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2019年版・陣内が今年観た映画ベスト10(10〜8位)

2020.04.21 Tuesday

第118号  2019年12月17日配信号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■3 2019年版・陣内が今年観た映画ベスト10(10〜8位)
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
Amazonプライムに入会してから、
月に平均すると10本ぐらいの映画を観るようになりました。
電車やバスや新幹線で、本を読む代わりに、
タブレットで映画を観るようになって、
飛躍的に映画を観る本数が増えました。
映画は小説と同じで「他人の靴を履いて人生を歩く」、
という「疑似体験」を与えてくれます。
本と同じくランキングはあまり好きじゃないので、
年に一度だけの特別企画です。
「今年読んだ本」と同じく、
前編で10位〜8位、中編で7位〜4位、後編でベスト3を紹介します。
皆様の映画選びのお役に立てれば幸いです。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

●第10位 『翔んで埼玉』

鑑賞した日:2019年6月23日
鑑賞した方法:マニラに向かう飛行機の中で観賞

監督:武内英樹
主演:GACKT、二階堂ふみ
公開年・国:2019年(日本)
リンク:
http://www.tondesaitama.com/

▼140文字ブリーフィング:

この映画はフィリピンに行く飛行機の中で観ました。
ちょっと気になってたのだけど、
飛行機で見つけて「ラッキー」って。

そんで、非常に面白かった。
東京と首都圏(千葉、神奈川、埼玉)には、
「都会、田舎ヒエラルキー」みたいなものがあって、
それが非常に複雑な「カースト」を形成している。
そこでは「被差別民」がおり、
「支配階級」がいる。
そして「マウンティング」も行われるし、
「出身地・居住地ロンダリング」も行われる。
「どこまで吉祥寺駅周辺やねん!
 いや、西部新宿線のほうが近いやないかい!!問題」など。

そういった悲喜こもごもを、
とんでもなく味付けの濃いファンタジーで、
コメディーとしてエンターテイメント化するという、
非常に高度なことをしています。
欺されたと思って見てみてください。
面白いから。
新感覚ですね、これは。

イチゴ大福とか、
生ハムメロンとか、
明太子パスタとか、
そういうのを最初に発見した人は偉いと思うんですよ。
「翔んで埼玉」も、
「これが面白い」と思ったところが偉いと思います。
(432文字)



●第9位 『グリーンブック』

鑑賞した日:2019年7月2日
鑑賞した方法:マニラ→成田の飛行機で観賞

監督:ピーター・ファレリー
主演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ
公開年・国:2018年(アメリカ)
リンク:
https://bre.is/RPFhi0NWl

▼140文字ブリーフィング:

これは先ほどのフィリピンからの、
帰り道の飛行機のなかで見ました。

端的に素晴らしい映画でした。
アカデミー作品賞も納得です。

「グリーンブック」とはちなみに、
1960年代当時のアメリカの南部で、
「黒人でも泊めてくれるホテル」を
リストアップした冊子で、実在していました。

実際の黒人天才ピアノ奏者(シャーリー)と、
彼の運転手となったイタリア系の
ニューヨーカー(トニー)の友情の話です。
最初彼は黒人が使った自分の家のコップを
ゴミに棄てるほどの差別主義者だったのですが、
シャーリーとの道中、
だんだんと黒人差別をする他の白人に、
腹が立ってくるようになってきます。

トニーとシャーリーの変化っていうのがすごく良くて、
差別する側も差別される側も、
「人間を非人間化する社会システム」によって、
目が曇っているんですよね。
それを、「一緒に過ごす」ことが、
浄化していくっていう構図がすごく良い。

「差別主義者」の別名は「世間知らず」だと、
私は常日頃から思っています。
「中国人は、、、」
「韓国人は、、」
「黒人は、、、」
とか言う輩(やから)って、
中国にも韓国にもアメリカにも行ったことがなく、
中国人、韓国人、黒人の
個人的な知り合いがいない人が大多数です。
それって食べたことない料理が「不味かった」
って言ってるのと同じで、
とても頭の悪い行為です。

その意味で「偏見」とは、
自らの無知と経験の未熟さと、
視野の狭さをひけらかす行為です。

シャーリーもトニーもそういう意味で、
一緒に旅をする前は偏見にまみれていたのだけど、
彼らは同じ空気を吸うことで視野が広がり、
偏見という自分と他者を不自由にする
「目に見えない鎖」から自由になるんですよね。
それが見ていてすがすがしい。

さっきの「翔んで埼玉」も実は同じ構造があって、
「都心生まれ」と被差別階級の「埼玉生まれ」が、
同じ時間を過ごすことで、
お互いの偏見を溶かしていく物語でもあります。
誰もそう思ってないし、
こんなことを言ったのは世界で私が初めてだと思いますが笑、
「翔んで埼玉」と「グリーンブック」は、
同じジャンルの映画なのです。
(826文字)



●第8位 『ノーカントリー』

鑑賞した日:2019年3月6日
鑑賞した方法:Amazonプライム特典

監督:コーエン兄弟(ジョエル・コーエン)
主演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン
公開年・国:2007年(アメリカ)
リンク:
https://goo.gl/7o9G6J

▼140文字ブリーフィング:

コーエン兄弟の映画が好きです。
この数年で立て続けに見ているのですが、
『ノーカントリー』は本当に、
めちゃくちゃ面白かったです。

大好きな映画の一本になりました。
コーエン兄弟ってユダヤ教徒なので、
「ユダヤ的世界観の匂い」が、
そこはかとなくする感じもとても好きです。
「世界の不条理性」っていうのがいつも入っている。

その「世界の不条理」を象徴する存在が、
この映画の場合、犯人のサイコパス、
アントン・シガーです。

サイコパスが登場する映画が私は大好物なのですが、
シガーはそのなかでも史上ナンバーワンでした。

彼の「ポンプの兵器」は一生脳にこびりつきます。
最高!
浦沢直樹の「モンスター」を思い出しました。
「彼を観たら人生が終わる」という恐ろしさ。
もう、震えますね。
最高にアガります。
フォー!!ってなります。

多分私もどこかぶっ壊れてると思うんですが笑。

現実世界でサイコパスに出会った場合、
ちなみに私は一目散に逃げます。
けっこう「鼻は効く」方なので、
私は「そういった人」の被害を、
あまり受けていないほうだと思います。
映画で予習しているのが、
功を奏しているのかもしれません笑。
(476文字)

2019年版・陣内が今年読んだ本ベスト10(10〜8位)

2020.04.20 Monday

第118号  2019年12月17日配信号

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■2 2019年版・陣内が今年読んだ本ベスト10(10〜8位)
お待たせしました、年末特別企画です。
普段私は読んだ本に点数をつけたりランキングしません。
ランキングすることで切り捨てられる大切なものがあるからです。
なので、この企画は「年に一度だけ」の特別企画です。
前編は10位〜8位まで、
中編は7位〜4位まで、
後編はベスト3のカウントダウン形式で、
ご紹介していきます。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

