテキストは、
「ラテン的」というよりも「古典的」贖罪論に近い、
救済観を彼が持っていたことを示しています。
ところが「合理的説明」を求める近代啓蒙思想に、
無意識の影響を受けた中世以降の神学者たちは、
ルターの救済論に明らかに含まれている、
「古典型贖罪論」の匂いを排除していきます。
もしくはそれが彼らの「盲点」となった。
じっさいルターの弟子のメランヒトンの時点で、
すでに「古典型」の匂いは「脱臭」され、
「ラテン型」の「法律的・合理的」な、
贖罪論としてプロテスタント神学は体系化されていきます。
では、「古典型」が失われ、
「ラテン型」が支配することによって、
我々はどんな不利益を被るのか?
それは「神の業の一貫性」と、
「神と人間の距離」の疎外です。
引用します。
→P106〜107
〈法律的思想はかくて
古典的教説において占めていた
限定された場所とは全く異なる位置を占める。
神と人との関係はアンセルムスによって
本質的に法律的関係として取り扱われる。
というのは、彼の努力全体は贖罪の業が
正義と一致することを証明することである。
ブルンナーの言葉を使えば、
この図式においては、
法律は実際に精神的世界の花崗岩的土台としてあらわされる。
他方、古典的思想にとって本質的であるのは、
神がキリストにおいて達成する贖罪の業は、
法的秩序とは全く異なる神的秩序を反映するということである。
贖罪は正義の欲求の厳格な成就によって達成されるのではなくて、
正義の欲求にもかかわらず達成されるのである。
神はなるほど不義ではないが、
彼は正義の秩序を超越する。
ラテン的理論の法律的性格と
密接に結びついているのはその合理的性格である。
アンセルムスの連続的な折り返し
(リフレイン)はnihili rationabilius
(・・・ほど理にかなっているものはない)である。
すなわち贖いへの要求と、
その要求が満たされる仕方ほど
理にかなっているものはないというのである。
Lex etratioすなわち方と合理性は、
ルターが倦むことなくいうように、分かちがたい仲間である。
しかし古典的贖罪思想は合理的体系化を無視する。
神は和解させる方であると同時に
和解させられる方でもあるという
その本質的な二面性は、
合理的記述によって解決され得ない二律背反を構成する。
以上は古典的贖罪思想とアンセルムスによって代表される
ラテン型との対照の概観として十分であろう。
それは次のように要約されるであろう。
古典的思想は神の行為における連続性と
正義の秩序における非連続性を示す。
ラテン型は神の働きにおける法的一貫性と
神の働きにおける非一貫性を示す。〉
、、、なぜ「合理的に完全」な、
法的モデルであるラテン型贖罪論だけでなく、
神が合理性・合法性を「超越」されて人を愛す、
という物語性を重視する「古典型」贖罪論を、
見直すべきだとアウレンは考えるのか?
それは「近代の限界」に時代は来ており、
それはとりもなおさず「合理性の限界」でもある。
これがポストモダンの社会の特徴です。
その社会のなかで、本当に有効な物語とは、
実は長いこと教会の伝統的な贖罪観であった、
「古典的贖罪論」という埋もれた宝にあるのではないか、
そういう「再発見・再評価」を、
アウレンは20世紀前半にすでにしていたのです。
驚くべき慧眼と言わざるを得ません。
、、、という私の解説より、
こちらの山田君の解説の方が、
もっと簡潔でわかりやすいかも知れません笑。
▼参考リンク:山田和音君のブログ
https://bre.is/LYXzJQAv
(3,649文字)
●神の物語(上)
読了した日:2019年11月5日
読んだ方法:Amazonで書籍購入
著者:マイケル・ロダール
出版年:2017年
出版社:ヨベル新書
リンク:
https://goo.gl/6oawTT
▼140文字ブリーフィング:
これも確か、
山田君のブログで見て興味を持ち、
購入してた本です。
やっと最近読みました。
こちらも「神学」がテーマですが、
特に「ウェスレアン神学」と呼ばれるものです。
そしてその「ウェスレアン神学」を、
「物語」として語ることを主眼にしているのが、
この書籍のユニークなところです。
アウレンの書籍で解説したように、
近代合理性の限界と、
ポストモダン時代の到来が、
こういった書籍が書かれる背景にあります。
「近代(合理性を無邪気に信じられた時代)」から、
「ポストモダン(後近代)」になった、
というのは「論理的整合性」への疑いでもあります。
それが「合理的説明から物語へ」のシフトをもたらしていて、
神学の世界では「組織神学」から、
「聖書神学(物語の神学)」へと、
多くの人々の関心がシフトしていることと、
じつは関係があります。
、、、で、本書の著者はそのようなことを踏まえ、
神学を「物語る」という形式に落とし込もうとしている、
とても野心的な試みなわけです。
さらに著者は「ウェスレアン神学」を、
そのような語り口で語ろうとしている。
何を隠そう私が所属している練馬グレースチャペルは、
「ホーリネス系」と呼ばれるプロテスタントの一派ですので、
まさに「ウェスレアン神学」の伝統を受け継いでいるのです。
自分が所属する教会の神学を知っておくことは、
自分の足下を知ることになりますので、
とても有意義に違いない、
と思い、Amazonで購入した次第です。
上下巻のうち「上」を読了しましたが、
めっちゃくちゃ良かったです。
いろいろありすぎて書き切れないのですが、
まず「ホーリネスといえばコレ」というものの一つに、
「聖め」があります。
「聖化」と言われたりもします。
だからホーリネスは別名「聖め派」と呼ばれていた頃もあるぐらい。
だから練馬グレースチャペルでも、
「聖め」っていう言葉は、
他の教会に比較すればかなり多い頻度で、
使われたりするわけです。
その「ルーツ」である、
ジョン・ウェスレーは、
「聖め」をどう定義していたのか?