●第10位 ティール組織

読了した日:2019年11月16日 
読んだ方法:図書館で借りる

著者:フレデリック・ラルー
出版年:2018年
出版社:英治出版

リンク:
https://bre.is/DHKshut7

▼140文字ブリーフィング:

こちらは先週紹介したばかりなので、
記憶が新鮮です。
けっこうこういう「年間ランキング」って、
じつは「後半のほうが有利」なんですよね。
記憶に焼き付く度合いが強いわけで。
そういうバイアスを排除しようしようと思って、
今年1年間に読んだ本のなかから、
純粋に面白かった10冊を選んだつもりではいます。

『ティール組織』をなぜそれでも選んだかというと、
なんか、今後じわじわ内容が響いてきそうだなと、
直観しているからです。

「自己組織化」と「自主経営」がキーワードです。
この数年で読んだビジネス書的な本でダントツに面白かった二つが、
ナシーム・ニコラス・タレブの『反脆弱性』と、
ミハイル・チクセントミハイの『フロー体験』だったのですが、
この二つの内容を「組織」という共通項で因数分解すると、
『ティール組織』になる感じがします。

何のことかわからないですよね。

チクセントミハイは、
「内発的動機付け」を重視します。
産業構造が変わり、
仕事の内容が単純作業やアルゴリズム作業ではなく、
創造的・創発的なものになっていくとき、
その動機付けは「アメとムチ」ではなく、
「内発的」になるべきだと彼は論証するのです。

タレブは、「未来が読めない不確実な現代」において、
唯一の取り得るべき戦略は、
「バーベル戦略」だと言います。
つまりそれは、
「確実に業績を上げられること」と、
「実験的なパイロットプロジェクト」の、
組み合わせにあると。

内発的動機付けと、
バーベル戦略、
この二つを可能にする組織的な構造、
ということになると、
それは「ティール組織」になるのではないかと、
私は思ったわけです。

最後の部分で著者は、
組織がティールになるだけでなく
社会全体もティールになる未来を「予言」します。
いや、そのような未来を作っていかねばならない、と。
なぜか?
「経済成長」の「最後のボトルネック」である、
「環境負荷」がもう限界に来ているからです。
「ゼロ成長社会」は歴史の必然だと著者はいいます。
環境負荷を計算に入れてしまえば、
経済成長というのは、
「未来からの前借りをGDPと呼ぶ行為」だからです。
そして「自然界の生態系に似ているティール組織」は、
「本能」によってそれらを防ぐであろう、と。

最後に私の大好きな経営者のひとり、
patagoniaのイヴォン・シュイナードの言葉が引用されているので、
それを引用します。
彼のいっていることは、
私が今年の6月に参加した、
フィリピン・マニラでのGlobal Workplace Forumでの、
「Business is Mission」と全く同じでした。

→P333〜334 
〈私はもう50年近くビジネスマンをやってきた。
自分を「アル中」あるいは「弁護士」であると
認めたがらない人がいるのと同じように、
私は自分が「ビジネスマン」なんて、
なるべくなら認めたくない。

私はこの職業を尊敬したことがない。

自然の敵となり、自然の文化を破壊し、
貧乏人から奪い、金持ちに与え、
工場からの排出物で地球を汚すという
批判を受けなければならないのは、まずはビジネスだからだ。

しかし一方で、ビジネスは食料を生産し、
病気を治し、人口を抑制し、人々を雇い、
大体において人々の生活を豊かにしてくれる。
そして、自分たちにとって大切なものを失わずに、
こうした善行を積み上げて利益を上げることも出来る。〉
(1,358文字)



●第9位 勝利者キリスト

読了した日:2019年10月30日
読んだ方法:山田和音君に借りる

著者:グスタフ・アウレン
出版年:1982年(原著初版1930年)
出版社:教文館

リンク:
https://bre.is/u2ubhgZb

▼140文字ブリーフィング:

こちらも最近紹介したばかりですね。
「贖罪論」の歴史をたどり、
「古典的贖罪思想」が、
現代によみがえる必要がある、
ということを論証している本です。

現代のキリスト教会で主流の贖罪論は、
カトリックもプロテスタントも、
「ラテン型」と呼ばれるものである、
というのはこの本を読むまで知りませんでした。
「ラテン型」の顕著な特徴は、
「論理整合性」です。
そして贖罪が「法律の類比」で語られることも、
この贖罪思想の特徴です。

曰く、
「私たちは神の前に有罪だ。
 正しい審判者である神は、
 有罪な者を無罪とすることはできない。
 キリストは私たちの罪を十字架で、
 『代わりに担って』くださった。
 だから私たちは信じるなら、
 神の前に無罪を宣言される。」
というやつです。

クリスチャンなら1万回ぐらい聞いたことがあるでしょう。

では「古典的贖罪思想」とは何か?
それは救済を、
「神と悪魔との戦い」の類比で語ります。
そこでは「論理整合性」や、
「法的な適合性」が若干犠牲になります。
つまり、神は「法を守る方」ではなく、
「法を超越される方」になるのです。

そして悪魔とその力の根拠である「罪と死」が、
神の愛の故に、キリストによって制服され、
私たちはその勝利にあずかるのです。
この「救済の物語」の違いは、
じつは私たちの信仰の質の違いにもなってくる。

良い神学書を読むと、
「世界が文字通り広がる」体験をします。
「自分が真理のすべてだと思っていたものは、
 真理の一部に過ぎなかった」と。
つまり、神の広さ、高さ、長さ、深さを知るのです。
良い神学とは、それにより神を知り愛するようになる神学です。

「神学など必要ない」と、
豪語するクリスチャンがたまにいますが、
その人の信仰の天井はたかが知れているでしょう。
いずれ頭打ちになります。
理由は、深さがなくなるから。
薄っぺらいままの信仰で渡りきれるほど、
現在の信仰者を取り巻く現状は甘くないのです。
(661文字)



●第8位 量子革命 アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突

読了した日:2019年1月26日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:マンジット・クマール(青木薫訳)
出版年:2017年
出版社:新潮文庫

リンク:
https://goo.gl/M2aRij

▼140文字ブリーフィング:

自然科学系の本とか、
物理学・数学系の本を読むのが大好きです。
本書はそのような本の中でも、
数年前に夢中になったサイモン・シンの、
『フェルマーの最終定理』に匹敵する面白さでした。

「量子論」ってじつは、
現代世界を読み解くのに「必須科目」のひとつなのですよね。
じっさい、現代の優れた創作物、
つまり映画や小説の中に、
量子論や多元世界を扱ったものが多いのは、
そういった背景があります。