これが、私にとっては目から鱗でした。
引用します。
→P46
〈ウェスレーにとって、
この「聖書的聖め」または「キリスト者の完全」の本質は、
全存在をもって神を愛し、
自分自身を愛するように他人を愛することである。
それは「愛における」完全である。
律法主義的な空想上の絶対的完全とは全く関係がない。
またそれは神との関係、
隣人との関係における完全であって、
愛によって「完成される」ものである。
ウェスレーはこう表現する。
「キリスト者の完全はこれ以上のものでもなく、
これ以下のものでもない。
すなわち、神と一への純粋な愛、
心と精神を尽くして神を愛し、
自分自身のように隣人を愛することがそれだ。
この愛が心と生活を治め、
気質(すなわち思いと感情の習慣)と言葉と行いを支配すること。
私はこれ以外のことを求めていない。
私が意図する完全あるいは聖めとはただこのことである」〉
、、、「聖め」「聖化」という言葉が、
最初に人々に呼び起こす印象は、
多分「きよめられたクリスチャン」みたいなステレオタイプで、
たとえばロック音楽を聴かない、
映画は観ない、
世俗的なテレビ番組は見ない、
酒場に行かない、
ゲームセンターに近づかない、
「世俗的な」書籍は読まない。
「世俗的な」趣味も持たない。
、、、読むのはただ聖書だけ。
、、、趣味は「祈ること」。
こういう、
「足が地上から1センチ浮いた状態で生活してる」
みたいな、中世の修道僧が、
そのまま世俗界で生活してるみたいなイメージだったりします。
「汚れたこの世界」の汚染から、
ひたすら自分たちを守っている人、
っていうのが案外「聖められた人」の、
ステレオタイプだったりします。
しかし、ウェスレーまで遡ると、
なんとウェスレーは、
一言もそんなことは言ってない(驚愕!)。
そうじゃない。
聖められた人とは、
「神を愛し、
隣人を愛する人」のこと。
これ以外に何も求めてない、
っていうんです。
逆に「汚れたこの世の中」と無縁に、
『霊的無菌状態』で生きるというのは、
隣人愛を不可能にします。
だって愛すべき隣人は、
この世の中にいるんですから。
だからイエスは、
「食いしん坊の大酒飲み」と、
宗教的な人々から中傷されたんですし。
時々ルーツに帰らないと、
私たちの「伝統」は、
簡単に道を誤るんだなぁ、
と思いながらこの箇所を読みました。
、、、「伝統」といえば、
ウェスレーは「伝統」を軽視した訳ではありません。
「それがすべてじゃない」って言ったんです。
引用します。
→P78
〈個人的な経験に訴えることは、
ウェスレアン神学の大きな特徴の一つである。
ジョン・ウェスレーの時代、
大部分の英国国教会の神学者は、
聖書がクリスチャンの信仰と礼拝の
主要な権威ある源であることを語り、
また伝統と理性がその大切な支えであることを理解していた。
けれどもウェスレーはそれらに、
宗教的真理を確認する役割を果たす個人的な経験を加えた。
著名なメソジスト神学者アルバート・アウトラー(1908〜1989)にならって、
ウェスレアン神学に立つクリスチャンたちは、
聖書・伝統・理性・経験という
「ウェスレアン神学の四辺形」に注目し、
神の物語を聞き、語る際に、その重要性を認めている。〉
・聖書
・伝統
・理性
・経験
この四つが大切だよ、
ってウェスレーは語ったわけです。
このうちのどれかが欠けると、
私たちはバランスを崩します。
四輪車が、三輪車になるのです。
だから「聖書の身勝手な解釈」はダメだし、
「伝統の軽視」もダメです。
伝統を軽視するのは、先人の知恵をゼロ査定することであり、
愚かとしか言いようがありません。
「反知性主義」もダメです。
神は人間に知性・理性を与えました。
それを放棄するというのは、
神を知ることをあきらめるのに似ています。
最後に経験を軽視するのもダメです。
実体験・実生活での神との個々の出会いの経験を軽視すると、
私たちは「過去と理性」のみに軸足を置くことになり、
信仰はダイナミズムを失うからです。
躍動感は失われ、冷たい前例主義だけが幅を効かせます。
凡庸な表現ですが、
「温故知新」というのは、
こういうことをいうなぁ、
と思いながら読みました。
自分の属する教会の、
依拠している神学を学べる有意義な書籍でした。
あと、私の長たらしい説明よりも、
こっちのほうがわかりやすいかも知れません(二回目)。
▼参考ブログ:ちょうをゆめみるいもむし
https://bre.is/FegzaSza
(2,613文字)
●予言の島
読了した日:2019年11月8日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:澤村伊智
出版年:2019年
出版社:角川書店
リンク:
https://bre.is/NzFr3zCQ
▼140文字ブリーフィング:
映画化された
「ぼぎわんが、来る。」を読んでから、
新進気鋭のホラー作家、
澤村伊智の本を、わりと立て続けに読んできました。
彼の最新作『予言の島』は、
ちょっとこれまでと違う感じの作風で、
ホラーとみせてミステリーであり、
環境問題だとかの要素も含んでいる、、、
という多義的な作品です。
結果的に「母という病」の路線の恐怖に着地する、
という結末は意外でした。
彼はやはり「家族という病」とか、
「機能不全家族」を描きたい人なんだと、
この作品で確信しました。
(219文字)
●節英のすすめ
読了した日:2019年11月9日
読んだ方法:山田和音君に借りる
著者:木村護?クリストフ
出版年:2016年
出版社:萬書房
リンク:
https://bre.is/4pex6H76
▼140文字ブリーフィング:
こちらも山田和音君に借りました。
現在の「ユニバーサル言語」である英語を、
便利だからという理由で使いまくることが、
じつは結構いろんな意味でヤバイかもよ、
というような本です。
著者はドイツ人と日本人のダブルの言語学者です。
ドイツ語・日本語を話し、
なおかつ英語の他に多言語を操りますが、
国際社会における「英語の便利さ」が、
じつは多様性を奪ったり、
深い思考を妨げたりするという弊害をもたらしている、
という警鐘を鳴らします。
「英語万能主義」に疑問を持たない日本の英語信仰は、
ちょっと異常な領域に達していると私も思います。
電気は確かに便利ですが、
「オール電化」にリスクがあることは、
あの震災で私たちは学んだはずです。
と同じようなリスクが、
「オール英語化」にもつきまとうのだから、
「節電」と同じく「節英」も必要なのではないか、
というのが著者の主張です。
私もそう思います。
まずは日本語運用能力を高めましょう。
日本語って、多くの人は「使えている」
と思っていますが、
使いこなせていない人が相当数いる、
というのが私の見立てです。
「炊飯器で米を炊けて、目玉焼きを作れる」
ことをもって「料理ができる」って言ってるようなもので、
日本で生活できているからといって、
「日本語が使えている」とは言えないのです。
「任意の本を一冊読んで、
その内容を自分の言葉で、
他者に簡潔に説明できる」
ということが、「料理が出来る」最低レベルだと、
私は思っています。
そう考えると、
このレベルで日本語を使える人は、
人口の5割以下だと私は思います。
下手すると2割を切るかもしれない。
その人が英語を学んでも、
その英語を使って成し遂げられることは、
AI時代にはほとんど何もないでしょう。
(647文字)
●読書会入門 人が本で交わる場所
読了した日:2019年11月10日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:山本多津也
出版年:2019年
出版社:幻冬舎新書
リンク:
https://bre.is/UBrHZ72V
▼140文字ブリーフィング:
猫町倶楽部という、
日本最大の読書会を主催するビジネスマンである山本さんが、
名古屋で発足した読書会が、
どのように成長してきたかを語ります。
このメルマガ主催の「オフ会」を、
来年はやりたいなーと思ってるのですが、
それを『読書会』という形にしようかな、
と本書を読んで思いました。
(135文字)
▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼
ご紹介した本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。
▼今週の一冊:『勝利者キリスト』
コメント:
贖罪論に関する本書は、
とても有意義でした。
あとでじわじわ効いてくる系の本です。
▼▼▼部門賞▼▼▼
ご紹介した書籍の中から、
陣内の独断と偏見で、
「○○賞」という形で、
特筆すべき本をピックアップします。
こちらも何かのご参考にしてくだされば幸いです。
▼「温故知新賞」
『神の物語』(上)
コメント:
これも素晴らしかったですね。
自らのルーツをちゃんと勉強する、
ということの実り多さを体験しました。
]]>朝ご飯のお決まりのメニューhttp://blog.karashi.net/?eid=4602020-03-30T09:17:00+09:002020-01-15T00:18:48Z2020-03-30T00:17:00Z第115号 2019年11月26日配信号
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■1 今週のオープニングトーク
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▼▼▼朝ご飯のメニュー▼▼▼
メルマガ読者の皆様、こんにちは。
今週も質問カード、いってみましょう。
...陣内俊今週の「オープニングトーク」
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■1 今週のオープニングトーク
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
▼▼▼朝ご飯のメニュー▼▼▼
メルマガ読者の皆様、こんにちは。
今週も質問カード、いってみましょう。
▼朝ごはんのメニューは決まっていますか?