『アベンジャーズ エンドゲーム』も、
量子論による多元世界が出て来ますし、
アカデミーのアニメ部門を総なめにした
『スパイダーマン スパイダーバース』は、
多元宇宙の話です。

「パラダイム」という言葉の生みの親、
科学史家のトーマス・クーンは、
「天動説から地動説への変化」
「ニュートンの古典力学から、
 アインシュタインの相対性理論への変化」
をもって、「科学におけるパラダイムの転換」と表現しました。

パラダイムが変わるとき、
人々の「世界の見方」が変わります。
古典力学から相対性理論への変化は衝撃です。
「時間と空間は不変」から、
「時間と空間は相対的だ」に変わるのですから。

唯一変わらないのは「光の速度=c」だというのを、
アインシュタインは発見したわけです。
この発見がなければカーナビも使えないし、
ポケモンGOも、ドラクエウォークもありません。
人工衛星からGPS信号は、
「時間と空間のゆがみの補正」をしなければ、
正確な位置情報を知らせることができないからです。
「絶対時間・絶対空間」のパラダイムからは、
GPSは生まれないのです。

「量子論」とは、ではいかなるものか?
「相対性理論」という物理学の体系が前提とする、
「宇宙は観測可能な実在からなる」という事実を疑うのが、
量子論です。

「観測するまで、光子などの微粒子は、
 『AかBかどちらかの状態で存在している』」
というのです。
「シュレーティンガーのネコ」っていうやつです。
放射性同位体を使った思考実験の箱の中で、
ネコは「生きた状態と死んだ状態が半々に存在している」
というたとえで有名なやつ。

観測したときにはじめて、
位置や状態が確定する。
それまで光子や放射性同位体は、
「Aの可能性とBの可能性を、
 数%ずつ含んでいる状態にある」というのです。
そして観測によってAと確定したとき、
その「確定」は、
何万光年も離れた粒子の状態に影響を与える、
というのです。

もはやSFの世界ですが、
これ、実験室での実験に成功しているのです。

そうすると、
影響を与えた光子と、
影響を受ける光子の間で、
「光の速さを超える速度で情報が伝達された」
ことになる。

そんな「ブードゥー教の魔術」みたいなことが、
世界に起こるはずはない、
といってアインシュタインはボーアに反対しました。
有名な「神はサイコロを振らない」という言葉は、
ここで生まれます。

しかしその後の数々の実験で、
「どうやら神はサイコロを振るらしい」
という証拠のほうが多くなってきた。

これは「実在とは何か」に関する、
20世紀までの前提を揺るがすことになります。
つまり、超微細な世界では、
物事は「確率に支配される」のであって、
「因果関係に支配される」わけではない。

これって実は、
さっき紹介したティール組織の話とちょっと関係がある。
量子論の世界から派生した物理学の分野に、
「複雑系の科学」があります。
複雑系というのは、
「アマゾンで蝶が羽ばたくと、
 テキサスで竜巻が起きる」
という比喩が有名ですが、
「因果関係で説明できないことが証明されている」世界です。
「予測と統御」が成り立たない。

非複雑系は「機械の比喩」で語れます。
ジャンボジェットのようなもので、
ひとつのパーツの影響は、
因果関係で予測できる。
ところが複雑系は、
「ボウルいっぱいのスパゲッティ」のようなものです。
一本のスパゲッティを抜くと、
任意のもう一本に何が起きるか、
「誰も予測できないということが数学的に証明されている」
のです。

そこにあるのは「確率」だけです。
世界は今後ますます、予測と統御が成り立たなくなり、
確率が支配するようになる。
つまり「量子論的な世界」になるのです。

、、、だとしたら、
そこで有効な組織形態は、
「自己組織化・自己進化」できる形態になる。
予測と統御のパラダイムに基づく、
「リーダーシップ/マネジメント」という概念は、
無用の長物どころか、
足を引っ張るようになる、というのです。

実は社会や経済や政治の「思想」って、
物理学の世界でのパラダイムシフトが、
それに先行して起きることが多いんですよね。
自然科学と社会科学は繋がっていて、
互いに影響し合います。
自然科学のパラダイムシフトが、
多くの場合先行するので、
自然科学に詳しいと、
社会科学にも強くなります。
(1,891文字)



●番外編

ここからは、惜しくもベスト10入りを逃した、
それでもかなり面白かった本を紹介していきます。
文字数が際限なく膨らむのを防ぐため、
こちらは有名無実と化している「140文字」の制約を、
きっちり守りつつ。


●ファシスト的公共性

読了した日:2019年1月11日
読んだ方法:義理の兄から誕生日プレゼント

著者:佐藤卓己
出版年:2018年
出版社:岩波書店

リンク:
https://goo.gl/Lutsqp

▼140文字ブリーフィング:

現代は「ポピュリズムの時代の再来」
と言われています。
20世紀初頭のヒトラー、ムッソリーニらの台頭と、
同じ事が繰り返されている。
歴史は繰り返す、とヘーゲルは言いましたが、
それがじっさいに起きている。
本書は過去の事例を引きながら、
現代を再解釈させてくれる良書です。
(130文字)



●ぼぎわんが、来る

読了した日:2019年2月9日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:澤村伊智
出版年:2015年
出版社:角川書店

リンク:
https://goo.gl/eDGqu4

▼140文字ブリーフィング:

映画化されたことで本作を知りました。
本書を読んでから澤村伊智にちょっとハマりました。
スティーブン・キングがそうであるように、
ホラー小説って、じつは現実の社会の批判になっています。
澤村さんも同じで、彼は現代社会の機能不全家族を、
ホラーという容れ物によって批判しようとしています。
(138文字)



●死にがいを求めて生きているの

読了した日:2019年11月17日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:朝井リョウ
出版年:2019年
出版社:中央公論新社

リンク:
https://bre.is/ksgC8JDt

▼140文字ブリーフィング:

20代のときにこれを書いている、
朝井リョウさんの才能に驚愕しました。
1980年代以降生まれの人は特に、
彼が書いたものを読んだ方が良いと思います。
あと、1970年代生まれ以前の人々が、
現代の若者の皮膚感覚を知るためにも、
非常に有用な資料になります。
(123文字)

陣内が先週読んだ本 2019年11月11日〜17日 『死にがいを求めて生きているの』他

2020.04.14 Tuesday

第117号  2019年12月10日配信号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■2 陣内が先週読んだ本 
期間:2019年11月11日〜17日
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

先週私が読んだ本(読み終わった本)を紹介していきます。
一週間に一冊も本を読まない、
ということは、病気で文字が読めなかった数ヶ月を除くと、
ここ数年あまり記憶にないですから、
このコーナーは、当メルマガの
レギュラーコーナー的にしていきたいと思っています。
何も読まなかった、という週は、、、
まぁ、そのとき考えます笑。