、、、私の場合、
決まっています。
毎朝「オートミール」ですね。
正確には、
・水1リットル
・サプリ
・プロテイン
・オートミール
です。
霜降り明星の粗品なら、
「いや、ボディビルダーの朝ご飯!」
ってツッコむでしょうが、
まぁ、そうなんだから仕方ない。
まず、水は朝起きるとガブガブ飲みます。
睡眠中に失われた水分を補給するため。
あとはサプリですが、
私は3種類飲んでいます。
1.マルチビタミンミネラル
筋トレとボディメイクしていると、
わりと食事のルーティーンが決まってくるので、
特定の微量元素が足りなくなる、
っていうのは避けたい。
というわけでマルチビタミンミネラルは飲んでます。
2.グルタミン
これはアミノ酸の一種で、
筋トレユーチューバーのコアラ小嵐が、
筋トレ始めてから風邪を引きやすくなったんだけど、
これを飲み始めてから引かなくなった、
っていってて、それで飲み始めました。
グルタミンって腸の細胞を再生させるのに関与してるらしく、
人間の免疫機構って、「腸で作られる」
といっても過言ではないので、
まぁ、理にかなった話です。
毎朝5グラム飲んでます。
3.クレアチン
これは、北海道で、
筋トレしてる知り合いから聞きました。
これを飲み始めてトレーニングの質が変わった、
って彼は言っていて、いろいろ教えてもらいました。
クレアチンって、「ATPサイクル」
っていう、「クエン酸回路」とも言われる、
人間のエネルギーを生み出す化学反応の、
「ひとつの歯車」として登場する物質なんですよね。
その知り合いは医者なので、
やたら説得力がありました。
これも毎朝5グラム。
たしかにこのサプリは実感があって、
たとえばアームカールを、
9回で限界だったのが、
「最期のもう1回の踏ん張りがきく」
ようになる感じがあります。
ちなみにクレアチンもグルタミンも、
毎日5グラムなのでなかなか減らないし、
サプリ自体それほど高価でもないので助かってます。
私は年に二回ぐらい、
「マイプロテイン」というイギリスのサイトで、
キロ単位で購入しています。
、、つぎにプロテイン。
朝はホエイプロテインを20グラム飲みます。
夕食から12時間ほど経過しているので、
胃の中は空っぽになってるわけで、
とりあえず血中アミノ酸濃度を上げたい、
という、ボディメイクの強迫観念(笑)により、
やはり朝一はサプリで入れておきたいですね。
「毎朝肉や魚が食える」
という環境にある人はよいですが、
朝は忙しかったりするので、
サプリがお手軽でよいです。
、、、最後にオートミールですね。
毎朝30グラム食べています。
カロリーにして120kcalぐらいでしょうか。
これに水を入れてレンジで2分20秒温めます。
増量期にはこれに牛乳と蜂蜜を入れて食べるのですが、
今は減量期なので、牛乳と蜂蜜をやめて、
「お茶漬けのもと」を入れて食べます。
けっこう美味いです。
朝炭水化物抜くというのは、
ダイエット的に不正解ではないのですが、
脳に行く栄養がなくなるため、
仕事の能率が落ちては本末転倒です。
だから朝の炭水化物は必須。
では、なぜパンや白米でなく、
オートミールなのか。
それは「GI値」というのが関係してて、
簡単にいうと、
「血糖値の上がり方が穏やか」な食品なんです。
オートミールとかサツマイモとか、
そういった食物繊維が多い炭水化物は。
そうすると、「腹持ちがよくなる」し、
徐々に血中に糖分が溶け出すイメージなので、
インシュリンの大量分泌による、
「シュガーラッシュ」と呼ばれる、
「反動低血糖」も起こらない。
そういう理由で毎朝オートミールです。
これも2.5キロの箱をネットで買います。
半年以上、たぶん1年近く持ちます。
そんなわけで、
私の朝食はそんな感じです。
「夢」はあまりないですね笑。
ボディメイクを追求しすぎると、
「食事」が「エサ化」してくるのですが、
それは本末転倒だと思うので、
なるべく遊び心も入れながら、
食事を楽しみつつやってます。
マッスル北村のように死んだりしませんので、
ご安心ください。
皆さんの朝食のルーティンはありますか?]]>陣内が先週読んだ本 2019年 8月4日〜8月31日 『平成史』他http://blog.karashi.net/?eid=4592020-03-24T09:15:00+09:002020-01-15T00:17:11Z2020-03-24T00:15:00Z 第114号 2019年11月19日配信号
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■2 陣内が先週読んだ本
期間:2019年 8月4日〜8月31日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ひっさしぶりに、
「読んだ本」コーナーやっていきます。
「先週」読んだ本、
というの...陣内俊陣内が先週読んだ本
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■2 陣内が先週読んだ本
期間:2019年 8月4日〜8月31日
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ひっさしぶりに、
「読んだ本」コーナーやっていきます。
「先週」読んだ本、
というのはもはや有名無実化していて、
「最近」読んだ本コーナーです。
ところが8月12日から9月後半まで、
私は体調を崩していまして、
ほとんどまったく本を読めない時期が2ヶ月ちかくありました。
最近やっと少しずつ読書再開してますが、
まだ読書スピードは戻ってきてません。
1日2〜3時間が限界、という感じでしょうか。
なので、病気で読めなかった2ヶ月間を含む、
8月4日〜31日までに読んだ本を、
とりあえず今日はご紹介します。
読んだ後けっこう時間がたってるやつも多いので、
記憶がおぼろげで、まとめとしてイマイチかもしれません。
そのときはどうかご容赦ください。
●コペルニクス革命
読了した日:2019年8月5日 途中飛ばし読み
読んだ方法:図書館で借りる
著者:トーマス・クーン
出版年:1989年
出版社:講談社学術文庫
リンク:
https://bre.is/fTD62-M7s
▼140文字ブリーフィング:
「パラダイム」という言葉を最初に使ったのは、
本書の著者トーマス・クーンとされています。
ちなみにパラダイムとは、
「ものの見方」のことです。
ニュートン以前には古典物理学のパラダイムはなかったし、
アインシュタイン以前には相対性理論のパラダイムはありません。
同じようにボーア以前には量子論的パラダイムはありません。
科学の「パラダイム」というのは、
ものの見方の枠組みを根底から変えてしまいます。
ニュートン力学では絶対時間・絶対空間が前提とされますが、
アインシュタインの理論では時間・空間は相対的で、
光の速度だけが一定です。
アインシュタインの理論では、
「法則」のもとにあらゆる物質の未来が予想できますが、
量子論的パラダイムでは、ものの未来は確率に支配されます。
こういった「パラダイム」という考え方が、
じつはあらゆる分野で応用可能なので、
「科学史家」であるトーマス・クーンは、
分野を超えてあらゆる領域の人々に参照され引用されます。
たとえばビジネス界では、
20世紀に最も売れたビジネス書のひとつ、
「7つの習慣」で著者のスティーブン・コヴィーが、
「パラダイム」という言葉を使っていますし、
宣教学者デイヴィッド・ボッシュは、
クーンのパラダイム理論に依拠して、
『宣教のパラダイム転換』という金字塔的大著を残しています。
「パラダイム」という「考え方」は、
汎用理論なので、
あらゆる分野に応用可能です。
自分がしている仕事が今、
どのような前提とパラダイムに基づいているのか、
これを見直すことが出来ると、
圧倒的に未来を切り拓いていく推進力が高まります。
面白かったのは、
宗教改革者のルターやメランヒトンが、
「地動説」を否定していたというくだりです。
→P299〜300
〈1539年の「座談」において、
マルチン・ルターは次のように述べたと言われている。
「天や太陽や月ではなく、
地球が回転するのだということを証明しようとする
新しい天文学者に人々は耳を傾けている。
・・・この馬鹿者は全天文学をひっくりかえそうとしている。
しかし聖書が証明しているように(ヨシュア記10:13)、
ヨシュアが止まれと命じたのは、地球ではなく太陽だった。」
(中略)
メランヒトンは、
この後いくつかの反コペルニクス主義の
聖書の文章を組み合わせて議論を進めているが、
そのなかで、伝道の書第一章第四節
および第五節のの有名な一節を特に強調している。
その節は、「地は永遠に変わらない」、
そして「日は出て、日は没し、
その出たところに急ぎ行く」と述べている。
最後に彼は、コペルニクスの不信心な行為を
抑えるためには厳密な観測を行わなければならない、と示唆した。
他のプロテスタントの指導者も
すぐに一緒になってコペルニクスを否定した。
カルヴィンは彼の『創世記についての注釈』において、
次のような詩篇93篇のはじめの1節を引用している。
すなわち「まことに、世界は堅く立って、
動かされることはありません」。
そうして彼は「一体誰がコペルニクスの権威を、
聖霊の権威より上に置いたりするだろうか」
と強調している。〉
ルター、カルヴァン、メランヒトンらの、
コペルニクスへの反応を読み、
現代の私たちは「まったく馬鹿げたことだ」
といって肩をすくめるかもしれませんが、
私たちは現在ももしかしたら
同じようなことをしているかもしれません。
重要なのは「未来のパラダイムから見たとき、
私たちは確実に馬鹿げたことをいくつかしているはずだ」
というメタ視点を持てるかどうかです。
(1,428文字)
●いのちの輝き感じるかい
読了した日:2019年8月5日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:斎藤晶
出版年:2002年
出版社:地湧者
リンク:
https://bre.is/xVcql4kSA
▼140文字ブリーフィング:
7月に福島に行ったんですよ。
それは、FVIの支援している、
「モーモープロジェクト」の視察のためでした。
谷さんという方がやっている活動で、
原発事故後に放置された牛10頭を飼っています。
そこで目にした光景が衝撃的だったんですよね。
牛が木を倒してそれを踏むことで、
「雑木林」が「農地」に変わる、
ということが起きていたのです。
私は獣医ですが大学でもそんなの習ったことなかった。
じっさい、専門家が興味をもって調査していて、
NHKの番組にもなり放送されたそうです。
練馬グレースチャペルの横田牧師も、
7月の視察に同行してくれたのですが、
彼もまた帯広で酪農の仕事をしていたので、
この光景に衝撃を受けました。
そして後で教えてくれたのが、
「谷さんのところで起きていることを、
北海道でやっていた先人がいた」
というのです。
それが「蹄耕農法」という言葉にもなっている、
というのを後で知りました。
その人の牧場の写真集が図書館にあったので、
読んでみたわけです。
著者のプロフィールと、
本書の引用を見れば、だいたい分かると思います。
この「斉藤牧場」は今も旭川にあるそうなので、
いつか訪れてみたいんですよね。
*著者プロフィール:
斎藤晶(2002年時点):
1928年、山形県生まれ。
47年、開拓農民として単身、北海道旭川市神居町に入植。
笹と石だらけの山で開拓農業に行き詰まり、
自然に対する発想を転換して酪農に転向。
牛と牧草と雑草の生態を生かした
蹄耕法による自然流酪農を確立。
現在、130ヘクタールの土地に130頭の牛を飼う。
99年度山崎記念農業賞受賞。
→
〈ここは今は牧草におおわれてるけど、
石だらけで土が見えなかったんです。
ところが、草が石をみな包んでしまったんですよ。
だから、もう大きな石しか見えないんです。
そして景観から見ると、