ただ紹介するのも面白みがないので、
twitterに準じて、
140文字で「ブリーフィング」します。
「超要約」ですね。
(どうしても140字を超えちゃうこともあります。
 140文字はあくまで「努力目標」と捉えてください笑。)

忙しい皆さんになり代わって、
私が読んだ本の内容を圧縮して紹介できればと思います。
ここで紹介した本や著者、テーマなどについて、
Q&Aコーナーにて質問くださったりしたら、
とても嬉しいです。


●デジタル・ミニマリスト

読了した日:2019年11月11日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:カル・ニューポート
出版年:2019年
出版社:早川書房

リンク:
https://bre.is/UnFkokgz

▼140文字ブリーフィング:

Facebook、YouTube、Instagram、
Twitter、Tiktokなどは、
現代社会で巨大な富を生み出すと共に、
スマホというツールを通して、
我々から二つのものを奪います。
ひとつは「注意」、
もうひとつが「時間」です。

上記のビジネスモデルは、
「アテンション・エコノミー(注意経済)」
と呼ばれていて、
消費者が1秒でも多くそのコンテンツにとどまれば、
その秒数が収益につながる収益構造になっているため、
作り手のエンジニアは意図的に、
「行為依存」という中毒状態を、
消費者に望むようになります。

パチンコやたばこなどと同じく、
消費者がそれに依存すればするほど、
作っている会社は得をするのです。

引用します。

→P13 
〈デジタル・ツールは
使わずにいられなくなるように設計されている。
しかもその行為依存を助長する文化的な圧力はすさまじく、
小手先の対処法では到底歯が立たない。

この問題を追及した結果、
私は次のような結論に達した。
必要なのは、自分の根本をなす価値観に基づいた、
妥協のない“テクノロジー利用に関する哲学”だ。

どのツールを利用すべきか、
どのように使うべきかという問題に明確な答えを提示できる哲学。
そして、選んだツール以外の一切を
無視できるだけの自信を与えてくれることも、
同じくらい重要な条件だ。

この二つの条件を満たす考え方は数多くある。
極端な例では、
ネオ・ラッダイト(ラッダイトは技術革新反対者のこと)が挙げられる。
新しいテクノロジーの
ほぼすべての利用を控えようと主張する人々だ。
これと対極に位置するのは、
自己定量化に熱中する人々だろう。
彼らは人生の最適化を目標とし、
生活のあらゆる領域にデジタル・デバイスを組み込む。

そういった多種多様な哲学を吟味するうち、
テクノロジー過多の時代をうまく渡っていきたい人々に
最適な答えとなりそうな一つが浮かび上がった。
私はそれを“デジタル・ミニマリズム”と命名した。
デジタル・ツールと付き合う上では、
”少ないほど豊かになれる”とする考え方だ。〉


著者は「注意」と「時間」を、
テック企業に搾取されないために、
「デジタルミニマリズム」を提唱します。
消費主義に人生を奪われないために、
モノをなるべく持たないようにする
「ミニマリズム」が発達したのと同じように、
これからの時代、
デジタル・ミニマリズムのような思想は、
私たちの心と人生を守る上で、
非常に重要な役割を果たすことになる、
と私は本書を読んで確信しました。

ちなみに私はデジタル・ミニマリストと言って良いでしょう。
なんせ、スマホを持ってないんですから。
その結果「注意」と「時間」を搾取されない。
だからこそ毎週こんな分量の文章を書けるのです。
「時間」を奪われるダメージは大きいですがそれ以上に、
「注意」を奪われることに私は耐えられません。

祈るにも考えるにも何かを生み出すにも、
「断片化した思考」は、
研いでいない包丁とおなじで、
何の役にも立ちませんから。
私は自分の能力を最大化するために、
スマホを拒絶しています。

しかしSNSなどを肯定する人々の中には、
「いや、人とつながるのは素晴らしいじゃないか!」
という人もいます。
それは否定しませんし、
私がSNSを「卒業」したけれど、
アカウントは削除していない理由もそこにあります。
しかし、スマホで1時間おきに
「いいね」をチェックするみたいな使い方は、
人をつなげるより、むしろ人を分断し、
孤独感を助長する、
という調査結果が出てきています。

引用します。

→P168 
〈これは2017年に、
権威ある学術誌《アメリカン・ジャーナル・
オブ・プリベンティブ・メディシン》に掲載された。
プリマック率いる研究チームは、
選挙期間中の世論調査でランダムに
サンプルを抽出するサイト同じテクニックを使い、
19歳から32歳までの成人を全国代表サンプルとした。

そして被験者に対し一連の質問をして、
被験者自身が認識する社会的孤独(PSI)
――いわば孤独指数――を計測した。
また人気のあるソーシャルメディア・サービスを
11種類選び、それぞれの利用頻度と利用時間を尋ねた。

解答を集計したところ、
ソーシャルメディアを利用すればするほど、
孤独指数は上昇する傾向にあることが分かった。
ソーシャルメディアの利用頻度と利用時間が
多い方から4分の1までに属する被験者は、
少ない方から4分の1に属する被験者に比べ、
孤独指数はなんと3倍高かった。

年齢、性別、交際相手の有無、世帯収入、
学歴などの要員を調整した後でも結果は変わらなかった。
NPRの取材に応じたプリマックは、
この結果に驚いていると延べている。
「ソーシャルメディアなのですから、
社会的(ソーシャル)なつながりが強まると思うでしょう?」
しかし、データは明快だった。
そういったサービスを使って
”つながればつながるほど”、
孤独感は強まる傾向が認められる。〉


、、、SNSでつながればつながるほど、
私たちは孤独になります。
時間も注意力も奪われます。
私はデジタルなダイエットは必須だと思いますが、
まぁ、強制はもちろんしません。
各自が決めたら良いと思います。
ただ、ダイエットすると幸せになるよ、
というのは証言しておきます。

こちらの書籍はYouTubeでもご紹介していますので、
ご興味のある方は見てみてください。

▼参考リンク:デジタル・ミニマリスト
https://youtu.be/6Ef3rHFHdTI
(2,201文字)



●ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

読了した日:2019年11月16日 後半3分の1の「実践」はながし読み
読んだ方法:図書館で借りる

著者:フレデリック・ラルー
出版年:2018年
出版社:英治出版

リンク:
https://bre.is/DHKshut7

▼140文字ブリーフィング:

これもかなり面白かったです。
ボリュームがすごい本なので、
後半の「実例」は流し読みしましたが、
前半の「理論」のところだけでも十分に面白い。

「組織のあり方」を、
石器時代まで遡って、
それらがどう「進化」してきたかを分析し、
そして現代社会に到来している、
「未来の組織形態=ティール組織」について語る本です。