その石がひとつのプラスの要素になってるんですよ。
それから、木も初めは全部火を付けて焼いてやろうと思っていたのに、
天気があんまり良くなくて、
うまく焼けなかったのが残ったんですよ。
それをそのまま放っておいたら、
プラスに作用したってことなんです。
都会の人が夏、牧場に来たら
「いや、これはいいな!」とみんないってますよ。
ここは日本庭園を大きくしたみたいな、
すばらしい景観になってますからね。〉
→
〈木と草と石と、自然のそのままの姿がいいんだよね。
ところが牛を放してやらないと、
こういう景観にはならないんです。
人間の作った公園には、自然の野性味がないからね。
そういう公園は最初はいいけど、
長年のうちに飽きるんです。
ところが自然というのは毎年変化するから、
ぜんぜん飽きないんですよ。〉
(1,082文字)
●永続敗戦論
読了した日:2019年8月6日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:白井聡
出版年:2013年
出版社:太田出版
リンク:
https://bre.is/mXxh6SZ5M
▼140文字ブリーフィング:
現在の日本でなぜ、
国家主義・排外主義的な
「右の吹き上がり」が起きているのか、
日本の近代史をなぞりながら本書は解説しています。
白井氏は明治政府のでっち上げた、
「天皇神話」には、でっち上げた側の意図(密教)と、
大衆に向けて発信した公式の物語(顕教)があるとします。
そして、ある時期に顕教に密教が飲まれる、
という倒錯したことが起きるのだ、と言います。
引用します。
→P163〜164
〈かつて、久野収と鶴見俊輔は
明治憲法レジームにおける天皇制を
「密教と顕教」の比喩を用いて腑分けして見せた。
すなわち、明治憲法において
「天皇は神聖にして侵すべからず」と規定されているが、
このような「現人神としての天皇」は
大衆向けの「顕教」であり、大衆を従順に統治され、
かつ積極的に動員に応ずる存在にするための装置であった。
他方、権力運用の実際において、
明治の元勲たちは「天皇親政」を表向き掲げながら、
実権を持たせず、立憲君主制国家として明治国家を運用した。
それが、戦前天皇制の「密教」的部分である。
後に美濃部達吉がとなえる
「天皇機関説」という法学的思考に
なじみの薄い人間にとってかなり難解な理論は、
大日本帝国憲法体制のこの密教的部分を
説き明かしてみせたものだった。
(中略)
しかし、大正を経て昭和の時代を迎え、
大衆の政治参加の機会が増大するにつれて、
顕教と密教の使い分けという統治術は崩壊へと突き進む。
それは、戦前天皇制の顕教的部分が密教的部分を侵食し、
ついには滅ぼしてゆく過程にほかならなかった。
(中略)
この過程で、美濃部学説は不敬なものとして否定され
上杉慎吉らのとなえる天皇主権説に取って代わられるが、
それは天皇制における
顕教的部分が密教的部分を呑み込んだ瞬間を印すものであった。〉
、、、明治政府、もっと言えば伊藤博文は、
日本に立憲制度を導入するには、
西洋における「神」のような超越的な存在が必要、
と考えました。
しかし日本にはそれがない。
「そうだ、天皇を使おう」
これが伊藤博文の発想でした。
しかし大衆に向けて発信するときに、
「明治政府は天皇を利用することにしました」
といったのでは、機能しません。
だから「神聖不可侵」なものとした。
二枚舌を使ったわけです。
このあたりは小室直樹の、
『日本人のための憲法原論』に詳しいです。
しかし、大正、昭和になると、
「方便として使ったほうの論理」が、
「内実としての密教」を飲み込んでいく、
ということが起きます。
これが内村鑑三の不敬事件などにもつながるわけです。
さて。
ここから論を進め、
白井氏は「戦後レジーム」にも、
「密教」と「顕教」があると言います。
それを作ったのは誰か?
吉田茂であり、岸信介です。
麻生太郎のおじいちゃんと、
安倍晋三のおじいちゃんですね。
岸信介はちなみに、
CIAの「スパイ」でした。
CIAのホームページから誰でも確認できます。
(たしか2013年に情報公開されました)
戦後レジームの密教とは何か?
「対米従属によってエリートが地位を得る」
という日本の権力構造です。
顕教とは何か?
「敗戦を終戦と言い換え、
ポツダム宣言などの内容などをあえて薄めて、
『平和と繁栄』という偽薬で戦争に負けた事実を忘れる」
という戦後日本の「神話」です。
そして、今の日本で起きているのは、
「顕教」が「密教」を飲み込んでいる、
まさにその状況です。
現実を見ずに計画を立てると、
その計画は必ず破綻します。
世界的に見れば日本は今も「敗戦国」です。
「国連=United Nations」の正しい訳は、
「連合国」なのですが、これを「国際連合」
とすることで、自らの敗戦を糊塗し続けてきたつけを、
今の日本は払っているわけです。
(1,498文字)
●世にも奇妙なニッポンのお笑い
読了した日:2019年8月7日
読んだ方法:Kindleで電子書籍購入
著者:チャド・マレーン
出版年:2017年
出版社:NHK出版新書
リンク:
https://bre.is/qIGnh7LH4
▼140文字ブリーフィング:
オーストラリア人の芸人、
チャドをみなさんは知っているでしょうか?
彼は「ジパング上陸作戦」というお笑いコンビのボケとして、
よしもと所属の現役の漫才師であるとともに、
最近は「映画字幕」における、
「海外の笑いを日本の笑いに文脈化する」
という仕事もしています。
この人が語る「日本の笑い論」は、
とても面白かった。
なんせ彼の経歴が面白い。
オーストラリアで生まれ育った、
生粋のオーストラリア人でありながら、
15歳の時に日本に交換留学生として来たとき、
ステイ先で見た
「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」が、
なんか言葉は分からないけど、
世界にこんな笑いがあるのか!!!!!!!!!!!!