それではまず、過去に組織はどう「進化」してきたか、
これを著者は「色分け」しながらこう説明します。

1.無色 
血縁関係中心の小集団。
「自己と他者」「自己と環境」という区別がない。

2.マゼンダ(神秘的) 
数百人の人々で構成される部族への拡大。
自己と他者の区別が始まるが世界の中心は自分。
物事の因果関係の理解が不十分で神秘的。

3.レッド(衝動型) 
組織生活の最初の形態、数百人から数万人規模。
力、恐怖による支配。
マフィア、ギャングなど。
自他の区分、単純な因果関係の理解により分業が成立。

4.アンバー(順応型) 
部族社会から農業、国家、文明、官僚統制の時代へ。
時間の流れによる因果関係を理解し、計画が可能に。
規則、規律、規範による階層構造の誕生。
教会、軍隊、官僚。

5.オレンジ(達成型) 
科学技術の発展と、イノベーション、起業家精神の時代へ。
「命令と統制」から「予測と統御」。
実力主義の誕生。効率的で複雑な階層組織。多国籍企業。

6.グリーン(多元型) 
多様性と平等と文化を重視するコミュニティ型組織の時代へ。
ボトムアップの意志決定。
多数のステークホルダー。

7.ティール(進化型) 
変化の激しい時代における生命体型組織の時代へ。
自主経営(セルフマネジメント)、
全体性(ホールネス)、
存在目的を重視する独自の慣行。


、、、読めばわかるように、
通常我々が「組織」と呼ぶのは、
レッド以降です。
あえて現代の日本社会に落とし込むと、
・レッド=前時代的なワンマン社長中小企業
・アンバー=官僚・地方自治体的のような、
      めちゃくちゃ「書類や決済」の多い組織
・オレンジ=能力主義の株式会社・多国籍企業
・グリーン=先進的なNPOや社会企業
(『世界でいちばん大切にしたい会社』に紹介されるたぐいの)
・ティール=まだ出てきていないが、あるとしたら多分、
 周囲から「不可解な集団」と思われている。

この「ティール」というパラダイムが、
どれだけ異質か?
ティールの世界観に経つと、
リーダーシップやマネジメントという言葉自体が、
前時代的で不要なものになる、といいます。

→P474 
〈今日の大規模な組織を支える
リーダーシップやマネジメントという思想は
組織としての成功に制約を与えている。
これは、16世紀、と17世紀に
封建制度という思想が
経済的な成功に制約を与えていたのと同じである
――ゲイリー・ハメル〉


、、、本書では世界中の組織を調査した著者が、
現代社会で未来を先取りしている、
「ティール組織」の実例をいくつか紹介します。
業界は本当に様々で、
看護師の集団から、医療組織、
機械の部品を作る工場から、
エネルギー企業まで多岐にわたり、
規模も数十人から数万人までばらばらです。

しかしその「組織の動き方」に、
共通するものがあることを、
著者は紹介していくのです。

ティール組織はときに中枢神経を持たないクラゲのようです。
現場で働く人数に対し、
「コスト部門」と呼ばれるホワイトカラーの部門が、
異常に小さい。
あり得ないぐらい小さい。
たとえば7000人の看護師を擁するティール企業の、
オランダの「ビュートゾルフ」のスタッフ部門には、
たった30名!しか働いていません。
その全員が看護師をサポートすることのみに献身していて、
彼らには何の決定権はないのです。
組織で働いたことのある人ならわかるでしょうが、
これは非常に「異常な事態」です。
なぜなら通常の組織では常に、
「コスト部門」が意志決定するからです。

それを言い表すビュートゾルフの看護師の言葉が、
脚注に引用されています。

→P119 
〈官僚主義は、自分たちは必要な仕事をしていることを
(とりわけ実は必要ないのではないか、と思っているときほど)
証明しようと忙しく動き回っている人々によって築かれていく
――リカルド・セムラー〉


、、、フロリダにあるサン・ハイドローリックスもまた、
ティール組織のひとつとして紹介されます。
この会社は製造業ですが、
会議も文書仕事もありません。
理由は、「忙しくしている」ことに、
無駄な時間を過ごす暇はないからだ、といいます。

→P140〜141 
〈サン・ハイドローリックスでは、
以上のすべての手順が徹底的に簡素化されている。
この複雑な状況をすべて理解して統制したいという経営陣は存在しない。
プロジェクトは有機的に、かつ非公式に起こる。
エンジニアはたいてい並行して複数のプロジェクトに携わっている。
彼らは、その時点で最も重要な仕事、
最も緊急な仕事、あるいは最も楽しい仕事は何かを考えながら、
自分の優先順位を常に調整し直す。

グーグルには、
エンジニアたちが毎週金曜日の時間をどう過ごすかを自由に決められる、
「20%ルール」として知られる慣行がある。
サンをはじめとする自主経営(セルフマネジメント)組織の場合、
基本的にこの自由時間が100%なのだ。
全体計画(マスタープラン)は存在しない。
プロジェクト計画ではなく、人員配置を心配する者もいない。
プロジェクト・チームは自然発生的に生まれ、
仕事が終われば解散する。
プロジェクトが時間通り、
あるいは予算通りに進んでいるかを誰も知らない。
なぜならば90%の人々は、文書でスケジュールを書いたり、
予算を立てたりすることを気にしていないからだ。
プロジェクト計画に関する手続きが
一切ないことで膨大な時間が削減される。

要するに、計画書の作成、承認プロセス、
進捗状況の報告、変更点の説明、
スケジュールの組み直し、再見積がないのだ。

もちろん、プロジェクトのための
経営資源を獲得するための政治的な動きも、
プロジェクトが予定通りに進まず、
また予算がオーバーしたときに
責任を押しつける相手を探す必要もない。

私がサンのリーダーの一人、カーステン・リーガルに、
同社の会議室がほとんど使われていないように見えますね、
と話したとき、彼女はあっさりとこう答えた。
「私たちは『忙しくしている』
ことに無駄な時間を費やしていないのです」〉


、、、ティール組織を理解するのに必要な二つの言葉があります。
これが前のパラダイムでいう
「リーダーシップ」と「マネジメント」に替わる言葉です。

その二つの言葉とは何か?

ひとつめは、
「自主経営」
もうひとつが、
「自己組織化」です。

なぜティール組織というパラダイムが、
「アンバー=順応型・官僚型」
「オレンジ=達成型・効率型」や、
「アンバー=多元型」に、
取って代わられると筆者が予測するのか?