という衝撃を受けます。
そしてオーストラリアに帰ってからも、
YouTubeの日本のお笑い動画を見て日本語を勉強しまくり、
ついには単身日本にわたり、
よしもとに入ってしまうのです。
彼の着眼点は「外から俯瞰の目」で見てるから、
日本について日本人が考えないような切り口を与えてくれるし、
笑いで日頃言語能力を鍛えているから、
その辺の日本人以上に日本語運用能力が高いので、
めちゃくちゃ勉強になります。
たとえば、日本の「なあなあ」なところは、
実は歴史が長い国ゆえの余裕なんじゃないか、とか。
→位置No.1295
〈日本人はわりとお上のことはどうでもええ、
そこは無理して戦わずに従おうという傾向がある気がします。
欧米人は、「俺が首相になって国を変える」とか、
一人の努力でなんとか現状を打破しようと考えがちです。
でも日本人は一人の力ではどうにもならない、
と考える節があると思うのです。
それは多くの場合、悪い意味に捉えられますが、
僕は決してそうは思っていません。
むしろ、日本人はスケールが大きいなあと感じます。
たとえば京都の人は、
今でも京都が日本の中心だという意識がありますが、
だからといって京都を日本の首都に戻そうというような
目立った動きはありません。
今は、東京にちょっと
首都を譲ってやっているぐらいの感覚があるように見えます。
何百年先の話になるか分からないけれど、
「いつか京都に戻ってくるだろう」と、
京都人は心のどこかで思っている。
物事を自分の一生に限定せず、
悠久の時間の流れで捉えているんだと思いました。
おごれる者は久しからず。
だから、今はジタバタせずに、
自分ができることに集中する。
日本人の根底には、そんな考え方があるような気がします。
(中略)
自分の人生でなんとかしようと奮闘するも良し、
流れに身を任せてできる範囲のことをやるも良し。
どちらがいいとか、悪いとか言いたいのではありません。
ただ、日本に来なければ
そんなスケールのでっかい考え方があるとは思わなかっただろうから、
僕の思考の幅を広げてくれたことは確かです。〉
、、、あと、
彼の「笑い翻訳家」としての能力は凄いです。
お笑い界の戸田奈津子です。
ひとつだけ翻訳のすごさが分かるエピソードを引用します。
→位置No.1421
〈ダジャレや言葉遊びは、
先ほども言ったように直訳では絶対に意味が通じません。
なのでそこは僕の翻訳力が試されます。
どうするのかというと、
日本語と似たような言葉遊びを英語で作って、
上手くはめ込むのです。
一つ例を挙げてみますと、
2009年に公開された映画『ヤッターマン』で、
パチンコ屋の電飾看板が出てくるシーンがありました。
パチンコ屋の「パ」が消えて、「チンコ」になる。
それをみた役者さんが「うふふ」と笑うのですが、
そのまま「PACHINKO」の「PA」を消してみたところで、
向こうの人には「CHINKO」が何を意味しているか分からないから、
面白くもなんともありません。
そこで僕はパチンコと敢えて書かずに、
その店が「PEACOOK(クジャク)」
という店名だという設定にしました。
パチンコと書かなくて
もみるからにギャンブルができそうな雰囲気があるし、
たまたま鳥のネオンもあったからです。
そして、「PEACOOK」の「PEA」が消えて
「COOK(男性器を表す俗語)」になる。
これなら意味としても同じボケが再現できます。
上手くハマったと思いました。〉
、、、すごくないですか?
AIや自動翻訳によって、
翻訳家には仕事がなくなる、
なんて言われていますが、
彼のような才能は、
逆に仕事が増えるだろうな、と思います。
「PEA・COOK=小便・チンコ」というギャグは、
人工知能には絶対思いつきませんから笑。
(1785文字)
●牙 アフリカゾウの「密漁組織」を追って
読了した日:2019年8月7日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:三浦英之
出版年:2019年
出版社:小学館
リンク:
https://bre.is/k3J5QQoT
▼140文字ブリーフィング:
象牙の密売のための乱獲によって、
アフリカ象の個体数が減っている、
という話は皆さんもご存じかと思います。
そして2000年以降の象牙の乱獲の原因は、
中国の「象牙ブーム」です。
しかし、時を遡ると、
中国の象牙ブームをそもそも作ったのは、
バブル期の日本の象牙ブームなのです。
アフリカ象の絶滅の危機について、
実は最も重い責任の一端は日本にあります。
ところが日本は現在、
「象牙取引を根絶する」という世界の流れに、
逆行するような動きを見せています。
その背後にあるのは日本の中古市場と、
その取引業者が政治に及ぼす影響です。
中国じゃないですよ、日本の話です。
私がショックだったのは第6章に出てくるこの話です。
2016年9月24日に南アフリカのヨハネスブルグで開幕された、
「第17回 ワシントン条約締結国会議」で、
アメリカとアフリカ29カ国が発案国となった、
国際および国内象牙取引市場の
全面閉鎖を求める決議案が出されました。
なんと2000年代の象牙乱獲の原因となった中国も、
全面的に支持したのです。
中国のこの反応は、
国際社会から意外な驚きとともに喝采を浴びました。
ところが、
それに疑義を呈した国が日本だったのです。
そして日本は参加国として、
「乱獲に寄与しない取引は維持する」
という「抜け穴」を獲得しました。
国際社会は心底日本にがっかりしました。
著者はアフリカに赴き、
象牙乱獲に携わる現地の闇取引業者を取材しますが、
彼らはこう言います。
「全面禁止しなければ乱獲はやまない。
やまなければ人々は買い続ける」と。
小泉進次郎環境大臣には、
是非このことについても、
リーダーシップを発揮してもらいたいものです。
奥さんは動物の権利に対して非常に意識の高い人ですし、
一有権者として、そしてこの地球を適切に管理するよう、
神が人間に期待していることを知るキリスト者としても、
小泉大臣には期待しています。
(762文字)
●平成史
読了した日:2019年8月10日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:佐藤優 片山杜秀(もりひで)
出版年:2019年
出版社:小学館文庫
リンク:
https://bre.is/KPGMhVf9
▼140文字ブリーフィング:
文庫サイズなのですが、
500ページを超えるので、
結構なボリュームの情報量でした。
平成30年とはなんだったのか、
ということを、知の巨人、佐藤優が、
片山さんと対談しながら語ります。
「現代」という時代がどういう時代か、
ということを大づかみに把握する上で、
こういった書籍は有用です。
二つだけご紹介します。
ひとつは現代が「先の読めない時代」だということです。
なぜなら関与する要素が多すぎる複雑系なので、
「バタフライ効果」が生まれるからです。
→P241〜242
〈佐藤:まず1月にチュニジアで民主化運動が起きましたね。
キッカケは前年末、
チュニジアの地方都市で野菜を売っていた青年が
役人に賄賂を要求されて野菜と秤を没収されたことです。
青年は役所に3回も足を運んで秤を返してくれ、と訴えましたが、
相手にされずさらに賄賂を求められた。
怒った青年は、抗議のためにガソリンを被って焼身自殺します。
それがジャスミン革命のスタートでした。
(中略)
個人で平和を作り出すことはできませんが、
個人が戦争を引き起こすことは十分できる。
それを証明する事件でした。
アマゾンでチョウチョが羽ばたくと
アメリカで竜巻が起こるバタフライ効果のように、
役人が露天商に賄賂を求めるという些細な出来事が、
世界の大激震のきっかけとなった。〉
、、、次に、現在の世界で、
「左派」が分が悪く、
「右派」の勢力が拡大するのは何故か、
という分析です。
それは不確実な時代に、
人々が「理性の外側」を求めているからだ、
と佐藤氏らは指摘します。
→P384〜385
〈片山:
自信過剰なトランプも、
中国を掌握したように見える習近平も、
現在の世界情勢では、一寸先はどうなるか分からない。
そうした不安がどこかにあるからこそ、
神とつながろうとするんでしょうね。
世界中をそうした不安が覆っています。
そのせいで共和制に移行する義論が進まない。
共和制は、
人間の理性的議論や理性的合意に頼って物事を決めたり、
解決したりすることが最善に至るし、
そのようにできると信じることで成立する制度です。
でも世界的に危機が深まって
普通の人間に何かができるという自信が揺らいでしまい、
人間の理性を超えた神の存在を
無意識に求めているのではないでしょうか。
佐藤:
私も同じ考えです。
そして別の見方をすれば、
それは左翼の敗北を意味しています。
そもそもフランス革命期の議会で
人間の理性を尊重する人々が左に座った。
理性を信じているから
正しい情報を元に誠実に議論を尽くせば、
結論にたどり着けると考えている。
それに対して右派の立場の人たちは、
王や貴族、教会、あるいは神など
理性の外側にある英知を認めている。
平成になり、全世界的に危機の時代に入り、
同時に左翼の力が衰えた。
独裁的な国家が増え、
極右勢力が台頭しています。
彼らは、理性の外側の超越的な力を求めています。〉
→P387
〈同感です。
ご指摘の通り民主主義の意思決定には時間がかかる。
でも現在はその時間の経過に耐えられない。
だから意志決定に時間をかけない独裁体制を求めてしまう。
それが世界のトレンドになりつつある。
日本でも、国民は安倍政権に
独裁に近い権力を与えなければならないと考えるようになった。
安倍一強時代は、国民の集合的無意識が
成り立たせているのです。〉
(1,339文字)
●死国
読了した日:2019年8月10日
読んだ方法:図書館で借りる
著者:坂東眞砂子
出版年:1996年
出版社:角川文庫
リンク:
https://bre.is/VhwyXGKE
▼140文字ブリーフィング:
坂東眞砂子のホラー小説です。
佐藤優が「平成史」で、
「日本人の霊性」みたいな話のなかで引用していて
興味を持ちました。
88箇所を回る「お遍路さん」を、
逆に回ると死者が生き返る、
みたいな話です。
わりと雰囲気があって悪くなかったです。
(多くの人はホラー好きじゃないと思うから、
まぁ読まないでしょうけど笑)
でも、スティーブン・キングを考えたら分かるように、
ホラーって実は、現実世界の比喩なので、
SFと一緒で、読むと現代劇以上に、
得られるものがあったりします。
ちなみに本作は映画化もされました。
(241文字)
●時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」
読了した日:2019年8月20日 途中飛ばし読み
読んだ方法:図書館で借りる
著者:ジョイク・ナップ、ジョン・ゼラツキー
出版年:2019年
出版社:ダイヤモンド社
リンク:
https://bre.is/A3fQaVCd
▼140文字ブリーフィング:
グーグルの社員だった人と、
アップルの社員だった人が、
現代生活の「時間の墓場」から、
私たちはどうやったら自由になれるのか、
ということを解説します。
ライフハック的な技術が87個紹介されていて、
けっこう参考になりました。
現代生活はなぜこうも、
「時間が足りない」のか?
その「原因」を作り出している企業で働いていた二人は、
ふたつを指摘します。
「多忙中毒」と「無限の泉」がそれだ、と。
→P5
〈21世紀の今、2つの大きな力が
あなたの時間の1分1分を得ようと競い合っている。
1つは「多忙中毒」と僕らが呼ぶ風潮。
忙しいのを良しとする考え方だ。
メールで溢れんばかりの受信箱に、
びっしり詰まった予定表、長い長いやることリスト。
この中毒にハマっていると、
現代の職場の要求に応え、
社会で務めを果たすために、
つねに高い生産性を保ち続けることになる。
ほかのみんなが忙しくしているのだから、
自分だけペースを落とせば、
二度と遅れを取り戻せなくなってしまう・・・。
あなたの時間を奪っている2つめの要因は、
僕らが「無限の泉」と呼ぶものだ。
これはスマホのアプリなど、
コンテンツが絶えず補充されるものを言う。
引っ張って(陣内注:おそらくドラッグして、の誤訳)更新するものや
ストリーミング配信されるものは、全部これに入る。
こうしたいつでも利用可能な、
常時更新されるエンタテインメントは、
たえまない忙しさに疲れ果てているあなたへの
”ごほうび”になっている。
でも、たえまない忙しさは、
本当に避けられないのか?
無限の気晴らしは、本当にごほうびなのか?
それともただ、誰もが自動運転モードから
抜け出せないだけなのか?〉
この「多忙の自動運転モードから抜け出す」
ために、何をすればよいかを本書は解説します。
私は自分自身、
「多忙中毒」からも「無限の泉」からも自由です。
なんせガラケーですから。
実は87個のライフハックの40個ぐらいは、
「スマホをドブに捨てろ」で終わる話なんですが笑、
まぁ、だれもそんなことしないんでしょうね笑。
幸せだよー。
スマホがない生活は。
(849文字)
▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼
ご紹介した本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。
▼今週の一冊:『平成史』
コメント:
体調悪くなる直前の8月に読んだ本なので、
記憶はかなり薄れているのですが笑、
面白かった、という記憶だけはあります笑。
▼▼▼部門賞▼▼▼
ご紹介した書籍の中から、
陣内の独断と偏見で、
「○○賞」という形で、
特筆すべき本をピックアップします。
こちらも何かのご参考にしてくだされば幸いです。
▼「やっぱり芸人すごい賞」
コメント:
チャドの本は面白かったですね。
やっぱり「言葉の力」において、
現代日本の最強職業のひとつは、
芸人だと確信しました。
彼らの「言語化能力」にはいつも驚かされます。
チャドの場合、英語圏から来ているから、
さらに「日本語そのもののもつ面白さ」
とかにも目が行っていて、
すげーな、と思いました。
彼は今後もいろんな分野で活躍していくでしょう。]]>最近気になるテレビタレントhttp://blog.karashi.net/?eid=4582020-03-23T09:13:00+09:002020-01-15T00:14:38Z2020-03-23T00:13:00Z 第114号 2019年11月19日配信号
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■1 今週のオープニングトーク
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
▼▼▼最近気になるタレント▼▼▼
メルマガ読者の皆様、こんにちは。
今週も質問カード、
さっそく行っ...陣内俊今週の「オープニングトーク」
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■1 今週のオープニングトーク
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
▼▼▼最近気になるタレント▼▼▼
メルマガ読者の皆様、こんにちは。
今週も質問カード、
さっそく行ってみましょう。
▼質問:最近気になるテレビタレントはいますか?