それは、世界が「複雑系」になっていくからだ、
というのが筆者の回答です。

引用します。

→P354〜355 
〈予測と統御という枠組みで働くと、
人は完全な答えを探したくなってくる。
もし将来が予測できるのであれば、
自分たちの仕事は、
予測できる将来にベストな結果をもたらす解決策を探し出すことになる。

入り組んだ(complicated)世界で予測をすることは有益だが、
複雑な(complex)世界ではあらゆる関連性が失われてしまう。
FAVIのジャン・フランソワ・ゾブリストは、
この違いを説明する比喩を見つけ出した。
ボーイング747などの航空機は
「入り組んだ」システムだ。
数百万の部品がスムーズに連携しないと動かないからだ。
しかし、あらゆる部品は精密に組み立てられているので、
一つの部品を変更すると、
それがどのような結果をもたらすかを予想出来る。

一方、ボウルいっぱいのスパゲッティは、
「複雑な」システムだ。
もちろん、数十の「パーツ」はあるだろうが、
たとえばボウルからはみ出ている
一本のスパゲッティの先を引っ張ると
何が起こるのかを予測するのは事実上不可能なのだ。

予測をすると、
自分が統制しているという安心感を得ることが出来る。
しかし実際には、私たちの生きている組織や世界は
スパゲッティのような複雑なシステムなのだ。
そのようなシステムでは、将来を予測することにも、
ベストの判断にたどり着くために
それまでのやり方を分析することにも意味がない。
習慣的に分析したところで、
自分たちは統制と予測をしているのだという幻想を抱くだけで、
エネルギーと時間を浪費しているに過ぎない。

進化型組織は、完璧な予測など出来ない複雑な世界と、
うまく折り合いを付けられる。
考えられる限りでベストの判断を明確に狙うわけではなく、
すぐに使える実行可能な解決策を狙う。
新しい情報が入ると、それに応じて判断は見直され、
どの時点でも改善が図られる。〉


、、、飛行機の機体には「予測と統御」が成り立ちますが、
ボウルいっぱいのスパゲッティには、
「予測と統御」が成り立ちません。

前者は「非・複雑系」で、
後者は「複雑系」だからです。
なぜそうなるのかも、
数学的に「証明」されています。

では、世界はどちらなのか?
現代の世界は間違いなく、
「複雑系」なのです。

だとしたら、
飛行機の機体を運営するような、
「マネジメントとリーダーシップ」ではなく、
生き物が自分をアップデートしていくやり方、
「自己組織化」と「自主経営」のほうが、
次の時代には主流になっていくのではないか?
という未来予測です。

世界にまだ数えるしかないティール組織が、
厳しい事業環境のなかで、
卓抜した業績を残し続けているのは、
彼らの戦略が時代にフィットしていることの、
ひとつの証拠だといえるでしょう。
(3,855文字)



●夜

読了した日:2019年11月17日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:エリ・ヴィーゼル
出版年:1967年
出版社:みすず書房

リンク:
https://bre.is/uVmfrCwq

▼140文字ブリーフィング:

何度も耳にしたことはあったのだけど、
やっと手に取って読みました。
エリ・ヴィーゼルはナチスの収容所を生き延びた人物で、
収容所の現実を小説として世に問い、
1986年にノーベル平和賞を受賞しています。

彼は経験なユダヤ教徒で神を信じていましたが、
ナチスの収容所での経験が、
「彼の中の神を殺した」といいます。
しかし彼の小説を読むとわかるのですが、
「神が死んだ世界をそれでも生きる彼」のなかに、
「信仰」という言葉では包摂できない、
さらに深い「信仰心」のようなものがあるのがわかるのです。

少年が収容所で絞首台に乗せられたとき、
ヴィーゼルのとなりにいた男が
「神はどこにいるのか?」と呟くシーンは忘れられません。

→P127〜128 
〈三人の死刑囚は、
いちどきにそれぞれの椅子に乗った。
三人の首は同時に絞索の輪に入れられた。

「自由万歳!」と、二人の大人は叫んだ。
子どもはというと、黙っていた。
「〈神さま〉はどこだ、どこにおられるのだ」。
私のうしろでだれかが尋ねた。

収容所長の合図のもと、三つの椅子が倒された。
全収容所内が完全に静まりかえった。
地平線には、太陽が沈みかけていた。

「脱帽!」と、収容所長がどなった。
その声はかれていた。
私たちはというと涙を流していた。

「着帽!」
ついで行進が始まった。
二人の大人はもう生きていなかった。
膨れ上がり、青みがかって、彼らの舌はたれていた。
しかし三番目の綱はじっとしてはいなかった
――男の子はごく軽いので、まだ生きていた…。

三十分あまりというもの、
彼は私たちの目のもとで臨死の苦しみを続けながら、
そのようにして生と死の間を闘っていた。
そして私たちは、彼をまっこうから見つめねばならなかった。
私が彼のまえを通ったとき、彼はまだ生きていた。
彼の舌はまだ赤く、
彼の目はまだ元気が消えていなかった。

私のうしろで、さっきと同じ男が尋ねるのが聞こえた。
「いったい〈神〉はどこにおられるのだ」
そして私は、心の中で、
だれかの声がその男に答えているのを感じた。
「どこだって?ここにおられる
――ここに、この絞首台につるされておられる・・・」
その晩、スープは死体の味がした。〉


、、、神は、絞首台につるされておられる。
人間はこんなにも残酷になれるのだ、
ということを示したのがナチスの所業でした。
その残酷性は我々の中にも内在しています。

訳者は後書きで、
神を信じていた「エリエゼル(エリ・ヴィーゼルの本名)」と、
ナチスを生き延びたエリ・ヴィーゼルの間には、
「超えられない溝」があると言います。
その溝には600万人の死者たちがいると。

戦後に生まれた人間のなかで、
「いや、神はいるよ。
 信じようよ!」
なんてこの人に言えるのは、
頭がすっからかんのバカだけだというのは確かです。

私は600万人の死を見ていないし、
少年が30分絞首台でつるされるのを見ていません。
見ていない私に言えることはありませんが、
エリ・ヴィーゼルのその「うめき」こそが、
私たちが未来に神を知るための、
細い糸になっているのは確かです。
彼のような人を「預言者」というのでしょう。

→P208 
〈彼は今、幼少時の、
神秘に憑かれていた頃の自分に戻ることが出来ずにいます。
なぜならば、戦後のエリと幼年期のエリエゼル
(《神は我が祈りを叶え給えり》または《神は助けである》の意)
とのあいだに、墓に埋められなかった
600万人の死者たちがいるからです。

それに、収容所での第一夜に〈神〉を殺害されたエリエゼルは、
いわばその瞬間に〈神〉とともに死んだのです。
エリエゼルと〈神〉とが去った後、
彼の内面には底なしの空洞が残りました。
彼が果てしなく続けてきた、
その空洞との対話の最初の結実が『夜』なのです。〉
(1,511文字)



●死にがいを求めて生きているの

読了した日:2019年11月17日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:朝井リョウ
出版年:2019年
出版社:中央公論新社

リンク:
https://bre.is/ksgC8JDt

▼140文字ブリーフィング:

朝井リョウさんは、
映画『桐島、部活やめるってよ』
の原作者として認識していました。
映画があまりにも面白かったので、
文庫本を買ってはあったのですが、
今まで読んでなかった、っていうね笑。