、、、まず、大前提として、
私はテレビをほぼまったく見ません。
1週間のテレビ視聴時間は10分以下だと思います。
1日2分も見てない。
つまりほぼ何も見ていない。
「自称お笑いルポライター」なので、
特定のお笑い番組は追っかけていたのですが、
その追いかけていた番組も、
「なんか最近とがってないなー」
「なんか最近つまらないなー」
とかなってきて、
歯が抜けるように録画してチェックする番組も減り、
特にこの半年ほどはほぼゼロ状態です。
一応『探偵ナイトスクープ』と、
『水曜日のダウンタウン』と、
『さまぁーず×さまぁーず』と、
『アメトーーク』
『くりぃむナンチャラ』
『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで』と、
あとテレ東のネタ番組ぐらいを、
録画してはいるのですが、
それも、見ずに放置しているのがほとんどで、
10年前に買った容量500GB(!)の、
ハードディスクレコーダーは、
食道からデータが逆流しそうなぐらい、
腹一杯になってます。
それを「減らす」のすら面倒くさい、というね笑。
もう、そんぐらいテレビとは疎遠なわけです。
理由は簡単で、
テレビがつまらないからですね笑。
絶望的につまらない。
空を眺めていた方がまだマシです。
雲の形でいろいろ想像した方が、
これならまだ楽しいぞ、と。
テレビがここまで絶望的につまらない理由を、
私は小一時間れます。
それだけでなく、
今後ますますつまらなくなっていくという予言もしますし、
その理由も1時間語れます。
この「予言」は外さない自信があります。
理由はそれが「構造的なもの」だからです。
それは別の機会に譲るとして、
最近気になってるテレビタレントですよね。
いるんですわ、それが。
テレビは1分も見てないのに笑。
それは、伊集院光さんですね。
ずっとノーマークだったんですよね、この人。
クイズ番組を私は1秒も見ませんが、
クイズ番組とかに出てることは知ってました。
、、、で、
過去のくりぃむしちゅーのラジオとか聞いてると、
有田が若手の時に「お世話になった」
とか言ってるから、
かなりキャリアの長い芸人ぐらいに思ってたのだけど、
彼は一概に「芸人」というくくりでもないんですよね。
芸人的な仕事もするし、
テレビに出て「ちょっと教養ある発言する枠」
みたいなポジショニングも出来るし、
あと、俳優的なこととかもしてる。
ちょっと「いとうせいこう」みたいな、
そんな引き出しに入れてたんですわ。
ただ、この人はひとつ、
突出したものがあって、
それが「ラジオ」です。
確か伊集院さんって、
ラジオをライフワークとしていて、
「テレビに出るのはラジオを続けるため」
ぐらいなことを言ってたり言ってなかったり。
そういうのって、めちゃくちゃかっこいいなぁ、
というのは思ってたんですよね。
ところが。
伊集院さんのラジオ、
今年になるまで一度も聞いたことなかったのです。
伊集院さんってもう、
ラジオを30年ぐらい(?)とか続けてるので、
逆に今さら聞き始めづらい、みたいのがあって。
私は「スターウォーズ問題」あるいは、
「北の国から問題」と呼んでいるのですが、
歴史が積み重ねられすぎているコンテンツって、
「今更入っていきづらい」ってなっちゃうんですよね。
参入するのにエネルギーが要る、というか。
伊集院光のラジオもまさに、
「スターウォーズ問題」があったわけです。
ラジオリスナーの方なら分かると思いますが、
ラジオってそのリスナーが作る「文化」みたいなものを、
味わうメディアでもあるんですよ。
ちなみにですが、
私がこのメルマガを「ラジオ」と名付けているのは、
ラジオというメディアのそういう特徴が好きだからです。
で、伊集院さんぐらいの歴史があるパーソナリティだと、
今更その「文化」を学ぶというか、
参入していくのに、二の足を踏んじゃってたんです。
でも、1ヶ月ぐらい前に、
仕事してて、
作業用BGMとして普段聞いているラジオ番組を、
ひととおり聞き終わったときに、
ふと伊集院さんのラジオを流してみたんですよね。
そしたらそれが、面白いのなんのって。
この「面白い」を説明するのも難しいんです。
深夜ラジオなので当然、
ド下ネタのオンパレードでもあるわけですが、
まぁそれは深夜ラジオのデフォルトなので、
別に大丈夫なのです。
それは普通笑。
、、、でも2つ、
他の芸人の深夜ラジオと比較して、
伊集院さんの突出しているところがあります。
まず、その「話術の巧みさ」ですね。
純粋に一人で2時間、
その話に人を引き込む、
っていう「べしゃりの引力」は、
他の芸人ではあまり体験したことのない種類のものでした。
コンビ芸人なら「かけあい」に逃げれるんですが、
彼の場合一人です。
山里良太のラジオもひとりですが、
彼の面白さともまたちょっと違うんですよ。
不思議な「没入感」があるんですよね。
彼は若い頃落語家に弟子入りしていたそうですので、
そういう落語的な基礎を押さえているんだと思うんですよね。
とにかくべしゃりの巧さに本当に驚きました。
普段、人前で話すことを仕事にしている人なら、
彼のすごさが分かると思います。
もう一つは、
彼の「教養」なんですよね。
彼は不登校になって高校も中退してるから、
学歴は「中卒」です。
でも、社会にゴロゴロ転がってる、
「大卒の馬鹿たち」の、100倍頭良いです。
そして教養があります。
死ぬほど勉強してると思います。
あらゆる分野の知識に深みがあるからこそ、
彼の「ギャグ」は笑える。
もっとも深い知性を、
もっとも「人からくだらないと思われてる」、
深夜ラジオでの笑いに投資している、
という生き様、
ロックンロールですわ。
これこそ知性の正しい使い方だと思いますね笑。
マジでかっこいい。
本当の教養がある人の「真の共通点」って、
皆さんは何だと思いますか?
私はそれは「謙虚さ」だと思います。
ものをたくさん知っている人ほど、
「自分が知っているのがごく一部だ」
ということが分かるのです。
だから何かを語るときに、
「断言」を避けるようになる。
「、、、である!!」ではなく、
「、、、と私は思います。
違う見方もあるかもしれませんが」
という語尾になる。
伊集院さんにはそれがあるんです。
すげーな、この人、
と、久しぶりに思いました。
というわけで、
私が最近気になるテレビタレントは、
伊集院光です。
読んでいる全員が、
「今更!」って言ってると思いますが。
皆さんの気になるテレビタレントは誰かいますか?]]>