買うと安心して読まないというね笑。
「積ん読」というやつです。

、、、でひょんなことから、
彼の長編小説を今回読んでみたんですよね。

まぁ、とんでもないですよ。

面白くて度肝を抜かれました。
彼は1989年生まれでまだ若干30歳!ですよ。
20代でこれを書くって、
もう、なんか、ため息が出ます。
嫉妬とかいうレベルじゃなく、
脱力してしまう。
あーあ、って。
天賦の才能、ってあるなぁ、って。
すげー書き手が出てきたなぁって。

具体的に何がすごいかを説明するのは困難ですが、
あえて言うと、
SNS時代の「強い嫉妬と自己愛ゆえの存在不安」
みたいなものを、
本当に上手に言葉として結晶化させている、という感じ。

今まで彼の小説で映画化されたのは、
『桐島、部活やめるってよ』と、
『何者』なのですが、
2本ともすこぶる面白いし、
彼の小説の雰囲気を損なってません。
彼の作品は映像化しやすいんだと思います。
これも彼がデジタルネイティブ世代なのと、
おそらく関係あるでしょう。

朝井リョウの文才に、
ちょっと、驚きましたね。
またひとり、天才が出てきたな、って。
(543文字)



●躁うつ病を生きる

読了した日:2019年11月17日
読んだ方法:図書館で借りる

著者:ケイ・ジャミソン
出版年:1998年
出版社:新曜社

リンク:
https://bre.is/WQGPJmpC

▼140文字ブリーフィング:

著者は躁うつ病の研究者であり、
同時に躁うつ病の患者、という珍しい本です。
彼女は自伝的に躁うつ病を軸に自分を語る。
詩的センスにあふれているが学術的な匂いもする不思議な書籍でした。
彼女は「躁うつ病と対決するのでなく、
躁うつ病をパートナーとして歩むことを選んだ」
といっていて、それが私の経験とも合致していて共鳴しました。
エピローグの4ページが素晴らしいのでご紹介します。

→P237〜239 
〈ときどきわたしは自分に聞いてみる。
かりに選択できるなら、
わたしは躁うつ病であることを選ぶだろうかと。
もし炭酸リチウムがなかったら、
あるいはわたしに効かなかったら、答えははっきりしている。
ノーだ。
恐怖にぞくっとしながら、
それが唯一の答えだ。

だが、炭酸リチウムはしっかり効いている。
だからこの質問を考え直すことができそうだと思う。
奇妙なことだが、わたしは病気であることを選ぶと思う。
説明しにくいことだ。
うつ病はことばや響きやイメージを超えた恐ろしいものだ。
わたしは長期のうつ病をもう一度は切り抜けられないだろう。

疑い深くなって人とのつながりを絶ち切り、
信頼と自尊心を失い、生活を楽しむことができなくなり、
普通に歩くことも話すことも考えることもできず、
疲れ切り、夜も日中も恐怖におののく。

いいことは何一つない。

年を取るとは、年を取って病気になるとは、
死ぬとは、物わかりがわるいとは、
優雅さ、洗練、調和を欠くとは、不機嫌とはどういうことか、
人生の可能性、セックスの楽しさ、音楽の絶妙さ、
あるいは自分自身と他人を笑わせる力を
信じられなくなるとはどういうことかと経験できるほかは。

離婚や失業、別れをくぐり抜けてきたから、
憂うつになるとはどういうことか知っていると人は言う。
しかし、そういう経験は彼らに気持ちを味わわせるだけだ。
うつ病は、そうではなく、鈍く、うつろで、耐えられないのだ。
やっかいでもある。

あなたがうつ病なら、人はあなたのそばにいられない。
彼らはそうすべきだと思うかもしれない。
そうしようとさえするかもしれない。
しかし、あなたにはわかる。
そして彼らにもわかる。
あなたは信じられないほど退屈なのだ。
怒りっぽく、偏執的で、ユーモアがなく、
生気に欠け、不安定で、わがままで、まったく自信がない。
あなたはこわがり、こわがらせ、あなたは
「まったく自分らしくないけど、
すぐになんとかなるはず」だとおもい、
しかしなんともならないことを知っている。

それなのに、なぜこの病気に望むことがあるというのだろう。
だが、病気だったから得たものがあると、
本当にわたしは思うのだ。
わたしはより多くのことを、より強く感じた。
より多くのことを、より強烈に経験した。
より愛し、より愛された。
よく泣いたがよく笑った。
どんな長い冬にも春の喜びがあるのを知った。
「デニムのように擦り切れた」死を味わい、
そして生をさらに味わった。
人のもっとも優れた面ともっとも恐ろしい面を見て、
そしてすこしずつ、人を思いやること、誠実さ、
物事の本質を見抜くことを学んだ。

わたしは自分の心の大きさ、深さ、広さを見た。
それがいかにもろいものか、そしてついに、
それがいかに知ることのできないものかを知った。

うつ病の時、わたしは部屋の向こうへ
四つんばいになって這っていくしかなかった。
わたしは何ヶ月もそうした。
けれども正常なとき、あるいは躁病のとき、
わたしは速く走った。
頭は素早く回転した。
いままででもっともすばやく愛した。
自分の病気がそれに深く関連していると思う。
病気の激しさ、それが新たな物事をもたらし、立ち向かわせた。

わたしの心の限界(望む限りもちこたえている)と
わたしの育ち、家族、教育、友人の力が試されたのだと思う。〉


、、、躁うつ病、
今は双極性障害と呼ばれている病気について、
私は多くを知りません。
精神疾患というのは、
脳という臓器の複雑性ゆえ、
同じうつ病でも、
100人いれば100通りの症状があります。

まして双極性障害のことは、
うつ病を患っただけの私には、
理解したとは到底言えません。

著者は自らの躁うつ病と闘いながら、
自らの病気を研究者として研究し、
それによってキャリアを築くという、
まさに「病気を職業としてしまった」ような人です。

彼女が引用した文章で言っている、
「病気だったからこそ得たものがあると、
 本当に思うのだ」
というのは心からの言葉だと思います。
私も同じですから。

病気は本当に辛いです。
本当に。
嫌に決まってるじゃないですか。
マジで辛いですから。
文字通り、死ぬほど辛いですから。

でも、それによって得たものもある、
と私も思います。
それは「雨降って地固まる」みたいな話とはちょっと違っていて、
著者もそうだと思うのだけど、
私の病気と、私というパーソナリティは、
切っても切れないのだと思うのです。

ある種の極端な能力を持った人に、
精神疾患の人が多いというのは、
脳の機能のベルカーブ曲線みたいなものを書いたとき、
それらの人々は、そのカーブの、
「とてつもなく端っこ」にいるからだと思うんですよ。
とてつもなく何らかの分野で優秀な人というのは、
実は「疾病」に分類されるほどの個性と、
「抱き合わせ」みたいな形でそのような能力を持ってたりする。

「角を矯めて牛を殺す」という言葉があります。
危険な角を切ったは良いが、
牛全体が死んでしまってはなんともならない、
ということですね。

彼女にとっての躁うつ病も、
私にとってのうつ病も、
この「角」みたいなものなのかなーと思ってます。
だから「病気は悪いモノ。治すべき。」
という「勝利主義」みたいなものを押しつけられると、
当事者は二重にも三重にも苦しむわけです。

当事者の魂からの言葉だけが、
そういった薄っぺらな世界観を、
内在的に批判し、脱構築することができます。
彼女のような存在はだから、
世界にとって貴重なのです。
(2,338文字)



▼▼▼リコメンド本「今週の一冊」▼▼▼

ご紹介した本の中から、
「いちばんオススメだったのは?」という基準でリコメンドします。
「いちばん優れていた本」というよりも、
「いちばんインパクトの大きかった本」という選考基準です。
皆さんの書籍選びの参考にしていただけたら幸いです。


▼今週の一冊:『死にがいを求めていきているの』

コメント:

全部、とても面白かったのだけど、
迷った結果、朝井リョウの小説を、
今週の一冊に選びました。
「平成以降の日本」を、
世代を代表する形で描くことのできる、
希有な作家です。
村上春樹がポストモダン的だと良く言われるのだけど、
どこか無理してるところがあるんですよね。
昭和の重力と戦いながらそうしているというか。
1989年生まれの朝井リョウは、
昭和の重力から完全に自由です。
ポストモダンネイティブって感じで、
ちょっと衝撃を受けました。


▼▼▼部門賞▼▼▼

ご紹介した書籍の中から、
陣内の独断と偏見で、
「○○賞」という形で、
特筆すべき本をピックアップします。
こちらも何かのご参考にしてくだされば幸いです。

▼「じわじわ面白い賞」
『ティール組織』

コメント:

『ティール組織』は、
急いで読んだのもあって、
まぁ良くある流行りのビジネス書のひとつかな、
ぐらいに思って「一応眼を通しておくか」ぐらいな感覚でしたが、
後々、じわじわとそれについて考える感じの本です。
これを神格化して、「これがすべてを解決する!」
みたいに興奮するのは、
そもそも本の読み方として間違っています。
(でもそういう人多いんだろうなー。)

話を戻しますと、
「未来の組織」は、
「機械モデル」から「有機体モデル」に変わる、
みたいな「自己組織化」の考え方は、
組織論を考える上で有力な補助線になります。

快眠のためにしていることは?

2020.04.13 Monday

第117号  2019年12月10日配信号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■1 今週のオープニングトーク
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

▼▼▼快眠のためにしていること▼▼▼

メルマガ読者の皆様、こんにちは。
先週告知しましたように、
「シーズン2」もあと残すところ4回になりました。
来週から「読んだ本・観た映画ベスト10」を
やっていこうと思ってるので、
レギュラーコーナーは今日で最後になります。
名残惜しいですが、
さっそく質問カードからやっていきましょう!

▼質問:快眠のためにしていることは何かありますか?


、、、そうですねぇ。
私は案外「寝られる人」なので、
けっこう睡眠で苦労することは少ないのですよね。
病気になったときは睡眠もおかしくなりましたが、
身体が健康である限りは、
どこでもいつでも眠れてしまう、
恵まれた体質だと思います。

あと、長く眠れます。
ロングスリーパーです。
毎日10時間とかでも、
余裕で寝られますが、
最近はだいたい8時間〜9時間に落ち着いています。
それでも長いですが。
睡眠時間はどこから拠出しているかというと、
スマホを持たないことで生み出した時間を、
すべて睡眠に充てている感じです。

スマホを手放すと、
どんな人でも「1日2時間増える」
というのは、自信をもって言えます。
私はガラケーなので、
その分時間があるのです。
それを全部睡眠に充てると、
ちょうど6時間睡眠の人とバランスがとれる。

「スマホと睡眠」どちらが脳に良いか?
どちらが生産性に貢献するか?
言うまでもありません。
100:0で睡眠です。
数々の科学的証拠がそれを追認しています。

スマホのない生活は快適だよー、
マジで。

あと、寝ている時間って、
「損してる」と思ってる人が多いですが、
それは完全な間違いです。
寝てる時間って仕事してるんです。
脳はちゃんと働いていて、
明日の頭脳労働のための準備をしています。

6時間睡眠を5日間続けた人の運転技術は、
認知能力の低下により、
飲酒運転並みに低くなる、
っていう研究があるぐらいなので、
じつは睡眠不足で毎日仕事行っている人って、
酒飲んだ状態で仕事モードに入っているのと同じです。
「寝てない自慢」なんていう時代の遺物は、
今すぐに生ゴミボックスに捨ててしまいましょう。

、、、というわけで、
睡眠に苦労はしていませんが、
睡眠を私は真剣に捉えています。
「寝ているときから、
 明日の仕事が始まっている」
とすら思っている。

吉越浩一郎さんが言うように、
「寝ないなんて怠惰」なのです。

というわけで私は、
毎日勤勉に寝ています。
そして、睡眠の質がなるべく高くなるようにも、
それなりに工夫しています。

まず、遮光カーテン、
これは必須ですね。
これがあるとないとで、
睡眠の質はかなり変わる、
というのも研究で実証されています。

それから、夜寝る前は、
「読書の時間」としています。
かなり幅はありますが、
だいたい1日1〜4時間ぐらい読みます。
この時間をテレビモニターやスマホの前で過ごすと、
ブルーライトが網膜を刺激して、
睡眠障害につながることもわかっています。

それから、
寝る前に「鼻炎スプレー」を鼻にします。
私はアレルギー性鼻炎をもってるので、
基本的に慢性的に鼻が詰まっていて、
それを解消してやると、
かなり眠りが深くなることを去年発見してから、
さらに睡眠が快適になりました。

あと、寝るときは、
「くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン」
を、タブレットで耳元で小さな音量で聞いています。
自動的に切れるように設定して。
これが、マジで良い子守歌なんですよね。
「無音」だと人間って、
いろんなこと考えちゃうじゃないですか。
特に心配事があるときなんかは、
そのことがベッドの中でぐるぐる回って、、、
みたいのってありますよね。

有田と上田のバカ話を聞いてると、
なんかそういう「悩みのるつぼ」から、
思考のトラックが外れて、
そしてすんなりと眠りに誘ってくれます。
この習慣はうつ病療養中に身につけたのですが、
それから今でも続いています。

、、、という感じで、
私の睡眠のためにしていることは、
これぐらいでしょうか。

皆さんは何か、
睡眠のためにしていることはありますか?